• 作成日 : 2023年4月21日

保守主義の原則とは?具体例から解説

保守主義の原則は、企業会計原則の7つの一般原則のうち6つ目の原則で、一定の状況下において保守的な会計を行うことを要請するものです。今回は、保守主義の原則の意味や必要性、具体例や行き過ぎた保守主義のデメリットについて解説していきます。

保守主義の原則とは?

企業会計原則の一般原則として定められている保守主義の原則の内容は以下のとおりです。

“六 企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない。”

企業の財政状態に不利な影響が考えられる場合を条件に、保守的な会計処理を要請しています。

保守的な会計処理(適当に健全な会計処理)とは、将来起こりうる可能性の高い不利益を考慮した会計処理のことです。収益は少なく遅めに認識し費用は大きく早めに認識するような会計処理(※ただし、予測の利益は計上せず予測される損失のみを計上する)、また、資産は小さく、負債は大きく認識するような会計処理をいいます。

企業会計原則の一般原則については以下の記事で詳しく取り上げていますので、こちらも参照ください。

保守主義の原則はなぜ必要なのか

保守主義の原則は、企業活動の継続のために必要とされています。

将来起こりうる企業の財政状況に不利な影響を考慮せずに実態よりも充実した決算書になってしまうと、予測される不利な影響が発生したときに、急激に企業の財政状態が悪化してしまうおそれがあります。

保守主義の原則では、このような財政状態の急激な悪化を招かないために、不利な影響も考慮して、より慎重な会計処理を求めているのです。

保守主義の原則の具体例とは

保守主義の原則の具体例として、代表的なものに次のようなものがあります。

    • 定額法から定率法に減価償却方法を変更する
      定額法よりも定率法の方が費用に計上できる額が大きいときは定率法を選択して費用の額を大きくする。
    • 固定資産の耐用年数を短縮する
      合理的な範囲内で耐用年数を見直し短縮することによって計上する費用の額を大きくする。
      (※なお、法人税法上の手続きとして耐用年数短縮のためには事前承認申請が必要。所得税法でも法定耐用年数に比べ著しく短縮となるときは申請承認が必要です。)
    • 貸倒引当金の額を増やす通常は貸倒実績率を用いて算定する
      一般債権(経営状態に重大な問題がない債券)について、外部環境の変化で信用リスクが著しく変化した場合には、貸倒実績率を補正することで、負債の額と費用の額を大きくする。
    • 延資産の費用計上資産計上も認められる
      繰延資産創立費など)を資産に計上せずに全額を費用の額として計上し費用の額を大きくする。
    • 棚卸資産の簿価の切り下げ(低下基準の採用)
      棚卸資産の品質低下や陳腐化、市場の需給変化などにより棚卸資産の簿価が低下したときは、正味売却価格(売価から見積追加製造原価や販売直接経費を差し引いた額)などの合理的な価格により棚卸資産を評価し、簿価を切り下げることによって資産の額を小さくし、切り下げ分を費用に計上する。

保守主義の原則のデメリットとは

保守主義の原則のデメリットは、保守主義が行き過ぎて過度な保守主義となってしまうことです。

過度な保守主義とは、一般に公正妥当と認められる範囲を超えた保守主義をいいます。過度な保守主義となると、企業の財政状態や経営成績に関わる内容が不当にゆがめられてしまい、真実性の原則に反する結果となりかねません。

真実性の原則とは、同じく一般原則に定められているもので、不当にゆがめられていない真実な決算書の作成を要請する原則です。

資産の耐用年数を合理的な計算で算出したものよりもさらに短くするなど、合理的な範囲を超えて不当に多くの費用を見積もるような過度な保守主義は利害関係者の経済的な判断を誤らせる可能性もあります。真実性の原則にも反しますので注意しましょう。

保守主義の原則は一定のときに保守的会計処理を求める原則

保守主義の原則は、収益は少なく時期は遅く、費用は大きく時期は早く計上するような保守的な会計処理を求める原則です。原則が適用されるのは、企業の財政状況に不利な影響が及ぶものと推定されるときに限られます。

保守的な会計処理は企業の継続性のためにも重要なものではありますが、合理的な範囲を超えた過度な保守主義は真実性の原則に反するため注意が必要です。

よくある質問

保守主義の原則とは?

企業の財政状態に不利な影響があるような場合に保守的な会計処理(収益は少なく費用は大きくなる会計処理など)を要請する原則です。詳しくはこちらをご覧ください。

保守主義の原則の具体例は?

定額法から定率法への変更、耐用年数の短縮、貸倒引当金の増額、繰延資産の費用計上、棚卸資産の簿価切り下げ、などがあります。詳しくはこちらをご覧ください。


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