- 更新日 : 2024年9月27日
仮決算とは?予定申告との違いや中間申告のメリット、選び方を解説
仮決算とは、中間申告の方法の1つです。中間申告には予定申告もあり、どちらを選ぶかは自由ですが、それぞれどちらが適した方法なのかしっかりと理解しておく必要があります。
この記事では、仮決算の概要とともに中間申告が義務付けられている事業者や仮決算と予定申告のどちらを選ぶべきかなどについて解説します。
目次
仮決算とは?
仮決算とは、中間申告の方法の1つです。ここでは、中間申告について解説しつつ、仮決算の詳しい内容を紹介します。
まずは、中間申告について解説しましょう。法人においては事業年度ごとに確定申告を行い、法人税の申告と納付を行う必要があります。また、消費税の申告・納付義務がある課税事業者の場合は、消費税の確定申告も行わなければなりません。
これら法人税と消費税には、中間申告という制度があり、前期の税額が一定の金額を超えた場合は、中間申告を行わなければなりません。中間申告とは、単に言うと「税金の前払い制度」のことを意味し、事業年度の途中でその期の税金の一部を納めることです。
中間申告の方法は2つあり(次項参照)、そのうちの1つが仮決算です。仮決算では、中間申告の対象期間を1課税期間とみなして仮の決算を行い、その仮決算の結果に基づいて申告納付をします。
仮決算の対象期間は、中間申告の回数によって異なるため、注意が必要です。たとえば、法人税の中間申告は年1回のため、対象期間は事業年度開始の日から6ヶ月間となります。
また、仮決算では決算処理をすることになるため、それなりに労力や手間が生じる点が難点です。なお、法人税の中間申告では、仮決算に基づく納税額が、予定納税の計算式で算出した税額を超える場合、仮決算方式は選択できないため、注意しましょう。また、消費税の中間申告において仮にマイナスになった場合でも、税額の還付を受けることはできません。
中間申告の種類
中間申告には、次の2種類の方法があります。
- 仮決算
- 予定申告
どちらを選択するかは、納税者の任意です。選択する方法に対して事前申請などは不要で、毎年変えられます。
それぞれの方法は、以下のとおりです。
- 仮決算:事業年度開始から6ヶ月間を1事業年度とみなして中間決算を行い、それに基づいて、中間申告を行う方法
- 予定申告:前事業年度の法人税額等の半分を、半期経過後から2ヶ月以内に納税する方法
それぞれの違いについては次項で、解説します。
仮決算と予定申告の違い
中間申告のために仮決算を行うと、確定申告と同様に書類作成といった手間がかかることになるため、そういったことが必要ない予定申告が選ばれることが多いようです。
一方、前期に多額の利益が出て多く納税したものの今期は経営が苦しい場合や前期の消費税額が特別多かった場合などは、仮決算のほうが、資金繰りが楽になります。
それぞれの違いは、以下の表のとおりです。
種類 | 仮決算 | 予定申告 |
---|---|---|
申告方法 | 確定申告と同じように、決算書類などを添付して提出する | ・予定申告書を提出 ・申告期限までに予定申告書を提出しないと、前年度実績による中間報告があったものとみなされるが、申告期限までに予定納付が必要 |
計算方法 | 事業年度開始から6ヶ月間を1事業年度とみなして中間決算を行い、それに基づいて、中間申告を行う方法 | 前事業年度の法人税額等の半分を、半期経過後から2ヶ月以内に納税する方法 |
申告不要の場合 | ・予定納付額10万円以下は申告不要 ・新規設立法人などで前事業年度の確定法人税額がないケースなど |
中間申告が義務付けられている事業者は?
中間申告書の提出が必要な事業者は、前年度の税額が一定の金額を超えた事業者です。新設法人においては前年度実績が存在しないため、原則として中間申告は必要ありません。法人税、消費税で具体的な対象が異なるため、以下ではそれぞれ解説します。
<法人税>
原則として、前事業年度の法人税額が20万円を超えた場合、法人税の中間申告が必要です。法人税の中間申告の対象は、株式会社や合同会社といった普通法人で、NPO法人や公益法人などは中間申告を行う必要はありません。
なお、中間申告が必要な法人には税務署から中間申告書が送られてくるため、対応するようにしましょう。
<消費税>
中間申告の対象となるのは、原則として、次のとおりです。
- 個人:前年の地方消費税を除いた確定消費税額が48万円を超えている場合
- 法人:前事業年度の地方消費税を除いた確定消費税額が48万円を超えている場合
消費税の場合は、前年度の確定消費税額に応じて、それぞれ中間申告の回数と予定納税額が異なります。詳細は、以下の表のとおりです。こちらも、税務署から対象者には中間申告書が送られてきます。
前事業年度の確定消費税額 | 中間申告回数 | 中間納付税額 |
---|---|---|
48万円超~400万円以下 | 年1回 | 前事業年度の確定消費税額の12分の6 |
400万円超~4,800万円以下 | 年3回 | 前事業年度の確定消費税額の12分の3 |
4,800万円超 | 年11回 | 前事業年度の確定消費税額の12分の1 |
なお、消費税では任意の中間申告制度が導入されています。本来、前事業年度の確定消費税額が48万円以下であれば、消費税の中間申告義務はありません。しかし、「任意の中間申告書を提出する旨の届出書」を所轄の税務署に提出すれば、中間申告が可能になる制度です。
仮決算と予定申告のどちらを選ぶべき?
では、仮決算と予定申告のどちらを選ぶべきなのでしょうか。ケースによって異なるため、それぞれ詳しく見ていきましょう。
大まかな納税額のイメージは次のようになります。
例:事業年度:4月1日〜3月31日とする法人。前年の法人税額が240万円。4月1日~9月30日までの仮決算による、今年度の上期の計算納税額が100万円とすると、下記のようになります。
- 前期実績に基づく予定申告を選んだ場合の中間納付額:120万円
- 仮決算を選んだ場合の中間納付額:100万円
- みなし申告:120万円
※みなし申告とは、中間申告を行うべき法人が中間申告を期限までに行わなかった場合に、申告期限において中間申告書の提出があったものとみなされるもの
仮決算を選ぶべきケース
仮決算を選ぶべきケースとしては、前期に多くの利益が出て多く納税したものの今期は経営が苦しいという場合や、前期の消費税額が特別多かった場合などが当てはまります。
この場合は、仮決算による中間申告を選んだほうが、資金繰りが楽になるでしょう。
予定申告を選ぶべきケース
中間申告のために仮決算を行うと、確定申告と同様に書類作成などの手間やコストが発生します。また、中間申告で納付した税金は確定申告で精算されるため、手間やコストをかけたくない場合は、予定申告を選ぶとよいでしょう。
消費税と法人税の申告方法を分けるべきケース
仮決算・予定申告による中間申告は、法人税と消費税ごとに選択ができます。仮決算・予定申告による中間申告は、還付金利の得失と資金繰り、消費税還付と設備投資の組み合わせなど、税務申告上、戦略的に検討する必要があるため、注意しましょう。
以下は、有利になるケースの事例を紹介します。状況を分析しながら良い選択をできるようにしましょう。
■法人税:予定申告が有利なケース
前期は特別利益などがあって業績が良い。しかし、当期は欠損または課税所得が半分以下となる場合
■法人税:仮決算による中間申告が有利なケース
上期の業績は良い。しかし、通期では欠損または上期の所得以下となる場合
■消費税:予定申告が有利なケース
当期に設備投資などによる課税仕入の増加、著しい課税売上の減少などがある場合
■消費税:仮決算による中間申告が有利なケース
当該申告期間の課税売上は多いものの、通期では課税仕入の増加などにより、消費税の還付が見込まれる場合 など
仮決算の手順
法人税では、年1回中間報告を行います。対象期間は事業年度開始の日から6ヶ月間の期間を1事業年度とみなして法人税額を計算します。
消費税では、以下の表のように申告回数や納付税額がそれぞれ異なるため注意しましょう。詳細は、以下のとおりです。
前事業年度の確定消費税額 | 中間申告回数 | 中間納付税額 |
---|---|---|
48万円超~400万円以下 | 年1回 | 前事業年度の確定消費税額の12分の6 |
400万円超~4,800万円以下 | 年3回 | 前事業年度の確定消費税額の12分の3 |
4,800万円超 | 年11回 | 前事業年度の確定消費税額の12分の1 |
法人税も消費税ともに、税務署長に中間申告書を提出します。
仮決算と予定申告の違いを理解しよう
仮決算と予定申告の違いについて解説しました。中間申告にあたってどちらの方法を選ぶかは、納税者の自由です。ただし、中間申告のために仮決算を行うと、確定申告と同じように書類作成などの手間やコストが発生するため、注意しましょう。
また、どちらが適しているケースなのかも状況によって変わります。適切な対応を取りたいのであれば、税理士などに相談して決めるとよいでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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