損益分岐点の分析と管理会計

損益分岐点は、数ある財務分析の中でも基本的な指標の1つです。経済活動を行う上で、損益分岐点の考え方を知り、損益分岐点を分析する力を付けることは非常に重要です。
今回は、損益分岐点の基本的な考え方から、実際に分析する方法と得られる情報について解説します。さらに、損益分岐点分析の活用法も紹介しますので、ぜひ自社の経営戦略にお役立てください。

損益分岐点とは何か?

損益分岐点とは、管理会計上の概念の1つであり、売上高と費用の額がちょうど等しくなる「売上高」または「販売数量」をいいます。より平易な表現をすれば、「収支がちょうどゼロになる販売状況」ということです。つまり、損益分岐点を超えた「売上高」または「販売数量」を達成すれば、収支はプラスになることを意味します。

また、損益分岐点を明らかにするための手法を、損益分岐点分析(CVP分析)といいます。「CVP」とは、それぞれC(コスト:Cost)、V(販売量:Volume)、P(利益:Profit)の頭文字であり、コスト・販売量に基づく利益を分析する手法です。

損益分岐点を計算/分析することで、得られる情報

損益分岐点は、次の公式に「費用」を当てはめることで求めることができます。

ポイントは、「費用」を「変動費」と「固定費」に区別し、当てはめる点です。

メモ

・変動費:売上高に連動して増える・減る費用
(例:材料費、アルバイトの給与など)

・変動費率:売上高に対する変動費の割合
(例:1,000円の売上高に対して変動費が600円発生する場合、変動費率は0.6)

・固定費:売上高に連動せず、一定額発生する費用
(例:工場長の月額給与、減価償却費など)

損益分岐点分析において「費用」を「変動費」と「固定費」に区分する理由は、販売を行っていなくても発生する費用(固定費)が存在するためです。

たとえば、まだ商品が1つも売れていなかった場合、売上高と変動費はゼロですが、従業員の月額給与は発生しています。固定費が従業員の月額給与のみである場合、収支をゼロにするための売上高(損益分岐点売上高)は、従業員の月額給与と同額です。

このように、損益分岐点分析を行うことで、企業・事業主が少なくともいくらの売上高を計上しなければならないのかという情報が明らかになります。

損益分岐点分析の具体的な活用法

損益分岐点分析の主な活用法は、次の3種類です。

1.事業別損益分岐点分析による、高リスク事業・低リスク事業の明確化
2.投資計画を変更した場合、業績にどのような影響を与えるかを明確化
3.利益計画達成に必要な売上高の明確化

1.事業別損益分岐点分析による、高リスク事業・低リスク事業の明確化

損益分岐点売上高は、低ければ低いほど「安全性が高い」ということを意味します。すなわち、収支をゼロにするための売上高が低ければ、それだけ投資が失敗する可能性(事業がマイナスになる可能性)は低いということです。この損益分岐点分析を事業ごとに分けて行うことで、リスクの高い事業と低い事業を明確にすることができます。

事業ごとの損益分岐点分析を行うことで、たとえば「リスクの高い事業から撤退する」ことや、「リスクの低い事業に注力する」といった意思決定を行うことが可能です。ただし、経営的な観点からは「リスクが高い事業=参入障壁が高くライバルの少ない事業」であるとも考えられるため、あくまで意思決定のための参考情報を示すものとなります。

2.投資計画を変更した場合、業績にどのような影響を与えるかを明確化

上記で示した損益分岐点分析の公式は、次のように、より細かく表すことができます。

ここで、変動費率を当初の想定よりも増加させたとすると、増加した費用を回収するために、損益分岐点売上高も増加します。損益分岐点売上高は、「販売量」と「販売価格」に分解することができ、増加した費用の回収は「販売価格を値上げすることで回収」すべきことが明らかになります。

理由
販売数量を増加させると、変動費部分の販売数量も増加してしまうため。

一方、固定費を当初の想定よりも増加させた場合は、「販売量を増やす」または「販売価格を値上げすることで回収」のいずれかを選択すれば良いことが分かります。

このように、損益分岐点分析は、投資計画を変更した場合の業績に与える影響を数値として明確化することが可能です。

3.利益計画達成に必要な売上高の明確化

損益分岐点分析は、収支がゼロになる販売状況を示すだけでなく、「このくらいの利益を達成するためには、いくつ売れば良いのか、いくらで売れば良いのか」という情報も得ることができます。上述の公式を次のように修正することで、利益に対する情報を得ることが可能です。

「変動費」「固定費」に現状(または想定)の数値を当てはめ、「達成したい利益」に目標額を当てはめることで、「達成すべき売上高」が示されます。このように損益分岐点分析を活用することで、将来計画の達成目標を明示することができます。

損益分岐点を明確にして、将来計画に役立てましょう

損益分岐点分析は、将来の予算策定や投資の意思決定に大きく貢献します。損益分岐点を計算・分析することで、「達成したい利益」に対する「達成すべき売上高」を明確にすることが可能です。

損益分岐点分析を行うためには、まず費用を変動費と固定費に区分し、明確化しておく必要があります。自社の費用を正しく区分・管理し、数値に基づいた分析を行うことで、将来計画に役立てましょう。

【監修】マネーフォワード クラウド会計

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