• 更新日 : 2024年9月6日

計上とは?記帳との違いや売上計上・仕入計上の基準、種類、流れを解説

計上と記帳の違いや、計上基準の種類などは複雑なため、実は知らないという方も多いのではないでしょうか。また、計上する際の注意点について知りたいという方も多いでしょう。

計上は基準を統一させて、正しく行わなければなりません。今回の記事では計上基準や記帳との違いについて、詳しく紹介します。

計上とは

計上とは企業が事業活動で行ったさまざまな取引の金額を、全体の金額に含めるため帳簿に記入することです。取引には種類が多くあり、売上であれば「売上を計上する」、経費であれば「経費を計上する」という使い方をします。

多くの取引における各金額を明確化して、帳簿に記入することで決算書ができあがっていくため、計上は非常に重要です。計上を行う際、取引の種類を性質ごとに分類する項目を勘定科目といい、日々の取引を勘定科目ごとに振りわけることを仕訳と呼びます。

計上と記帳の違い

計上と似た言葉に、記帳があります。「帳簿に記入する」という意味合いでは似ているため、使い方に混乱する方も多いでしょう。

しかし、計上は企業全体の金額に含めることが目的で勘定することに対し、記帳は会計処理だけでなく幅広く使用されます。通帳を記帳したり、受付で記帳したりするなど、幅広く使われるのが記帳の特徴です。

計上における発生主義・実現主義・現金主義の違い

計上は、計上するタイミングによって以下の3つの種類があります。それぞれの方法の計上するタイミングの違いを見ていきましょう。

発生主義とは

売上の収入や費用の支払いが確定した時点の日付で計上する方法です。実際の企業の販売や仕入では、掛けや手形で取引されることも多く、実際の資金のやりとりは後になることも多いです。実際にお金の移動が行われていなくても、役務提供などの取引が完了した時点で計上します。

実際のお金の動きではなく、経費の支払いなどが決まった時点で計上するため、数ヶ月に1度しか精算しないリース料や、レンタル料なども毎月の費用として引き直して計上できます。企業で採用されている会計処理のほとんどが、この方法です。建物や固定資産の取得価額を耐用年数にわたって費用化する減価償却や、個人事業主確定申告なども、この方法が採用されています。

実現主義とは

代金などの販売によって、収益や費用などが実現した時点で計上する方法が、実現主義です。資金を決済したタイミングでもなく、取引が発生したタイミングでもなく、収益を得る取引などが実現したタイミングを基準にします。

収益や費用をどこで実現したと考えるかは、業種やサービスによって異なります。たとえば一般的な卸売業の場合で採用される基準は、以下の通りです。

  • 集荷基準(商品を発送したタイミング)
  • 納品基準(販売先に商品が届いたタイミング)
  • 検収基準(販売先が商品の検収を終えたタイミング)

実現主義では、確実な収益のみを計上できる点が特徴です。発生主義では発生したタイミングで計上するため、費用にしても売上にしても多めに計上してしまう特徴があります。売上に関しては確実な収益だけを計上する必要があるため、費用は発生主義、収益は実現主義を採用するのが原則とされています。

現金主義とは

実際に現金のやり取りが行われたタイミングで計上する方法が、現金主義です。現金の取引をベースにするため一見わかりやすいですが、不都合な点もあります。代金を先払いした場合、商品の到着などが先であっても費用として計上しなければなりません。日本の商慣習では掛け取引が多くあるため、実際のお金の流れと利益が一致しないことも多いです。

そのため現金主義では、財務諸表への反映にタイムラグが生じてしまいます。タイムラグが生じると本来は利益が出ている場合でも、書面上は赤字になってしまう可能性もあります。このような現金主義の不都合な点を補うために、発生主義を使うことが主流になりました。

売上計上とは

売上計上とは、企業の事業活動による利益の源泉となる、売上金額を正しく認識して会社帳簿に計上することです。売上計上を取引ごとに実施することで、財務諸表の1つである損益計算書の収益を確定できます。収益を確定することで、その収益を生むために生じた費用を確定できます。

損益計算書は企業の一定期間(事業年度)における収益を、正確に表すことが重要です。正確な損益計算書を作成することで、株主や投資家など会社に利害のある人の判断を誤らせないようにする必要があります。また、税金の計算も損益計算書をもとに行うため、正しく納税を行うためにも正確な売上計上がかかせません。

売上計上の基準の種類

収益をいつ、どのタイミングで計上するかには、いくつかの決まりがあります。これが売上計上基準です。業種や取り扱う商品・サービスによって基準はさまざまですが、売上計上基準を設けることでルールを統一できます。

基本的には、販売先に商品が引き渡されたときに計上することがルールです。しかし、事業内容などに合わせて、個別に基準を選ぶことも可能です。ここでは、売上基準の種類を紹介します。

出荷基準

商品を出荷したタイミングで計上を行う方法です。ネットショップなどでは発送から販売先への到着までにタイムラグが生じてしまいます。顧客の都合に左右されずに、基準を統一できます。

検収基準

販売先が商品を受け取り、検収が完了した時点で計上します。修正や交換などが発生する場面の多い製造業などに向いている方法です。

検針基準

電気やガスなどの公共料金で多く採用されている方法で、検針によって販売量を確認した時点で計上を行います。販売量が一定でなく、検針が必要な業種に向いています。

使用収益開始基準

サービスなどを顧客が利用できるようになった日付を基準とする方法です。Webサービスなどで、よく利用されている基準です。

役務提供完了基準

設計契約などでよく採用される基準で、サービスなどの提供を完了した日を基準とする方法です。

工事進行基準

名前の通り、工事の進捗状況に応じて計上する方法です。長期間に及ぶ大規模な建築工事や、長期での開発になるシステム開発の現場などで採用されています。工事が完成する前に利益が実現するため、納税などにも注意する必要があります。

工事完成基準

工事が完成した段階で計上する方法です。前述の工事進行基準では工事がすべて完了していなくても収益計上が可能でしたが、工事完成基準では工事が完成するまで計上できません。

売上計上の流れと注意点

商品の販売などが完了したら、売上計上を行います。ここでは売上計上の流れと、売上計上する際の注意点を紹介していきます。

売上計上の流れ

売上計上の流れは、業種や企業によって違いがありますが、おおむね下記のような順序で計上を行います。

  1. 見積書請求書を作成する
  2. 商品を発送する
  3. 売上の仕訳をする
  4. 代金を受領する
  5. 領収書を発送する
  6. 売掛金の残高を確認する

業種にもよりますが、商品を販売する際には見積書などで価格を提示します。見積書とは正式に契約する前に発注依頼に基づいて、取引条件を記載した重要な書類です。そして実際に商品を販売した後に代金を請求する書面が、請求書です。

商品を発送したと同時に売上の仕訳を行います。この段階では代金は未入金の場合が多い

ため、売掛金として処理します。入金の確認ができたら、販売先に対して領収書を発行しましょう。入金の仕訳を行い、売掛金の残高が間違いないか確認すれば売上計上の終了です。

売上計上の注意点

売上計上する際の注意点を紹介していきます。
売掛金に注意する
商品の販売を行ったのにもかかわらず、代金を後で受け取ることを掛売りと呼びます。たとえば、飲食店などではクレジットカードによる決済も掛売りです。売掛は企業の経営状況によっては、必ずしも回収できるとは限りません。期日通りにきちんと入金されているか、常にチェックが必要です。
売上基準選びは慎重に行う
売上計上基準は一度選択すると、簡単には変えられません。そのため、計上基準の選択は慎重に行う必要があります。業種や企業によって最適な基準はまちまちなので、自社に合った基準を選択しましょう。
二重計上や計上漏れに注意する
売上計上を行う際は、二重計上や計上漏れには注意しましょう。正しい損益計算書の作成のためには、正確な計上がかかせません。公表した収益が正確でなければ、株価や資金調達にも影響します。間違いのないように、正しく計上を行いましょう。

仕入計上とは

仕入計上とは、発生した仕入取引を帳簿に記録して、決算で処理ができるように計上することです。また仕入とは、企業が販売する商品や原材料を仕入先から購入することをさします。

計上とは、個別の取引を全体の取引金額に含めることです。つまり、仕入計上は個別に企業が行った個々の仕入取引を、全体の金額に合算させて損益計算書に反映させるための処理をさします。

仕入計上の基準の種類

前述した売上にも計上基準があったように仕入計上にも、基準とするタイミングがあります。それぞれの基準について、内容を見ていきましょう。

発送基準

名前の通り、仕入先が商品を発送したタイミングを基準する方法です。実際に商品が届く前に計上することになるため、不良品などがあると修正が必要になります。発送基準は、取扱商品の多い物販などの業種で採用されています。

入荷基準

受取基準とも呼ばれ、仕入れした商品が入荷したタイミングを基準とする方法です。最もオーソドックスな方法で、在庫の管理と帳簿のデータを連携させやすい点がメリットです。

検収基準

商品の検収が終わったタイミングで、計上する方法です。3つの中では計上する時期が一番遅くなるだけでなく、検収が終わったら交換や返品などはできません。原材料や在庫などの品質を重視する場合に採用される方法です。

仕入計上の流れと注意点

売上計上と同様に、仕入基準にも注意点などがあります。ここでは、仕入計上の流れと注意点を見ていきましょう。

仕入計上の流れ

仕入業務の流れは、下記の通りです。

  1. 見積書の受領
  2. 発注書の作成
  3. 商品の検収
  4. 請求書を受領
  5. 代金を支払う
  6. 買掛金の残高を確認する

原材料や商品の仕入を行う場合、仕入先に対して見積りを依頼することから始まります。時には複数社の見積を比較して、仕入先を決めることもあるでしょう。見積書に提示された取引条件に基づいて仕入先を決めたら、発注書を提出して正式に仕入を依頼します。

仕入先から商品などが届いたら、検収を行いましょう。検収とは商品に不具合がないか、発注書通りに商品が届けられているかなどをチェックすることです。検収が完了すると仕入先から届いた請求書に基づいて代金を支払います。代金を支払った後は、買掛金の残高に不備ないかを確認しておきましょう。

仕入計上の注意点

仕入計上を行う際には、以下のような注意点があります。
買掛金に注意しよう
一般的な事業活動では、商品の引き渡しと同時に支払いをすることは少なく、買掛金が発生することが多いです。買掛金の支払いスケジュールは仕入先によってまちまちなため、個別に管理する必要があります。支払いの遅れなどが発生すると信用をなくしてしまうため、買掛金の残高や支払期日には注意しましょう。
在庫のずれにも注意する
仕入れた商品が、すべてすぐに売れれば問題ありませんが、中には在庫として残ってしまう場合も多いでしょう。そのため仕入れた年度内に販売できず、翌期に持ち越す在庫も当然出てきます。

この場合費用として計上してしまうと、売上原価の数字が正しくなくなってしまいます。そのため売れ残った在庫は棚卸資産として、翌期に持ち越さなければなりません。棚卸資産は帳簿上でも管理できますが、現物と付け合わせをして確認しておくようにしましょう。

請負の計上基準

ここまで売上と仕入の基準について説明してきましたが、建設業などの場合は工事に着手して完成するまでが長期間のため、どこで計上するか判断に迷う場合も多いでしょう。大型の工事になるほど期間は長くなり、複数の事業年度をまたぐことも珍しくありません。

建設業においては、工事進行基準が原則とされていますが工事完成基準という方法もあります。工事進行基準は工事が終了するまで売上と経費を、工事の進捗に合わせて分散して計上する方法です。「工事収益総額」「工事原価総額」「工事進捗度」という3つの数値を、厳格に管理しなければなりません。

工事完成基準とは、名前の通り工事が完了したタイミングで計上する会計方法です。工事が完了するまでに発生した費用は未成工事支出金として計上され、工事完了まで売上は計上されません。会計上の確実性が高い一方で工事が完了するまで利益が見えにくく、どんぶり勘定になってしまいがちな注意点があります。

計上時期を誤ることで発生する「期ずれ」に注意

期ずれとは、本来計上すべき年度を間違ってしまい、前期や翌期など別の年度に計上してしまうことです。事業の規模が大きくなればなるほど、売上や仕入の取引は膨大な量になるため、計上ミスにつながり、期ずれが発生してしまう可能性があります。

期ずれが発生すると、本来の売上や経費が正しく反映されず誤った利益が算出されます。そのため、税額にも影響が出てしまい、正しい納税が行えません。このような理由から税務調査では、期ずれが発生していないか厳しく見られます。

期ずれを防ぐためには、日々の計上を正しく行い、丁寧な会計処理をすることが重要です。万が一、期ずれが発生してしまった場合は、修正申告を行うようにしましょう。

計上基準を理解して正しく売上・仕入計上を行おう

計上とは企業が事業活動で行ったさまざまな取引の金額を、全体の金額に含めるために帳簿に記入することです。計上には売上計上と仕入計上があり、それぞれに計上基準に違いがあり注意点もあります。

売上も仕入も重要な財務諸表である損益計算書を作成するための、重要な会計処理です。万が一にも期ずれなどが発生してしまうと、正しい納税が行われません。計上を正しく行うためには、計上基準や注意点を理解して正しく行うことが重要です。


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