• 更新日 : 2024年8月8日

最終仕入原価法とは?棚卸資産の評価方法をわかりやすく解説!

最終仕入原価法とは、事業年度における最終の仕入価格を期末棚卸資産の評価に適用する方法を指します。会計基準における棚卸資産の評価方法に含まれませんが、法人税法上は、ほかの評価方法を選択しない限り適用されることから、中小企業で広く活用されています。

この記事では、最終仕入原価法のメリットとデメリットのほか、そのほかの評価方法である個別法、先入先出法移動平均法、総平均法、売価還元法との違いについて解説していきます。

最終仕入原価法とは?

最終仕入原価法とは、評価時点(期末時点)にもっとも近い1単位あたりの取得単価(仕入単価)を用いて、期末の棚卸資産を評価する方法です。

ただし、企業会計基準「棚卸資産の評価に関する会計基準」の棚卸資産の評価方法には定められておらず、企業会計基準上は評価方法には含まれていません。

一方、法人税法上、棚卸資産の評価方法の選定と届出を行わなかった場合は、「最終仕入原価法」を適用することとなっています。法人税法上の計算で使用されることから、実務上は、重要性の乏しい棚卸資産、上場していない中小企業において広く用いられている棚卸資産の評価方法です。

最終仕入原価法を用いた棚卸資産の評価方法は?

最終仕入原価法では、期末にもっとも近い仕入単価をもって期末の棚卸資産を評価するため、以下の図のように、期中最後の仕入単価で期末棚卸資産の額を算出します。期中の売上高に対応する売上原価は、期首棚卸資産と期中仕入高の合計から、期末棚卸資産を差し引いて算出するのが、最終仕入原価法の特徴です。
最終仕入原価法を用いた棚卸資産の評価方法

最終仕入原価法のメリットは?

最終仕入原価法のメリットは、棚卸資産の評価が簡単にできることです。期末日に一番近い仕入単価を把握すれば期末棚卸資産を評価できるため、ほかの棚卸資産の評価方法と比較すると、単純な計算ですぐに期末棚卸資産の価額が把握できます。経理にあまり時間が割けない小規模企業などに向いた方法だと言えるでしょう。

また、最終仕入原価法は、期末日にもっとも近い仕入単価を期末棚卸資産の評価に採用することから、商品単価が下落傾向にある時は、期末棚卸資産の評価額も下がります。つまり、実態よりも期末棚卸資産の評価額が低くなることから、売上原価が大きく計上され、利益が圧縮されることになります。

最終仕入原価法のデメリットは?

最終仕入原価法のデメリットは、企業会計基準において棚卸資産の評価方法にないことです。法人税法上、原則的に適用される方法であることから、中小企業などでは実務上広く使われているものの、会社の会計情報を株主などの利害関係者に広く開示する必要のある上場企業などでは適用できません。

また、最終仕入原価法が会計処理上適していないのは、価格変動の激しい商品や期間中に商品価格の大きな下落や上昇があった時、その実態を会計上反映できないことにも理由があります。中小企業においても、棚卸資産を会計上適切に評価したい時、重要性の高い棚卸資産を評価する時は、最終仕入原価法は向いていません。

最終仕入原価法以外の評価方法は?

最終仕入原価法以外にも棚卸資産の評価方法は存在します。ここでは、最終仕入原価法以外の評価方法について簡単に紹介します。

個別法

個別法は、棚卸資産ごとに取得単価を記録し、払出時には実際の棚卸資産の動きに合わせて払出価格を確定させる評価方法です。個別法を採用すると、期末棚卸資産の評価額は、実際に期末に保有している棚卸資産の取得価額の合計額になります。個別に細かく管理することから、不動産や宝石など、1点あたりの単価が高価で、個別性の強い商品に向いた評価方法です。

個別法の詳細は、以下の記事を参照ください。

先入先出法

先入先出法は、先に仕入れた棚卸資産から順に払出を行ったものと仮定し、期末棚卸資産を評価する方法です。後に仕入れた棚卸資産の単価が期末棚卸資産の価額に反映されることから、貸借対照表の棚卸資産価額を時価に近い価額で評価できるというメリットがあります。実際の商品の流れと原価配分が一致しやすいのも先入先出法の特徴です。

また、期末日に仕入単価が棚卸資産の評価額に反映される点で、先入先出法と最終仕入原価法は似ています。しかし、最終仕入原価法は期末時の棚卸資産の在庫数に関わらず、すべて期末日に一番近い仕入単価が採用されることから、先入先出法とは期末棚卸価額が異なることがあります。

先入先出法の詳細は、以下の記事を参照ください。

移動平均法

移動平均法は平均原価法の一種で、棚卸資産の受入の度に棚卸資産の残高を残数量で割って、平均単価を算出する評価方法です。受入の度に平均単価を計算することから、期中においても棚卸資産の評価を把握できます。常に単価を把握しておきたい棚卸資産の評価に適した評価方法です。

移動平均法の詳細は、以下の記事を参照ください。

総平均法

総平均法は平均原価法の一種で、期首棚卸価額と当期仕入高の合計を期首棚卸数量と当期仕入数量の合計で割って、平均単価を算出する評価方法です。当期中の総平均をもって棚卸価額を確定することから、移動平均法のように期中の平均単価の把握はできないものの、簡易な計算で棚卸資産の評価が行えます。

売価還元法

売価還元法は、棚卸資産をグループ分けし、期末の売価合計額に原価率を乗じることによって、売上原価や期末棚卸価額を算出する評価方法です。売価還元法は棚卸資産をグループ単位で評価できることから、扱う商品数が多様な小売業などで広く利用されています。

売価還元法の詳細は、以下の記事を参照ください。

参考:後入先出法

過去に採用されていた棚卸資産の評価方法に、後入先出法があります。後入先出法は、後に仕入れた商品を先に払い出したと仮定して、期末棚卸資産の評価額を算定する方法です。つまり、後入先出法だと、古い仕入単価が期末棚卸資産の評価に反映されることになります。

価格変動時において後入先出法を採用すると、時価と期末棚卸資産の評価額が大きくかけ離れてしまう可能性があること、また、期首より期末の棚卸資産の数量が少ない時に保有損益が当期に計上されてしまう問題があることなどもあり、平成22年4月以降の事業年度より廃止されました。

後入先出法の詳細は、以下の記事を参照ください。

最終仕入原価法を用いた会計処理をマスターしましょう!

最終仕入原価法は、会計基準上は棚卸資産の評価方法とされていないものの、法人税法上では採用されていることから、中小企業などの実務で広く利用されています。

また、棚卸資産の評価方法の選択と届出を行わない限り、法人税の計算では最終仕入原価法が採用されることから、大企業などにおいても把握しておきたい評価方法です。ほかの棚卸資産の評価方法と比べると、簡易的な方法なのでぜひマスターしておきましょう。

【参考】国税庁|[手続名]棚卸資産の評価方法の届出
   国税庁|〔棚卸資産の評価の方法の選定(令第100条関係)〕

よくある質問

最終仕入原価法とは?

期末の評価時点にもっとも近い仕入単価をもって、期末棚卸資産を評価する棚卸資産の評価方法を最終仕入原価法と言います。詳しくはこちらをご覧ください。

最終仕入原価法のメリットは?

期末日にもっとも近い仕入単価を把握すれば、簡単に期末棚卸資産の価額を計算できることです。詳しくはこちらをご覧ください。

最終仕入原価法のデメリットは?

企業会計基準で棚卸資産の評価方法に含まれていないことと、期中の価格変動が大きいと棚卸資産の実態を会計上適切に反映できないことです。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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