- 作成日 : 2024年11月5日
スキャナ保存のタイムスタンプは不要になった?電子帳簿保存法との関係は?
昨今、電子帳簿保存法の改正により、スキャナ保存の際にタイムスタンプが不要になると話題になっています。この改正は、企業の会計や経理業務に大きな影響を与えるものであり、詳細が気になっている担当者も多いでしょう。
本記事では、電子帳簿保存法の改正を中心に、スキャナ保存におけるタイムスタンプの役割や、今後の会計業務におけるメリット・デメリットについて詳しく解説します。
目次
電子帳簿保存法の改正によってスキャナ保存でのタイムスタンプが不要に
2022年の電子帳簿保存法の改正により、スキャナ保存に関してタイムスタンプが不要となる場合が設けられました。従来、スキャナ保存を行う際には、受領後一定期間内にタイムスタンプの付与が求められていましたが、改正法ではこの要件が緩和されました。
具体的には、以下の2点を満たす場合に限り、電子データへのタイムスタンプ付与が不要となります。
- 電子データの訂正や削除の履歴を残すことができるクラウドシステムなどを利用する
- 入力期間内にそのシステムにデータを保存する
この改正により、タイムスタンプを用いない運用が可能となり、スキャナ保存の負担が大幅に軽減されました。ただし、タイムスタンプの付与が不要となったのは上記の条件を満たした場合に限るため、導入するシステムや運用体制の整備は引き続き重要となるでしょう。
電子帳簿保存法とタイムスタンプの関係
では電子帳簿保存法とタイムスタンプの関係について見ていきましょう。電子帳簿保存法に対応するうえで、タイムスタンプがどのような役割を果たすのか紹介します。
電子帳簿保存法とは
電子帳簿保存法は1998年に施行された、国税に関わる帳簿や書類について電子データでの保存を許可する法律です。この法律では保存できる書類の種類や保存の方法など、具体的な要件を定めているのが特徴です。
一方で、電子帳簿保存法は時代ごとに改正を行っています。たとえば、2022年の改正ではタイムスタンプに関する要件の緩和や、電子取引データの保存が義務付けられるなどの変更が加えられました。
以下の記事ではより詳しく電子帳簿保存法について解説しています。電子帳簿保存法についてより詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
電子帳簿保存法におけるタイムスタンプとは
電子帳簿保存法におけるタイムスタンプは、保存された電子データの内容が変更されていないことを証明する技術です。
電子帳簿保存法では紙の書類を電子データで保存することを許可しているものの、電子データは紙と異なり、容易に複製や改ざんができるリスクもあります。そこで、保存されている電子データが改ざんされていない原本であることを証明するために、タイムスタンプの付与が求められているのです。
また、タイムスタンプは国が認めた第三者機関(TSA:時刻認証業務認定事業者)が発行しています。事業者は電子データを保存する度にTSAへタイムスタンプの発行を依頼しなければいけません。
以下の記事ではより詳しく電子帳簿保存法のタイムスタンプについて解説しています。電子帳簿保存法のタイムスタンプについてより詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
タイムスタンプの役割とは
電子帳簿保存法におけるタイムスタンプの主な役割は電子データの信頼性を担保することです。具体的には、タイムスタンプの付与により、以下の2点を証明します。
- 存在証明:タイムスタンプが付与された時点以前に、そのデータが存在していたこと
- 非改ざん証明:タイムスタンプ付与後、データが改ざんされていないこと
これら2点を第三者機関であるTSAが保証することで、電子データの信頼性を担保しているのです。
タイムスタンプの仕組みについて
タイムスタンプが電子データの信頼性を証明する仕組みとしてハッシュ関数が大きく関係します。ハッシュ関数を使用すると、電子データを固有の「ハッシュ値」と呼ばれる短い数値列に変換できます。
このハッシュ値は、同じデータからは常に同じ数値が生成される一方、1文字でも異なるとまったく異なるハッシュ値を生成するのが特徴です。そのため、一度ハッシュ値を生成した後に、電子データの内容を書き換えると、再生成時には異なるハッシュ値が生成されます。
ハッシュ値の特徴を踏まえてタイムスタンプの発行手順を見ていきましょう。
タイムスタンプの発行手順とは
事業者がタイムスタンプを発行する際は以下の手順で進められます。
1.要求 | 利用者は電子文書をハッシュ値に変換し、そのハッシュ値をTSAに送信する |
---|---|
2.発行 | TSAは受け取ったハッシュ値に正確な時刻情報を組み合わせて、タイムスタンプトークンを発行 |
3.検証 | 電子文書が改ざんされていないかを検証する際には、再度ハッシュ値を生成し、タイムスタンプトークンに記録されたハッシュ値と比較する |
電子データの内容が改ざんされるとハッシュ値の内容も変化します。そのため、電子データのハッシュ値とタイムスタンプトークンのハッシュ値を比較するだけで、タイムスタンプ生成時から内容に変更が加えられていないかを検証できるのです。
タイムスタンプを利用しない場合のメリット
要件を満たしていれば、事業者はタイムスタンプを利用する必要はありません。タイムスタンプを利用しない場合、日々の業務にてどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
メリット1:業務効率化が実現する
電子帳簿保存法の改正により、タイムスタンプの要件が緩和され経理部門や会計部門の業務効率化が実現します。
従来は書類をスキャナ保存する度にタイムスタンプを発行する必要がありました。しかし、現在では訂正・削除の履歴が残るクラウドシステムなどを利用している場合、タイムスタンプ発行の手続きを省略できるようになっています。
これにより、経理部門や会計部門では書類の管理や保存にかかる業務工程をひとつ削減できるため、業務効率が向上し作業負担も軽減されるでしょう。
メリット2:タイムスタンプを発行するための費用を抑えられる
利用するサービスや契約内容によって変動するものの、タイムスタンプを発行する際には費用がかかります。そのため、タイムスタンプが不要となれば、こうした費用を削減できます。
一回のタイムスタンプで発生する費用自体は決して高額ではありません。しかし、書類の保存が頻繁に行われる場合、タイムスタンプの発行コストは大きくなり、長期的には費用負担となります。
少しでも経費削減を目指しているのであれば、タイムスタンプの発行費用にも着目してみましょう。
タイムスタンプを利用しない場合のデメリット
タイムスタンプを発行しないデメリットとしては、システムのリプレイス時の対応に懸念が残る点です。
タイムスタンプを発行しない場合、保存している電子データのハッシュ値を生成しておらず、データの信頼性はシステム内のデータによって担保されます。そのため、別のシステムに移行する際、既存のハッシュ値を持たない電子データの信頼性を担保できなくなってしまうのです。
もしシステムをリプレイスしたとしても、元の電子データの保存期間が満了するまで従来のシステムを利用し続ける必要があるでしょう。
タイムスタンプの発行にかかる費用
タイムスタンプを発行するには、初期費用とランニングコストが必要になります。
初期費用については、タイムスタンプサービスの利用登録やシステム導入時に発生し、数千円から数万円が一般的です。また、タイムスタンプを発行するためのランニングコストは、従量制もしくは定額制で設定されています。従量制の場合、発行1回ごとに10円程度必要となります。
もしタイムスタンプを発行する事業者の方で、1ヶ月あたりの発行数が多いのならば、定額制のサービスを利用するのがおすすめです。
無料のタイムスタンプも存在するが利用には注意が必要
タイムスタンプサービスの中には、無料でタイムスタンプを提供している場合もありますが、利用には注意が必要です。
電子帳簿保存法では、認証されたタイムスタンプ事業者が発行するタイムスタンプが求められます。そのため、無料のタイムスタンプサービスでは、信頼性が認められず、電子帳簿保存法に対応できないかもしれません。
タイムスタンプ事業者を選ぶ際には価格以外にも、認定事業者であるかどうかを確認するようにしましょう。
タイムスタンプが不要な会計サービスの選び方
タイムスタンプを利用せずに電子帳簿保存法へ対応する場合「電子データの訂正や削除の履歴を残すことができる」機能を有した会計サービスを選ぶ必要があります。こうした会計サービスを選ぶ際のポイントを把握していきましょう。
導入・ランニング費用は予算の範囲内か
電子帳簿保存システムやクラウドサービスを比較する際は、導入およびランニング費用が予算の範囲内かどうかを確認しましょう。
企業の規模やシステムの複雑さに応じて異なるものの、初期費用は数十万円程度必要です。ランニングコストとしては、月額費用やシステム管理費用、メンテナンス費用、セキュリティ対策費用などが必要となり、こちらもある程度の費用が必要となります。
どういった部分で費用が発生するのかを把握し、必要となるコストをすべて合算したうえで、自社の予算と比較しましょう。
自社の業務に合った機能を有しているか
電子帳簿保存システムを選定する際は、自社の業務に合った機能を有しているかどうかを確認しましょう。そのためには、自社の業務プロセスをしっかりと把握し、必要な機能を洗い出すことが大切です。
また、現場の担当者が滞りなくシステムを運用できるように、操作性の高いUI(ユーザーインターフェース)となっているのかもポイントになります。
満足できるシステムの導入を目指すのであれば、まずは自社のニーズを把握しておくことが重要になるでしょう。
セキュリティ対策が行われているか
電子帳簿保存システムを選定する際には、セキュリティ対策が十分に行われているかを確認しましょう。企業が保管する電子帳簿や取引データは機密性が高く、これらが外部に漏洩した場合、重大な損害を招く可能性があるためです。
具体的には、データの暗号化が施されているか、アクセス制限が適切に設定されているかを確かめましょう。また、データのバックアップ体制が整っているかも重要なポイントです。
大きな問題を未然に防ぐためにも、セキュリティ対策がしっかりと行われたシステムを選びましょう。
スキャナ保存にてタイムスタンプが不要になる要件を把握しておこう
電子帳簿保存法の改正により、スキャナ保存でのタイムスタンプが不要になったことは、企業にとって業務効率化やコスト削減の大きなメリットとなります。一方で、タイムスタンプを利用しないことにより、システムのリプレイス時や法令遵守に不安が残ります。
しっかりと制度や法律の要件を守りながら、会計管理を行っていくためにも、自社に適した信頼性の高いサービスを選定する必要があるでしょう。今後も法改正は行われる可能性があるため、最新の情報を常に把握し、自社のニーズに合った対策を講じることが大切です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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