• 作成日 : 2025年1月10日

経理担当が決算を乗り切るには?決算業務の流れやチェックリストを紹介

経理の決算業務は、会社の財政状況を把握し確定させるための重要な作業です。企業の経営状態や財務状況を正確に把握するため、経理担当者は期中の取引をまとめて決算書類を作成し、納税額の確定まで行う必要があります。

本記事では、決算業務の基本的な流れから、経理担当者が実践できる効率化のポイントなどについて詳しく解説します。

経理の業務における決算とは

決算は、企業の財政状況を把握するための年次業務です。 経理担当者は日次・月次・年次といった異なる周期で業務を行いますが、その中でも決算は年次業務に分類されます。上場企業では四半期ごとの報告が求められる一方、非上場・中小企業では年次決算のみが一般的です。

経理の業務内容

経理の主な業務は、企業活動で発生するお金の流れを記録し、管理することです。この業務の中には日々の取引の記録や集計、月次・年次単位での決算業務が含まれます。

決算業務は企業の財務状況を正確に把握し、経営陣や利害関係者に情報を提供するために欠かせないもので、重要度が高い業務です。

ここで、経理の業務を日次・月次・年次に分けて詳しく見ていきましょう。

日次業務

日次業務では、現金や預金の出納管理、取引伝票の作成と記帳、経費精算などを行います。売掛金買掛金の処理、小口現金の確認、銀行口座の残高照合などが含まれます。

こうした日々の記録が正確であることは、後に行う月次や年次決算の基礎となるため非常に大切です。また、伝票や書類整理といった細かな作業も含まれるため、正確性と迅速さが求められます。

月次業務

月次業務では、その月に発生した取引を集計し、月次決算書を作成します。これには売上や仕入れの確認、給与計算と社会保険料の計算・納付が含まれます。

また、源泉所得税や住民税などの税金納付も毎月行われる業務です。さらに、月末には試算表を作成し、経営陣へ報告する、といった業務もあります。

年次業務

年次業務の中では、特に年次決算が重要度の高い業務といえます。また、中間申告や年末調整といった税務関連業務も年次業務です。さらに株主総会用資料の準備、法定調書提出などもあるなど年次業務は多岐にわたります。

上場企業の決算業務

上場企業の決算業務は、会計基準に基づき株主や投資家に透明性の高い財務情報を開示することが求められます。四半期決算や年度末決算を行い、貸借対照表損益計算書株主資本等変動計算書、キャッシュ・フロー計算書を作成します。

こうした財務諸表は、有価証券報告書決算短信として金融庁や証券取引所に提出されるため、不備は許されません。また、監査対応や連結決算も重要な業務です。連結決算では親会社と子会社の財務情報を統合し、グループ全体の財務状況を明らかにします。

さらに、内部統制報告書の作成や株主総会での報告資料準備も含まれます。このように上場企業の決算業務は複雑になりがちであり、高度な専門知識と正確性が求められます。

非上場・中小企業の決算業務

非上場企業や中小企業では、主に税務申告や経営管理を目的とした決算業務が行われます。決算は年次決算のみが一般的であり、月次決算や四半期決算が行われることはあまり多くありません。

年次決算業務には損益計算書や貸借対照表などの基本的な財務諸表の作成が含まれますが、有価証券報告書や四半期報告書の提出義務はありません。さらに監査も任意であるため、上場企業に比べて簡素化された手続きになるのが一般的です。

ただし、法人税消費税などの正確な計算と申告は必須で、正確性が求められることは上場企業と変わりありません。

決算業務の流れ

決算業務は、企業の財務状況を正確に把握し、税務申告や経営判断に役立てるために行われます。主な流れとしては、棚卸、決算整理、決算書の作成、税金の計算、申告・納税という5つのステップがあります。それぞれの工程で正確性が求められるため、計画的に進めることが大切です。

棚卸

決算業務における棚卸とは、期末時点での在庫や資産を確認し、その金額を確定する作業のことです。商品や製品、原材料などの在庫を実際に数え、それを帳簿上のデータと照合します。

この作業は売上原価や利益率を正確に計算するために欠かせません。また、不良在庫や滞留在庫がある場合には、評価損を計上する必要があります。棚卸は手間がかかる作業ですが、正確な財務諸表を作成するためには必ず実施するべきといえます。

決算整理

決算整理は、期中に記録された取引データを基に必要な修正仕訳を行い、正しい財務諸表を作成するための準備段階です。減価償却費引当金の計上、未収金や未払金の調整などが含まれます。

また、費用や収益を適切な期間に振り分け、会計基準に則った正確な損益計算書と貸借対照表を作成します。この工程ではミスが許されないため、慎重な確認作業が求められます。

決算書の作成

決算残高を確定させ、賃借対照表と損益計算書、キャッシュ・フロー精算書などの決算書類を作成します。

なお財務諸表のうち、キャッシュ・フロー精算書は中小企業においては任意です。

税金の計算

決算書類に基づいて、法人税や住民税、事業税、消費税など各種税金額を計算します。中間納付済みの税額との差額調整作業も必要です。

申告・納税

法人税や消費税など各種税金についての申告書類を作成し、所轄税務署へ提出します。その後、確定した納付額を期限内に支払いましょう。税金の申告や納税は期限厳守が重要であり、不備がある場合にはペナルティが発生することもあります。

決算期を乗り切るために経理担当が準備できること

決算業務は負担が大きいからこそ、準備はしっかりとしておく必要があります。事前にできる対策としては、以下の4点が挙げられます。

それぞれ見ていきましょう。

帳簿の一致をこまめに確認する

経理担当者は日々の取引記録の正確性を維持するため、現金や預金の残高照合を定期的に行う必要があります。特に、売掛金や買掛金の未収・未払いの確認、仮払金や仮受金の精算状況の確認を怠らないようにしましょう。

また、固定資産の減価償却費計上や引当金の設定など、決算時に必要となる処理を月次で行っておくことで、決算期の作業負担を軽減できます。

前倒しできる作業は先に進める

決算業務を効率よく進めるためには、早期に着手できる作業から取り組むことが大切です。決算資料作成に必要な仕訳の勘定科目を事前に入力したり、必要なデータを収集したりするなど、できることから準備作業を進めておきましょう。

また、業務フローを整理し、課題を明確にしておくことで、人的ミスの削減や業務の標準化にもつながります。

未入金の売掛金は早めに回収する

売掛金の回収は決算期の重要な作業のひとつです。未回収の売掛金があると、決算書の作成に影響を与えるだけでなく、企業の資金繰りにも影響を及ぼす可能性が否定できません。

そのため、取引先への請求書の発行や入金確認を適切に行い、未回収の売掛金については早めに回収するよう努めます。

仮の勘定科目を無くす

決算書類作成の前段階で行う決算整理では、仮勘定や未確定の勘定科目を適切な科目に振り替える必要があります。特に、現金や預金の残高照合、売上原価の算定、減価償却費の計上など、重要な項目については入念にチェックしましょう。

また、期をまたいだ未収・未払い、前受・前払いの取引についても、適切な会計処理を行う必要があります。

決算業務を効率化するポイント

決算業務は経理担当者にとって難易度が高く作業量が多い業務の一つですが、適切な準備と効率化により、その負担を軽減することが可能です。ここでは、決算業務を効率的に進めるための具体的なポイントを紹介します。

月次決算を正確に行う

年次決算は重要度が高くミスが許されないうえに、作業量も多いため決算時期の経理担当者の負担はかなり大きくなります。

業務負担を減らし、年次決算がスムーズにできるよう、月次決算を行うようにしましょう。月次決算の実施に法的義務はありませんが、月次決算の実施によって毎月正確な帳簿管理を行うことで年次決算時の作業効率が上がります。

また、月次での確認により、取引や支払いの漏れ、仕訳の誤りなどの早期発見も期待できるでしょう。

会計システムを導入する

会計システムの導入により、日々の経理業務を自動化し、正確な帳簿管理が可能になります。特に請求書業務や経費精算業務などの定型作業を効率化することで、決算時期の作業負担を軽減できるのは大きなメリットでしょう。

システム導入により、計算や記帳、書類作成の作業スピードが向上し、ヒューマンエラーも減少します。

決算期の経理業務のアウトソーシングを検討する

経理担当者が少ない企業では、決算期の業務をアウトソーシングするのもひとつの方法です。特に繁忙期に限定した部分的なアウトソーシングを活用することで、コストを抑えながら業務の負担軽減が可能になります。

また経理業務や決算業務の専門家に委託することで、正確性と効率の向上も期待できるでしょう。

既存の業務フローやスケジュールを再検討する

決算業務の効率化には、業務フローの見直しも重要です。各フローの担当者やコスト、工数など、ボトルネックとなっている要素を再確認し、改善点を見つけることで、より効率的な経理業務の遂行が可能になるかもしれません。

また、提出書類や納税の期限から逆算して作業スケジュールを立て、余裕を持った余裕を持たせておくことも求められます。

経理担当が使える決算業務チェックリスト

決算業務を確実に進めるためには、チェックリストの活用が効果的です。以下に主要な確認項目をまとめました。

【決算前チェック項目】

  • 決算準備段階のチェック項目
  • 帳簿や証憑書類の整理状況
  • 銀行残高と帳簿残高の一致確認
  • 売掛金・買掛金の残高確認
  • 固定資産の実在性確認
  • 減価償却費の計算準備
  • 引当金計上の検討資料準備
  • 税金の納付状況確認
  • 仮勘定の整理状況

【決算作業段階のチェック項目】

  • 決算整理仕訳の実施
  • 減価償却費の計上
  • 引当金の計上
  • 経過勘定項目の整理
  • 税金の計算
  • 決算書類の作成
  • 税務申告書の作成
  • 株主総会関連資料の準備
  • 決算後のチェック項目
  • 決算書の承認取得
  • 税務申告書の提出
  • 納税手続きの完了
  • 決算関連書類の保管
  • 次期への引継ぎ事項の整理

決算業務を乗り切るためにできることは多々ある

決算業務は負担の大きい作業ですが、避けて通ることはできない重要な業務です。日々の経理業務を正確に行い、早期から準備を始めることで、決算期の負担を軽減できるでしょう。

また、会計システムの活用や外部専門家との連携も、決算業務を効率化するためのひとつの手段といえます。あらゆる方法を活用し、決算期を乗り越えましょう。


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