- 更新日 : 2024年9月6日
与信管理システムとは?メリットや選び方のポイントをわかりやすく解説
与信管理システムとは、取引先の与信に関わる情報を一元管理できるシステムのことです。取引のリスクを抑えるため、取引先の情報を収集し、安全に取引できる相手かを判断します。与信管理業務の効率を高め、業務の負担を軽減できることが利点です。
本記事では、与信管理システムの概要や主な機能、選び方をわかりやすく解説します。
目次
与信管理システムとは
与信システムとは、取引先の財務状況や信用枠などを一元管理するシステムのことです。
与信とは、取引先の信用情報や支払能力を調査し、取引ができる相手かどうかを確認することを指します。
企業間取引では、先に商品・サービスを提供し、後日代金を請求する掛取引が一般的です。このような掛取引では、取引先の支払能力が低い場合に代金を回収できなくなるリスクがあります。
そのため、企業はあらかじめ取引相手に支払能力があるかを調査し、信用を与える「与信」を行って取引に入るのが一般的です。
与信管理業務は、取引先から売掛金を回収できなくなるリスクを最小限に抑えることを目的とした活動であり、与信管理システムは、このような与信管理業務を効率化する役割があります。
与信管理システムの主な機能
与信管理システムには、与信管理業務をスムーズに行うための機能が搭載されています。
代表的な機能をみていきましょう。
与信情報の収集・管理
与信管理システムは、与信判断の基準となる情報を自動で収集する機能が搭載されています。企業サイトや官報、業界専門メディア、SNSなど、さまざまな媒体から取引先の財務情報・業績など与信審査に必要な情報を自動収集する機能です。
収集した情報は一元管理され、与信審査をサポートします。与信に関わる膨大な数のデータベースを提供できるサービスも多く、与信管理の大幅な効率化が可能です。
与信管理規程の管理
与信管理システムの導入により、与信管理規程の作成ができます。与信管理規程とは、与信管理に関する内部管理の方針を定めた社内規程のことです。
与信管理のルールを定めなければ、社員ごとに取引先の審査基準にばらつきが出て、正確な審査ができません。そのため、与信管理規程の作成が不可欠です。
与信管理規程の作成には膨大な手間がかかりますが、与信管理システムを活用することで、作成にかかる工数を大幅に減らせます。
取引先のスコアリング
与信管理システムには、取引先のスコアリング機能も搭載されています。過去の取引履歴や財務データなどをもとにスコアを数値化して信用格付を行うため、取引先の信用状況が一目でわかります。
スコアによって与信限度額の設定や取引を制限するなどの判断が容易になり、信用度に応じた対応やリスク管理が可能になるでしょう。
企業情報のモニタリングとアラート
与信管理では、取引後も取引先の経営内容を定期的にチェックする事後管理が欠かせません。
与信管理システムには、取引先の企業情報や財務情報などを自動でモニタリングし、スコア変動や未払いリスクが高いなどの状況を発見してアラート通知を行う機能もあります。
早期対応が可能になり、リスクの軽減につながるでしょう。
与信限度額の算定
企業の詳細な情報を収集できても、正確な与信限度額を設定できなければリスクが高まります。しかし、与信限度額の設定には専門的な知識が必要です。
与信管理システムでは、スコアリング機能による取引先の信用格付や月商などに応じ、社内基準に沿った取引金額の目安・上限を算出する機能もあります。
取引先ごとに与信限度額を算定できることで、与信リスクを抑えられるでしょう。
与信システムを導入するメリット
与信管理システムの導入には、与信管理の効率化や円滑な意思決定など、さまざまなメリットがあります。
詳しくみていきましょう。
与信管理の効率化
与信管理システムの導入により、与信管理業務を効率化できることがメリットです。与信管理業務は、大きく分けて信用調査と与信限度額の設定があり、すべての作業を社内で行うには多くの労力がかかります。人員の確保も必要になるでしょう。
与信管理システムを導入すれば、これらの業務を自動化できます。情報の自動収集やスコアリング機能により、管理業務の大幅な効率化が可能です。
さらに、入手できる情報の質と量が上がるため、判断の精度も高まるでしょう。
情報の一元化による円滑な意思決定
従来の与信管理業務では、自社で独自にデータを収集して分析するため、膨大な時間がかかるという問題がありました。判断基準が統一されていないという課題も抱えています。
しかし、与信管理システムを導入すれば、取引先の状況を一元管理できるため、円滑に意思決定ができる点はメリットです。
信用できるデータベース情報をもとにリスクを同一基準で評価でき、スピーディな与信判断を行えます。
リスクの高い取引相手のスクリーニング
与信管理システムでは、リスクの高い取引相手も事前にスクリーニングができるというメリットもあります。
自動モニタリングやアラート通知などの機能が搭載されたシステムであれば、事後管理の手間をかけずに迅速なリスク対応も可能です。
問題が発生した場合でも素早く把握し、リスクの高い取引先との取引を未然に防げます。
反社会的勢力の除外
与信管理システムには、反社チェックの機能を持つものもあり、反社会的勢力と関わりのある企業との取引を避けられます。
反社会的勢力は表面では実態がわからないことも多く、見抜くことが難しいという実情があります。
与信管理システムの反社チェック機能を利用すれば、専門調査会社のデータベースを照会し、信頼度の高い反社チェックが可能です。
与信管理システムの選び方のポイント
自社に合う与信管理システムを選ぶためには、いくつかチェックすべきポイントがあります。
次の点に注目してみましょう。
- 与信情報の精度の高さ
- セキュリティの強さ
- 海外の与信管理に対応可能か
それぞれ、詳しく解説します。
与信情報の精度の高さ
与信判断や与信限度額の設定は、未回収のリスクを避けるために重要な項目です。そのため、導入する与信管理システムは、提供される与信情報の精度が高く、正確性があるものでなければなりません。
精度を判断するには、データベースの量や信頼性、格付・スコアリングはどのような手法で行われているかなどのチェックが必要です。
セキュリティの強さ
与信管理システムには取引先の情報が多く蓄積されているため、不正アクセスや情報漏洩のリスクには十分な注意が必要です。
サービスの公式サイトでは、情報セキュリティポリシーや個人情報保護方針が掲載されています。選ぶ際はこれらの情報を必ず確認し、十分な体制を整えているか、安全性が高いサービスかどうかを見極めましょう。
海外の与信管理に対応可能か
海外の企業と取引している、もしくは今後海外進出を考えている企業は、海外の与信管理にも対応しているかをチェックしましょう。
国内取引と海外取引は商習慣や文化、リスクが異なるため、海外企業を評価する指標は国内企業と大きく異なります。海外企業との取引におけるリスクを抑えるためには、海外取引の与信管理に対応したシステムがおすすめです。
おすすめの与信管理システム・ツール
与信管理システムはさまざまなタイプが提供されており、特徴や強み、ターゲットはそれぞれ異なります。
ここでは、与信管理システムのおすすめを3つ紹介します。
SMART
SMARTは、インターネットを利用した一貫性のあるワンストップサービスを提供する与信管理システムです。三井物産のノウハウを凝縮した精度の高い与信判断ロジックを使い、利便性や迅速性、効率性を兼ね備えたサービスを提供します。
「オンライン上で迅速かつリーズナブルに信用情報を取得したい」「与信情報の精度を重視したい」という方におすすめです。
海外取引先の与信管理にも対応しており、海外の販売先・調達先を管理したい方、国内外の企業を統一指標で管理したい方にも向いているシステムです。
アラームボックス
アラームボックスは、AIや与信審査のプロの目線を使い、与信管理業務を効率化させるクラウドサービスです。与信判断に関わる情報を、クラウド上でまとめて管理できます。
新規取引先を調べる「パワーサーチ」と既存取引先を調べる「モニタリング」、取引に保証をかける「ギャランティ」により、取引の開始から売掛金の回収まで、与信管理に関わるすべての業務を効率化できます。
売掛金の保証がつくため、未回収のリスクを抑えたい方におすすめです。
e-与信ナビ
e-与信ナビは、取引先ごとの与信限度額が瞬時にわかる与信管理システムです。国内最大級である約540万社超のデータベースから取引先を検索し、与信判断に必要な指標を素早く提供します。
コンサルティングサービスのポートフォリオ分析を利用して与信リスク管理状況を確認でき、改善に向けてのアドバイスを受けることも可能です。
与信限度額の算出では、自社の経営内容と取引先の信用力の両方を分析するため、あらゆるリスクを回避した安全な限度額がわかります。
与信管理業務の精度を高め、倒産のリスクを回避したい方に向いているシステムです。
与信管理システム導入時の注意点
与信管理システムを導入する際は、費用対効果や既存システムとの連携もチェックが必要です。
ここでは、与信管理システム導入時の注意点を解説します。
コストパフォーマンスを考慮する
システムを導入する際、利用する業務の範囲や利用件数によっては料金が高額になるため、費用対効果があるのかチェックが必要です。
システムの料金は、機能やオプションの有無によっても異なります。本当にコストパフォーマンスがあるかを確認するためには、まず導入の目的を明確にすることが必要です。
目的が明確でないままシステムを選ぶと、利用しない機能までついた高額なシステムを選んでしまう可能性もあります。
「取引先の信用情報を一元管理して、リスクを抑えたい」「情報の収集や与信判断の自動化で業務を効率化したい」といった目的を明らかにすることで、本当に自社にとって必要な機能は何かがわかります。
自社に必要な機能が搭載されているかを基準にすれば、コストパフォーマンスの高いシステムを見つけられるでしょう。
なお、コストパフォーマンスは長期的な視点で考えることが大切です。初期費用やランニングコストが高額でも、長期的に考えると、リスクを抑えて損失を回避し安全な取引を継続できるというメリットがあります。「高い費用を投じても将来的に回収できるか」という長期的な視野で、コストパフォーマンスを検討しましょう。
利用中のシステムとの連携やカスタマイズ性をチェックする
与信管理システムを選ぶ際は、既存システムと連携できるかをチェックすることも大切です。既存システムとの連携ができないと情報の一元管理が難しくなり、システム導入のメリットをあまり得られません。
また、自社の業務フローに合わせてカスタマイズできるかどうかも重要です。特定の業務プロセスに合わせて機能の追加や設定の変更が簡単にできるシステムであれば、事業の成長に合わせて柔軟に変更でき、システムを交換するなどのコストを削減できます。
与信システムの運用フローを作成する
新しいシステムを導入することで、これまでの業務手順は大きく変わります。そのため、システム導入後の運用フローの作成が必要です。
フローの作成後は社員に早くシステムに慣れてもらうため、研修を開催するなど教育体制を整えましょう。
導入前に、社員への説明も必要です。事前の説明もないまま導入して今日から業務フローが変わるといわれても、社員は困惑してしまいます。システムを職場に根づかせるには、社員の理解と協力が欠かせません。
システムに馴染めない社員を支援するため、サポート体制も必要になるでしょう。
与信管理システムで取引の安全を高めよう
取引の安全を確保するために与信管理業務は重要ですが、情報収集と与信判断には手間や労力がかかります。与信管理システムを導入すれば、取引先の情報を自動で収集でき、迅速に高精度な与信判断が可能です。
システムにより精度の高い与信管理ができれば、取引先の倒産などによる未回収リスクも抑えられるでしょう。
システムを導入する際は、導入の目的を明確にし、自社に必要な機能が搭載されているか、コストパフォーマンスは高いかもチェックしてください。
安全に取引するために、与信管理システムを上手に活用しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
経費精算規定(ルール)作成のポイントや注意点
経費精算規定(ルール)とは、経費精算の上限や経費精算の基準などを定めた社内規定です。社員の経費精算の公平性などを確保するためにも、社内で経費精算規定を作成するのが望ましいといえます。この記事では、経費精算規定の重要性と規定によくある項目の紹…
詳しくみる交通費の経費精算(交通費精算)とは? 定期区間は精算できる?
取引先への訪問、社外での研修、支店間の移動など、あらゆる場面における従業員の移動には交通費が発生します。業務上必要な交通費を従業員が支払った場合、どのような基準で経費精算できるのでしょうか。交通費の経費精算と、旅費交通費や通勤費との違い、領…
詳しくみる電子記録債権と電子記録債務の違いは?仕組みや仕訳・勘定科目も解説
電子記録債権・電子記録債務とは、電子記録によって発生・譲渡される金銭債権・債務のことです。債権債務をデジタル管理する手法は、従来の紙の手形や金銭債権に代わる新しい決済手段として導入が増加しています。 本記事では、電子記録債権と電子記録債務の…
詳しくみる売掛金の消滅時効は何年?中断・更新措置や時効成立を阻止する方法も解説
売掛金の債権には消滅時効があり、新民法のもとでは5年で消滅します(旧民法で売掛金の消滅は2年)。時効の完成を阻止するためには、時効の更新や完成猶予のための措置が必要です。内容証明郵便で催告書を送る方法でも、時効の完成を猶予できます。 本記事…
詳しくみる継続課金システムは2種類ある!それぞれの特徴~決済方法まで解説
サブスクリプションや月額課金と呼ばれる、継続課金システムを利用したサービス提供は、中長期に渡って安定した定期収入が見込めるため、導入を検討する企業も多いでしょう。 本記事では、利用者からも企業からも人気の継続課金システムについて、種類や導入…
詳しくみる経費精算で税金はどう扱う?節税のポイントや課税・非課税の対象を解説
経費精算における税金を正しく理解すると、適切に処理ができるため、節税にもつながります。ただし、経費精算には支出の内容に応じた課税と非課税の判断や、消費税の仕入税額控除など、注意するべき点があります。 本記事では、経費精算の税金について、節税…
詳しくみる