- 更新日 : 2024年8月8日
即時償却も可能!中小企業投資促進税制でかしこく節税
「中小企業投資促進税制」という制度をご存知ですか?この制度は、設備投資をおこなう中小企業の利益率アップを図るために導入された減税策です。条件が合えば、より高い節税効果が期待できる即時償却をおこなうことも可能なので、ここで解説する制度の概要をチェックしておきましょう。
中小企業投資促進税制とは?
中小企業投資促進税制は、設備投資にかかったお金を「特別償却」として費用計上することや、一定の税額控除を受けることができる制度です。基本的な「通常措置」の他、要件を満たせば即時償却を適用できる「上乗せ措置」があります。
中小企業投資促進税制が適用されるのは、確定申告で青色申告書を提出する中小企業者や個人事業主です。中小企業者の定義は、資本金または出資金が1億円以下の法人であることや、資本金・出資金がない法人のうち常時使用する従業員が1,000人以下であることなどです。
「通常措置」の概要をチェックしよう
まず、通常措置について説明しましょう。
通常措置の場合、特別償却は機械装置などの設備購入費用(取得価額)の30%、税額控除は7%とされ、どちらか一方を選択します。
利用できる要件は、平成29年3月31日までに以下に挙げる対象設備を取得し、指定事業のために用いた場合とされています。指定事業は、不動産業や物品賃貸業、映画業を除く娯楽業、性風俗関連業以外のほぼすべての業種が該当します。
<対象設備>
設備 | 要件 |
---|---|
機械・装置 | 1台160万円以上のものすべて |
器具・工具 | ・電子計算機(合計120万円以上) |
・デジタル複合機(1台120万円以上) | |
・試験または測定機器・工具(1台30万円かつ合計120万円以上) | |
ソフトウェア | 合計70万円以上 |
普通貨物自動車 | 車両総重量3.5トン以上 |
内航船舶 | 取得価額の75%が対象 |
器具や工具は、事務作業の効率性アップや製品の品質管理向上等に役立つものとされています。また、中古品や貸付用の設備類は基本的に対象外なので注意しましょう。
即時償却が利用できる「上乗せ措置」の適用条件
平成26年度の税制改正において、中小企業投資促進税制に「上乗せ措置」が設けられました。上乗せ措置は、中小企業が設備投資をより活発におこなえるよう後押しするためのもので、生産性の向上に役立つとされる一定の設備を導入すると、さらに税負担を軽減することができます。
通常措置では取得価額の30%とされる特別償却が、上乗せ措置では全額を初年度に経費計上できる即時償却が選択可能です。即時償却しない場合は、最大10%の税額控除を受けることができます。
10%の税額控除が適用されるのは、資本金3,000万円以下の法人や個人事業主です。なお、資本金3,000万円超〜1億円の法人の税額控除は7%となっています。
生産性の向上に役立つ設備とは?
追加の優遇措置である上乗せ措置を利用するために必要な、「生産性の向上に役立つ設備」とはどのようなものでしょうか。
中小企業投資促進税制における、生産性の向上に役立つ設備は以下の2種類があります。
・ 先端設備(A類型)
・ 生産ラインやオペレーションの改善に資する設備(B類型)
A類型の先端設備とは、機械装置や測定機器、ソフトウェアなどの最新モデルであり、旧モデルと比べて生産性の向上がみられるものが対象となります。また、取得価額の要件は上記でご紹介した対象設備と同じですが、サーバー用の電子計算機やソフトウェアを複数購入する場合は、1台あたり30万円以上であることが条件です。
B類型は、設備投資による投資効果をあらわす投資利益率が5%以上見込める場合に該当します。投資利益率を算出する方法は以下のとおりです。
この減価償却費には特別償却分を含まず、増加額とは設備を購入する年度の翌年度以降3年間の平均額を指します。また、B類型でも複数購入する場合は1台あたり30万円以上であることが条件です。
投資利益率は経済産業局のチェックを受けることになるため、投資計画を立てる際は、あらかじめ税理士や公認会計士に相談し、内容を精査してもらいましょう。
即時償却のメリット
設備投資をした時の会計処理は、設備の耐用年数に応じ、期ごとに一定額を利益からマイナスする減価償却が通常です。一方、即時償却では一括して全額を費用処理できます。簡単に言うと、即時償却とは前倒しで経費を計上するということです。
即時償却のメリットは、前倒しで経費計上することによりその年度の利益が目減りし、法人税の課税対象所得を少なく抑えられるという点です。ただし、翌年度以降は償却費がなくなるため、最終的な納税額は同じです。
即時償却によってその年の節税額を増やすことができれば、資金に余裕ができ、さらに次の投資にまわすこともできます。今後、積極的な設備投資を予定している中小企業は、即時償却が可能な上乗せ措置の利用を検討すると良いでしょう。
中小企業投資促進税制の詳細については、中小企業庁の下記ホームページに掲載されている広報資料等をご確認ください。
まとめ
設備投資を予定している中小企業が知っておきたい制度が「中小企業投資促進税制」です。この制度は、設備投資に対する減税を見込むことができ、さらなる設備投資の促進を図ることができます。30%の特別償却または7%から選べる通常措置に加え、要件を満たせば、その年度に全額経費計上できる即時償却も利用可能です。このような制度を活用し、かしこく節税効果を高めましょう。
関連記事
・税金対策は完璧?個人事業主のために教える節税の基礎知識
・贈与税の税率の活用による節税方法まとめ
・貸倒引当金で個人事業主が節税する方法とは
よくある質問
中小企業投資促進税制とは?
設備投資にかかったお金を「特別償却」として費用計上することや、一定の税額控除を受けることができる制度です。詳しくはこちらをご覧ください。
中小企業投資促進税制における、生産性の向上に役立つ設備とは?
先端設備(A類型)と生産ラインやオペレーションの改善に資する設備(B類型)の2種類あります。詳しくはこちらをご覧ください。
即時償却のメリットは?
前倒しで経費計上することによりその年度の利益が目減りし、法人税の課税対象所得を少なく抑えられるという点です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
法人の節税の関連記事
新着記事
上代・下代とは?意味や読み方、定価や希望小売価格との違い、消費税などを解説
上代・下代は、商品の販売価格と仕入価格を表す用語であり、特にアパレルなどの流通業界で用いられます。上代や下代の設定により、小売業者の利益は大きく左右されるため、慎重な対応が必要です。本記事では、上代や下代の意味や定価・希望小売価格などの用語…
詳しくみる懇親会の会費は経費計上できる?個人事業主の場合や勘定科目について解説
クライアントを招待した懇親会の会費などは接待交際費として経費計上できます。ただし、接待交際費として計上するには条件があるため注意が必要です。 本記事では、懇親会の会費を経費計上できるのかについて解説します。従業員全員を対象とした場合や一部の…
詳しくみる経理担当が決算を乗り切るには?決算業務の流れやチェックリストを紹介
経理の決算業務は、会社の財政状況を把握し確定させるための重要な作業です。企業の経営状態や財務状況を正確に把握するため、経理担当者は期中の取引をまとめて決算書類を作成し、納税額の確定まで行う必要があります。 本記事では、決算業務の基本的な流れ…
詳しくみる決算報告を成功させる説明の仕方は?ポイントや例文を紹介
企業の経理担当者の中には、決算報告の説明担当になった方もいるかと思います。決算報告を説明する際には、押さえておきたいポイントがあります。 本記事では、決算報告を説明する際のポイントや活用できるフレーズなどを紹介します。 決算報告とは 決算報…
詳しくみる岩手県で法人決算を依頼できる税理士は?書類の提出先もあわせて解説
岩手での法人決算は、盛岡市を中心に県内各地の税理士事務所に依頼できます。法人決算は重要度が高くミスが許されない作業でもあるため、税務のプロである税理士に任せるのがおすすめです。 この記事では、岩手の企業が法人決算業務を地元の税理士に依頼する…
詳しくみる連結財政状態計算書とは?見方や会計基準の違い、作成ポイントを解説
連結財政状態計算書は企業グループ全体の資産・負債・純資産を項目ごとに記載した決算書類です。同様の内容が記載された書類としては「連結貸借対照表」というものもありますが、実は規格ごとに記載方法や項目に多少の違いがあります。 この記事では連結財政…
詳しくみる