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  • 作成日 : 2020年11月20日

営業キャッシュフローとは?見るべきポイントは?マイナスでも大丈夫?

営業キャッシュフロー

営業キャッシュフロー」とは、財務諸表の一種である「キャッシュフロー計算書」の重要な項目の1つです。企業のキャッシュフローのうち、「営業取引」から生じた現金収支を表します。
営業キャッシュフローを見ることで企業の何がわかり、どのような分析ができるのでしょうか。営業キャッシュフローがプラスもしくはマイナスになるケースと、見るべきポイントをわかりやすく解説します。

営業キャッシュフローとは

営業キャッシュフロー

金融商品取引法が適用される上場企業などでは、財務諸表の1つとして「キャッシュフロー計算書」の作成が義務付けられています。キャッシュフロー計算書とは、企業の一会計期間の現金収支を示したものです。

キャッシュフロー計算書は、「営業活動によるキャッシュフロー」、設備投資などの「投資活動によるキャッシュフロー」、資金調達などの「財務活動によるキャッシュフロー」の3つの項目に分けられます。

営業活動によるキャッシュフローとは、上の図のように、商品の仕入や販売など、主に営業活動による現金収支を表したものです。「営業キャッシュフロー」ともいわれます。

営業キャッシュフローはプラスになることもあれば、マイナスになることもあり、マイナスになるということは、営業活動を維持するために資金調達が必要な状態であることを表します。事業の成長に力を入れたい企業にとっては、営業キャッシュフローのプラスは多いほどいいです。

このように、営業キャッシュフローは、企業の経営状況の安定性を判断するのにも重要な項目です。

営業活動によるキャッシュフローの構成

営業活動によるキャッシュフローを構成する要素は、下記のようなものです。

営業活動によるキャッシュフローの構成要素

  • 商品等販売による現金収入(プラス)
  • 商品等仕入による現金支出(マイナス)
  • 人件費の現金支出分(マイナス)
  • 経費のうち現金支出分(マイナス)
  • 投資活動・財務活動以外(プラス・マイナス)

営業活動によるキャッシュフローの構成要素のうち、売掛金回収など売上に関わる現金回収分(商品等販売による収入)がプラスの要素になります。

マイナスの要素になるのは、買掛金支払など仕入に関わる現金支出(製造業などは製品を作るのにかかった経費である製造原価のうち現金支出分)、人件費や経費の現金支出分です。

また、上記の営業活動にかかわる現金の収支以外にも、営業活動によるキャッシュフローには投資活動や財務活動以外の項目も含まれます。具体的には、利息の受取(プラス)、利息の支払(マイナス)、法人税等の支払(マイナス)などです。

このように、営業活動によるキャッシュフローには、営業活動に関わる部分と直接関わりのない部分があります。純粋な営業活動のキャッシュフローを明確にするために、営業活動の部分で小計を出して、投資活動・財務活動以外の項目を加えた全体の合計を出すようになっています。

営業キャッシュフローは「直接法」と「関接法」の表示方法がある

営業キャッシュフローの表示の仕方には、「直接法」と「間接法」の2つの方法があります。

直接法は、主要な取引に分けて、現金収入と現金支出を総額で表示する方法です。

一方、間接法は、税引前当期純利益から減価償却費などの科目を加減して、営業キャッシュフローを導く方法となっています。

直接法は、総額表示なので経営実態をよく表すことができますが、取引ごとにデータを集める必要があり、作成に手間がかかります。

間接法は損益計算書をもとに作成でき、直接法ほど経営実態を示せるわけではありませんが、作成のしやすさから広く使われています。

営業キャッシュフローの見方とポイント

営業キャッシュフローは、損益計算書ではわからない、企業の資金繰りを見るのに役立ちます。企業の経営陣にとっても、投資家にとっても重要なポイントです。

具体的には、資金繰りを見ることによって、本業が順調か、キャッシュの回収はうまくいっているか、資産や負債の増減とキャッシュのズレによる利益の質はどうか、などがわかります。

また、営業キャッシュフローは、プラスになることもあれば、マイナスになることもあります。プラスだと本業がうまくいっている、マイナスだと事業に不安要素があるといえるでしょう。具体的な見方は以下で紹介していきます。

営業キャッシュフロー・マージンの求め方

営業キャッシュフロー・マージンとは、企業の売上高に対して、どれくらいの現金収支があったか、つまりどれくらいキャッシュとして獲得できたかを表す値です。

営業キャッシュフロー・マージンの計算方法

営業キャッシュフロー・マージン (%)= 営業キャッシュフロー ÷ 売上高×100

上記の計算式のように、営業キャッシュフローの額を売上高で割って計算します。営業キャッシュフロー・マージンは、高いほどもうけを出している会社といえます。

キャッシュフロー・マージンの目安

15%(ただし、業種によって変動あり)

営業キャッシュフロー・マージンのひとつの目安とされているのが15%です。15%といっても、売上高に対する営業キャッシュフローのプラスの割合ですので、毎期継続して15%以上を出すのはなかなか難しいとされています。達成が難しいからこそ、15%以上を継続できている企業は健全かつ、利益を継続して生み出している企業とされ、評価も高いです。

営業キャッシュフローがプラスの場合

営業キャッシュフロー プラス

営業キャッシュフローがプラスということは、会社の営業活動による現金支出が、本業の現金収入でうまくまかなわれているということです。営業キャッシュフロー・マージンもプラスを示します。

通常は、「営業キャッシュフロー>利益」となることが多いです。営業キャッシュフローが利益よりも多い要因のひとつは減価償却費で、裏付けのある利益が計上されていると判断できます。一方、「営業キャッシュフロー<利益」で大きな開きがある場合は、利益操作の可能性を指摘されることがあります。

見るべきポイント

  • 営業キャッシュフロー>利益になっているか
  • 営業キャッシュフロー<利益の場合、大きなかい離はないか
  • 営業キャッシュフローの小計がマイナスになっていないか

営業キャッシュフローがプラスの場合、損益計算書の利益と比較して、どのような状態になっているかを主に見ていきます。利益の質が高く、健全な状態というのは、営業キャッシュフローが利益よりも大きい場合です。

また、営業キャッシュフローの合計がプラスでも、営業活動の小計がマイナスのケースもあります。この場合は、事業の継続性を注意して確認する必要があります。

営業キャッシュフローがマイナスの場合

営業キャッシュフロー マイナス

営業キャッシュフローがマイナスということは、営業活動の現金収入だけで、営業活動の支出をカバーできていないということです。営業キャッシュフロー・マージンもマイナスを示します。

営業収入だけで営業活動の支出をまかなえないため、手元資金からの調達、金融機関や株主からの資金調達などが必要になります。営業キャッシュフローが悪いと、営業活動が不安視されることがありますが、マイナスが必ずしも悪いとは判断できません。企業の成長過程で支出が増え、一時的に営業キャッシュフローがマイナスに転じることもあります。

見るべきポイント

  • 営業キャッシュフローがマイナスなら資金調達などによる収入面でのカバーが必要
  • 大幅なマイナスは企業の信用力の低下につながることもある
  • 大幅なマイナスが続くと資金調達が難しくなることもある

営業キャッシュフローを無視すると黒字倒産の可能性がある

毎期継続的に黒字を出しており、企業の経営状況が順調そうに見えても、黒字倒産する企業もあります。黒字倒産するのは、企業の利益と資金繰りにはズレがあるためです。

企業の一会計期間の利益は損益計算書で確認できますが、損益計算上の利益と手元現金はほとんどの場合一致することがありません。

会計上の収益認識のタイミングと実際に現金が入ってくるタイミング、あるいは会計上の費用発生のタイミングと実際に現金が出ていくタイミングは異なるためです。

例えば収益認識を例にあげると、売上の計上は、商品等を引き渡し、対価を受け取ったときとされています(※実現主義)。対価を受け取ったときというのは、現金での受け取りに限りません。売掛金や約束手形などの売上債権も含まれます。そのため、利益としては計上されたものの、現金として回収はできていないというものも企業の利益の計算に含まれることになるのです。

債権だけが増えても、回収が順調でなければ、当然、企業の資金繰りは悪化します。黒字倒産が起こるのは、このように、利益ばかりが上り、現金回収までのサイクルが順調にいかないことなどが理由です。黒字倒産を避けるには、営業キャッシュフローをよく確認しておく必要があります。

※収益認識については、2021年4月1日以後の事業開始年度から、「商品等を引渡し、販売契約における履行義務を充足したとき」に変わります。

営業キャッシュフローを増やすには

営業キャッシュフローを改善し、プラスを伸ばすには、キャッシュインが増えるように意識し、できるだけキャッシュアウトが増えすぎないよう資金を管理することです。

営業収入自体を増やす、支出自体を減らすといったことだけではなく、今ある債権をいつ回収、あるいは債務をいつ支払うかという点も、重要なポイントといえるでしょう。

売上と仕入に関しては、現金売上より売掛金のほうがキャッシュインは遅くなり不利になること、現金仕入より買掛金のほうがキャッシュアウトは遅くなり有利になる特徴があります。このような特徴を活用した回収または支払の計画を立てて、実行することが重要です。

また、これから支払を迎えるものについては、後払いなどを活用して支払を遅らせる。有効に活用できていない固定資産があれば売却するなども、営業キャッシュフローの改善に役立ちます。営業キャッシュフローを増やす具体的な方法は、以下のとおりです。

営業キャッシュフローを増やす方法

  • 営業収入を増やす
  • コストを削減する
  • 売掛金や受取手形の回収を早める
  • 買掛金や支払手形の支払いを遅らせる
  • 後払いやクレジットカードを活用する
  • 商品や製品の在庫を減らす
  • 固定資産を処分する

まとめ

営業キャッシュフローとは、企業の営業活動における資金繰り(現金収支)を表した、キャッシュフロー計算書の項目の1つと紹介しました。また、企業の資金繰りや経営状況を確認するのにも重要な情報です。営業キャッシュフローはプラスであることが望ましいですが、マイナスになることもあります。

企業の成長段階であれば、必要な支出も多くなるため過度に不安になる必要はありませんが、継続してマイナスが続くようであれば、注意が必要です。事業の見直し、資金調達など、経営の全体的な見直しが必要になることもあります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:岩波 竜太郎 (公認会計士 / 税理士 / 経営学修士)

公認会計士・税理士・経営学修士。大手監査法人、ベンチャー企業を経て、2015年に独立開業。大手監査法人での海外経験や管理本部長としての幅広い経験を武器に会計アドバイザリー業務を主たる業務として行うとともに、東証1部上場企業である株式会社OrchestraHoldingsの社外役員をはじめ、経営アドバイザーとして複数の企業に関与。Webメディア等の記事執筆・監修業務も積極的に行っている。

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