- 更新日 : 2024年8月8日
ポイントの勘定科目は?買手と売手でケース別に解説
ポイントを使った物品を購入した場合やポイント分を値引きして物品を仕訳する際、どの勘定科目を使えばいいのか迷う方もいるのではないでしょうか。
この記事では、ポイントを利用した・利用された際の勘定科目や仕訳について買手・売手、双方の立場から解説します。また、新収益認識基準導入で仕訳がどう変わるかについても紹介します。
目次
買手がポイントを取得・利用した際の勘定科目と仕訳例は?
まずは、買手側としてポイントをもらった場合、そして利用した場合の勘定科目について紹介します。
ポイントを取得した場合
買手側としてポイントを付与された時点では仕訳は行いません。ポイントを付与されたからといっても、まだ何か商品を得たり、サービスを受けたりしたわけではないからです。仕訳はポイントを利用したタイミングで発生します。
ポイントを利用した場合
ポイントを利用すると、仕訳処理の必要が生じます。ポイントの利用には以下の3つの考え方がありますので、いずれかの勘定科目を選択して仕訳を行います。
なお、どの仕訳方法を選択しても、利益や課税金額は変わりません。
■ポイントを「仕入値引」として処理する
ポイントを仕入額に対する値引きとして処理する場合、以下の仕訳を行います。
【例】仕入30,000円への支払いに対し500円分のポイントを充当し、残額を現金で支払った。ポイントは仕入値引として処理を行う。
■ポイントを「収入」として処理する
ポイントを収入として処理する場合、以下の仕訳を行います。
【例】仕入30,000円への支払いに対し500円分のポイントを充当し、残額を現金で支払った。使用したポイントは雑収入として処理を行う。
■現金の支払い額を基準に処理する
ポイントを会計処理上の収益・費用として扱わず、実際に発生した金銭の授受を基準とする場合、以下の仕訳を行います。
【例】仕入30,000円への支払いに対し500円分のポイントを充当し、残額を現金で支払った。
売手がポイントを付与した・利用された際の勘定科目と仕訳例は?
売手側として買手にポイントを付与した場合、そして利用された場合の勘定科目について見ていきましょう。
ポイントを付与した場合
買手側と同様にポイントを付与した時点では仕訳を行わないため、勘定科目について考える必要はありません。付与したポイントが利用されるかが、付与時点では不明なためです。
サービスとしてのポイントの付与額を把握しておく必要はありますが、会計処理は不要ですので、帳簿には売上が生じた事実のみ仕訳を行いましょう。
ポイントが利用された場合
ポイントが利用されたら仕訳を行います。以下2つの考え方のうちのどちらかを選択して仕訳してください。
ポイントを値引きととらえるか、販促のための費用ととらえるかは事業者によって異なります。どのように扱うかを事前に考えておきましょう。
■ポイント分を「売上値引」として処理する
利用されたポイントを売上に対する値引きとしてとらえる場合には、以下の仕訳を行います。
【例】売上30,000円対し500円分のポイントの利用を受け、残額を現金で受け取った。利用されたポイントは売上に対する値引分として処理する。
■ポイント分を「販売促進費」として処理する
利用されたポイントを販売促進費として考える場合には、以下の仕訳を行います。
【例】売上30,000円対し500円分のポイントの利用を受け、残額を現金で受け取った。利用されたポイントは販売促進費として処理する。
新収益認識基準導入におけるポイントの仕訳
2021年4月より、一部の企業(上場企業、会社法上の大会社等公認会計士監査対象会社など)においては「収益認識に関する会計基準(新収益認識基準)」が適用されています。どのようなものかを内容を見てみましょう。
収益認識に関する会計基準(新収益認識基準)とはどのような基準?
収益認識に関する会計基準(以下「新収益認識基準」)とは、売上の認識と財務諸表への反映方法について定めた基準です。
日本国内における従来の売上計上基準は「実現主義」を用いるよう定められていました。しかし、IFRS(国際財務報告基準)や米国会計基準ではすでに収益認識基準を用いるよう明確に定められており、日本も米国や欧州等に追従する形で同じ基準の適用を目指した改正が行われました。
新収益認識基準が適用される会社
現時点で新収益認識基準が適用されるのは、資本金5億円以上もしくは負債200億円以上の会社法上の「大会社」および上場会社、また今後上場を予定している会社が対象となります。現在日本にある大会社以外の会社や個人事業主は対象外です。
新収益認識基準での仕訳とは?
新収益認識基準が適用されると仕訳の方法も変わります。今までは売手としてポイントを付与した場合、ポイントを使用するまではポイント分を仕訳する必要がありませんでした。しかし、新収益認識基準ではポイントを付与した時点で仕訳をしないといけません。
では、1万円の物品を現金で販売し、1,000円分のポイントを付与する場合の仕訳を見てみましょう。詳細は以下の通りです。
- 自社が発行するポイントの付与を想定しています。
- 消費税は考慮しないものとします。
- 過去の実績から、付与したポイントの使用率は80%とします。
1.使用率に基づき付与ポイントを仕訳
まずは、付与しているポイントに使用率をかけます。
1,000円×80%=800円のため、ポイントの独立販売価格が800円と算出されます。この独立販売価格は、将来値引きされるであろう金額として考えられます。
2.取引価格の配分
次に取引価格の配分を行います。
商品購入時に自社ポイントを使用されたものと仮定して取引価格へポイントを配分します。
商品への配分は1万円×1万円/(1万円+800)=約9,259円≒9,260円
自社ポイントの配分は1万円×800/(1万円+800)=約740円
3.ポイントを加味した仕訳
物品の販売金額は収益となりますが、まだ使われていないポイントは販売時には収益となりません。よって「契約負債」という勘定科目が使われ仕訳されます。
4.付与ポイントが使用された際の収益認識
この取引で付与したポイントが使われた場合の仕訳は以下の通りです。付与したポイントの消費にともない収益が認識されたと考えられ、売上に振り分けられます。
以上が、売手としてポイントを付与した場合、そしてポイントを利用された場合の仕訳です。大会社以外の会社、個人事業主への新収益認識基準適用時期は未定ですが、将来に備え今のうちから頭に入れておくと良いでしょう。
現時点では大会社以外のポイント付与時の仕訳は不要!
従来の会計制度では、ポイントに関する仕訳はポイントの付与または利用されたときに限られています。会計上では付与したポイントを認識せず、実際に付与されたポイントや発行したポイントの利用が発生した際に仕訳を行います。認識の仕方によって使用する勘定科目が異なりますので、自社の基準にあった勘定科目を選択しましょう。
一方、2021年4月から大会社や上場企業・上場予定会社を対象に適用され始めた新収益認識基準では、ポイントを付与した時点で仕訳を行う必要があります。現在は一部の企業のみに適用されている基準ですが、将来的には適用範囲が広がることが予想されます。いつ適用されても対応できるよう、どのような制度なのかだけでも確認しておくと良いでしょう。
よくある質問
ポイント支払いをした場合の買手側の勘定科目は?
ポイントを値引きとする場合は「仕入値引」、収入とする場合は「雑収入」、現金支払い額として処理する場合は「現金」となります。詳しくはこちらをご覧ください。
ポイントで支払われた際の売手側の勘定科目は?
「売上値引」「販売促進費」いずれかで処理します。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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