- 更新日 : 2024年8月8日
商品保証引当金の意味や仕訳、製品保証引当金との関係
修理や返品交換などの商品保証は、問題となる事象が発生したときにのみ保証が行われます。必ずしも発生する性質ではないことから、これまでの商品保証を行った傾向をもとに、合理的に見積もれる発生額を「商品保証引当金」に計上します。
今回は、商品保証に関わりの深い商品保証引当金の概要と仕訳を、製品保証引当金との違いに触れながら解説していきます。
商品保証引当金とは?
商品保証引当金を含む「引当金」は、将来発生の可能性が高い特定の損失や費用に備えるための科目で、発生の原因が当期以前にあり、合理的に見積もれる分のみが引当金として計上されます。
今回取り上げる商品保証引当金は、販売した商品の欠陥に対する返品・交換や修理保証を行うときに計上するものです。
なお、2021年4月より収益認識に関する会計基準が適用されたことで、収益認識は履行義務ごとに行うことになりました。しかし、商品保証引当金は必ず発生するものではないため、履行義務には含まれません。引き続き、引当金として、過去の発生率などから将来発生すると合理的に見積もれる額を計上します。
貸借対照表上、商品保証引当金の表示箇所は、以下の流動負債または固定負債の中です。引当金勘定は1年基準(ワンイヤールール)で判断するため、保証が決算日の翌日から1年以内に行われるものについては流動負債、1年を超えて行われるものについては固定負債に表示します。
商品保証引当金の仕訳
商品保証引当金はどのような場合に用いられるのか、3つの状況別に仕訳の仕方と仕訳例を解説していきます。
保証契約期間中に商品の修理等を行った場合の仕訳
(仕訳例1)当社は販売時に、商品に欠陥や不具合があった場合、1年以内に限り保証する契約を顧客との間で締結している。顧客から不具合の連絡があり、商品保証の範囲内だったため、現金10,000円を支出して修理を行った。当社は、商品保証の履行を見越して、商品保証引当金を決算時に計上している。
商品の保証に要した修理や交換費用が「商品保証引当金」の範囲内であった場合、商品保証引当金を取り崩す仕訳をします(借方に計上した分は負債額から消去されます)。保証に要した費用が商品引当金の額を超えるときは、差額分を売上原価、または販売費および一般管理費に分類される科目のうち任意の科目(商品保証費など)を設定して仕訳するのが一般的です。なお、引当金計上時点において入手可能な情報に基づき、最善の見積もりをした上でも引当金の額を超える場合には、営業外費用として計上する場合もあります。
保証期間経過後の仕訳
(仕訳例2)当社は販売時に、商品に欠陥や不具合があった場合に保証する契約を顧客との間で締結している。一部の商品について保証期間が終了したため、保証が終了した分の商品保証引当金5,000円を取り崩した。
商品保証は、必ず発生するものではありません。販売した商品の中には、商品保証が行われず、保証期間が終了するものも多くあります。保証期間を終えた分の引当金は、借方に「商品保証引当金」、貸方に収益の勘定科目である「商品保証引当金戻入益」を置いて仕訳をします。
決算時の仕訳
(仕訳例3)当社は販売時に、商品に欠陥や不具合があった場合に保証する契約を顧客との間で締結している。商品保証引当金の計上にあたっては、会計期間末日に、過去5年間の商品保証の発生率をもとに計上することとしている。過去の発生率をもとに計算した結果、現在有効な契約において商品保証引当金は15万円と見積もられた。商品保証引当金の残高は5万円で、差額補充法により残額を引当金に計上することとする。
商品販売時に商品保証引当金を個別に設定することが難しいケースもあるため、実務上、決算時に引当金を計上することもあります。見積もりによって商品保証引当金が増える場合、相手方の借方項目として置くのが、費用項目の「商品保証引当金繰入」です。上記のケースでは、商品保証引当金の残額を差し引いた差額補充法の仕訳例をあげていますが、残額を一旦クリアにし、改めて見積もられた額を計上する洗替法による仕訳も可能です。
なお、商品保証引当金繰入については、会計上は費用になるものの、保証が実現していないこと、債務が確定していないことから、税務上の損金には含まれません。
製品保証引当金との違い
一般的に、商品は販売を目的としたもの、製品は製造会社などが製造したもののことを表します。この概念からすると、製品保証引当金はメーカー保証、商品保証引当金は販売店の保証と考えることができるでしょう。
しかし、明確な使い分けが存在するわけではありません。販売した商品の保証を目的とした場合でも、製品保証引当金として計上することもあります。
商品保証引当金の仕訳のルールを押さえよう
商品保証引当金は、修理や交換などの商品保証を行っている場合に発生する勘定科目です。商品保証引当金の繰り入れは、収益認識に関する会計基準における5つのステップうち、2番目である「履行義務の識別」において判断されます。
判断基準は、その商品が顧客との間で合意された仕様を満たしているか。つまり有償のアフターサービスは引当金となりませんが、購入当初から一定期間をカバーする無償サポートは引当金の対象となります。
商品保証引当金の仕訳は保証の設定基準、保証の発生時、決算時、保証の終了時といった要素が絡みますので、仕訳の基準と使用する勘定科目はしっかりと理解しておきましょう。
よくある質問
商品保証引当金とは?
将来発生の可能性が高い商品保証による支出について備えるための負債項目です。詳しくはこちらをご覧ください。
製品保証引当金との違いは?
製品保証は製造品の保証を表しますが、明確な概念が存在しているわけではないため、商品保証引当金と同じような意味で使われることがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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