- 更新日 : 2024年8月8日
駐車場経営で経費にできるもの・できないものまとめ
これから駐車場経営を始めようと考えている人は、どのような支出が経費に計上できるか知りたいのではないでしょうか。初期費用や運営費用、撤去費用といったように、場面ごとで必要になる経費についても知っておきたいですよね。
本記事では、経費に計上できる支出とできない支出についてまとめています。また、経費を支出する際の注意点についても解説しているため、参考にしてください。
目次
駐車場経営で経費にできるもの
駐車場経営で経費にできるものには、以下のようなものがあります。
- 駐車場経営を始める際にかかる初期費用
- 駐車場経営にかかる運営費用
- 駐車場の撤去にかかる費用
ここからはそれぞれの費用の内訳について詳しく解説していきます。
駐車場経営を始める際にかかる初期費用
駐車場経営で経費にできる初期費用には、以下のようなものがあります。
- 土地整備費用
- 看板などの設置費用
- 設備費用
土地整備費用
駐車場経営は、土地を駐車場として利用できる状態への整備から始まります。
土地整備費用には以下のようなものがあります。
- 舗装費用
- 車室区画整備
- 車室番号表記
- 車止め設置
舗装費用
更地を駐車場として利用できる状態に舗装するための費用です。コインパーキングの経営には精算機などの機器を設置する必要があるため、アスファルトまたはコンクリート舗装を行う必要があります。舗装の種類によって費用は異なります。中でもコンクリート舗装は最も費用がかかるため、初期費用を多めに用意しなければならないでしょう。
なお、月極駐車場は機器の設置が必須ではないため、未舗装(砂利敷き)のまま駐車場経営を始めてもいいかもしれません。
車室区画整備
敷地内を線やロープで区切り、車が駐車するためのスペースを整備します。
砂利敷きの場合はロープで、アスファルトやコンクリートの場合は専用のスプレーやテープを利用してラインを引きます。見栄えをよくするなら業者に依頼するとよいでしょう。支出を抑えたいなら自分で区画整備をするのも可能です。
車室番号表記
駐車場の利用位置を示す番号を表記します。コインパーキングでは必須の作業です。砂利敷きの月極駐車場では車室番号の表記がなく、契約者の名前を書いた小さな立て札を用意することもあります。
車止め設置
車が車室を越えないよう、車止めとなるブロックなどを設置します。車止めの設置により駐車場内の衝突事故を防止することが期待できるため、特別な事情がない限りは設置するようにしましょう。
看板などの設置費用
コインパーキング経営には、宣伝のための看板や空き状況を知らせる満空灯などの設置が不可欠です。これらの購入費用や設置費用は経費に計上できます。
看板などの設置費用には以下のようなものがあります。
- 料金案内看板
- 満空灯(P看板)
- 利用規約看板
料金案内看板
コインパーキングを経営する場合は、駐車料金や問い合わせ先などを記載する看板を設置する必要があります。不親切な料金の表記はトラブルやクレームに繋がりやすいため、1時間あたりの料金や最大料金といった情報を分かりやすく表記しましょう。
月極駐車場には詳細な料金表示の看板を設置しなくても大きな問題には繋がらない傾向があります。しかし、万が一のトラブルに備え、問い合わせ先だけでも記載しておきたいところです。
満空灯
コインパーキングを経営する場合は、駐車場の空き状況を利用者に知らせる「満空灯」を設置するようにしましょう。
「満」と「空」の表示は入出庫機のカウントで切り替わるものもあれば、駐車位置センサーのカウントで切り替わるものもあります。また、パーキングエリアの場所を知らせる「P看板」と一体になっている満空灯もありますので、立地や設置場所に適した利用客が見やすいものを選ぶとよいでしょう。
利用規約看板
駐車場の利用規約が記載された看板を設置しておくと、利用者とのトラブルを回避しやすくなります。駐車場内での事故や車上荒らしに関する規約は必ず記載しておきましょう。
設備費用
経費にできる設備費用には以下のようなものがあります。
- 料金精算機
- 精算機用テント
- 場内照明、看板照明
- ロック板またはゲート機
- 防犯カメラ
- フェンス
- 遠隔システム
料金精算機
コインパーキングの経営には、料金精算機の設置が必須です。最近ではキャッシュレス決済に対応している精算機など、機能性に優れたものが増えています。利用者の客層に応じて、快適に利用できる料金精算機を設置するとよいでしょう。
精算機用テント
料金精算機を設置するなら、精算機用テントの設置も検討しましょう。精算機の故障を防ぐだけでなく、駐車料金を精算する利用者が雨風から守る利便性の向上が期待できます。
テントは精算機に直接設置するタイプのほか、地面に設置するタイプがあります。駐車場のスペースに応じて設置するものを選択するとよいでしょう。
場内照明、看板照明
場内照明や看板照明などの照明施設は、コインパーキングの利便性向上に役立ちます。夜間の利用をサポートするだけでなく、防犯面の強化が利用客の安心に繋がると期待できます。
ロック板またはゲート機
コインパーキングには、利用者の確実な精算を促すためのロック板やゲート機の設置が必要です。一般的に、駐車台数が20台未満の小規模な駐車場ではロック板、20台以上の大規模な駐車場ではゲート機が採用されています。
大規模な駐車場でゲート機を採用する場合は精算待ちの混雑が予想されるため、事前精算機の導入など、スムーズな退出に繋がる設備の設置を検討してもよいでしょう。
防犯カメラ
駐車場内のトラブル防止には、防犯カメラの設置が役立ちます。駐車場内が監視されることによる問題行動への抑止力が期待できるだけでなく、事故や車上荒らしなどの現場を記録した映像が証拠となるため、トラブルが発生したとしてもスムーズな解決が期待できるでしょう。
不正駐車が発覚した場合も、記録映像があれば利用料金を請求することができます。もはや設置しないことで生まれるデメリットが大きいため、特別な事情がない限りは設置しておきたいところです。
フェンス
住宅街で駐車場を経営する場合はフェンスの設置を検討しましょう。近隣住民への安全性に配慮できるほか、防犯効果も期待できます。
遠隔システム
自宅から離れた場所での駐車場経営には、遠隔システムが便利です。駐車場の空き状況がリアルタイムで確認できるようになるほか、精算機などの設備に生じた異常をすぐに検知できるようになります。
ただし、遠隔システムの導入には、導入費用のほかシステム利用料が発生します。ある程度の費用が継続的に発生しますので、駐車場の経営が軌道に乗ってから導入を判断してもいいかもしれません。
駐車場経営にかかる運営費用
経費にできる運営費用には以下のようなものがあります。
管理費
運営に伴う管理業務は、外部へ委託することができます。精算機内にある売上の集金やおつりの補充、駐車場内の清掃など手間がかかる業務を委託できるため、忙しい人でも駐車場経営をしやすくなります。複数の駐車場を経営している場合や自身での作業が難しい場合には、管理会社へ業務を委託するといいでしょう。
電気代
照明や料金精算機、ロック板の稼働など、駐車場経営のために使用した電気代は経費に計上できます。常に点灯し続ける照明や満空灯は電気代を引き上げる要因のひとつであるため、支出を抑えたい場合は消費電力が少ないLEDを使用するといいでしょう。
保険料
施設賠償責任保険や火災保険など、駐車場経営のための保険料は経費に計上できます。駐車場設備が原因で利用者の車や近隣住民に損害を与えてしまうことに備え、必要最低限の保険には加入しておきたいところです。
24時間緊急対応費
駐車場内で起きたトラブルに24時間対応できるよう、コールセンターや警備会社へ緊急対応を委託することができます。トラブルは常に日中に起きるわけではなく、いつでもオーナーがトラブルに対応できるとは限りません。また、経験とノウハウが求められる対応もありますので、トラブルの処理に精通した外部事業者へ委託することをおすすめします。
設備メンテナンス費
ロック板や精算機といった設備が故障しないよう、定期的なメンテナンスを行う必要があります。電球交換や看板の修繕であれば自身で行えますが、精密機器のメンテナンスは専門の業者へ依頼したほうがいいでしょう。
消耗品費
駐車場経営に必要な消耗品費を購入した場合は経費に計上することができます。
消耗品には以下のようなものがあります。
- 駐車券
- サービス券
- 領収書ロール
- 交換用の電球
決済手数料
料金精算の方法としてクレジットカードやQRコード決済などを採用している場合は、決済手数料を経費に計上することができます。
減価償却費
駐車場の舗装費用や料金精算機の設置費用など、駐車場経営を始める際にかかった初期費用は原則として「減価償却費」として経費計上できます。ただし、駐車場経営のために購入した土地の費用は減価償却の対象ではありません。
駐車場の耐用年数と減価償却については、以下の記事で詳しく解説しています。
租税公課
駐車場経営に伴い納税する必要がある税金のうち、一部は経費に計上することができます。
経費に計上できる租税公課には以下のようなものがあります。
- 固定資産税
- 都市計画税
- 償却資産税
- 消費税
- 個人事業税
- 登録免許税
- 印紙税
経費にできる租税公課については、以下の記事で詳しく解説しています。
駐車場の撤去にかかる費用
駐車場事業からの撤退に伴う撤去も、駐車場経営の一部です。経費として計上できる撤去費用には以下のようなものがあります。
- 原状回復費用
- 契約者への対応費用
- 違約金
原状回復費用
駐車場経営をやめる場合は、駐車場として使用していた土地を契約前の状態に戻す必要(原状回復義務)があります。
原状回復を行うためには、舗装工事費や機器撤去費、看板撤去費などの費用が発生します。原状回復費用の負担割合や対応範囲は、駐車場オーナーと土地の地主との間でトラブルの原因になりやすいため、あらかじめ契約締結時に定めておくといいでしょう。
契約者への対応費用
コインパーキング事業から撤退する際には、利用者に対する説明義務はありません。しかし、契約者が長期間利用し続ける月極駐車場からの撤退時には、契約者への説明や契約終了に関する書面の郵送といった手続きが必要になる場合があります。その際にかかった対応費用は経費計上の対象です。
多くの場合、切手の購入代や電話代など少額の費用におさまるので、通信費や雑費といった勘定科目で経費計上するといいでしょう。
違約金
利用者や管理会社と結んだ契約内容によっては、違約金を支払う必要に迫られる場合があります。
「思ったよりも収益が上がらなかった」「他の管理会社へ変更したい」など、オーナーの都合で契約期間中に解約する場合は、ほぼ違約金が発生すると思ってよいでしょう。やむを得ない事情で解約しなければならないケースでも違約金を請求されないよう、不利な条件にならない内容で契約を結ぶようにしましょう。
駐車場経営で経費にできないもの
駐車場経営に関係する費用の多くは経費計上が認められていますが、以下の支出は経費にすることができません。
- 土地の購入費用
- 仲介手数料
- 固定資産税の精算額
土地の購入費用
駐車場を経営する目的で購入した土地の代金は、経費計上できません。土地は有形固定資産に計上されますが、建物や設備のように年月の経過に伴い価値が目減りする資産ではないため、減価償却による資産の費用化ができないからです。
ただし、土地の購入に伴い発生した「不動産取得税」や「登録免許税」などの税金は、租税公課として経費に計上できます。
土地購入費用の経費については以下の記事で詳しく解説しています。
仲介手数料
土地を購入する際に不動産会社へ支払った仲介手数料も経費に計上することができません。土地を購入するために発生した費用は、土地の購入費用の一部として資産に計上することが定められているからです。
固定資産税および都市計画税相当額の清算金
駐車場に使用していた土地を売却する際、売主と買主が土地を所有する日数に応じた「固定資産税」や「都市計画税」の清算を行うことが慣習となっています。
固定資産税や都市計画税は、1月1日時点における当該固定資産の持ち主に納税義務があります。そのため、買主が売主に対して日割計算した清算金を支払います。このときに買主が支払った清算金は土地の取得価額に算入されるため、経費計上できないと税法により定められています。
経費の判断に迷う場合は税理士などの専門家へ相談しよう
経費とは経常費用の略語であり、事業を営むために要した費用を指します。そのため、駐車場経営に必要な費用は、原則として経費に計上することができます。
ただし、土地の購入費用や仲介手数料といった一部の支出は資産計上の対象となるため、経費に計上することができません。本来経費にならない支出を経費計上した場合、税務署から過少申告加算税が課される場合もあります。
経費計上の対象であるか判断に悩むようなら、税理士などの専門家へ相談することをおすすめします。
よくある質問
駐車場経営で経費にできるのはどんなもの?
駐車場経営に必要な費用は経費として計上できます。初期費用や運営費用、駐車場経営をやめる際に必要な撤去費用などが対象です。詳しくはこちらをご覧ください。
駐車場経営で経費にできないのはどんなもの?
土地の購入費用や仲介手数料、固定資産税および都市計画税の清算金など、資産計上される支出の一部は経費計上できません。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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