• 作成日 : 2024年10月1日

請求額と入金額が違う?主な原因や仕訳方法、消込をパターン別に解説

請求額と入金額が違う場合は、まず原因の特定が必要です。その上で処理方法を決め、仕訳を行いましょう。金額が違う原因は、請求書のミスや振込金額の入力ミスなどさまざまです。

本記事では、請求額と入金額が違う場合について、入金額が多いケースと少ないケースに分けて仕訳例を紹介します。不一致を防ぐ防止策も解説しますので、参考にしてください。

請求額と入金額が違う主なケース

請求した金額と入金額が違う場合、原因はさまざまです。主なケースをみていきましょう。

請求金額が間違っていた場合

請求者側のミスで請求書の金額を間違えてしまい、過不足が起こるケースがあります。間違える理由はさまざまで、値引きをするべきところを通常料金で請求をした、価格を改定したのに以前と同じ価格で請求したといった例があげられます。

いずれにせよ請求側のミスであるため、誤りに気づいた時点ですぐ連絡し、改めて請求書を発行するなどの対応が必要です。

今月分と翌月分の支払いを合算して振り込む場合

翌月分も合算して振り込んだため、請求額と入金額が異なってしまうケースも考えられます。毎月同額の請求書を出しているなど翌月の請求額もわかっている場合、振込手数料を1回分節約するため、翌月の分と合わせて振り込んでしまうこともあるでしょう。

請求していない分が支払われたことになるため、すぐに連絡して翌月分の請求書を発行するなど対処しなければなりません。

振込手数料を引いて振り込む場合

220円や440円などの一定額が不足している場合、振込手数料を引いて振り込んだ可能性があります。振込手数料は、原則として取引の買手(支払いをする側)が負担します。契約で売手が手数料を負担することは可能ですが、特に取り決めをしていなければ、買手が支払いの際に負担しなければなりません。

特別な契約がないにもかかわらず代金から振込手数料を差し引いてきた場合、請求額より不足した支払いになります。

振込金額の入力ミス

請求書は間違いないものの、先方が振込金額の入力ミスをして入金額が違ってしまう場合もあります。たとえば、金額の桁を間違えたり、金額を思い違いしたりしているケースがあげられます。

請求額と入金額が違うことに気づいたら、すぐに先方に連絡をとりましょう。金額が多い場合で返金を希望されたときは、振込手数料の負担についても確認が必要です。

二重振込

すでに入金されていたにもかかわらず、再度同じ金額が入金され二重振込になるケースもあります。入金方法を変更した場合に起こりがちです。

たとえば、振込で行っていた支払方法をクレジットカードに切り替えた場合、切り替えたことを忘れて、それぞれの方法により入金が行われたという例があげられます。先方に連絡し、返金の方法について話し合いましょう。

消費税の差額

切り捨てや切り上げなど、消費税の処理が異なって差額が生じ、請求額と入金額が違うというケースもあります。たとえば、こちらは端数切り上げで請求したにもかかわらず、先方が端数切捨てで計算した場合、消費税に1円程度の差額が発生します。

1円でも請求額と入金額が異なっていることには違いないため、先方に連絡して何らかの対応が必要です。

インボイス制度後の振込手数料の仕訳に注意を

インボイス制度の施行後は、課税事業者である売手は適格請求書(インボイス)を発行します。その際も、振込手数料を負担するのは原則として買手です。

買手の課税事業者は振込手数料に含まれる消費税分の仕入税額控除を受けられますが、そのためには、金融機関から適格請求書を受け取らなければなりません。振込手数料は金融機関に支払っているためです。

ただし、次のように振込手数料の支払方法によって、適格請求書発行の要否が異なります。

  • ATM:不要(帳簿の保存は必要)
  • 窓口:必要(窓口で直接交付)
  • インターネットバンキング:必要(適格請求書のデータをダウンロードして保存)

ATMで振込手数料を支払う場合、自販機特例(税込3万円未満の取引となる自販機等での適格請求書交付・保存義務が免除される特例)に分類されるため、適格請求書の発行は必要ありません。

買手が代金の10万円を振り込み、振込手数料440円を支払った場合を例にした仕訳は、次のとおりです。

借方貸方摘要
買掛金100,000円普通預金100,000円〇月分の支払い
支払手数料440円普通預金440円

振込手数料は売手の方が支払う契約の場合、振込手数料は「売上値引」または「支払手数料」のいずれかで処理します。

振込手数料を値引きで処理する場合、本来は適格請求書(返還インボイス)の交付が必要です。しかし、金額が1万円未満の場合は返還インボイスの交付義務が免除されています。

代金の10万円が振り込まれ、振込手数料440円を売上値引として処理する売手側の仕訳は次のとおりです。

借方貸方摘要
普通預金99,560円売上100,000円〇月分の入金
売上値引440円

「支払手数料」として処理する場合は、買手が手数料を負担したと考えます。

売手は、440円分の振込手数料について金融機関から適格請求書を受領しなければなりません。なお、買手がATMを利用した場合は、適格請求書は不要です。

上記と同じ事例の場合、売手の仕訳は次のとおりです。

借方貸方摘要
普通預金99,560円売上100,000円〇月分の入金
支払手数料440円

請求額より入金額が多い場合の仕訳方法

請求した金額より入金額が多かった場合、処理方法は主に次の3つです。

  • 全額返金する
  • 過入金分だけを返金する
  • 次月に持ち越す

それぞれの仕訳方法について、みていきましょう。

全額返金する場合の仕訳

3万円を請求したところ、間違って30万円が入金された場合を例に仕訳方法を紹介します。

一度入金された全額を返す処理をする場合、入金があったときの仕訳は次のとおりです。

借方貸方摘要
普通預金300,000円売上30,000円〇月分売上
仮受金270,000円過入金分

振込手数料は先方が負担する場合、返金する金額から振込手数料(220円)を差し引きます。仕訳は、次のとおりです。

借方貸方摘要
売上30,000円普通預金299,780円〇月分の入金を返金
仮受金270,000円普通預金220円

過入金分だけを返金する場合の仕訳

同じ事例で多かった金額だけを返金する場合、まず入金時の仕訳を行います。

借方貸方摘要
普通預金300,000円売上30,000円〇月分売上
仮受金270,000円過入金分

差額の27万円を返金する場合、先方負担の振込手数料を返金する金額から差し引いて入金します。

借方貸方摘要
仮受金270,000円普通預金269,780円過入金を返金
普通預金220円

次月に持ち越す場合の仕訳

同じ事例で多く入金された分を翌月に回して、次月の請求と相殺する場合、入金時の仕訳は他の場合と同じです。

借方貸方摘要
普通預金300,000円売上30,000円〇月分売上
仮受金270,000円過入金分

過入金分の27万円は次月の請求分と相殺することになり、仮受金を前受金にする振替を行います。

借方貸方摘要
仮受金270,000円前受金270,000円過入金を次月分と相殺するため前受金にする

翌月の商品を提供した時点で、先月分に多く入金された分を代金に充当します。

借方貸方摘要
前受金270,000円売上270,000円前月の過入金を今月分の売上に充当

請求額より入金額が少ない場合の仕訳方法

請求した金額より入金額が少なかった場合、処理方法は主に以下の3つです。

  • 翌月に合算して請求する
  • 不足分を督促する
  • 値引きする

それぞれの仕訳方法を解説します。

翌月に合算して請求する場合の仕訳

10万円の請求に対し、1万円不足する9万円の入金があった場合を例に仕訳を説明します。

毎月取引がある取引先であれば、不足額を翌月の分と合算して請求することもできます。

まず、請求時の仕訳は次のとおりです。

借方貸方摘要
売掛金100,000円売上100,000円〇月分売上

1万円不足する9万円の入金があった場合の仕訳は、次のとおりです。

借方貸方摘要
普通預金90,000円売掛金90,000円〇〇株式会社より入金

不足分の1万円は保留し、次回の請求時に上乗せした金額を請求します。

不足分を督促する場合の仕訳

上と同じ事例で、単発の取引などで次月に回さない場合は、不足分の1万円を督促します。

まず、売上時の仕訳を行います。

借方貸方摘要
売掛金100,000円売上100,000円〇月分売上

1万円不足する9万円の入金があった場合の仕訳を行います。

借方貸方摘要
普通預金90,000円売掛金90,000円〇〇株式会社より入金

不足分1万円を督促し、入金になった時点で次のように仕訳します。

借方貸方摘要
普通預金10,000円売掛金10,000円〇〇株式会社より不足分の入金

値引きする場合の仕訳

不足分がわずかの場合、長年の取引先などでは値引きとして処理するケースもあるでしょう。

10万500円の請求で、500円不足していた場合を例に仕訳方法を紹介します。

売上時・入金時の仕訳は前の2例と同じです。

(売上時)

借方貸方摘要
売掛金100,500円売上100,500円〇月分売上

(入金時)

借方貸方摘要
普通預金100,000円売掛金100,000円〇〇株式会社より入金

不足分500円を値引きとして処理する場合、売上値引の勘定科目で仕訳します。

(値引き時)

借方貸方摘要
売上値引500円売掛金500円

〇〇株式会社

不足分を値引

請求額と入金額が違うときの消込方法

請求額と入金額が違うことがわかったら、消込の作業を行います。消込とは、売掛金や買掛金など債権・債務の勘定科目の残高を消していく作業のことです。

たとえば、請求した金額の入金があった場合、支払明細と照らし合わせながら入金のデータを消していくことで、売掛金が請求通りに回収できているか、回収の遅れがないかを把握できます。

消込の作業で入金額と請求額に差額が生じた場合、原因を特定して帳簿を正しい金額にしなければなりません。

自社に原因がある場合は修正を行い、次回の請求書発行業務の前に売掛金の残高を取引先の帳簿と一致させておくことが大切です。

買手側に原因がある場合は自社で修正ができないため、買手側と話し合いながら帳簿を一致させることが必要です。

請求額と入金額の不一致を防ぐために

請求額と入金額の不一致は、売手と買手のどちら側でも起こる可能性があります。売手側が不一致を防止するためには、請求書のダブルチェックやマニュアルの整備などの対策が必要です。送付前は、書類の不備がないかのチェックを入念に行うことを心がけましょう。

請求業務にシステムを導入することも、金額不一致の防止に効果的です。発行業務を自動化して業務を効率化でき、手作業で起こりがちなミスを防止できます。

先方がミスを起こさないように、働きかけることも大切です。請求書を送ったあと、金額に相違がないか確認のメールを送るなど、間違いがあった場合にも入金前に気付けるように対応しましょう。

請求額と入金額が違う場合の仕訳方法を覚えよう

請求した金額と入金額が違う場合、原因はさまざまです。まずは原因を確認し、過不足のある金額についてどのように処理するか、先方と話し合いましょう。

処理の方法によって、仕訳は異なります。入金額が多い場合、少ない場合の仕訳方法を把握し、帳簿管理を正しく行いましょう。

また、請求額と入金額の不一致を防止する対策もしっかり行うようにしてください。


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