• 更新日 : 2024年9月11日

耐用年数とは?償却資産別や中古資産の年数、減価償却の計算方法も解説

減価償却費を算出するには、固定資産の「耐用年数」が必要です。しかし、耐用年数は償却資産の種類によって細かく設定されており、建物や車両、工具などそれぞれ異なります。

そのため、確定申告のたびに耐用年数を確認しているという方も多いでしょう。そこで当記事では、減価償却の耐用年数についての基本知識や耐久年数との違い、償却資産別の法定耐用年数などわかりやすく解説します。

耐用年数とは?

耐用年数とは対象資産を使用できる「期間」のことです。減価償却資産は、使用すればするほど物理的に損耗し、価値が下がります。そして、いつかはその資産が持つ本来の価値を喪失することになるのです。

使用開始日から効用喪失日までの期間を耐用年数として、毎年少しずつ経費として処理していきます。これが減価償却と呼ばれるものです。

耐用年数が5年の減価償却資産の場合、5年間かけて減価償却費を計上します。金額が同じ資産でも、耐用年数が短ければ毎年の減価償却費はその分多くなり、耐用年数が長ければ少なくなるということです。

耐用年数はその価値を維持するために補修を行ったり、通常の作業条件下で使用されることを前提として「年数」が定められています。よって、同資産であっても耐用年数が異なる場合もあるため注意しましょう。

耐用年数と耐久年数の違いとは?

続いて、耐用年数と耐久年数の違いも確認しておきましょう。耐久年数とはメーカーなどが独自判断で「これくらいの期間は問題なく使用できる」と公表しているものです。
その判断の根拠に特に決まりはなく、あくまで推定であると考えたほうがよいでしょう。

一方、耐用年数とは機械設備や建物などの固定資産の使用できる期間として、法的に定められた年数のことです。国が「資産価値はこれくらいの期間でなくなる」と定めた期間を指します。

資産に耐用年数を定める理由は、減価償却費を決算書に計上するために必要となるからです。

税法における法定耐用年数の概要

この章では、税法における法定耐用年数の考え方を解説します。

税法における法定耐用年数の決め方

日本の税法では、法令で定められた耐用年数をもとに、税務処理を行う決まりとなっています。そのため、各資産に関して法令で画一的に定められている耐用年数を「法定耐用年数」と呼びます。

税法上の法定耐用年数は、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」に定められています。当該法令では、資産の「種類」や「用途」、「構造」をもとに、資産価値がゼロとなるまでの(理論的な)年数が決められています。

法定耐用年数が納税額に与える影響

法定耐用年数の違いは、前述のとおり減価償却費の金額に影響をおよぼします。
減価償却費の金額が異なると、損金として計上する金額も変わってくるため、納税額に違いが出てきます。

たとえば1,000万円の資産について、法定耐用年数が4年と5年のケースでは、以下のとおり1年あたりの減価償却費(定額法)が異なります。

  • 減価償却費(4年):250万円
  • 減価償却費(5年):200万円

1年間違うだけで、損金算入の基準となる減価償却費に50万円もの差が生じます。どのくらい税額に差額が生じるかはケースバイケースであるものの、納税額に影響を及ぼすことが見て取れるでしょう。

基本的には、法定耐用年数が大きくなるほど、1年あたりの減価償却費は小さくなる(損金が少なくなる)ため、納税額は多くなります。

法定耐用年数と会計上の耐用年数が一致しない場合の処理

一般的には、「耐用年数=法定耐用年数」として語られることが多いです。
しかし、企業会計財務諸表の作成)にあたっては、各資産の耐用年数を個々の状況(利用度合いや企業環境の変化など)に応じて定めることになります。つまり、会計上ではある程度自由に耐用年数を決定できます。

しかし、会計上の耐用年数に関係なく、税務処理の際には法定耐用年数の適用が求められます。
個別的耐用年数(会計上の耐用年数)と一致しない場合には、会計と税務の減価償却費の差額を調整する必要があります。

※参考サイト:e-Gov「減価償却資産の耐用年数等に関する省令

償却資産別の法定耐用年数

前述のとおり、減価償却資産の種類ごとに「法定耐用年数」が定められています。そこで、主要な減価償却資産の法定耐用年数を表にまとめましたので確認しましょう。

建物の耐用年数

建物は構造や用途などによって、耐用年数が定められています。建物の法定耐用年数は次のとおりです
【建物】

構造・用途細目耐用年数
木造・合成樹脂造のもの事務所用のもの24
店舗用・住宅用のもの22
飲食店用のもの20
旅館用・ホテル用・病院用・車庫用のもの17
公衆浴場用のもの12
工場用・倉庫用のもの(一般用)15
木骨モルタル造のもの事務所用のもの22
店舗用・住宅用のもの20
飲食店用のもの19
旅館用・ホテル用・病院用・車庫用のもの15
公衆浴場用のもの11
工場用・倉庫用のもの(一般用)14
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造のもの事務所用のもの50
住宅用のもの47
飲食店用のもの-
  延べ面積のうちに占める木造内装部分の-
  面積が30%を超えるもの34
  その他のもの41
旅館用・ホテル用のもの-
  延べ面積のうちに占める木造内装部分の-
  面積が30%を超えるもの31
 その他のもの39
店舗用・病院用のもの39
車庫用のもの38
公衆浴場用のもの31
工場用・倉庫用のもの(一般用)38
れんが造・石造・ブロック造のもの事務所用のもの41
店舗用・住宅用・飲食店用のもの38
旅館用・ホテル用・病院用のもの36
車庫用のもの34
公衆浴場用のもの30
工場用・倉庫用のもの(一般用)34
金属造のもの事務所用のもの-
 骨格材の肉厚が、(以下同じ。)-
  4mmを超えるもの38
  3mmを超え、4mm以下のもの30
  3mm以下のもの22
店舗用・住宅用のもの-
  4mmを超えるもの34
  3mmを超え、4mm以下のもの27
  3mm以下のもの19
飲食店用・車庫用のもの-
  4mmを超えるもの31
  3mmを超え、4mm以下のもの25
  3mm以下のもの19
旅館用・ホテル用・病院用のもの-
  4mmを超えるもの29
  3mmを超え、4mm以下のもの24
  3mm以下のもの17
公衆浴場用のもの
  4mmを超えるもの27
  3mmを超え、4mm以下のもの19
  3mm以下のもの15
工場用・倉庫用のもの(一般用)
  4mmを超えるもの31
  3mmを超え、4mm以下のもの24
  3mm以下のもの17

【建物附属設備】
構造・用途細目耐用年数
アーケード・日よけ設備主として金属製のもの15
その他のもの8
店舗簡易装備3
電気設備(照明設備を含む。)蓄電池電源設備6
その他のもの15
給排水・衛生設備、ガス設備15

【参照】国税庁 耐用年数表

車両の耐用年数

車の耐用年数は、一般用のものと運送事業者等用で分かれています。

構造・用途細目耐用年数
一般用のもの
(特殊自動車・次の運送事業用等以外のもの)
自動車(2輪・3輪自動車を除く。)-
小型車(総排気量が0.66リットル以下のもの4
貨物自動車-
  ダンプ式のもの4
  その他のもの5
  報道通信用のもの5
  その他のもの6
2輪・3輪自動車3
自転車2
リヤカー4
運送事業用・貸自動車業用・自動車教習所用のもの自動車(2輪・3輪自動車を含み、乗合自動車を除く。)-
  小型車(貨物自動車にあっては積載量が2トン以下、その他のものにあっては総排気量が2リットル以下のもの)3
  大型乗用車(総排気量が3リットル以上のもの)5
  その他のもの4
乗合自動車5
自転車、リヤカー2
被けん引車その他のもの4

【参照】国税庁 耐用年数表

器具や備品の耐用年数

事務机やパソコンなど器具・備品の耐用年数は表はこちらです。

構造・用途細目耐用年数
家具、電気機器、ガス機器、家庭用品(他に揚げてあるものを除く。)事務机、事務いす、キャビネット-
  主として金属製のもの15
  その他のもの8
応接セット
  接客業用のもの5
  その他のもの8
ベッド8
児童用机、いす5
陳列だな、陳列ケース-
冷凍機付・冷蔵機付のもの6
  その他のもの8
その他の家具-
  接客業用のもの5
  その他のもの-
  主として金属製のもの15
  その他のもの8
ラジオ、テレビジョン、テープレコーダーその他の音響機器5
冷房用・暖房用機器6
電気冷蔵庫、電気洗濯機その他これらに類する電気・ガス機器6
氷冷蔵庫、冷蔵ストッカー(電気式のものを除く。)4
カーテン、座ぶとん、寝具、丹前その他これらに類する繊維製品3
じゅうたんその他の床用敷物-
小売業用・接客業用・放送用・レコード吹込用・劇場用のもの3
  その他のもの6
室内装飾品-
  主として金属製のもの15
  その他のもの8
食事・ちゅう房用品
陶磁器製・ガラス製のもの2
  その他のもの5
その他のもの
主として金属製のもの15
  その他のもの8
事務機器、通信機器謄写機器、タイプライター-
孔版印刷・印書業用のもの3
  その他のもの5
電子計算機-
  パーソナルコンピュータ(サーバー用のものを除く。)4
  その他のもの5
複写機、計算機(電子計算機を除く。)、金銭登録機、タイムレコーダーその他これらに類するもの5
  その他の事務機器5
テレタイプライター、ファクシミリ5
インターホーン、放送用設備6
電話設備その他の通信機器-
デジタル構内交換設備、デジタルボタン電話設備6
  その他のもの10
時計、試験機器、測定機器時計10
度量衡器5
試験・測定機器5
光学機器、写真製作機器カメラ、映画撮影機、映写機、望遠鏡5
引伸機、焼付機、乾燥機、顕微鏡8
看板・広告器具看板、ネオンサイン、気球3
マネキン人形、模型2
  その他のもの-
主として金属製のもの10
  その他のもの5
容器、金庫ボンベ-
  溶接製のもの6
  鍛造製のもの-
  塩素用のもの8
  その他のもの10
ドラムかん、コンテナーその他の容器-
  大型コンテナー(長さが6m以上のものに限る。)7
  その他のもの-
金属製のもの3
その他のもの2
金庫-
手さげ金庫5
その他のもの20
理容・美容機器5

【参照】国税庁 耐用年数表

中古資産の耐用年数を計算する方法

中古資産の耐用年数は、主に「法定耐用年数」、「見積法」、「簡便法」という3つの方法で計算されます。この章では、各方法の使い方や計算方法を解説します。

法定耐用年数

中古資産についても、通常の資産と同様に法定耐用年数を用いることが認められています。
ただし、耐用年数の適用等に関する取扱通達 1-5-1の規定により、一度法定耐用年数を用いた場合、後から後述する見積法や簡便法で算出した耐用年数に変更することは認められません。

また、中古資産への資本的支出の金額が、再取得価格の50%を超えるケースでは、見積法や簡便法の適用は認められません。

見積法(原則)

法定耐用年数ではなく、見積法を適用することも認められています。見積法とは、中古資産を事業用に使用し始めた時以降の使用可能期間として、耐用年数を見積もる手法です。

中古資産を取得した際、新品と同様の耐用年数を適用すると、実態に見合わない減価償却となります。また、納税者の視点から見ても不利な税務処理となり得ます。
そこで、税法では中古資産に関して、実際の資産の状況を考慮し、個別に耐用年数を見積もることが認められています。

法定耐用年数を適用しない場合は、原則として見積法の適用が求められます。

簡便法(例外)

使用可能期間の見積もりが難しい場合には、簡便法によって耐用年数の期間を算出できます。

法定耐用年数の全部が経過している資産の場合、「法定耐用年数×20%」の計算式で耐用年数を算出します。法定耐用年数の一部のみが経過している資産に関しては、「(法定耐用年数−経過年数)×20%」の計算式を適用します。
算出した年数に1年未満の端数が生じた場合には、端数は切り捨てとなります。

たとえば、法定耐用年数が20年であり、かつ法定耐用年数の全部が経過している場合、耐用年数は「20年×0.2=4年」となります。

なお、年数が2年に満たない場合には、耐用年数は2年として計算します。

参考サイト:国税庁「中古資産の耐用年数に関する法令解釈通達
国税庁「No.5404 中古資産の耐用年数

減価償却の方法

事業経営するうえで「減価償却」は重要なポイントのひとつです。決算や財務分析、キャッシュ・フローなどに大きな影響を与えます。

経理作業を進めるうえでは欠かせないものの、初心者には分かりにくいもの事実です。減価償却の意味や仕訳の方法などを見ていきましょう。

減価償却とは

減価償却とは車やパソコン、機械設備などを購入した際に支払った代金を、購入した年に一度に経費とせず、分割して少しずつ計上するルールのことを指します。たとえば、300万円の車を購入した場合、その年に購入代金の300万円をすべてを経費として計上することができません。300万円を何年かで少しずつ経費にすることを減価償却といいます。

定額法と定率法

減価償却費の計算方法には2種類あります。一定額を償却する「定額法」と一定割合で償却する「定率法」です。

定額法は初年度から耐用年数の最後の年まで定額で償却するので、費用負担は毎年同額になります。一方、定率法は初年度が負担額が一番大きく、その後は年々少しずつ小さくなるのです。

建物や無形固定資産は、定額法で計算することが定められています。しかし、それ以外の固定資産は計算方法を選択可能です。

一般的には早く費用化できる定率法を選ぶことが多いでしょう。詳しい内容は次を参考にしてみてください。

>>減価償却とは?計算方法や減価償却費の仕訳を理解するためのポイント

耐用年数に関する一般的な誤解

会計や税務に詳しくない場合、耐用年数について誤解を持っているケースが少なくありません。誤解した状態だと、さまざまなリスクがあるため注意が必要です。
この章では、耐用年数に関する2つの誤解について解説します。

税務上、耐用年数を恣意的に設定することはできない

1つ目の誤解は、税務申告に際して耐用年数を恣意的に設定できるというものです。
会計上では耐用年数を任意に設定できますが、税務上は法定耐用年数の利用が原則となります。

耐用年数を恣意的に決定できてしまうと、故意に納税額を減らせるようになってしまいます。
そのため、日本の税法では法定耐用年数の適用を原則としています。
法定耐用年数以外の年数を設定すると、申告内容について税務署から否認されるといったリスクがあるため、注意が必要です。

会計と税務の耐用年数は一致していなくても問題ない

2つ目の誤解は、会計と税務で耐用年数が一致していなければならないというものです。
実際は、会計と税務の耐用年数が一致している必要はありません。
前述のとおり、会計の実務では各企業が実情に応じて耐用年数を決定することが認められており、法定耐用年数でなくても問題はないのです。

ですが多くの企業では、会計処理でも法定耐用年数を適用しています。
理由としては、会計上の耐用年数と税務上の法定耐用年数に違いがある場合、調整に余分なリソースを割くことになるためです。会計と税務の耐用年数を一致させておけば、実務にかかる労力や工数を省くことが可能となります。

実際のところ会計・監査の実務は、本来「使用環境ごとに耐用年数を設定すべき」という考えに基づいていますが、実務上は法定耐用年数の適用が容認されています。

米国における減価償却や耐用年数の税務

日本と米国では、減価償却や耐用年数の税務に関する規則が大きく異なります。

米国では、減価償却に「修正加速原価回収法(MACRS)」という手法が使用されています。
たとえば、居住用の賃貸不動産に関しては、日本と異なり耐用年数に建築構造の区分が設定されていません。また、新築と中古の区別がない点も日本と大きく異なります。

こちらは一例であり、違いはさまざまな点にあります。
米国での税務処理が必要となる場合は、かならず現地税法に則って行うことが重要です。

参考サイト:左海会計・不動産鑑定会社/税理士事務所「日米の減価償却の違いについて

耐用年数を確認して正しく固定資産を管理しよう

ここまで減価償却の耐用年数の基本知識や耐久年数との違い、償却資産別の法定耐用年数などについて紹介しました。難しいイメージのある減価償却ですが、基本知識さえおさえることができれば、問題なく処理できるでしょう。

耐用年数を確認して正しく固定資産を管理することで、節税効果も期待できるのです。固定資産を購入する場合には、事前に耐用年数を調べることをおすすめします。

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よくある質問

耐用年数とは?

対象資産を使用できる「期間」のことです。詳しくはこちらをご覧ください。

償却資産別の法定耐用年数は?

減価償却資産の種類ごとに「法定耐用年数」が定められています。詳しくはこちらをご覧ください。

減価償却の計算方法は?

一定額を償却する「定額法」と一定割合で償却する「定率法」の2種類あります。詳しくはこちらをご覧ください。


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