• 更新日 : 2024年8月8日

軽減税率の対応をしなかった事業者の末路。今からでもやるべき対応

軽減税率が始まって混乱しているのは、消費者だけではありません。お店や事業を行う個人事業者と法人は、さらに面倒な手続きに悩まされています。

レジを軽減税率対応のものに変更し、キャッシュレス還元事業の登録をするだけでなく、新しく導入された「区分記載請求書等保存方式」によって、混在する消費税8%と10%の取引を明確に記録しなければいけなくなりました。(執筆者:元国税局職員・お笑い芸人 さんきゅう倉田)

区分経理をしなかった事業者は…


消費税の確定申告書は、税率ごとに区分して記載するようになっています。あなたがもし、売上や経費を税率ごとに整理していなければ、確定申告書を正確に記入することができなくなります。確定申告時期に慌てて帳簿を修正する、納税額に過不足が出るといった事態を招きかねません。

必要な対応

軽減税率対象の取引は、帳簿上にその旨を記載し、確定申告に備えましょう。記載を失念していた場合は、請求書などを見て、さかのぼって記載します。

区分記載請求書対応しなかった事業者は…


取引先に送る請求書を、区分記載請求書にしなければいけません。もし、消費税が区分記載されていない請求書を送ると、もらった取引先が仕入税額控除をできず、翌年に納める消費税が増えてしまいます。

仕入税額控除とは

売上にかかっている消費税から仕入にかかっている消費税を引くことです。引いた結果が、その人の納める消費税となります。個人事業者や法人にとって、消費税はコストなので、納める金額はなるべく少ない方が喜ばしいです。

しかし、取引先が区分記載請求書を送ってくれないと、自分たちが控除できる消費税が減ってしまいます。だから、新しいルールのもとでは、みんながお互いに区分記載請求書を送り合うのが望ましくなります。

免税事業者も他人事じゃない?

基準となる年の課税売上高が1000万円未満で、消費税の納税や確定申告をしていない「免税事業者」であっても、取引先には区分記載請求書を送る方が良いでしょう。でないと、相手があなたとの取引を嫌がる可能性があります。

あなたがとてつもない価値を発揮していて、代替業者がいなければ、区分記載請求書でなくとも取引してくれるかもしれません。しかし、もし、あなたと競合する業者があり、どちらと取引をするか天秤にかけられた場合、区分記載請求書を送ってくれる業者が選ばれることになるでしょう。

必要な対応

請求書は、タイトルを「区分記載請求書」とする必要はなく「請求書」のままで大丈夫です。内容は、これまでの請求書に「軽減税率対象品目である旨」と「税率ごとの合計額」の記載が追加で必要になります。

(1)軽減税率の対象に※をつけ、欄外に「※軽減税率対象」と記載する
(2)「軽減税率対象」と「標準税率対象」を別の表にする
(3)軽減税率対象の取引と標準税率対象の取引の請求書を分ける

などの方法があります。

また、帳簿には、毎日の売上と経費について、今までの

(1)取引相手の名称
(2)取引年月日
(3)取引の内容
(4)取引の対価の額

に加えて、(5)軽減税率の対象かどうかを明記します。

>>「区分記載請求書等保存方式」についてもっと詳しく知る!

覚えておきたい例外

【例外1】軽減税率について書かれていない請求書をもらった場合は、どれが軽減税率の対象のモノであるかと、消費税8%の取引と10%の取引それぞれの合計額を追記すれば、仕入税額控除を行うことができます。

【例外2】今まで通り3万円未満の取引は、請求書がなくとも、軽減税率の対象であることを帳簿に書けば仕入税額控除ができます。

申告時に税率ごとの税額計算をしなかった事業者は…


これも区分経理をしなかった事業者と同じように、納税額に過不足が出たり、訂正申告や修正申告が必要になったりします。

必要な対応

あなたが、消費税の納税と確定申告を要する課税事業者なら、消費税が8%の取引か10%の取引か帳簿にきちんと記載し、それぞれの合計額を整理する必要があります。

ただし、売上が5,000万円以下で、簡易課税制度を選択しているのなら、売上の消費税が区分されていれば計算ができます。自分の状況を把握し、記録を整理し、正しく申告しましょう。
免税事業者であれば、消費税の確定申告は不要なので、これらの作業は必要ありません。

まとめ


新たに始まった、「区分請求書等保存方式」。

軽減税率の対象となる取引がある場合には、請求書のフォーマットを変更しましょう。また、仕入に軽減税率対象のものがあれば、請求書をもらってから確認する必要があります。何度も取引をする相手なら、雛形を変更してもらいましょう。

2023年には、「適格請求書等保存方式」もはじまります。時代とともに、変化をし続ける税金のルール。事業や経営に集中するためにも、煩わしい作業はお金を払って、他人に任せると良いと思います。


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