- 更新日 : 2021年9月17日
返金の勘定科目と仕訳、返品時やキャンセルによる会計処理は?

商品の販売やサービスの提供を行う企業や個人事業では、さまざまな返金処理が発生します。例えばクレームによる返金や、クレジットカード決済のキャンセルによる返金などです。返金という事実だけであれば、敷金や保証金の返金もあります。商品に欠陥があった場合は、返金と同時に顧客から商品を返品してもらうケースもあるでしょう。この記事では、返金や返品が発生するケースの中でも、商品やサービスの返金・返品に焦点を当てて、仕訳や使用する勘定科目について解説します。
目次
返金・返品が発生するケース
返品や返金が発生するのは、以下のような状況です。
- 違う商品を送付してしまい、その返品を受けた
- 受注時に商品数を誤ってしまい、超過分の返品を受けた
- 販売した商品の中に不良品があり、返品を受けた
- 返品権付き商品の返品を受けた
- 注文が取り消しになり、先に入金されていた額を返金した
- 注文の取消を受け、クレジットカードで決済された額を返金した
- クレームを受けて商品を回収(返品)し、代金を返金した
この他にも、「取引先への入金額が請求額よりも多かった」などで返金が発生することもあります。この記事では、返金や返品が発生するケースのうち、商品やサービスの返品や返金の仕訳を中心に見ていきます。
返金したときの勘定科目・仕訳
返金は発生するケースとしては、商品やサービスに関する返金以外に、「取引先から多く入金された分を返金した」なども考えられます。いずれにしても「先の取引を取り消す」と考え、入金を受けたときの仕訳と逆の仕訳を行います。ここでは、返金が発生するパターンをいくつか取り上げて、その仕訳と勘定科目について解説します。
商品代金を返金した
販売した商品の返品を受けた場合、返金にともなって売上が減少します。このケースでは、貸方は支払方法(現金での支払いなら現金)、借方は売上として、すでに計上している売上を取り消します。
(仕訳例)販売した商品に破損があったとの連絡を受け、返品を受けた。この取引についてすでに取引先から入金を受けていたため、破損分の商品代金10万円分を返金することで合意し、本日当座預金から取引先に返金した。
商品代金を返金した(返金分を区分したい場合)
商品代金の返品を受けたときは、「借方に売上を計上して取り消す」と説明しました。しかし、売上の取り消しでは「返金分がどれだけあったか」を後で確認できません。返金分を分けて会計処理したいときは、「売上戻り」の勘定科目を使います。
(仕訳例)販売した商品に破損があったとの連絡を受け、返品を受けた。この取引についてすでに取引先から入金を受けていたため、破損分の商品代金10万円を返金することで合意し、本日当座預金から取引先に返金した。
ただし、「売上戻り」は決算書には表示しない科目なので、決算時に売上と相殺しなければなりません。
クレジットカード決済のキャンセルにともない返金した
販売の相手が消費者であれば、クレジットカードでの決済もあるでしょう。クレジットカード決済がキャンセルになって返金するケースでは、クレジットカードの割賦方式に注意が必要です。
(仕訳例1)顧客からのキャンセルを受けて、すでにクレジット会社から入金のあったクレジットカード決済の5万円分を現金で返金した。
クレジットカード会社と加盟店契約を結んでいる場合、顧客が分割払いやリボルビング払いを選択していても、加盟店には一括で代金が支払われます。通常の売上と同じく「売上」で計上しているはずですので、返金時は売上を取り消す処理を行います。
(仕訳例2)顧客と直接割賦契約をしたクレジットカード払いの注文30万円について、キャンセルの連絡があり、すでに入金のあった1万円を現金で返金した。
販売会社が独自に審査した上でクレジットカードを発行し、それが利用されるケースもあります。このケースは割賦販売にあたるため、注文を受けたときは貸方に割賦売上、未収分は割賦売掛金として借方に計上されているはずです。したがって返金があったときは、上記のように注文時とは逆の仕訳を行います。
返金されたときの勘定科目・仕訳
ここでは、「受け取った商品に欠陥があり、返金されたとき」などの仕訳をいくつかピックアップして説明します。
商品代金が返金された
「仕入れた商品に欠陥があった」といった理由で返金があったときは、通常は仕入を取り消す仕訳を行います。
(仕訳例)仕入れた商品に破損があった。取引時にすでに支払いを済ませており、仕入先とは破損分を返品し、返品分を返金することで話がまとまり、本日破損分の10万円が当座預金に入金された。
商品代金が返金された(返金分を区分したい場合)
販売した商品の返金を行ったときと同様に、仕入分の返金を受けた場合は「仕入戻し」の勘定科目を使うことで、返金を受けた分を区別できます。「売上戻り」と同様に「仕入戻し」は決算書には表示しない科目なので、使用する場合は決算時に「仕入」と相殺しなければなりません。
(仕訳例)仕入れた商品に破損があった。取引時にすでに支払いを済ませており、仕入先とは破損分を返品し、返品分を返金することで話がまとまり、本日破損分の10万円が当座預金に入金された。
クレジットカード決済分が返金された
クレジットカード決済で商品やサービスを購入するときは、購入時に貸方に未払金(クレジットカード利用分)を計上します。
クレジットカード決済は、すぐに決済が行われる場合であっても、実際の支払いは1ヵ月以上先になるケースがほとんどです。クレジットカード決済後すぐにキャンセルし、口座から利用分が引き落とされていないときは、以下のような仕訳を行います。
(仕訳例)5万円分の消耗品をクレジットカード決済で購入したが、誤った商品を注文したことに気づき、後日注文をキャンセルした。
返金しない・返金されないときの勘定科目・仕訳
ここでは、返金に値するような事実(商品の破損や欠品など)が発生したものの返金をしないケースや、返金されないケースについて、いくつかのパターンを例に解説します。
返金しないときの勘定科目と仕訳
返金に値する事実があっても返金しない理由はいくつか考えられますが、ここでは2つのパターンを例として取り上げます。
(仕訳例)販売した商品5万円について破損があったとの連絡を受け、返品があった。すでに商品代金は入金されており、先方との話し合いの結果、破損分の返金は行わずに、次回の販売分と相殺することで合意した。
上記のケースでは、まず今回の返品分は売上の取り消しになるため、借方の勘定科目は「売上」です。現金の返金は行わず、次回売上分との相殺になるので、次回の売上の内金として貸方には「前受金」を計上します。
(仕訳例)取引先から売上分の入金があったが、10円多く入金されていた。継続的に取引している相手ではなく、振込手数料がかかることから、少額のため返金の必要はないとの連絡を受けた。
超過分は、入金があったときに貸方に「仮受金」を計上します。そのため、返金の必要がないとの連絡を受けたら、計上している「仮受金」を取り消す処理が必要です。多く受け取った10円は、「雑所得」として処理します。
返金されないときの勘定科目と仕訳
返金されないときの仕訳のパターンについて、2つ取り上げます。
(仕訳例)仕入れた商品2万円について破損があったため、返品した。すでに商品代金は支払っており、先方との話し合いの結果、破損分の返金は行わずに、次回の販売分と相殺することで合意した。
このケースは、先に説明した売上の相殺と考え方は同じです。破損分は仕入を取消し、返金が行われなかった分は次回相殺する分の前払いと考えて、借方に「前払金」を計上します。
(仕訳例)取引先へ10円多く入金してしまった。継続的に取引している相手ではなく、振込手数料がかかることから、「少額のため返金の必要はない」と伝えた。
入金した分は「仮払金」で処理しているはずなので、まず仮払金を貸方に計上して相殺します。本来よりも多く入金していますが、返金は求めないので借方は雑損失です。
返金や返品があったときは、取引を取り消すための仕訳が必要
返金や返品があったときは、取引を取り消すための仕訳が必要です。商品の返品やキャンセルによる返金はよくある取引なのでですので、取引時の仕訳をイメージしながら、どのような仕訳を行うか押さえておきましょう。
よくある質問
なぜ返金や返品が発生する?
商品の破損や欠品、納品の遅延のほか、本来の入金額との相違があった場合などに返金や返品が発生します。詳しくはこちらをご覧ください。
クレジットカード決済のキャンセルはどうする?
相手がクレジットカードで決済した分がキャンセルになったときは、その取引がなかったものとして、取引発生時の仕訳と逆の仕訳を行います。詳しくはこちらをご覧ください。
返金しないケースはある?
返金に値する事実があっても、返金しないケースがあります。例えば、返金ではなく次の取引分と相殺することにした場合などです。詳しくはこちらをご覧ください。
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