• 作成日 : 2024年10月17日

産業競争力強化法とは?主な施策や直近の改正ポイントをわかりやすく紹介

産業競争力強化法は、中長期にわたる経済の低迷から脱却し、日本の産業競争力を高めるために、2013年(平成25年)12月4日に成立した法律です。新規事業の創造につながる規制改革の措置や中小企業の創業・事業再生の措置などが置かれています。

この記事では、企業規模別の主な施策や令和6年度の産業競争力強化法の改正について解説します。

産業競争力強化法とは

産業競争力強化法は、2013年(平成25年)に成立し、2015年(平成27年)10月1日に施行された法律です。法律に定める産業競争力とは、産業活動で高い生産性や需要を確保することで、高い収益性を実現する能力を表します。

中長期にわたり日本の経済が低迷する中、経済社会情勢の変化に対応し、日本経済の歪みとなる「過剰規制」「過少投資」「過当競争」を是正し、国全体の産業競争力を高める目的で制定されました。

産業競争力強化法における主な施策

産業競争力強化法により具体的にどのような施策が展開されているのでしょうか。企業規模別に令和6年9月時点で展開されている施策を紹介します。

大企業向けの施策

大企業向けには以下の施策が展開されています。

  • 事業適応計画
  • グレーゾーン解消制度
  • 規制のサンドボックス制度(新技術等実証制度)
  • 新事業特例制度
  • 債権譲渡における第三者対応要件の特例
  • 場所の定めのない株主総会(バーチャルオンリー株主総会)に関する制度
  • イノベーション拠点税制(イノベーションボックス税制)
  • オープンイノベーション促進税制
  • ファンドによる海外投資規制の特例
  • 産総研による研究開発施設等の提供
  • 研究開発税制 オープンイノベーション型(スタートアップとの共同研究等)
  • 特定新需要開拓事業活動計画
  • 事業再編計画
  • 事業再生ADR
  • 産業改革登記機構(JIC)による投資活動
  • 技術情報管理認証制度

産業競争力強化法の対象となる大企業とは、中小企業、中堅企業、スタートアップのいずれにも該当しない企業のことです。大企業は、中小企業やスタートアップなどと共通の施策の一部を適用できます。

適用できる制度のうち、上場会社を対象にインターネットなどの利用で株主総会の開催を認める「バーチャルオンリー株主総会」などは大企業と関連性が高いでしょう。スタートアップ企業の株式を一定以上取得することで、取得価額の25%の所得控除ができる「オープンイノベーション促進税制」なども大企業と関連性の高い制度です。

中小企業向けの施策

中小企業向けには以下の施策が展開されています。

  • 事業適応計画
  • グレーゾーン解消制度
  • 規制のサンドボックス制度(新技術等実証制度)
  • 新事業特例制度
  • 債権譲渡における第三者対応要件の特例
  • 場所の定めのない株主総会(バーチャルオンリー株主総会)に関する制度
  • 創業関連保証
  • 創業支援等事業計画
  • イノベーション拠点税制(イノベーションボックス税制)
  • オープンイノベーション促進税制
  • ファンドによる海外投資規制の特例
  • 産総研による研究開発施設等の提供
  • 研究開発税制 オープンイノベーション型(スタートアップとの共同研究等)
  • 特定新需要開拓事業活動計画
  • 事業再編計画
  • 特別事業再編計画
  • 事業再生ADR
  • 中小企業活発化協議会による事業再生支援等の機能強化
  • 産業改革登記機構(JIC)による投資活動
  • 技術情報管理認証制度

産業競争力強化法に定める中小企業者とは、普通企業の場合、資本金や従業員数の要件を満たす以下のいずれかに該当する事業者(会社または個人)のことです。

業種資本金または出資金の額従業員数(常時)
製造業・建設業・運輸業その他3億円以下300人以下
卸売業1億円以下100人以下
サービス業5千万円以下100人以下
小売業5千万円以下50人以下

出典:産業競争力強化法|e-GOV

適用できる施策のうち中小企業にのみ適用があるのは、「中小企業活性化協議会による事業再生支援等の機能強化」です。中小企業活性化協議会は、中小企業の事業再生などを支援する公的な機関です。機能強化により、事業再生以外にも中小企業の幅広いサポートを行っています。

中堅企業向けの施策

中堅企業向けには以下の施策が展開されています。

  • 事業適応計画
  • グレーゾーン解消制度
  • 規制のサンドボックス制度(新技術等実証制度)
  • 新事業特例制度
  • 債権譲渡における第三者対応要件の特例
  • 場所の定めのない株主総会(バーチャルオンリー株主総会)に関する制度
  • 成長意欲のある中堅企業に対する成長支援
  • イノベーション拠点税制(イノベーションボックス税制)
  • オープンイノベーション促進税制
  • ファンドによる海外投資規制の特例
  • 産総研による研究開発施設等の提供
  • 研究開発税制 オープンイノベーション型(スタートアップとの共同研究等)
  • 特定新需要開拓事業活動計画
  • 事業再編計画
  • 特別事業再編計画
  • 事業再生ADR
  • 産業改革登記機構(JIC)による投資活動
  • 技術情報管理認証制度

産業競争力強化法における中堅企業者とは、中小企業に該当しない事業者で、常時使用する従業員の数が2000人以下の会社または個人のことです。

適用できる施策のうち、中堅企業に特化しているのが「成長意欲のある中堅企業に対する成長支援」です。これにより、中堅企業の定義が行われることになりました。国内投資に積極的で、賃金水準の高い中堅企業に対する支援策として、補助金事業や中堅企業枠の賃上げ促進税制などが実施されています。

スタートアップ向けの施策

スタートアップ向けには以下の施策が展開されています。

  • 事業適応計画
  • グレーゾーン解消制度
  • 規制のサンドボックス制度(新技術等実証制度)
  • 新事業特例制度
  • 債権譲渡における第三者対応要件の特例
  • 場所の定めのない株主総会(バーチャルオンリー株主総会)に関する制度
  • 募集新株予約権の機動的な発行に関する制度
  • 国立大学等によるVC等への出資
  • ディープテックスタートアップへの民間融資に対する債務保証制度
  • スタートアップ挑戦支援事業
  • 創業関連保証
  • 創業支援等事業計画
  • イノベーション拠点税制(イノベーションボックス税制)
  • オープンイノベーション促進税制
  • ファンドによる海外投資規制の特例
  • 産総研による研究開発施設等の提供
  • 研究開発税制 オープンイノベーション型(スタートアップとの共同研究等)
  • 特定新需要開拓事業活動計画
  • 事業再編計画
  • 特別事業再編計画
  • 事業再生ADR
  • 産業改革登記機構(JIC)による投資活動
  • 技術情報管理認証制度

一般的に、スタートアップとは、新しい技術やビジネスモデルで急成長を目指す新規の企業をいいます。

適用できる施策のうち、ベンチャー向けに特化している施策は、創業に必要な資金調達や経営支援などを中心に展開されています。例えば、「スタートアップ挑戦支援事業」です

IPOやM&Aを目指すスタートアップを対象に、オンラインで、成長過程で生じるさまざまな課題を乗りこえるアドバイスを無料で受けられる施策です。事業計画や資金調達、顧客開拓などの幅広い相談ができます。国立大学などの研究成果を事業に活用しようとするベンチャーに対して、国立大学等からの出資や技術的支援などを受けられるようにした施策「国立大学等によるVC等への出資」などの制度もあります。

直近の産業競争力強化法の改正ポイント

国際競争の激化や経済情勢の変化に対応し、国内の産業が持続的な発展ができるように、産業競争力強化法は令和6年改正が行われました。

主な改正の内容について取り上げます。

中堅企業の新たな定義づけ

令和6年改正では、中堅企業と特定中堅企業の定義が追加されました。中堅企業は、中小企業に該当しない企業で、常時雇用する従業員が2000人以下の企業です。特定中堅企業は、中堅企業の中でも国内投資に積極的で賃金水準の高い企業をいいます。

中堅企業は国内経済に大きく貢献している一方で、中小企業の対象外として大企業と同列に扱われていたことから、大企業と分ける目的で定義づけがされました。

中堅企業向けの新たな施策

中堅企業が産業競争力強化法において新たに定義づけられたことで、中堅企業独自の施策や中小企業や大企業と差別化した施策が打てるようになりました。改正により、中堅企業の支援策の充実が図られています。例えば、特別事業再編計画によりグループの成長を強化しようとする中堅企業・中小企業の支援が充実しました。特例の確認を受けた特定中堅企業であれば、中堅・中小グループ化税制や登録免許税の軽減が受けられます。

ストックオプションの整備

会社法の特例措置を設ける形で、スタートアップのストックオプションが利用しやすくなりました。従来の非公開会社は株主総会によりストックオプションの範囲を決議する必要があり、取締役会で決定できる範囲は限定的でした。改正により、取締役会に委任できる範囲などが拡大し、ストックオプションが利用しやすい仕組みに変化しています。

特定の分野における税制面での支援

半導体や電気自動車など、事業コストが高水準で、生産時のコストが高額になる特定の分野については、初期投資の支援だけでは不十分な面がありました。多大なコストがかかると、国内投資が促進されません。令和6年の改正では、生産段階のコストに対応するため、戦略分野国内生産促進税制が設置されました。特定の分野を展開する事業者に対し、生産や販売量に応じて税額を控除する制度です。事業計画の認定から10年の据置期間に最大4年の繰越期間が加わった期間中は、一定の控除額を法人税から控除できます。

産業競争力強化法に注目して適用できる施策を探そう

産業力強化法は、国内の産業を活性化する目的で創設された制度です。法律に基づき、企業の規模別にさまざまな支援策が行われています。国際情勢や国内の経済状況などに応じて改正も行われているため、最新の情報をもとに、活用できる施策がないか確認してみましょう。


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