• 更新日 : 2021年6月10日

貸借対照表の現金・預金で見るべきポイントとは?

貸借対照表の現金・預金で見るべきポイントとは?

会社の会計期間1期分の財務状況を示す表が、貸借対照表です。貸借対照表は、表示科目を「資産」「負債」「純資産」の3つの部に分けて表示します。「資産」のうち、1番上にくる表示科目が「現金及び預金」(現金・預金、現金預金)です。

貸借対照表の「現金及び預金」とは何を表したものなのか、貸借対照表上の位置や見るべきポイントもあわせて解説します。

現金・預金とは

現金・預金とは、現金と預金の総称です。貸借対照表上に表示される現金・預金は、貸借対照表日(事業末日など)の現金と預金の総額を表します。表示上は、現金・預金のほか、「現金及び預金」や「現金預金」などと表示されます。いずれの表示でも意味は同じです。次に、現金とは何か、預金とは何か、貸借対照表上でのそれぞれの意味を解説します。

現金とは

「現金」と聞くと、円やドルなどの通貨をイメージするかもしれません。しかし、会計上の現金は日本円や外国通貨はもちろん、ほかにも含まれる点に注意が必要です。

会計上の「現金」は、いわゆるお金ではなく、すぐに現金化ができるものという基準で考えます。通貨でなくても、現金化が直ちにできるものなら「現金」なのです。通貨以外に、会計上の「現金」には、以下のような資産が含まれます。

(通貨以外の現金の主な例)

  • 小切手(他人振出)
  • 他人から受け取った小切手は、銀行で手続きすることによって小切手の額面金額を受け取れます。すぐに換金できることから、期末時に所有している他人振出の小切手は、現金として処理します。

  • 郵便為替証書
  • 受け取った郵便為替証書(普通為替証書や定額為替証書)は、郵便局で現金に引き換えてもらえるものです。すぐに換金できるため、現金で処理します。

  • 配当金領収証
  • 所有する株式について、配当金を配当金領収証受領方式で受け取っている場合に生じるものです。小切手などと同様、金融機関ですぐに現金に換えられるため、期末時に所有する配当金領収証は現金に含みます。

  • 利札(期限到来済のもの)
  • 利付債を所有している場合で、期限が到来した利札があれば、すぐに換金できるため、現金で処理します。

預金とは

預金とは、金融機関に預け入れているお金をいいます。代表的な預金は、企業が小切手の振り出しなどで利用する当座預金です。ほかの預金の種類と異なり利息は付きませんが、預金額全額の元本保証があります。現金による支払いの代わりによく使われる預金口座です。

ほかにも、預金には、普通預金や定期預金、通知預金などに預け入れている額を含みます。いずれも、ATMや窓口などですぐにお金に換えられるような性質のものです。現金と同じく換金性が高いことから、貸借対照表上では、「現金及び預金」のように期末時点でのすべての合計額をまとめて表示します。

ただし、注意しなくてはならないのは、預金であっても、一定期間引き出しが制限されるような預金は、貸借対照表上の「現金及び預金」には含まないことです。

例えば、満期日が設定されている定期預金は、1年基準を適用し、1年を超えるものについては「投資その他の資産」の「長期性預金」として、貸借対照表上は表示します。

現金・預金の貸借対照表上の場所は?

現金と預金の総額を表す「現金及び預金」(現金・預金、現金預金ともいう)は、以下の図のように貸借対照表の流動資産の部に位置します。流動資産とは、短期間で換金できるような資産のことです。正常営業循環基準により営業サイクルの中にある売掛金や商品などの資産、1年基準により1年以内に現金として回収見込みのある資産が含まれます。

なお、現金・預金は、上の図からもわかるように、流動資産の中でも一番上に表示されるのが通常です。これは、貸借対照表の資産は、財務流動性が高い資産、つまり換金しやすい資産から表示するルールがあるためです。

通常、流動資産の部は、「現金及び預金」のあとに、「受取手形」や「売掛金」のなどの表示科目が続きます。現金・預金の下にある、受取手形は期日が到来しないと通常受け取ることができないため、売掛金も相手からのアクションがないと現金化されません。つまり、ほとんどすぐに換金できるような現金・預金は、受取手形や売掛金よりも流動性が高いといえます。

貸借対照表上で、現金・預金を見るときは、すぐに換金できるような資産がどれくらいあるのか、もっとも流動性の高い資産はどれくらいかという視点でチェックすると良いでしょう。

現金・預金を見る際のチェックポイント

次に、現金・預金に関連して、チェックしておきたいポイントを解説します。

現金・預金は十分にあるのが好ましい

現金・預金を見るときは、まず総額がどれくらいあるかチェックしましょう。現金・預金は、流動資産に含まれるどの科目よりも換金性の高い資産です。万一、急に支払いが必要になったときでも、現金・預金に備えがあればすぐに対処できます。例えば、受取手形が回収できない、売掛金が回収できないなどの事態が起きても、現金・預金が十分にあれば、支払いが必要になってもあせらずに済むということです。現金・預金を見るときは、万一に備えて、十分な額があるか見ておきましょう。

売上は好調なのに現金・預金が少ない場合

売上は好調なのに、現金・預金の額が増えないこともよくあります。企業間の取引では、売上と同時に現金になることが少ないためです。ほとんどのケースでは、あとから代金を受け取る約束で売掛金として計上したり、指定の期日に現金を受け取る約束で手形を受け取ったりします。売掛金や受取手形といった、いわゆる売上債権は、一定期間経過後に現金化できるような資産です。売上が好調にもかかわらず、現金が増えていない場合は、代わりに売掛金や受取手形が増えていないか確認してみましょう

なお、資金効率を見るには、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)が役に立ちます。CCCは、「売上債権回転期間+棚卸資産回転期間-仕入債務回転期間」によって表すことができ、資金投下から資金回収までにかかる平均的な日数を示したものです。CCCが長いようなら、売上が好調でも回収が効率良くできていないと判断できるでしょう。

売上が好調にもかかわらず現金・預金が少ないままだと、黒字でも倒産することもあります。売上の上昇にともない増えた経費の支払いを、少ないキャッシュではカバーできないためです。CCCを見て資金効率が落ちている場合は、取引先に入金を早めてもらう、あるいは借入で現金を調達するなどの対策が必要です。

貸借対照表だけではわからない現金の流れ

貸借対照表の「現金及び預金」でわかるのは、貸借対照表日の現金・預金の残高です。しかし、残高はわかっても、会計期間中の現金・預金の流れはわかりません。現金・預金をどのような流れでどのくらい得たのか、どのくらい現金・預金から支出したのかまでは把握できないのです。

現金・預金の流れを知りたいのであれば、現金出納帳や預金出納帳で確認すると良いでしょう。一会計期間の大まかな現金及び現金同等物の動きを知りたいなら、「キャッシュフロー計算書」も参考になります。現金・預金を詳細に分析するのに貸借対照表だけでは、不十分な部分もあるため、キャッシュフロー計算書や現金出納帳などのそのほかの帳票とあわせてチェックすることをおすすめします。

現金・預金はポイントをしっかり押さえよう

会社を経営するにあたって、会計上の現金・預金とは何か、貸借対照表上に示される「現金及び預金」がどのような額を示すか知っておくことは重要です。現金・預金は、会社の資金繰りにも大きく関係してくるため、しっかりポイントを押さえておきましょう。

なお、現金・預金を分析する場合は、貸借対照表だけでなく、キャッシュフロー計算書や帳票からも情報を取得すると、より詳細な現金・預金の流れを把握できます。

よくある質問

会計上の現金とは?

会計上の「現金」は、いわゆるお金ではなく、すぐに現金化ができるものという基準で考えます。通貨でなくても、現金化が直ちにできるものなら「現金」なのです。詳しくはこちらをご覧ください。

会計上の預金とは?

預金とは、金融機関に預け入れているお金のことで、代表的なものに当座預金や普通預金、定期預金、通知預金などに預け入れている額があります。詳しくはこちらをご覧ください。

現金・預金は貸借対照表のどこに記すの?

現金と預金の総額を表す「現金及び預金」(現金・預金、現金預金ともいう)は、貸借対照表の流動資産の部に位置します。詳しくはこちらをご覧ください。


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