• 作成日 : 2024年3月27日

遊休資産とは?会計・税務処理や放置のデメリット、処分ポイントを解説

遊休資産とは?会計・税務処理や放置のデメリット、処分ポイントを解説

事業で利用するために取得した機器や土地が、何らかの都合で休止している状態の会社は少なくないとされています。
これらの機器や土地は遊休資産と呼ばれ、固定資産税の対象となります。
本記事では、遊休資産とはどのようなものか、会計・税務処理や放置のデメリット、処分のポイントなどについて解説します。
また遊休資産を抱えている会社が損失を最小限に抑えつつこれらを活用する方法についてもお伝えしますので、ぜひ最後までお読みください。

遊休資産とは

遊休資産とは、事業で利用するために取得したにもかかわらず、何らかの理由で使用されていないまたは稼働していない資産を指します。
具体的な例としては、土地や建物などの不動産、または使用が休止されている製造用機械や工作機械などが挙げられます。

遊休資産の減価償却

資産が遊休状態であっても会計上、減価償却を行う必要があります。
ただし、遊休資産の減価償却費営業費用とはせず、営業外費用として処理されます。

法人税法上では、「事業の用に供しているもの」が償却資産の要件であるため、遊休資産は減価償却の対象外となり、損金算入されません。
ただし、休止期間中であっても、必要な維持・補修が行われ、いつでも稼動可能な状態にある場合は、減価償却資産として損金算入が認められます。

遊休資産の減損処理

減損とは、固定資産の収益性が低下したことにより、投資回収が難しくなった状態のことです。
この場合において、帳簿価額を減額して回収可能価額に合わせる処理を減損処理といいます。減損損失を認識すると判定された資産については、帳簿価額を回収可能価額まで減少させ、その差額を減損損失として計上します。

将来において使用すると見込まれていない遊休資産については、通常、その資産が他の資産に影響を与えない最小の単位とみなされ、それを基準に減損損失が判定されます。
例えば、将来の用途が未確定でかつ遊休状態が長期化している設備については減損損失の判定のための回収可能価額の算定が必要です。

なお企業が将来の使用を見込んでいる遊休資産に関しては、その計画に基づいて適切なグルーピングが行われます。この際の「見込み」とは、計画が取締役会などで承認された具体的なものであることが求められます。

遊休資産の放置のデメリット

この章では、遊休資産をそのままにしておくことで懸念されるデメリットやリスクなどについて説明します。

遊休資産を放置するデメリット1|税金の負担が続く

建物や土地などは遊休状態であっても、所有している限り固定資産税などの税金がかかります。将来の再稼働が見込めないなど、稼働休止が長引く場合は、早急に対策を検討することが重要だといえるでしょう。

遊休資産を放置するデメリット2|維持管理にもコストがかかる

税金だけでなく、建物では設備や清掃、防犯にかかるコストや、土地の手入れに必要な費用が発生します。自動車や設備、機械も消耗品の点検・交換やメンテナンスが必要です。遊休資産であっても、所有している限りこれらのコストが継続的に発生することに留意が必要です。

遊休資産を放置するデメリット3|企業のイメージが低下するリスクもある

オフィス内にあるパソコンなどの遊休資産は問題ないですが、建物や土地など目に付く遊休資産は企業のイメージにも影響を与える可能性があります。

例えば、建物が劣化していると「管理が行き届いていない」という目で見られるケースもあり、地震で損傷すると「損害賠償」の問題が発生する可能性もあります。

遊休資産の処分などのポイント

遊休資産を処分する際には、以下のポイントが重要です。

勘定科目に気を付ける

遊休資産を処分することで、スペースを確保するだけでなく、損失や費用を「固定資産除却損」として計上できるため、節税にも寄与します。
ここでいう処分とは、スクラップするなどして事業用の利用を中止することを指します。また完全に廃棄した場合は、「固定資産廃棄損」として計上することになります。

ソフトウェアも対象となる

廃棄対象となる資産には、有形固定資産だけでなく、ソフトウェアも含まれます。
原則として、ソフトウェアに関しては以下の場合に損金算入が認められます。

  • 自社で利用しているソフトウェア

そのソフトウェアを使用した業務が終了し、利用がなくなった場合
他のソフトウェアの利用により、以前のソフトウェアの使用がなくなった場合

  • 販売用のソフトウェア

新製品やバージョンアップにより、今後販売されないことが確定した場合

税務調査への対策も検討しておく

遊休資産を処分し損失を計上すると、税務調査で問題が生じる可能性が高まります。
このリスクに備えるためには、産業廃棄物業者から発行される廃棄証明書や廃棄資産の写真、廃棄を決定した議事録などの記録を事前に残しておくことが賢明です。

有姿除却も検討する

機械設備を即座には処分できない場合、「有姿除却」を検討すると良いかもしれません。
有姿除却は機械設備を実際には処分せずに損失を計上できる手法です。有姿除却が認められるには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 使用を廃止し、通常の方法では事業で使用する可能性がないこと
  • 特定の製品の生産や製造のために使われていたが、その製品の生産・製造が中止され、今後使用される可能性がないこと

有姿除却の際には、単なる一時的な使用中止ではなく、将来の使用可能性が客観的にないことを証明する必要があります。
例えば、機械設備の主要箇所に穴を開けて使用不能にするなどの具体的な手続きが求められます。

また、特定の製品の生産が中止され、今後再利用の可能性がほとんどない専用金型なども有姿除却が認められやすいです。
ただし、生産中止後の状況を鑑み、有姿除却が可能になるまでの一定期間が必要です。法人が単に製品の生産を中止した旨を発表するだけでは認められません。

なお、旧工場が使用されなくなり、今後の使用がなく、立入禁止となっている場合も、有姿除却が可能な状況だといえるでしょう。

まとめ

遊休資産はそのまま放置すると、固定資産税の支払い、手入れや維持管理にかかるコスト、時間の浪費など大きなデメリットが生じます。そのため、早めの処分や活用方法の検討を行うことが重要です。

また会計処理においては、遊休資産に関する知識をしっかり把握しておき、税務調査への対策もしておきましょう。


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