- 更新日 : 2025年2月20日
掛け払いとは?後払いとの違い、始め方とリスクについて解説
掛け払い(ツケ払い)とは、先に商品やサービスを提供し、請求書送付後まとめて支払いを受ける方法を指します。取引相手が法人中心(BtoB)である点が、後払いとの違いです。
本記事では、掛け払いのメリット・デメリットや始め方を紹介します。読み方や英語表記についても説明するため、掛け払いの基本を知りたい方も参考にしてください。
目次
掛け払いとは?意味や使い方
掛け払い(読み方:かけばらい)とは、商品やサービスを先に提供して、後に支払ってもらう方法です。
買い手の信用を担保に取引する、企業間取引の支払い方法のひとつとして位置付けられています。
掛け払いに関連する英語表現は、「selling on credit」(掛け売り)や「pay on credit」(ツケで払う)などです。ここから、掛け払いの使い方や利用例について解説します。
掛け払いの利用例
掛け払いを利用する代表例が、請求書支払い(請求書払い)です。
請求書支払いとは、売り手が月末などの締日に買い手に対して請求書を発行し、期日までに支払ってもらう方法を指します。商品販売・サービス提供の都度代金を受け取るのではなく、一定期間でまとめて受け取る点が請求書支払い(掛け払い)のポイントです。
なお、日常生活で利用しているクレジットカード払いも、仕組みとしては掛け払いと似ています。
掛け払いと後払いとの違い
後払いとは、買い手が商品を購入した後に、代金を支払う仕組みのことです。掛け払いと後払いの主な違いとして、取引相手が挙げられます。
掛け払いは基本的に会社相手の取引であるのに対し(BtoB)、後払いは主に個人相手の取引(BtoC)です。そのため、仕組みは似ているものの、個人がクレジットカードを使ってショッピングすることは一般的に「掛け払い」と呼びません。
また、決まった日にまとめて支払うか、都度支払うかも掛け払いと後払いの違いです。掛け払いでは、売り手が締日にまとめて代金を請求するのに対し、後払いは取引の都度代金を請求します。
そのほか、一般的に掛け払いの方が支払い限度額が高く設定されている点も、違いのひとつです。
掛け払いのメリット
売り手や買い手にとって、掛け払いを利用するメリットは以下のとおりです。
- 請求・入金の業務の効率化(売り手)
- 取引先の幅が広がる(売り手)
- 予算管理がスムーズ(買い手)
それぞれ解説します。
請求・入金の業務の効率化(売り手)
売り手は、掛け払いを利用することにより、請求・入金の業務の効率化を図れる点がメリットです。
通常、売り手は取引の都度請求書を発行しなければなりません。その点、掛け払いを利用すれば、毎月一度まとめて発行すればよいため、手間を省けます。
同様の理由で、取引先からの入金があったか確認する回数も減らせるでしょう。
取引先の幅が広がる(売り手)
掛け払いを導入することにより、取引先の幅が広がることも売り手のメリットです。
ビジネスの世界では、「掛け売り」で取引されるケースが少なくありません。自社が「掛け売り」に対応していない場合、せっかく見込客を見つけても成約のチャンスを逃す可能性があります。
掛け払いを導入して商品・サービスを提案できる先が増えれば、売上向上にもつながるでしょう。
予算管理がスムーズ(買い手)
買い手にとっては、掛け払いで取引することで予算管理がスムーズになる点がメリットです。
買い手は、締日に発行された請求書を見て今後発生する支出を事前に把握できます。また、すぐに代金を支払わなくてよい分、大きな取引もしやすくなるでしょう。
そのほか、取引の都度振り込みの手続きをする手間を省ける点も、買い手のメリットとして挙げられます。
掛け払いのデメリット
売り手には、掛け払いを利用することで以下のようなデメリットも存在します。
- 代金回収できないリスク
- 与信管理が必要
それぞれ確認していきましょう。
代金回収できないリスク
代金回収できないリスクがある点が、掛け払いを導入する際の売り手のデメリットです。
掛け払いを利用する場合、商品を売ったり、サービスを提供したりしてもその場では代金を受け取れません。また、支払い遅延や貸し倒れが発生すると、予定していた日にも代金を受け取れなくなります。
どれだけ十分な売上を確保していても、代金を回収できなければそのうち経費や借入金返済といった必要な支払いができなくなります。最悪、黒字倒産に至ることもあるでしょう。
与信管理が必要
代金回収できないリスクに関連し、与信管理が必要になることも売り手のデメリットです。
与信審査や与信管理を実施すれば、販売先から代金を回収できなくなるリスクを軽減できます。ただし、そのためには一定のコスト・手間・時間をかけなければなりません。
スムーズな取引を期待して掛け払いを導入したにもかかわらず、与信管理に余計な手間がかかることもあるでしょう。
掛け払い取引を始めるには?
掛け払い取引を始める方法は、主に以下のとおりです。
- 自社で行う
- 掛け払いの代行サービスを利用する
それぞれ解説します。
自社で行う
掛け払い取引を自社で実施できます。一般的な流れは、以下のとおりです。
- 売り手と買い手の間で掛け払いに関する契約を締結し、取引期間や期日を決める
- 取引期間内に商品販売やサービスを提供する
- 締日に請求書を発行する
- 設定した期日に代金を受け取る
なお、双方が合意すれば、契約書を締結せずに掛け払い取引を始めることもあります。
掛け払いの代行サービスを利用する
掛け払いの代行サービスを利用して、掛け払い取引を始める方法もあります。
掛け払い代行サービスとは、掛け払いの取引を実施する際に発生する請求業務や経理業務を業者が代わりに担うサービスのことです。
掛け払い代行サービスを利用することで、未回収リスクを軽減できる点がメリットとして挙げられます。なぜなら、未回収の場合の代金保証が付帯されているサービスもあるためです。
また、業務の効率化につながる点も、代行サービスを利用するメリットとして挙げられます。与信審査・管理や請求書発行の手間を省ける分、ほかの業務に集中できるでしょう。
一般的に、掛け払い代行サービスを利用する際の流れは、以下のとおりです。
- 代行業者にサービスを申し込む
- 代行業者が審査を実施する
- サービス導入にあたっての決済サービスの動作確認などを実施する
- 利用開始(取引が発生したら内容を登録する)
- 代行業者が請求業務を担う
なお、利用の流れは代行サービスの種類・業者によっても異なります。
掛け払いの代行サービスの選び方
掛け払い代行サービスを選ぶにあたって、コストや導入までにかかる時間を比較しましょう。導入に時間がかかると、取引の機会を逃す可能性があります。
また、与信審査・与信管理がどのように実施されるかチェックすることも大切です。たとえば、取引を対象に審査しているサービスや限度額が低いサービスを利用する場合は、取引内容によって代行サービスを利用できない可能性も想定する必要があります。
そのほか、誰でも使いやすいサービスになっているか(自社の従業員・取引先がスムーズに使いこなせるか)、代金保証はあるのか、どこまでの業務を代行するのかなどを確認することもポイントです。
掛け払い導入時は代行サービスの利用を検討する
掛け払いとは、商品やサービスを先に提供し、締日にまとめて請求する仕組みのことです。
売り手が掛け払いを利用するメリットとして、業務の効率化につながることや取引先の幅が広がることなどが挙げられます。ただし、代金回収できないリスクを抱えている点に注意しなければなりません。
代金回収できないリスクを軽減するためには、与信審査や与信管理が必要です。与信審査や与信管理にかかる手間を省きたい場合は、代行サービスの利用を検討しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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