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  • 更新日 : 2021年5月11日

自己株式とは?取得・消却のメリットや制限、手続きをわかりやすく解説

自己株式 株主総会

上場企業では、比較的頻繁に行われている自己株式の取得や消却ですが、中小企業でも自己株式の取得や消却を行う会社が増えてきました。それは、自己株式の取得や消却にさまざまなメリットがあるためです。しかし、自己株式の取得には制限もあります。

ここでは、手続きや会計処理も含め、自己株式についてわかりやすく解説します。

自己株式とは

自己株式とは、株式会社が発行する株式のうち、自社で取得した上で保有している株式のことを指す言葉です。「金庫株」と呼ばれることもあります。

かつては、インサイダー取引や株価操縦といった悪用を防ぐために、自社株の取得は法律で原則的に禁止されており、消却やストックオプションといった特定目的に限って認められていました。しかし、2001年の商法改正によって解禁され、無制限かつ無期限の保有が認められるようになりました。

自己株式は再交付や消却も認められており、現在では機動的に自社株の買取を行うことができるようになりましたが、従来懸念されていたような悪用を防ぐためのルールも明確に設けられており、一日に注文できる数量や値段などは制限されています。

自己株式の取得とは

自己株式の取得とは、発行した株式を発行した会社自身が取得することです。一般的には、上場企業の場合は市場で不特定多数からの購入により自己株式を取得することが多く、非上場企業の場合は特定の株主からの購入により自己株式を取得することが多いです。

自己株式を取得することで、株式の発行数を減らすことと同じ効果を得ることができます。

自己株式の消却・消去とは

自己株式の消却(消去)とは、会社が所有する自己株式を消滅させることです。自己株式の消却を行うと、その分、会社の発行済株式総数が減少します。

自己株式の消却は、発行済株式の数を適切にする目的などで行われます。会社の発行済株式総数が減少するため、その旨の登記をしなければいけません。

また、自己株式の消却をする場合は、取締役会の決議や取締役の過半数の決定などが必要になります。

自己株式の処分とは

自己株式の処分とは、会社が所有する自己株式を売却することです。自己株式の処分は、資金調達をスムーズにしたり、企業再編を行うことなどを目的に行われます。自己株式の消却(消去)との違いは、発行済株式総数が減少しないことです。

株式処分を行う場合は、新株発行による手続きが必要となります。

自己株式を取得する意味

ここからは、自己株式を取得する意味を見ていきましょう。

持ち株比率を下げないため

株式会社にとって、重要な事項のひとつに敵対的企業からの買収対策があります。既存の株主の持ち株比率が下がれば、それだけ敵対的企業が購入できる株が多く、買収されやすいことを意味します。
自己株式を取得することで、発行済み株式数を減少させ、持ち株比率を高めることができます。

M&Aの対価として利用するため

他の企業を買収するためには、その企業の株式を購入する必要があります。実は、株式の購入の対価は、現金等だけでなく自己株式でも問題ありません。いざM&Aを行う際に、事前から取得しておいた自己株式を使うことで、資金を用意する必要がなく、企業再編をスムーズに行うことができます。

株価対策をするため

自己株式を取得すると、市場に出回る株式の数が減少します。市場に出回る株式の数が減少すると、株式の需要に対して供給が減ることになるので、相対に株価が上がります株価が上がることで、株主からの高評価を得たり、経営指標の改善をすることができます。

事業承継対策をするため

後継者に株式を引き継ぐ際、後継者は株式を購入したり、相続や贈与の場合は税金の納付が発生したりするなど、多額の資金が必要となります。

後継者から会社が株式を取得し、自己株式とすることで、後継者は持ち株が減るものの、資金を得ることができます

自己株式取得のメリット・デメリット

自己株式を取得するメリットとしては、株式の消却などによって財務指標を改善したり、配当に充てる費用をカットする効果、ストックオプションへの活用などが挙げられます。

しっかりと特性を把握した上で活用すればデメリットはほとんどありません。ただし、自己株式を取得すると、会社の資金が減少します。自己株式は他の資産のように譲渡や売却ができないため、資金に余裕のない会社の場合は慎重に行う必要があるでしょう。

自己株式取得の手続き

自己株式の取得には、大きく分けて、不特定多数から取得する方法特定の株主から取得する方法の2つがあります。
自己株式の取得では原則、株主総会の決議が必要です。不特定多数から取得する方法の場合は、株主総会の普通決議を行います。株主総会の普通決議では、出席議決権の過半数の賛同を得れば、議決されます。

特定の株主から取得する方法の場合は、株主総会の特別決議を行います。株主総会の特別決議では、出席議決権の2/3以上の賛同を得れば、議決されます。特定の株主から取得する方法の方が、ハードルが高くなります。

株主総会の決議後は、取締役会で取得する株式の数や期日などを決議します。

自己株式取得にかかる制限

自己株式の取得は原則、財源規制を課しています。自己株式取得にかかる財源規制とは、簡単にいうと、自己株式の買い取りに上限を設けているということです。
具体的には、「買い取り時点」の「分配可能額の範囲内」でのみ、自社株を買い取ることができます。分配可能額の計算は複雑ですが、おおむね「その他資本剰余金の額+その他利益剰余金の額」となります。

ただし、次のようなケースでは、自己株式取得にかかる財源規制はありません。

  • 単元未満株式の買取請求に応じる場合
  • 無償取得する場合
  • 他の会社の事業の全部を譲受により取得する場合
  • 吸収合併や吸収合併による承継の場合
  • 自己株式の会計処理

    ここからは、自己株式の会計処理を具体的に見ていきましょう。

    自己株式を取得したとき

    取得した自己株式は純資産に属する「自己株式」の勘定科目で処理します。自己株式は、株主資本の控除項目として貸借対照表に表示されます。

    (例)自己株式1,000,000円を現金で取得した。

    借方貸方
    自己株式  1,000,000円現金  1,000,000円  

    自己株式を消却したとき

    自己株式を消却した場合は、「自己株式消却損」の勘定科目で処理します。自己株式消却損は、「その他資本剰余金」または「その他利益剰余金」のマイナス項目になります。

    (例)保有している自己株式600,000円を消却した

    借方貸方
    自己株式消却損  600,000円現金  600,000円    

    自己株式消却損は「その他資本剰余金」で処理しますが、「その他資本剰余金」から控除しきれない場合は「繰越利益剰余金」で処理しても問題ありません。

    自己株式を処分したとき

    自己株式を処分した場合、保有している自己株式と売却価格に差額が生じます。その差額は「自己株式処分差損」「自己株式処分差益」で処理します。
    「自己株式処分差損」「自己株式処分差益」は「その他資本剰余金」または「その他利益剰余金」の科目になります。

    (例)帳簿価格400,000円の自己株式を500,000円で処分した。処分代金は、当座預金に振り込まれた

    借方貸方
    当座預金  500,000円   自己株式  400,000円   
    自己株式消却損  100,000円

    自己株式処分差益、自己株式処分差損は「その他資本剰余金」で処理しても問題ありません。

    自己株式処分差損の場合で、「その他資本剰余金」から控除しきれない場合は、「繰越利益剰余金」で処理しても問題ありません。

    自己株式についてご理解いただけましたでしょうか?

    自己株式の取得は、大企業だけが行うものではありません。事業承継で利用することもできるなどの理由で、中小企業であっても、自己株式を取得することは十分考えられます。

    自己株式の取得には、手順や制限、会計処理などを考慮する必要があります。自己株式について理解し、正しい処理をするようにしましょう。

    よくある質問

    自己株式とは?

    株式会社が発行する株式のうち、自社で取得した上で保有している株式のことです。詳しくはこちらをご覧ください。

    自己株式を取得する理由は?

    「持ち株比率を下げないため」「M&Aの対価として利用するため」等があげられます。詳しくはこちらをご覧ください。

    自己株式取得にかかる制限は?

    自己株式の買い取りに上限を設けているということです。詳しくはこちらをご覧ください。


    ※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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