- 更新日 : 2021年12月24日
電子取引とは?電子帳簿保存法第10条|電子データの保存要件・改正点を解説!

電子帳簿保存法第10条は、電子メールでの書類のやり取りなど電子取引といわれる取引について、保存を規定した法律です。近年、税制改正によってタイムスタンプの付与に緩和がみられるなどして、改めて注目されるようになりました。
電子帳簿保存法第10条とはどのような内容の法令なのか、近年どのような改正が行われてきたのか、電子帳簿保存法第10条と関連の深い電子帳簿保存法施行規則の内容も取り上げながら解説します。
令和4年1月1日より電子取引の情報の電子保存の義務化が開始されます。2023年12月31日までの間に電子保存に対応できない事情があると税務署長が認め、かつ出力書面での提出等に応じることができる場合は出力書面での保存も認められます。
目次
電子帳簿保存法第10条の内容とは?
まず、電子帳簿保存法第10条はどのような内容なのか、電子帳簿保存法の概要も含めて解説します。
そもそも電子帳簿保存法とは?施行規則の関係は?
電子帳簿保存法は、正式名称を「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」といいます。電子帳簿保存法に定められているのは、「国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存」、「国税関係帳簿書類のCOMによる保存」、「スキャナ保存制度」、「電子取引」に関することです。
法令では、紙による保存が義務付けられています。しかし、技術の発展でペーパーレス化が進み、紙による保存がかえって事業活動の妨げになる可能性が増加しました。
電子帳簿保存法は、技術革新とインターネット拡大による企業間などのやり取りの変化と、民間からの強い要望もあって創設された法令です。拡大する電子取引や電子データの保存ついて規定を設け、正しく保存をすることを目的としています。1998年の税制改正の一環として設けられ、その後、何度も改正を経て、現実に即した電子帳簿等の保存ができるように変化してきました。
なお、電子帳簿保存法を補足するルールとして、電子帳簿保存法施行規則(正式名称:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則)も電子帳簿保存法を見る上では、合わせて確認しておく必要があります。
なお、電子帳簿保存法と電子帳簿保存法施行規則については、行政ポータルサイトの「e-Govポータル」の法令検索を使って検索でき、内容を確認できます。
電子帳簿保存法に関してより詳しく知りたい方は、こちらをご参照ください。
電子帳簿保存には申請と承認が必要
法人や個人などで事業を営む者など、保存義務者は、帳簿を備え付けて取引を記録し、取引に関する書類を一定期間保存することが義務付けられています。原則として、帳簿や取引に関する書類などは、紙によって保存しなければなりません。パソコンのソフトなどを使って作成した電子データに関しても、紙での保存が原則です。
電子データを紙による保存でなく、電磁的記録、COM、スキャナ保存などでデータとして保存したい場合は、管轄の税務署長への申請と承認が必要になります。
ただし、同じく電子帳簿保存法に規定のある「電子取引」に関しては申請や承認を受ける必要はありません。
※令和3年度の税制改正により、令和4年1月1日以後に備付けや保存をする国税関係帳簿や国税関係書類、スキャナ保存については原則、事前承認制度が廃止されました。
電子帳簿保存法第10条の内容
前述のように、電子帳簿保存法は、e-Govポータルから内容を確認できます。電子帳簿保存法第10条に定められているのは、以下のような内容です。電子取引による情報の取り扱いや、保存の基本が示されています。
所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。ただし、財務省令で定めるところにより、当該電磁的記録を出力することにより作成した書面又は電子計算機出力マイクロフィルムを保存する場合は、この限りでない。
【引用】e-Gov法令検索|電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律
電子帳簿保存法第10条の対象と範囲は?
電子帳簿保存法第10条では、電子取引における取引情報の保存が定められていると説明しました。電子帳簿保存法10条の指す「電子取引」とは、取引情報のやり取りを電磁的方式で行う取引のことです。具体的には、以下のようなやり取りによって生じた取引情報のことをいいます。
- ネットワーク経由でビジネス文書をやり取りするEDI取引
- インターネットを介した取引
- メールの添付ファイルを含めた電子メールによる取引
- ECサイトなどインターネット上のサイトを介した取引
以上のように、電子取引とは、取引情報のやり取りをインターネットなど電磁的な方式で行う取引のことです。
なお、電子取引による電磁記録の保存義務の対象となるのは、電子取引によってやり取りをしたすべての取引情報です。契約書や見積書、発注書、請求書、領収書、送り状など、電子取引の取引情報に関わるすべての書類が保存の範囲に含まれます。
電子帳簿保存法第10条の電子データ保存要件とは?
ネットワークなどでやり取りが完結している電子取引だからといって、データをそのまま保存するのでは十分とはいえません。データの裏付けとなる証拠がなければ、データ改ざんの可能性もあるためです。そこで、電子帳簿保存法第10条に関連して、電子取引の取引情報は、電子帳簿保存法施行規則によって保存要件が定められています。
電子帳簿保存法施行規則における保存要件-第3条より
■見読可能装置の備え付け
電子取引の取引情報の保存については、直ちに記録された内容を確認できるように見読性の確保が要件として定められています。見読性の確保とは、電子データをすぐに目で確認できる状態にし、書面などで表示ができるようにしたりしておくことや、記録された取引情報を確認できるように、ディスプレイやソフトウェアなどの端末を備え付け、いつでも出力できるようにプリンタを備え付けておくこと、また、操作説明書を備え付けることを指します。
■検索機能の確保
指定のデータをすぐに確認できるように、電子記録の検索機能についても定めがあります。検索機能については、以下のすべての機能を満たさなければなりません。
- 書類に記載された取引年月日や取引金額などの記録項目が検索できる
- 指定した範囲内で条件を設定し、日付や金額に関する記録を検索できる
- 複数の記録項目を使って条件検索ができる
■関係書類の備え付け
自社開発のシステムを利用して電磁的記録を行った場合は、システムの概要を記載した書類のような、関連書類の備え付けが必要です。
以上は、電子帳簿保存法施行規則3条の「国税関連帳簿書類の電磁的記録による保存等」の5要件のうち、電子取引の保存要件に該当する部分です。3条に加え、電子帳簿保存法施行規則8条「電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存」にも要件が記載されています。8条については税制改正によって変化がありましたので、次の見出しで詳細を説明します。
メール送信やタイムスタンプに変化?改正のポイント
電子帳簿保存法に関しては、特に近年、税制改正が徐々に行われ、多くの事業者が電子保存を利用できるように変更されてきています。近年の電子帳簿保存法に関する改正をいくつか取り上げます。
令和元(平成31年)度の税制改正
電子保存法第10条に直接関わりのあるものではありませんが、大幅な変化が見られました。税制改正のポイントは以下のとおりです。
- 承認申請書提出期限の特例の新設による個人の電子帳簿保存申請の緩和(2019年9月30日以後適用)
- 承認前に作成・受領した重要書類スキャナ保存可(2019年9月30日以後適用)
- 電子帳簿保存とスキャナ保存承認申請手続の負担軽減(2019年9月30日以後適用)
- 電子帳簿保存とスキャナ保存における自社開発ソフトの要件適合性の事前相談体制の整備(2019年7月改訂)
- スキャナ保存の場合の入力やタイムスタンプの期間制限の緩和(2019年7月改訂)
- スキャナ保存の場合の定期的な検査の頻度の緩和(2019年7月改訂)
- スキャナ保存の場合の検索機能の確保に勘定科目別の検索を追加(2019年7月改訂)
電子帳簿保存とスキャナ保存に関する内容ですが、おおむねこれまでの条件が緩和され、より制度を利用しやすいように改正されたことがわかります。
なお、この時点でスキャナ保存でのタイムスタンプの要件は緩和されていますが、電子取引では緩和されていません。電子取引のタイムスタンプについては、のちの税制改正による統一化によって、期間が緩和される方向です。
令和2年度の税制改正
改正前は、電子取引について、受領後遅延なくタイムスタンプを付すこと、事務処理規定を作成・運用してデータ改ざんを防ぐことが絶対要件になっていました。たとえば、発行者側でタイムスタンプが付されたデータであっても、受け取ったら、改めて受領者がタイムスタンプを付す必要があったのです。
改正では、電子取引における電子情報の保存要件が緩和されることになりました。必ずしも、受領者側がタイムスタンプを付与しなくても保存要件を満たせる可能性が出てきたのです。
要件緩和後の電子取引による電子情報の保存要件は以下のとおりです。
- タイムスタンプが押されたあとに取引情報のやり取りを行うこと
- やり取り後は遅延なくタイムスタンプを押し、保存等を行う者に対し情報が確認できるようにすること
- 訂正や削除の事実内容を確認できるまたは、訂正や削除自体ができない状態にすること
- 正当な理由のないデータの訂正や削除の事務処理規定を定めて既定の備え付けを行うこと
いずれかの要件を満たせば、良いことになりました。
たとえば、ユーザーがデータを改ざんできないようなシステムで、発行者のタイムスタンプが付されている場合は、受領者が改めてタイムスタンプを押さなくても良いようになったのです。
さらに、システム上だけでなく、メールで必要書類のやり取りをするケースもありますので、条件緩和によって、管理や運用が複雑だったケースの管理運用もしやすくなりました。税制改正は2020年10月1日から適用されています。
令和3年度の税制改正と今後の予定
社会情勢が大きく変化し、テレワークを導入する企業が増加するなど、働き方に変化がみられるようになりました。従来のような電子帳簿などの保存の要件は、テレワークなどの働き方に適しているとはいえず、改善の余地が検討されています。
税制改正についてはまだ適用予定の段階ですが、電子帳簿保存、電子書類の保存、ともに大きな改正が見込まれます。
税制改正のうち、電子帳簿保存法10条に関連する改正をいくつかピックアップします。
- 電子取引含めタイムスタンプの付与を最長2ヶ月以内に統一
- 検索要件を日付、金額、取引先に縮小
- 一定の小規模事業者については検索要件を不要とする
- 電子データ改ざんなどの不正は重加算税10%加算
いずれの改正も2022年1月1日に適用見込みです。幅広い事業者が電子保存の要件を満たし適用できるようにするための大幅な規制緩和、不正への対処が改正案としてまとめられています。
電子帳簿保存法10条のポイントをおさえてペーパーレス化をすすめよう
メールによる見積書や請求書などの添付だけでなく、クラウドサービスの発展もあって、郵送などの紙によるやり取りから、ネットワークを介してやり取りを行うことも増えてきました。
電子上の保存は、膨大なデータをコンパクトにまとめることができるため、紙媒体による保存から運用を変えたいと考える事業者にも注目されています。
特に電子帳簿保存法10条に定められた電子取引の電子情報の保存は、近年、さまざまな緩和が図られ、さまざまな規模の事業者で取り入れやすくなりました。改正を機に、電子帳簿保存法10条に関連するポイントをおさえ、ペーパーレス化を進めてみても良いのではないでしょうか。
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ここまで説明してきたように、電子帳簿保存法10条だけでも様々な保存要件が課されています。この機会に、電子データを自動で簡単に保存できるマネーフォワード クラウドの導入を検討してみませんか?
よくある質問
電子帳簿保存法第10条の内容は?
電子取引による情報の取り扱いや、情報の保存の基本が示されています。詳しくはこちらをご覧ください。
電子帳簿保存法第10条の対象と範囲は?
電子帳簿保存法10条の指す「電子取引」とは、取引情報のやり取りを電磁的方式で行う取引のことです。詳しくはこちらをご覧ください。
電子帳簿保存法第10条の電子データ保存要件とは?
データ改ざんを防ぐため、電子帳簿保存法施行規則によって電子取引の取引情報に定められている保存要件のことです。詳しくはこちらをご覧ください。
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