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  • 作成日 : 2021年4月2日

公会計とは?新地方公会計制度や企業会計との違い、勉強法までわかりやすく解説

公会計(こうかいけい)とは、国や地方公共団体(地方自治体)における会計基準・会計処理の方法です。企業会計とは異なる目的と概念を持っていますが、あまり耳慣れない方も多いのではないでしょうか。

当記事では公会計や新地方公会計制度の概要、公会計導入のメリット、地方公会計検定の勉強法について解説します。

公会計とは?

「公会計」とは、国および地方公共団体で行われている会計処理のことです。官庁会計と呼ばれることもあります。

国の会計については「財政法・会計法・予算決算および会計令」によって定められていますが、地方公共団体の会計の根拠は「地方自治法」です。また、詳細については条例や規則によって規定されます。

公会計は大きく分けると一般会計・特別会計の2つです。

第二百九条 普通地方公共団体の会計は、一般会計及び特別会計とする。
(引用:e-Gov|地方自治体法)

一般会計とは特別会計以外の会計すべてのことです。

続いて特別会計とは、特定の事業が行われる際に一般の歳入・歳出とは別に特定の予算が用いられるとき、一般の歳入歳出とは区別して処理する会計のことを指します。

自治体によっては、さらに分類されることもあります。例えば以下のとおりです。

  • 公営企業会計:水道事業や鉄道事業といった公営企業が行う会計
  • 公営事業会計:法律の規定で特別会計を設けて経理を行う必要がある公営企業や事業に係る会計
  • 普通会計:公営事業会計以外の会計を統合して1つの会計としたもの 

など

ただし、公営企業会計と公営事業会計は特別会計、普通会計は一般会計に含まれることが多いです。

企業会計との違い

企業会計は、あくまで会計原則を示されているだけに留まり、細かい内容についてまでは法的拘束力がありません。一方、公会計の場合は、法令によって会計の方法が厳密に規定されています

企業会計と公会計の主な違いは以下のとおりです。

項目
企業会計(株式会社の場合)
公会計(官庁会計)
作成する目的利益の追求住民の福祉の増進
報告主体取締役首長
報告する先株主(提出先は株主総会)住民(提出先は議会)
説明責任・株主総会の承認(決算)
・事後統制(決算)の重視
・議会の承認
・認定(予算・決算)
・事前統制(予算)の重視
簿記方式複式簿記単式簿記
認識基準発生主義会計現金主義会計
出納整理期間なしあり
決算書貸借対照表
損益計算書
株主資本等変動計算書
・キャッシュ・フロー計算書
・歳入歳出決算書
・歳入歳出決算事項別明細書
・実質収支に関する調書
・財産に関する調書

(参考:総務省|統一的な基準による地方公会計マニュアル)

上記のように企業会計と公会計では、目的や管理方法、決算書類の種類などあらゆる面に違いがあります。

公会計が取り入れている「現金主義」とは、実際に現金を支払ったり受け取ったりした時点での収支を帳簿に計上することです。現金の動きに絞った会計処理を行うため、誰が見てもわかりやすいという特徴があります。また「単式簿記」による簡易な帳簿付けにより、日々の現金の動きや残高もひと目で把握しやすくなっています

国や地方公共団体による行政活動の目的は利益の獲得ではなく、「徴収した税金を法令等にもとづいて予算により配分すること」です。厳格な管理が求められることから、現金の動きについて客観性や透明性が担保できる現金主義と単式簿記が採用されていました。

しかし、現金主義・単式簿記のみの管理では次のデメリットが発生します。

  • 現金以外の保有資産(有価証券や不動産など)状況や増減がわかりづらい
  • これまで積み上がった負債が見えず、将来的な負担額が不明瞭
  • 設備や事業に投資した支出に関して「お金を支払った」という事実しかわからない
  • 国と特殊法人が連結した財務情報がわからず公共部門の全体像が把握できない など

上記のように、これまでの財政に関するストック情報(資産や負債)や、現金支出を伴わない減価償却貸倒引当金などのコストが把握しづらいという問題がありました。

これらの問題を解消するために、新しく「新地方公会計制度」の導入が開始されています。

新地方公会計制度とは?

新地方公会計制度とは、現金主義・発生主義での管理に加えて、企業会計で用いられる「発生主義」と「複式簿記」を公会計に取り入れる制度です。

発生主義とは、経済的事実の発生や取引成立時点で帳簿へ計上を行うことです。現金の収支に関係なく計上を行うことから、減価償却費や貸倒引当金、退職手当引当金の額も把握できます。一方、複式簿記とは、現金の収支に加えて財産の増減を同時に仕訳する帳簿付けです。

地方公共団体の会計処理に新地方公会計制度を導入する目的は、以下のとおりです。

  • 地方公共団体のストック状況を把握する
  • 現金収支以外の資産の増減や見えにくいコストを把握する
  • さまざまなコストや施策に関する分析や評価を行いやすくする

世界中が発生主義・複式簿記で財政運営を行っている中、日本だけが大幅に遅れていました。しかし、2006年4月より、東京都が発生主義・複式簿記による公会計制度を導入しています。

2019年8月にも総務省が公表した「地方公会計マニュアル」でも、公会計への発生主義・複式簿記の取り入れについて記載がされていました。今後は新地方公会計制度がスタンダードになっていくと予想されます。

新地方公会計制度のメリット・活用法

新地方公会計制度を導入するメリットは、以下のとおりです。

  • 現金収支以外の資産状況や将来的な負債(債務)などを含めた、より正確な財務情報を住民や外部へ提供できる
  • 複式簿記によって取引1つごとに検証が可能になる
  • 会計別・事業別での財務書類を作成できるため、財政マネジメントや公共施設マネジメントに活用できる など

さらに、作成した財務書類の数値は、地方公共団体の財政や経営の改革に活用できます。財務諸表の概要や活用法についてみていきましょう。

新地方公会計制度の財務諸表の概要

新地方会計制度では、これまで作成していた決算書と一緒に、民間企業と同じような財務書類4表を作成します。具体的には「貸借対照表」と「行政コスト計算書」「純資産変動計算書」「資金収支計算書」の4つです。

財務書類4表概要
貸借対照表会計年度末時点における資産や負債、純資産の残高や内訳を表示するもの
行政コスト計算書・地方公共団体の財政活動の結果として発生した収支を明らかにするもの
・民間企業でいう「損益計算書」にあたる
純資産変動計算書・純資産の残高について1年間の変動を表したもの
・民間企業における「株主資本等変動計算書」にあたる
資金収支計算書・現金の受払についての1年間の変動を表したもの
・民間企業における「キャッシュ・フロー計算書」にあたる

上記の財務諸表の数値を活用することで、さまざまな観点での分析を行えます。

財務諸表の数値の活用法

新地方会計制度に則って作成した財務諸表4表の数値は、以下の分析に活用可能です。

  • 将来世代に残る資産の量
  • 将来世代と現世代との負担の分担の適切さ
  • 財政の持続可能性(借金の量)
  • 行政サービスの効率性
  • 歳入(国や地方公共団体の収入)のうち税金の割合

それぞれの詳細と計算式をみていきます。

将来世代に残る資産の量

将来世代に残る資産の量を分析することで、今後の資産整備の方向性や資産取得からの経過時間の把握が可能になります。分析に利用する数値の算出式は以下のとおりです。

算出する数値計算式
住民1人当たりの資産額資産合計÷住民基本台帳の人口
有形固定資産の行政目的別割合行政目的別(生活インフラや福祉、教育など)÷有形固定資産
歳入額対資産比率資産合計÷歳入総額
有形固定資産減価償却率
(資産老朽化比率)
減価償却累計額÷(有形固定資産-土地等の非償却資産+減価償却累計額)

将来世代と現世代との負担の分担の適切さ

将来世代と現世代の負担は、純資産の増減や償還する必要のある地方債(地方の借金)と、社会資本等の割合などを見ることで分析できます。

分析に利用する数値の算出式は以下のとおりです。

算出する数値計算式
純資産割合純資産÷資産合計
社会資本等形成の世代間負担比率地方債残高÷有形・無形固定資産合計

財政の持続可能性(借金の量)

将来的に財政がどれくらい持続できるかの分析には、住民1人当たりの負債額や業務活動収支・投資活動収支の合計額などを利用します。

分析に利用する数値の算出式は以下のとおりです。

算出する数値計算式
住民1人当たりの負債額負債合計÷住民基本台帳人口
基礎的財政収支
(プライマリーバランス)
支払利息支出を除いた業務活動収支+投資活動収支
債務償還可能年数(将来負担額-充当可能基金残高)÷(業務収入等-業務支出)

行政サービスの効率性

住民1人当たりにかかる行政コストや、人件費・物件費などの性質別の行政コストを確認することで、行政サービスの効率性が分析可能です。

分析に利用する数値の算出式は以下のとおりです。

算出する数値計算式
住民1人当たりのコスト純行政コスト÷住民基本台帳人口
性質別行政コスト性質別行政コスト÷住民基本台帳人口
行政目的別行政コスト行政目的別行政コスト÷住民基本台帳人口

歳入のうち税金の割合

行政サービスに対してどれくらい直接的な負担が発生しているのかを見るには、受益者負担の割合(受益者負担比率)を用います。

分析に利用する数値の算出式は以下のとおりです。

算出する数値計算式
受益者負担の割合
(受益者負担比率)
経常収益÷経常費用

公会計の活用の注意点

公会計を活用した財政状態の把握や今後の分析を行うには、適切なプロセスの実行やシステムの導入が不可欠になります。詳細をみていきましょう。

公会計活用に必要なプロセスを進める際の注意点

公会計を活用するためには5つのプロセスを適切に進めていきます。それぞれの注意点も併せて紹介します。

プロセス概要
適切な固定資産台帳の更新実際の施設の状態との乖離がないよう毎年更新すること
適切な財務書類の作成外部組織へのチェック依頼や、職員によるチェックリスト作成などを行い重大な誤りがないようにすること
作成した財務書類の読解・分析財務諸表の読み方や指標分析の手法について理解を進めておくこと
課題の抽出と課題解決分析した課題の要因分析、対応策検討、対応策実施、課題解決にて地方公会計の情報を活用すること
活用に向けた庁内体制の整備財務諸表を作成したり分析したりした部署以外でも情報を共有し活用可能性を検討していくこと

(参考:総務省|地方公会計の活用の促進に関する研究会報告書)

システム導入・変更時の注意点

もし公会計関連の新しいシステムを外部から導入する場合は、以下の点について注意と検討が必要です。

  • 複式簿記と固定資産台帳が適切に連携できること
  • 専門家だけでなく職員の誰もが操作できること
  • 分析機能が付いていること
  • 日々の帳簿付けの効率化による業務負担減少や労働時間短縮が達成できること
  • 対費用効果に見合った公会計システムを選択すること

新地方公会計制度に対応するシステムは、TKC全国会やそのほかの民間企業が提供しているものがあります。

地方公会計検定とは?

地方公会計検定とは、一般社団法人「日本ビジネス技能検定協会」が実施する「地方公会計・公営企業会計の改善・発展をサポート」を目的とした検定です。

地方公会計で使用する財務諸表や仕訳方法、固定資産台帳の実務などの地方公会計に関するさまざまな知識・実務能力・計算能力について問われます。2021年3月現在では、2級と3級を受けることが可能です。

受験要項概要
受験資格学歴・年齢・国籍に関係なく誰でも受験可能
合格基準問題の総得点の70%が基準
制限時間・2級:120分
・3級:90分
検定料・2級:3,300円
・3級:2,200円
試験日
(予定)
・1回目:4月の第3週
・2回目:10月の第4

(参考:一般社団法人日本ビジネス技能検定協会|地方公会計検定)

以下ではさらに検定の難易度や勉強方法、資格の生かし方などを解説します。

地方公会計検定の難易度は?

地方公会計検定の合格率は2級と3級ともに約50~70%を推移しています。第8回と第10回の合格率は次のとおりです。

試験級区分受験人数合格率
第8回2級105人0.571
3級134人0.649
第10回2級120人0.45
3級188人0.601

合格率から考えると、それほど難関資格というわけではありません。

地方公会計検定のおすすめ勉強法は?簿記の知識は有利?

勉強用のテキストや問題集の種類が出回っていないこともあり、基本的には公式テキストと公式問題集、過去問を利用するのが王道の勉強方法です。他の資格試験と同様に、過去問によるアウトプット中心の学習を行い、わからない部分は随時テキストで確認する形で進めるとよいでしょう。

勘定科目や仕訳、そのほかの会計知識が問われることから、簿記の知識があればスムーズに学習を進められます。逆に簿記知識や仕訳のやり方を知らない場合は、まずは簿記の概念に慣れることからがスタートになります。

もし1人での学習が不安なときは、通信講座を利用するのも1つの手です。

地方公会計を生かせる仕事

地方公会計を生かせるのは、基本的には地方公共団体関係の仕事になります。資格を生かした転職というより、すでに地方公共団体関係に勤める職員のスキルアップという面でのメリットが大きいです。

とはいえ、地方公会計の知識や実務能力を備える人材は多くはありません。地方公共団体に対して経営や管理に関するコンサルティングを行う企業や会計ソフトを販売する企業、そのほか地方公共団体と関わる団体からのニーズは高まることが予想されます。

また、会計士や税理士などの専門家が取得した場合は、企業の顧問や個人依頼の仕事以外にも、地方公共団体関係という新しい営業ルートを確保できるかもしれません。

公会計を正しく理解して自治体運営に活かそう

公会計は民間企業ではなく、国や地方公共団体で行われる会計処理です。企業会計と違い「徴収した税金を法令等にもとづいて予算により配分すること」を目的として、現金主義・単式簿記による帳簿付けを行います。

しかし、新地方公会計制度では、企業会計の概念を取り込んだ発生主義・複式簿記による会計処理を実施するようになりました。より透明性ある明確な財務状態の確認が可能となりますが、地方公共団体の職員は複式簿記の概念や正しい仕訳方法などについての知識も求められます。

地方公会計検定などの勉強を行うなどして、今後は公会計についてより正しい理解を持つようにしましょう。

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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【監修】マネーフォワード クラウド会計

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