• 更新日 : 2022年5月17日

エンジェル税制とは?個人投資家の確定申告手続きも解説!

エンジェル税制とは?個人投資家の確定申告手続きも解説!

エンジェル税制という制度があることをご存じでしょうか。

エンジェル税制とは、ベンチャー企業への投資を促進するため、平成9年の税制改正で新設された税の優遇制度のことです。この制度を利用すると、ベンチャー企業と個人投資家の双方にメリットがあります。ベンチャー企業へ投資した時点や株式の売却時には、所得税の優遇措置を受けられるのもメリットです。

しかし、制度の適用には一定の要件があること、投資方法によって手続きが異なることなど、制度の利用にあたっては注意する点があります。

そこで今回は、エンジェル税制のしくみや手続き、確定申告のやり方についてご説明します。

エンジェル税制のしくみ

ベンチャー企業がエンジェル制度を適用するためには、経済産業局への申請が必要です。
制度の対象であると認められたベンチャー企業に投資する個人投資家は、大きく分けて2種類の優遇措置を受けられます。

1つは投資の時点で受けられるもの、もう1つは株式売却の時点で受けられるものです。個人投資家は、投資したベンチャー企業から必要書類を受け取り、確定申告の際に添付することで税制の優遇措置を受けることができます。

では、どのような優遇が受けられるのか、制度適用のための要件とは何かについて具体的に見ていきましょう。

投資した年に受けられる所得税の特例措置

まずは、個人投資家がベンチャー企業へ投資した時点で受けられる優遇措置についてです。
優遇措置AもしくはBから選択できます。ただし、優遇措置Aは平成20年4月1日以降の投資が対象となります。

優遇措置A

ベンチャー企業への投資金額から2,000円を差し引いた金額がその年の総所得金額から控除されます。ただし、総所得金額×40%か1,000万円のいずれか低い方が控除対象の限度額です。

優遇措置B

その年の、他の株式を売買して得た利益から、ベンチャー企業へ投資した金額のすべてを控除します。控除対象となる投資金額に限度はありません。

売却時に受けられる所得税・住民税の特例措置

投資家が上場前のベンチャー企業株式を売却し、損失が出た場合、その年の他の株式を売買して得た利益から相殺できます。さらに、損失がその年で相殺しきれなかった場合には、翌年以降3年間にわたって株式譲渡益から順次損失の繰り越しができます。

また、ベンチャー企業が上場できずに破産または解散し、株式が無価値になってしまった場合にも、同じように3年間は繰越・相殺ができます。ただし、優遇措置AまたはBを適用した場合には、取得価格から優遇措置による控除対象額を差し引いて売却損失を計算します。

エンジェル税制の優遇措置を受けるための要件

エンジェル税制の優遇措置を受けるには、ベンチャー企業と個人投資家それぞれがそのような要件を満たしていなければならないのでしょうか。

ベンチャー企業が対象となるための要件

設立してからの経過年数、研究開発に従事する社員の人数など、いくつかの要件があります。事前確認制度を利用すれば、対象であるかどうかを確認できます。

対象企業として認められれば、経済産業省のホームページに掲載されるため、個人投資家へのアピールにもつながります。

個人投資家が対象となるための要件

まず、金銭の支払いにより対象企業の株式を取得している必要があります。他人からの譲渡株式などは対象となりません。

また、投資する企業が同族会社の場合は、持ち株割合の上位3位の株主グループの持ち株割合を順に加算し、50%以上となったときの株主グループに属していないことが要件となります。

エンジェル税制のメリット

エンジェル税制を利用することで、ベンチャー企業と個人投資家、お互いに以下のようなメリットがあります。

  • 企業と投資家の双方に有利に働く制度であることから、より多くの投資機会を生みだす
  • 事前確認制度によって対象企業であることを明示することが、投資を募るアピールになる
  • 企業と投資家の双方が適用可否の審査を受けるため、安心して投資取引ができる

エンジェル税制申請から確定申告までの流れ

エンジェル税制申請から確定申告までの流れは以下のとおりです。

ベンチャー企業の手続き

ベンチャー企業が行う手続きには、事前確認制度を利用する場合と利用しない場合の2通りがあります。事前確認制度とは、投資前にベンチャー企業がエンジェル税制の適用要件を満たす企業であるか確認を受ける制度です。

どちらを選ぶかで申請手順が変わるため、まず利用の有無を決めましょう。制度を利用する場合、しない場合の手続きをそれぞれ紹介します。

参考:エンジェル税制申請から確定申告までの流れ|中小企業庁

事前確認制度を利用する場合の申請手続き

事前確認制度を利用する場合、ベンチャー企業はまず、都道府県に対し次の確認申請をします。

  • ベンチャー企業がエンジェル税制適用対象企業であること
  • 投資が行われたこと

都道府県は、申請を受けたら確認を行い、確認できたら「確認書」を交付します。ベンチャー企業は確認書を投資家へ提出し、その後、投資家が確認書を確定申告の際に税務署へ提出するという流れです。

制度の利用は、投資家へ自社がエンジェル税制適用企業であることを証明でき、アピールできる効果があります。また、投資も円滑に行えるでしょう。

経済産業省のホームページで会社名等が公表されるため、対外的にベンチャー企業が自社の活動をアピールできるメリットもあります。

参考:事前確認制度を利用する場合の申請手続き-エンジェル税制申請から確定申告までの流れ-|中小企業庁

事前確認制度を利用しない場合の申請手続き

事前確認制度を利用せず、投資を受けた後に申請を行う場合は、投資家による資金の払込期日時点でベンチャー企業と投資家双方の要件を満たす必要があります。

エンジェル税制適用対象要件に該当することを申請して確認書を取得し、投資家に提出するという手順です。

参考:事前確認制度を利用しない場合の申請手続き-エンジェル税制申請から確定申告までの流れ-|中小企業庁

個人投資家の手続き

個人投資家が行う手続きは、出資と確定申告です。出資はベンチャー企業から直接株式を取得する方法と、経済産業大臣の認定を受けた投資事業有限責任組合を経由する方法の2通りがあります。

確定申告では添付書類を用意しますが、受ける優遇措置に応じて添付する書類が異なるため注意が必要です。

個人投資家の手続きについて、見ていきましょう。

出資の手続き

個人投資家の出資手続きは、以下の2つです。

  • ベンチャー企業から直接株式を取得する場合
  • 経済産業大臣の認定を受けた投資事業有限責任組合を経由する場合

投資事業有限責任組合とは、ベンチャー企業への投資を目的とし、ベンチャーキャピタルを中心に金融機関等が組織する「投資事業組合」の一種です。

平成16年の税制改正により、プロの専門的知識や経験を活用してベンチャー企業の成長を支援する投資事業有限責任組合を認定する制度が創設されました。

参考:
エンジェル税制申請から確定申告までの流れ|中小企業庁
認定投資事業有限責任組合経由-エンジェル税制申請から確定申告までの流れ-|中小企業庁

確定申告手続き

確定申告では、確定申告書に添付書類を添えて提出します。受ける優遇措置に応じて必要書類が異なるため、どの書類が必要かチェックしなくてはいけません。

投資事業有限責任組合を通して投資する場合は、さらに組合から交付を受けた書類も添付します。

エンジェル税制は必要書類が多いため、提出にあたっては書類の不備となるケースも少なくありません。都道府県の確認には時間を要するため、確定申告の期限に遅れないために早めの準備が必要です。

参考:
確定申告手続き-エンジェル税制のご案内-|中小企業庁
申請から確定申告までの流れ|東京都産業労働局

エンジェル税制の確定申告で必要な書類

確定申告に必要な書類は優遇措置ごとに異なります。

投資時点における必要書類は以下のとおりです。

【共通して必要な書類】

  • 都道府県知事の確認書等
  • 一定の株主に該当しない旨の確認書
  • 投資契約書の写し
  • 株式異動状況明細書
  • 株式の取得に要した金額の控除の明細書
  • 証券会社から交付を受けた取引報告書等
  • 株式等に係る譲渡所得税等の金額計算明細書

【優遇措置Aで必要な書類】

【優遇措置Bで必要な書類】

  • 譲渡所得税等の金額計算明細書

売却時点で譲渡利益発生の場合、損失発生の場合でも必要な書類は異なります。不明な点があれば、管轄の税務署に問い合わせください。

参考:
確定申告手続き-エンジェル税制のご案内-|中小企業庁
個人投資家が確定申告で使用する書類|東京都産業労働局

エンジェル税制の確定申告書類の書き方・記載方法

2つの優遇措置に必要な、寄附金控除に関する書類の書き方を説明します。

1株5万円で100株投資した場合を例にした、「特定(新規)中小会社が発行した株式の取得に要した金額の控除の明細書」の書き方は、以下のとおりです。

  • 住所、氏名、職業など必要事項を記入する
  • 適用する特例の選択では、優遇措置Aの場合は下にチェックする
  • 株式取得に要した金額を計算する

特定(新規)中小会社が発行した株式の取得に要した金額の控除の明細書

「株式等に係る譲渡所得税等の金額計算明細書」の書き方は、以下のとおりです。同じく1株5万円で100株投資した場合を例にしています。

株式等に係る譲渡所得税等の金額計算明細書

  1. 適用対象額に5万円×100株(5,000,000)の金額を記入する
  2. ①+② に5,000,000と記入する
  3. 所得金額の合計額を記入する
  4. ④×40% を計算していれる
  5. ③と⑤のいずれか少ない方の額を記入する
  6. 寄附金控除額を計算して記入する
  7. ⑤−② を記入する
  8. ①と⑧の少ない方の額を計算して記入する
  9. 取得費の調整対象額を記入する

次に、明細書で計算した金額を、確定申告書の「所得控除」にある寄附金控除の欄に記入します。

エンジェル税制の確定申告における注意点は?

エンジェル税制の確定申告は必要書類が多く、揃えるのに時間がかかります。また、確定申告の直前期には申請が集中するため、確認申請は余裕をもって行うことが必要です。
 
手続きは複雑であり、確定申告の準備で不明な点も出てくるかと思います。その際は、税理士に相談するのもよいでしょう。税理士はエンジェル税制の確定申告代行もしているため、不安がある場合は依頼する方法もあります。

エンジェル税制の適用要件に該当するか否かのチェックや都道府県にエンジェル税制適用申請手続き代行、事前確認手続きなどを個別に依頼もできます。12月以降は混み合うため、早めの対応がおすすめです。

参考:
よくあるご質問|東京都産業労働局
申請から確定申告までの流れ|東京都産業労働局

エンジェル税制の申告漏れがないよう気をつけましょう!

エンジェル税制はベンチャー企業と投資家の双方にメリットがある制度です。ただし、利用するには要件があり、投資方法により手続きは異なるため注意しなければなりません。

また、確定申告では都道府県への確認や申請など煩雑な手続きがあり、揃えなければならない書類もたくさんあります。申告の期限に遅れないよう、早めの準備が必要です。

エンジェル税制のしくみや手続きを正しく理解し、申告漏れのないようにしましょう。

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よくある質問

エンジェル税制とは?

ベンチャー企業への投資を促進するために設けられた税の優遇制度です。詳しくはこちらをご覧ください。

エンジェル税制で受けられる優遇措置とは?

ベンチャー企業の株式を取得したときに受けられるものと、株式を売却したときに受けられるものの2種類があります。詳しくはこちらをご覧ください。

エンジェル税制で優遇措置を受けるには?

投資家とベンチャー企業の両方が条件を満たすことが必要です。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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