• 作成日 : 2022年7月22日

サラリーマンは不動産投資の減価償却費で節税できる?

サラリーマンは不動産投資の減価償却費で節税できる?

サラリーマンは不動産投資の減価償却費を活用して、節税できることがあります。どのような仕組みで節税できるのか、また、節税目的で選ぶならどのようなマンションが良いのか解説します。控除額を増やして節税効果を高める方法や、節税効果を得られる年収の目安についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。

サラリーマンが不動産投資の減価償却費で節税できるのはなぜ?

サラリーマンのように給与取得のある方は、不動産投資をすることで所得税や住民税の節税につなげることができます。ただし、すべてのケースにおいて節税を実現できるのではなく、場合によっては所得税や住民税が増えることもあるので注意しましょう。

節税につながる不動産投資とはどのようなものなのか、仕組みを解説します。

減価償却費は経費に計上できる

不動産投資にはいくつか方法がありますが、サラリーマンが節税目的で投資を始めるなら、家賃収入が入るマンションなどの物件の経営が適しているでしょう。

まず収益性のある物件を購入する段階で、購入した費用を「減価償却費」として経費計上できます。

例えば1億円の物件を購入し、その物件の耐用年数が20年で毎年同額を減価償却費として計上するとしましょう。

この場合であれば減価償却費は年500万円となり、大家としての家賃収入が年間500万円を超えない場合は赤字経営になることが想定されます。また実際には減価償却費以外にも経費が発生するため、家賃収入が年間500万円を超えても赤字になる可能性があります。

減価償却費についてより詳しく知りたい方は、次の記事をご覧ください。

参考:No.2100 減価償却のあらまし|国税庁

不動産所得の赤字は給与所得と損益通算できる

不動産投資によって生じた赤字は、給与所得と損益通算ができます。損益通算とは課税所得額から赤字分を控除し、課税所得額を減らすことです。

例えば、課税所得額が1,200万円のサラリーマンが不動産投資により赤字が500万円生じていた場合は、損益通算により課税所得額は700万円となります。この700万円から所得税と復興特別所得税、住民税を計算するため、1,200万円から税額が計算されていたときよりも節税できるのです。

実際にどの程度の節税になるのか計算してみましょう。なお、住民税は課税所得額の10%として算出しています。

<課税所得額が1,200万円の場合>

・所得税:2,424,000円
・復興特別所得税:50,904円
・住民税:1,200,000円
税額合計:3,674,904円

<課税所得額が700万円の場合>

・所得税:974,000円
・復興特別所得税:20,454円
・住民税:700,000円
税額合計:1,694,454円

不動産投資による赤字を損益通算したことで、おおよそ200万円の節税ができたことになります。サラリーマンは給与から所得税などが天引きされているため、確定申告を行うと過払い分の税金の還付を受けることが可能です。

確定申告について、詳しくは下記の記事をご覧ください。

参考:No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)|国税庁

売却の際の譲渡所得税は20%以下

不動産を売却したときに所得が生じた場合は申告分離課税です。そのため、所得税のように金額に応じて税率が高くなることはなく、赤字が出ても他の年収と損益通算することはできません。

売却時の所得は、その不動産を所有していた期間の長さによって「長期譲渡所得」と「短期譲渡所得」に区分けします。長期譲渡所得とは売却する年の1月1日時点で所有期間が5年を超える物件による所得、短期譲渡所得とは売却する年の1月1日時点で所有期間が5年以下の物件による所得です。

長期譲渡所得に対しては15%(復興特別所得税と住民税を加えると20.315%)の税率、短期譲渡所得に対しては30%(復興特別所得税と住民税を加えると39.63%)の税率がかかるため、節税を意識するならば5年を超えるまでは売却しないほうが良いでしょう。また、長期譲渡所得にあたるタイミングで売却して売却益を得ることで、毎年赤字が続いていてもトータルでプラスになることがあります。

譲渡所得についてより詳しく知りたい方は、次の記事をご覧ください。

参考:No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)|国税庁

節税目的ならどのような物件がいい?

節税目的で不動産投資をする場合は、減価償却に注目して物件を選ぶ必要があります。物件の選び方について解説します。

耐用年数は構造によって異なる

物件の法定耐用年数は、木造住宅22年、木造モルタル住宅20年、鉄骨鉄筋コンクリート・鉄筋コンクリート47年と構造によって異なります。物件金額が同じであれば、法定耐用年数が短いと1年あたりの減価償却費が高くなるため、年間の経費を増やすことが可能です。

中古の場合の計算方法

中古物件の場合は、法定耐用年数を調整してから減価償却費を算出します。以下のいずれかの方法で計算しましょう。

  1. 法定耐用年数の全部を経過した資産:耐用年数=法定耐用年数×0.2
  2. 法定耐用年数の一部を経過した資産:耐用年数=(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×0.2

 

計算後の年数に1年未満の端数があるときは、その端数を切り捨て、その年数が2年に満たない場合には2年とします。例えば築30年の木造モルタル造のアパート(法定耐用年数:20年)であれば、すでに法定耐用年数が経過しているため、上記の1に該当し、20年×20%
4年で減価償却します。

また、築10年の木造モルタル造のアパートであれば、上記の2に該当し、(20年-10年)+10年×20%=12年で減価償却することになります。

節税目的に適した物件

1年あたりの減価償却費を増やすなら、耐用年数が短い物件を選ぶべきでしょう。そのため、新築マンションではなく、木造かつ築古の物件が節税目的の不動産投資に適しているといえます。

不動産投資で節税すべきなのはどんなサラリーマン?

具体的にどのようなサラリーマンにとって不動産投資の節税効果が高くなるのか解説します。

節税効果が高いサラリーマン

課税所得額が900万円以上の場合は、所得税率が33%以上になります。不動産譲渡の際の所得税率(15%か30%)との差が大きく、不動産投資による節税効果が高いと考えられます。

節税効果が低いサラリーマン

課税所得額が900万円未満の場合は、所得税率は23%以下です。不動産譲渡の際の税率との差が小さく、あまり節税効果がないと考えられます。不動産投資を考えているのであれば、節税効果を期待するのではなく、収益増を目指しましょう。

不動産投資で節税する際の注意点

不動産投資は常に節税できるわけではありません。節税にならないケースもあるので注意しましょう。

土地代は減価償却できない

土地は時間が経過しても価値は落ちないため、減価償却費に含めることができません。減価償却できるのは建物と建物付属設備のみである点に注意が必要です。

青色申告の方が節税効果が高い

青色申告にすると青色申告特別控除が適用されて控除額が増えます。課税所得額が減るので節税効果も高くなるでしょう。青色申告についてより詳しく知りたい方は、次の記事をご覧ください。

目的を決めて不動産投資を行おう

自身の所得によって、節税効果を期待するのか、収益増を期待するのか、不動産投資に対するスタンスが変わります。物件選びも変わるので、最初に目的を決めることが大切です。自分に合った不動産投資を行いましょう。

よくある質問

サラリーマンは不動産投資の減価償却費で節税できますか?

減価償却費により不動産投資に赤字が生じると、給与所得の課税所得額を減らすことができ、所得税や住民税を節税できます。詳しくはこちらをご覧ください。

どのようなサラリーマンなら、不動産投資による節税効果が大きいですか?

課税所得額が900万円以上のサラリーマンは所得税率が33%なので、節税効果が高いと考えられます。詳しくはこちらをご覧ください。


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