• 作成日 : 2022年9月2日

中古住宅の減価償却を解説!耐用年数や計算方法は?

中古住宅の減価償却を解説!耐用年数や計算方法は?

固定資産を取得する際は、減価償却を理解することが大切です。不動産を事業用に利用したり、建物を売却したりする際は、正しい減価償却計算のもと会計処理や税金の計算を行います。本記事では、中古の建物の減価償却方法について、耐用年数や計算方法、耐用年数を超過した中古物件の償却方法などを、具体的な仕訳とともに詳しく解説しています。

中古住宅の耐用年数は何年?

耐用年数には以下の3種類があります。

  • 物理的耐用年数
  • 法定耐用年数
  • 経済的残存耐用年数

物理的耐用年数とは、建物が劣化して使えなくなる年数のことです。法定耐用年数は減価償却資産が利用に耐える年数のことで、耐用年数が過ぎると、その資産は税法上資産価値がゼロ円になります。また、経済的残存耐用年数とは、購入してから市場での不動産的価値がなくなるまでの年数のことです。減価償却の計算では、法定耐用年数を押さえましょう。

中古物件の場合は、法定耐用年数の全部を経過した物件の耐用年数は、その法定耐用年数の20%に相当する年数となります。一方、法定耐用年数の一部を経過した資産については、その法定耐用年数から経過年数を差し引き、そこに経過年数の20%分の年数を加えたものを使用します。

なお、算出結果1年未満の端数があるときは端数を切り捨て、年数が2年に満たない場合は2年とすることに注意です。

参考:No.5404 中古資産の耐用年数|国税庁

ここでは、事業用不動産と非事業用不動産に分けて耐用年数を解説します。

事業用不動産の耐用年数

事業用不動産とは、事務所や店舗、倉庫といった事業用の物件や、賃貸アパートのような貸付用物件のことです。事業用不動産を保有している場合は、不動産の取得にかかった費用を、減価償却で耐用年数分経費に計上できます。そのため、事業用不動産を保有している方は、耐用年数を理解することが重要です。

中古資産を事業用に変更する場合は、法定耐用年数ではなく、事業用に供した時以後の使用可能期間の見積もり年数を使うことができます。
また、使用可能期間の年数を見積もることが難しい場合は、以下の簡便法が使用可能です。ただし、取得価額の50%を超える資本的支出を行った場合は、簡便法は使えません。

  • 法定耐用年数の一部を経過した資産
    (法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20/100
  • 法定耐用年数の全部を経過した資産
    法定耐用年数×20/100

参考:No.5404 中古資産の耐用年数|国税庁

法定耐用年数は、建物の構造と用途ごとに定められています。ここでは、事務所用、店舗用・住宅用、工場用・倉庫用について抜粋して紹介します。この法定耐用年数と経過年数をもとに、中古物件の耐用年数を算出し、減価償却を行うのです。

用途
構造
耐用年数
事務所用
木造・合成樹脂造のもの
24年
木骨モルタル造のもの
22年
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造のもの
50年
店舗用
木造・合成樹脂造のもの
22年
木骨モルタル造のもの
20年
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造のもの
39年
工場用・倉庫用
木造・合成樹脂造のもの
15年
木骨モルタル造のもの
14年
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造のもの
38年

引用:令和3年分 確定申告書等作成コーナーよくある質問|国税庁

非事業用不動産の耐用年数

非事業用不動産を売却した場合、売却時に得た譲渡所得は課税対象です。譲渡所得を計算する際は、売却代金から取得費と譲渡にかかった費用を差し引きます。取得費は、不動産の購入代金から減価償却費相当額を差し引いて求めるため、非事業用不動産を売却して課税額を確認する際も、減価償却の理解が必要です。

ここでは、非事業用不動産を事業用に供した場合に用いる耐用年数について紹介します。
まずは、業務用に供した日における未償却残高相当額を計算する際に使用する耐用年数です。この場合、業務用に供されていなかった期間につき、その資産の耐用年数の1.5倍に相当する年数を用いて減価償却を行います。

業務用に供した後の減価償却では、事業用不動産と同様に耐用年数を算出します。
参考:No.2108 中古資産を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却|国税庁

住宅用物件の法定耐用年数は、国税庁によると以下のとおりです。

住宅用
木造・合成樹脂造のもの
22年
木骨モルタル造のもの
20年
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造のもの
47年

引用:令和3年分 確定申告書等作成コーナーよくある質問|国税庁

中古住宅の減価償却と計算方法

ここでは、中古住宅の減価償却方法と仕訳を、シミュレーションとともに解説します。
なお、業務用に供した不動産の減価償却方法は、資産の取得年月日によってさまざまです。平成19年4月1日以後に取得した建物については、定額法で以下のように計算します。

減価償却費 = 取得価額 × 定額法の償却率

そのため、以下のシミュレーションでも定額法を用いて計算します。

参考:No.2108 中古資産を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却|国税庁

賃貸収入を得ている場合

個人事業主として中古物件を貸付用に取得して、賃貸収入を得ている場合のシミュレーションは以下のとおりです。

(例)築25年の木造中古アパートを貸付用として1,000万円で取得し、代金は現金で支払った。

借方
貸方
摘要
建物
10,000,000円
現金
10,000,000円
木造中古アパート取得

決算期に、減価償却を行います。まずは耐用年数を計算しましょう。木造アパートの法定耐用年数は22年です。築25年なので、取得時にすでに耐用年数の全部を超過していることがわかります。この場合の簡便法を用いた耐用年数の計算は以下のとおりです。

22年(法定耐用年数)×20/100=4年(1年未満の端数切り捨て)

耐用年数ごとの償却率は以下を参考にしましょう。

参考:減価償却資産の償却率等表|国税庁

4年の償却率は0.250なので、減価償却費は次のように計算されます。

1,000万円×0.250=250万円 

仕訳は以下のとおりです。なお、ここでは直接法を採用しています。

借方
貸方
摘要
減価償却費
2,500,000円
建物
2,500,000円
木造中古アパート
減価償却1年目/4年

建物の大規模修繕を行った場合の減価償却

リノベーションなど建物の大規模修繕を実施したとき、会計上は「資本的支出」もしくは「修繕費」で計上します。資本的支出とは、建物の耐用年数を延長したり、資産価値を増加させたりするための支出のことです。一方、修繕費は建物の原状回復や維持管理のための支出のことを指します。

資本的支出を行った建物の減価償却の方法は、資本的支出の金額によって異なります。

  • 資本的支出が、取得価額の50%以下の場合
    簡便法を使用できる。
  • 資本的支出が、取得価額の50%より大きく、かつ 再取得価額(当該建物を新築したと仮定した際にかかる取得価額)の50%以下の場合

    以下の計算で求めた耐用年数を使用する。

    耐用年数=(資本的支出を含む建物の取得価額)÷{(資本的支出を含まない建物の取得価額/簡便法による耐用年数)+(資本的支出/法定耐用年数)}
  • 資本的支出が、再取得価額の50%よりも大きい場合
    限りなく新築に近いため、法定耐用年数を使用する。

参考:No.5404 中古資産の耐用年数|国税庁

以下では、大規模修繕にかかった費用が購入した中古物件の取得額の50%より大きく、かつ再取得価額の50%以下である場合の減価償却の例をご紹介します。

(例)築10年の木造中古アパートを1,000万円で取得し、600万円かけて大規模修繕を行った。この修繕は全額資本的支出に該当するとする。また、当該物件の再取得価額は2,000万円とする。

資本的支出である600万円は、物件取得価額の50%よりも大きく、再取得価額2,000万円の50%よりは小さい金額です。よって、以下の計算式に当てはめて耐用年数を求めましょう。

耐用年数=(資本的支出を含む建物の取得価額)÷{(資本的支出を含まない建物の取得価額/簡便法による耐用年数)+(資本的支出/法定耐用年数)}

資本的支出を含む建物の取得価額:1,000万円+600万円=1,600万円

簡便法による耐用年数:22年-10年+10年×0.2=14年

資本的支出を含まない建物の取得価額/簡便法による耐用年数:1,000万円÷14年=714,285.714…→714,285円(端数切り捨て)

資本的支出/法定耐用年数:600万円÷22年=272,727.273…→272,727円(端数切り捨て)

それぞれを、計算式に当てはめると次のようになります。

耐用年数=1,600万円÷(714,285円+272,727円)=16.210…→16年(端数切り捨て)

以上より、耐用年数16年で計算することがわかります。

16年の定額法償却率は0.063なので、減価償却費は1,600万円×0.063=100万8千円 となります。

参考:減価償却資産の償却率等表|国税庁

直接法を採用した仕訳は以下のとおりです。

借方
貸方
摘要
減価償却費
1,008,000円
建物
1,008,000円
修繕後木造中古アパート
減価償却1年目/16年

大規模修繕費の減価償却について、詳しくは下記の記事を参考ください。

耐用年数を経過した建物の減価償却

耐用年数を経過した建物の減価償却では、計算に使用する耐用年数の求め方がポイントです。減価償却において、取得した中古物件の築年数が耐用年数を完全に超過している場合と、耐用年数の一部を経過している場合では、耐用年数の計算方法が異なります。ここでは、2つのパターンについて、簡便法での計算方法を紹介します。

築年数が耐用年数を超過したケース

築年数が耐用年数を完全に超過している場合、次の算式で計算しましょう。

「法定耐用年数×20/100」

例えば、築年数が26年の木造アパートを取得した場合は、法定耐用年数である22年を完全に超過していることがわかります。そのため、減価償却で用いる耐用年数は次のとおりです。

22年×0.2=4.4→4年(端数切り捨て)

参考:No.2108 中古資産を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却|国税庁

耐用年数の一部を経過しているケース

築年数が耐用年数の一部のみを超過している場合は、次の算式で計算します。

(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20/100 

例えば、築年数が12年の木造アパートを取得した場合は、法定耐用年数である22年のうち12年分を超過していることがわかります。そのため、耐用年数は次のように計算できるのです。

(22年-12年)+12年×0.2=14.4→14年(端数切り捨て)

参考:No.2108 中古資産を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却|国税庁

マンションと一戸建てで減価償却の仕方は違う?

マンションと一戸建てでは、減価償却の方法は同じですが、法定耐用年数は用途や構造などによって異なります。マンションによくある鉄骨鉄筋コンクリート造は47年、一戸建てによくある木造は22年です。耐用年数が違えば、同じ額で取得しても当然減価償却費は変わってきます。

このように、マンションと一戸建てで減価償却の方法が変わるのではなく、建物の用途や構造によって耐用年数が変わることを理解しましょう。

中古住宅の減価償却を理解して正しい会計処理を行う

本記事では、中古住宅の減価償却について、事業用不動産と非事業用不動産に分けて解説しました。中古住宅では、材質や用途などに応じて使える法定耐用年数が異なります。中古住宅の減価償却は、物件から賃貸収入を得ている場合や不動産売却時に関わってくる重要なポイントです。記事で解説した計算と仕訳のシミュレーションを参考に、中古住宅の減価償却を理解して正しい会計処理を行いましょう。

よくある質問

中古住宅を減価償却する際の耐用年数は何年ですか?

用途と構造によって異なります。また、取得時の築年数が耐用年数を過ぎている場合、耐用年数を完全に超過しているか一部超過しているかで、耐用年数の計算方法が異なります。詳しくはこちらをご覧ください。

マンションと一戸建てで減価償却の仕方は違いますか?

減価償却の方法は同じですが、法定耐用年数は用途や構造によって異なります。マンションによくある鉄骨鉄筋コンクリート造は47年、一戸建てによくある木造は22年です。詳しくはこちらをご覧ください。


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