- 作成日 : 2024年10月4日
工事完成基準とは?メリット・デメリットまとめ
工事完成基準とは、建設業などで用いられる工事にかかる収益や費用の認識に関する基準のことです。工事完成基準には、どのような特徴があるのでしょうか。この記事では、工事完成基準のメリット・デメリットについて解説します。
目次
工事完成基準とは
工事完成基準とは、工事が完成し、引き渡しが完了した時点で工事収益と工事原価を認識する基準のことです。完成物の引き渡しが収益および原価の認識時点となるため、完成までに工事に関して受け取った金銭がある場合は未成工事受入金に計上して、最終的に工事原価に振り替えます。
「工事」とありますが、建設工事の他、大型の製品の製造やソフトウェアの開発でも工事完成基準が用いられることがあります。
工事完成基準のメリット
工事完成基準の主なメリットを紹介します。
収益の計上を繰り延べられる
工事完成基準のメリットは、目的物の引渡時に工事収益と工事原価が計上されるため、引き渡しまで利益・所得を繰り延べられることです。ただし、複数の工事の引渡時期が重なると、その時期に集中して工事収益が計上されることもあります。
なお、法人税法上は、長期大規模工事(請負金額10億円以上で一定の要件を満たす工事)に該当する工事については工事進行基準が強制適用されるため、工事完成基準を適用することができません。また、工事途中で一部引き渡しがあった場合など、部分完成基準の適用により、法人税法上は工事完成基準を適用できないこともあります。
会計処理がシンプル
工事完成基準は引渡時に工事収益と工事原価を計上すればよいため、会計処理がシンプルです。会計処理が簡単であることから、小規模の工事や重要度の低い工事などの会計処理に向いています。
工事完成基準のデメリット
工事完成基準の主なデメリットを紹介します。
工事の赤字に気づきにくい
工事完成基準では、工事進行基準などのように工事の進行度合いに応じて工事収益や工事原価を計上しません。引渡時点で一度に収益と原価を認識するため、工事の途中で赤字になっていても気づきにくいというデメリットがあります。完成後に判明した赤字については、請負金額の交渉などが難しくなる可能性があります。
収益の計上を分散できない
工事完成基準では工事収益が一度に計上されるため、工事進行基準のように収益を各会計期間に配分できません。前述の通り、他の工事の進捗次第では一会計期間に集中して工事収益が計上されることがあります。
工事完成基準の特徴を把握して会計処理をしよう
建設業などの工事の会計処理には、工事完成基準と工事進行基準が用いられます。工事完成基準は、目的物の引渡時点で売上高と売上原価を認識する方法です。会計処理がシンプルでわかりやすい反面、一度に収益と費用が計上されるというデメリットがあります。工事の内容などに応じて、工事完成基準と工事進行基準を使い分けましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
軽減税率とは?消費税8%と10%の品目や見分け方を解説
軽減税率とは、原則である10%となる標準税率とし、標準税率よりも低い税率、つまり、現行では消費税率8%のことをいいます。この記事では、軽減税率の対象品目や注意点について解説していきます。 軽減税率とは 消費税は、令和元年10月に8%から10…
詳しくみる税務調査対象に選ばれにくい申告のポイント
事業を行っている法人や個人などの納税者を対象に、税務署や国税局による税務調査が行われることがあります。対象に選ばれると調査のための準備をしなくてはならないため、通常の業務への影響も考えられるでしょう。こうした税務調査対象に選ばれにくくするた…
詳しくみる非課税取引にインボイスの発行は必要?制度の対象品目や記載方法を解説
消費税法により、課税取引のうち一定の取引は「非課税」と定められており、これらを「非課税取引」と言います。一方、インボイス発行事業者になれば、取引相手から求められたらインボイスの交付義務があります。しかし、非課税取引のみを行った場合、インボイ…
詳しくみる任意監査とは?メリット・デメリットや法定監査との違い
会社で行う監査とは、経営や財務状況について検証し、結果を報告することです。 監査の一つである「任意監査」とは、会社が自主的に行う監査のことです。法定監査とは異なり、行う会社の規模などの定めはありません。 この記事では、任意監査の種類やそれぞ…
詳しくみる軽減税率に向けた「業種別の影響と対応」 飲食や小売はどうなる?
2019年10月1日の消費税増税とあわせて始まる軽減税率。高齢社会の中で消費税の引き上げがやむを得ない一方、引き上げによって生活が著しく困窮することないよう一部は消費税8%に据え置かれます。 生活の影響についてはある程度は想像しやすいですが…
詳しくみる環境会計とは?どんな企業が導入しているの?
環境に配慮した経営が国際的な注目を集めるなか、環境会計の導入を推進する動きがあります。 環境会計を導入することで、将来の経営コストの削減や企業のブランドイメージ力の向上が見込めるかもしれません。 当記事では環境会計や環境会計ガイドラインの概…
詳しくみる