• 更新日 : 2024年5月17日

賃上げ促進税制とは?令和6年度税制改正による変更点やメリットをわかりやすく解説!

賃上げ促進税制とは?令和6年度税制改正による変更点やメリットをわかりやすく解説!

賃上げ促進税制は、従業員の給与引き上げを促進するための制度です。令和4年度税制改正で創設された賃上げ促進税制ですが、令和6年度税制改正によってさらに3年延長し、かつ拡充しました。

本記事では、賃上げ促進税制の概要、従来の賃上げ促進税制との違い、企業側と従業員側でのメリットなどについて解説していきます。

賃上げ促進税制とは?

賃上げ促進税制は、対象となる法人や個人事業主において給与等支給額が一定以上増加したときは、その増分に応じて税額から特別控除ができるという税制上の優遇措置です。令和6年度税制改正において、賃上げ促進税制は物価上昇を超える持続的な賃上げを目指す観点から3年間の延長・拡充がなされ、従来よりも適用の効果が大きくなりました。

令和4年度改正の賃上げ促進税制との違いは?

令和6年度税制改正における賃上げ促進税制について、現行制度の賃上げ税制との主な違いは次のとおりです。

  • 「中堅企業向け」区分の追加:従来、全企業向けと中小企業向けの2区分であったものが、中堅企業向け区分が新設され3区分になりました。
  • 控除率の拡充:税額控除率上乗せ要件の拡充がなされました(下記表参照)。
賃上げ促進税制改正従来の制度改正後
大企業向け最大控除率30%最大控除率35%
(新設)中堅企業向け(区分なし)最大控除率35%
中小企業向け最大控除率40%最大控除率45%

注意点としては、従来の賃上げ促進税制の適用期間は、令和6年3月31日までに開始する事業年度(個人事業主は令和6年まで)です。改正後の賃上げ促進税制の適用期間は、令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度(個人事業主は令和7年から令和9年までの各年)のため、適用期間を間違えないようにしましょう。

なお、中小企業等は中小企業向け区分での当制度適用が有利となりますが、全企業向けは全ての企業(個人事業主を含む)において適用が可能です。次の項ではわかりやすく区分するため、全企業向けを「大企業向け」として解説しています。

参考:賃上げ促進税制について|経済産業省賃上げ促進税制|中小企業庁

令和6年度税制改正で各区分において税額控除率アップ

賃上げ促進税制では、青色申告書を提出する企業等が、雇用者全体の給与等支給額(国内雇用者の給与、賃金、賞与などの給与所得に該当するもの)の増加率によって、〇〇%の税額控除を受けることができます。この○○%の部分について、令和6年税制改正では、以下の図のように見直しが行われました。

大企業向け区分

令和6年度税制改正 大企業向け区分

大企業においては、基本要件が新規雇用者の給与等支給額から継続雇用者の給与等支給額に変更があったほか、上乗せ分として前年比5%の増額分が追加されました。これにより、最大35%の控除を受けることができます。

女性活躍等支援については、「プラチナくるみん」または「プラチナえるぼし」の認定を受けている企業が控除率を5%上乗せすることができる制度です。女性活躍等支援については、後ほど解説します。

中堅企業向け区分

令和6年度税制改正にて新設された中堅企業向けについては以下のとおりです。

令和6年度税制改正 中堅企業向け

令和6年度税制改正で中堅企業向け区分が追加されたのは、従業員2,000人以下の企業または個人事業主です。これら企業を、事業や投資を拡大し、地域における賃上げに貢献する重要な存在として位置づけたためです。

上乗せについては、教育訓練費は大企業と同レベル、女性活躍等支援については大企業向けよりやや要件が緩和されるように設定されています。

参考:賃上げ促進税制|中小企業庁

中小企業向け区分

令和6年度税制改正 中堅企業向け

中小企業においては、上乗せ要件について緩和が行われました。教育訓練費については、従来は前年度比10%以上の増加でなければなりませんでしたが、改正により前年度比5%以上の増加でよくなりました。さらに、女性活躍等支援についての上乗せも加えられました。

賃上げ促進税制における大企業・中堅企業・中小企業とは?

賃上げ促進税制におけるそれぞれの区分については次のとおりとなります。

全企業青色申告書を提出する企業または個人事業主全企業または個人事業主が対象
一定の企業はマルチステークホルダー届出要*
中堅企業従業員数2,000人以下の企業または個人事業主が対象
一定の企業はマルチステークホルダー届出要*
中小企業法人資本金1億円以下の法人、協同組合等が対象
個人従業員数1,000人以下の個人事業主が対象

*一定の規模を超える企業等については、マルチステークホルダー方針の公表およびその旨の届出が必要となります。

参考:賃上げ促進税制について|経済産業省賃上げ促進税制|中小企業庁

女性活躍等支援や控除不足額の繰越について

女性活躍等支援について

賃上げ促進税制の一環として、新たに女性活躍支援の観点から加算措置が設けられました。子育てサポート企業として厚生労働大臣の認定を受けた証として、「くるみん認定」があります。くるみん認定の上位には「プラチナくるみん認定」があります。

また、女性の活躍推進に関する取り組み状況についてが優良であるなどの要件を満たした企業等には、「えるぼし認定」がされます。えるぼし認定は4つの段階があり、右にいくほど実施状況が優良なものとなります。

えるぼし(1段階目)→えるぼし(2段階目)→えるぼし(3段階目)→プラチナえるぼし

参考:くるみんマーク・プラチナくるみんマーク|厚生労働省えるぼし認定・プラチナえるぼし認定|厚生労働省

控除不足額の繰越について

令和6年度改正においては、当制度における中小企業については控除しきれなかった控除額について、5年間の繰越しが可能になりました。すなわち、税額控除限度額が法人税等の額の20%を超える場合には、その超える額を明細書に記載して確定申告書を提出することで控除額を翌年以降に繰り越すことができます。

従業員の賃上げはできたものの、結局赤字となった場合でも、控除額の繰越しができるようになったため、賃上げによる減税効果を翌期以降に活かすことができます。5年間という長期間の繰越しが可能であり、あまり前例のない制度と言えます。

参考:賃上げ促進税制|中小企業庁

賃上げ促進税制による企業のメリットは?

賃上げ促進税制導入による、企業側のメリットを紹介します。

税額控除による高い節税効果

賃上げ促進税制は「税額控除」となります。したがって、企業の負担する法人税額や個人事業主の負担する所得税額から直接控除することができます。

控除上限額は法人税額または所得税額の20%までとなっていますが、中小企業向け区分においては次年度以降に繰越しすることができますので、赤字になったとしても翌年度以降に利用可能となり、長期的に節税効果の高い制度となります。

人材育成に活用できる

一般に従業員の賃上げは、企業等にとって経済的負担が大きいものです。しかしながら、賃上げ促進税制を活用すれば税額の負担軽減を図ることができます。さらに教育訓練費を拡充した企業にとっては控除額の上乗せが期待できるため、企業側にとって幅広く人材育成に活用できる制度となり得ます。

賃上げ税制による従業員のメリットは?

賃上げ税制を企業が取り入れることによって、従業員側にもメリットがあります。

給料・ボーナスの増加

従業員側のメリットは、給料やボーナスの増加を期待できることです。賃上げ促進税制は、大企業・中堅企業であれば継続雇用者、中小企業であれば雇用者全体の給与等支給額の増加を要件にしていますので、要件を満たすには、企業は従業員の給与やボーナスを上げるか、雇用する人数を増やすかで検討することになります。

賃上げ促進税制を導入するにあたっての注意点

賃上げ促進税制の導入において注意したいのは、この制度が従業員の給料やボーナスの増加などをともなう制度のため、経営状況次第では、要件を満たそうとすることで資金繰りが厳しくなる可能性も出てきます。

税額控除率だけに目を向けるのではなく、給料やボーナスを上げても問題ないくらいの資金繰りは大丈夫か、設備投資との兼ね合いでかえって労働生産性を低下させてしまわないか、など中長期的な目線で検討し、導入することが重要です。

賃上げ促進税制の法人税控除を申告する方法は?

賃上げ促進税制を利用するにあたって、事前の認定や申請は必要ありません。例えば法人の場合には、法人税額から控除を受けるには法人税の確定申告書提出の際に、以下のような書類を添付する必要があります。

  • 別表(法人税申告書)
  • 適用額明細書
  • 給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除に関する明細書
  • (教育訓練費の上乗せを申告するときは実施時期や受講者、支払証明などを記載した書類)

必要な書類を添付した上で、確定申告書に法人税の税額控除分を反映させ、管轄の税務署に提出します。

また、本税制は前年度との給与等支給額の増加分があることが前提ですので、前事業年度が存在しない新規設立の事業者は適用を受けられません。

税額控除のための賃上げは慎重に検討しましょう!

令和6年度税制改正では、令和4年度改正による賃上げ促進税制が強化された形です。特に中堅企業向けの区分が追加され、細やかな対応がなされました。従業員給与の賃上げがなされると、法人では事業税(外形標準課税)の付加価値割に影響するのですが、こちらも令和6年度税制改正において一定の措置が取られています。

賃上げにはもちろんその原資が必要なのですが、人件費の見直し時にはこの税制で現実的な収支がどのようになるかをよく検討し、全体コストが減るのであれば積極的に適用するとよいでしょう。


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