• 更新日 : 2022年2月10日

賃上げ税制とは?令和4年度税制改正による変更点やメリットをわかりやすく解説!

賃上げ税制とは?令和4年度税制改正による変更点やメリットをわかりやすく解説!

賃上げ税制(賃上げ促進税制)は、従業員の給与引き上げを支援する制度です。所得拡大税制に代わる税制で、令和4年度の税制改正大綱において、賃上げ税制のさらなる見直しが盛り込まれました。これにより、中小企業においては、給与支給増加額などに対して最大25%の税額控除だったものが、最大40%に引き上げられる見込みです。本記事では、賃上げ税制の概要、企業側と従業員側でのメリットなどについて解説していきます。

賃上げ税制とは?

賃上げ税制は、正式名称を賃上げ促進税制といいます。従業員の給与支給額を前年度より一定以上アップさせた企業や個人事業主を対象に、一定の税額控除を行う制度です。賃上げに積極的に取り組む企業や個人事業主をサポートする制度になります。

所得拡大促進税制との違いは?

賃上げ税制に関連して、所得拡大促進税制といわれる制度があります。所得拡大促進税制も、賃上げ税制のように従業員の給与支給額を前年度より一定以上アップさせた企業について、一定の税額控除を行う制度です。

賃上げ税制との違いは、税額控除の要件と適用時期。所得拡大促進税制の適用時期が令和4年3月31日までに開始される事業年度(個人事業主については令和4年分)に対して、賃上げ税制は令和4年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始する各事業年度(個人事業主は令和5年から令和6年まで(※2022年1月時点)となるほか、賃上げ税制は教育訓練費も要件に加わり、内容が拡充されています。

令和4年度税制改正で中業企業の控除率が最大40%に

賃上げ税制では、要件を満たした青色申告書を提出する企業であれば、雇用者全体の給与等支給額(国内雇用者の給与、賃金、賞与などの給与所得に該当するもの)の増加額について、〇〇%の税額控除を受けることができます。この○○%の部分について、令和4年税制改正大綱で、以下の図のように見直しが行われました。
大企業における基本要件が新規雇用者の給与等支給額から継続雇用者の給与等支給額に変更
大企業においては、基本要件が新規雇用者の給与等支給額から継続雇用者の給与等支給額に変更があったほか、上乗せ分として前年比4%以上の増額分が追加されました。これにより、最大30%の控除を受けることができます。
令和4年度税制改正で中小企業における変化
中小企業においては、上乗せ要件について緩和が行われ、雇用者全体の給与等支給額前年比2.5%以上と教育訓練費の両方の要件を満たさないと加算されなかったものが、それぞれ個別に加算されるようになりました。これにより、控除率最大40%と大幅な控除が認められるようになります。

賃上げ税制における大企業・中小企業の定義は?

中小企業向けの賃上げ税制は、正しくは中小企業者等になります。中小企業者等になるのは、以下のいずれかに該当する場合です。該当しない場合は、大企業に区分されます。

【中小企業者等の条件:いずれかに該当すること】

  • 資本金や出資金が1億円以下の法人(同一の大規模法人から2分の1以上の出資、2以上の大規模法人から3分の2以上の出資、前3事業年度の所得の平均15億円を超える法人を除く)
  • 資本等を有しない法人で常時雇用人数が1,000人以下の法人
  • 常時雇用の従業員が1,000人以下の個人事業主
  • 協同組合等

賃上げ税制による企業のメリットは?

賃上げ税制導入による、企業側のメリットを紹介します。

法人税控除による節税効果

税額控除は、算出した法人税額から直接差し引ける控除です。中小企業については、要件を満たせば、雇用者全体の給与等支給額の増加分について、最大40%の税額控除を受けられます。

従業員の給与を増額しても、税額控除の分の負担軽減ができるため、一気にコスト増になるのを避けられるでしょう。従業員全体の給料アップを検討している企業、成長性の高い企業でさらなる雇用を検討している企業にとっては、利用することで同時に節税効果も得られる、メリットのある制度です。

人材育成に活用できる

賃上げ税制には、追加の要件として、教育訓練費に関するものもあります。教育訓練には、労働者のキャリア形成に資する専門的なものも含まれますので、従業員の教育訓練を促すことで、中長期的に専門知識や技術力のある人材の確保にも活用できます。

賃上げ税制による労働者のメリットは?

賃上げ税制を企業が取り入れることによって、労働者側にもメリットがあります。

給料・ボーナスの増加

労働者側のメリットは、給料やボーナスの増加を期待できることです。賃上げ税制は、大企業であれば継続雇用者、中小企業であれば雇用者全体の給与等支給額の増加を要件にしていますので、要件を満たすには、企業は従業員の給与やボーナスを上げるか、雇用する人数を増やすかで検討することになります。

賃上げ税制を導入する注意点

賃上げ税制の導入において注意したいのは、税制面での優遇が法人税の税額控除と限定されることです。そもそも納める法人税額が少ない企業が取り入れても、給与等支給額の増額によるコストが増すばかりで恩恵が得られません。

また、従業員の給料やボーナスの増加などをともなう制度ですので、経営状況次第では、要件を満たそうとすることで資金繰りが厳しくなる可能性もあります。

税額控除率だけに目を向けるのではなく、給料やボーナスを上げても問題ないくらいの資金繰りか、賃上げすることで設備投資に回らずかえって労働生産性を低下させてしまわないか、など中長期的な目線で検討し、導入することが重要です。

賃上げ税制の法人税控除を申告する方法は?

賃上げ税制を利用するにあたって、事前の認定や申請は必要ありません。ただし、法人税額から控除を受けるには法人税の確定申告書提出の際に、以下のような書類を添付する必要があります。

  • 別表(法人税申告書)
  • 適用額明細書
  • 対象者の給与等支給増加額や控除を受ける金額などを記載した明細書
  • (教育訓練費の上乗せを申告するときは実施時期や受講者、支払証明などを記載した書類)

必要な書類を添付した上で、確定申告書に法人税の税額控除分を反映させ、管轄の税務署に提出します。

なお、賃上げ税制は青色申告事業者を対象にした制度になります。白色申告事業者は適用できないほか、青色申告の申請を行っても、適用を受けたい事業年度に青色申告事業者でなければ適用できませんので注意しましょう。

また、本税制は前年度との給与等支給額の増加分があることが前提ですので、前事業年度が存在しない新規設立の事業者は適用を受けられません。

税制控除のための賃上げは慎重に検討しましょう!

賃上げ税制の要件を満たせば、雇用者全体の給与等支給額の増加分について、15%から最大40%(大企業は最大30%)の税額控除を受けられます。賃上げの負担軽減につながることから、賃上げを検討している企業にとってはメリットのある制度です。

しかし、税額控除のためには賃上げをともなうことから、収益性や資金繰りに不安のある企業が取り入れると、税額控除よりも、賃上げによるコストで経営が圧迫する恐れがあります。

税額控除ができる点は大きいですが、企業の中長期的な活動や資金繰りにも注意して、導入は慎重に検討することをおすすめします。

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よくある質問

賃上げ税制とは?

賃上げに積極的に取り組む企業や個人事業主を対象に、一定の税額控除を認める制度です。詳しくはこちらをご覧ください。

令和4年度の賃上げ税制はどう変わる?

大企業は最大20%から最大30%へ、中小企業者等は最大25%から最大40%へ、雇用者全体の給与等支給額に対する税額控除の割合が拡大します。詳しくはこちらをご覧ください。

賃上げ税制を申告するには?

法人税の確定申告時に適用額明細書や詳細を記載した明細書を添付し、確定申告書に税額控除額を反映した上で申告を行い、適用を受けます。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:並木 一真(税理士/1級FP技能士/相続診断士/事業承継・M&Aエキスパート)

並木一真税理士事務所所長
会計事務所勤務を経て2018年8月に税理士登録。現在、地元である群馬県伊勢崎市にて開業し、法人税・相続税・節税対策・事業承継・補助金支援・社会福祉法人会計等を中心に幅広く税理士業務に取り組んでいる。

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