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  • 作成日 : 2021年4月2日

労働分配率とは?計算方法や適正な人件費、業種別の平均目安を考える

付加価値に占める人件費の割合を表す「労働分配率」は、人件費が適正な水準かどうかを判断するために使われる経営指標です。

人件費は従業員への投資であり企業が成長するためには増やすべきですが、コストという側面もあるため、増やし過ぎて経営を圧迫すると企業成長の阻害要因になりかねません。

労働分配率の計算方法や業種別の目安を理解して、自社の人件費を適正な水準に保つようにしてください。

労働分配率とは何か

日々の事業活動を通じて企業が生み出す付加価値は、人件費や企業の内部留保、賃貸料や税金の支払いなど、さまざまな要素に振り分けられます。このうち人件費に付加価値をどれだけ分配したのかを表す指標が「労働分配率」です。

労働分配率は適正な水準に保つことが大切で、高すぎても低すぎてもよくありません。例えば、給与が高くて労働分配率が高ければ従業員の士気は上がりますが、人件費が増えると企業経営の足かせになる場合があり、設備投資に十分な資金を割けなくなる可能性があります。

どのような水準に保てばよいのか、経営者が迷うことが少なくないのが人件費です。労働分配率を理解すれば、人件費の適正な水準が分かるので、まずは労働分配率の計算方法について解説します。

労働分配率の計算方法

労働分配率とは次の計算式で求めた値です。

労働分配率(%) = 人件費 ÷ 付加価値 × 100

給与や福利厚生費などの人件費が増えれば労働分配率は上がり、企業活動を通して生み出される付加価値が増えれば労働分配率は下がります

労働分配率の計算式における付加価値とは

労働分配率の計算式に出てくる「付加価値」とは、会社が新たに生み出した価値のことで、計算方法には控除法と加算法の2つの方法があります。

簡便な計算式を用いる控除法は中小企業向けで、中小企業庁方式とも呼ばれる計算方法です。一方、個々の要素を計算して加算する加算法は日銀方式と呼ばれ、大企業向けの計算方法になります。

  • 控除法:付加価値 = 売上高 – 外部購入価額
  • 加算法:付加価値 = 人件費 + 賃貸料 + 税金 + 他人資本利子 + 当期純利益

人件費に含まれるもの

労働分配率の計算式に出てくる「人件費」に含まれるものとしては、例えば以下のものが挙げられます。

など

役員報酬や従業員に支払う給与・賞与、アルバイトを雇った場合の雑給などはすべて含めて計算し、法定福利費など間接的な人件費も労働分配率の計算では含めて考えます

労働分配率と労働生産性の関係

人件費について考える際、労働分配率とともに考慮に入れるべきなのが「労働生産性」です。労働投入量に対してどれほどの付加価値を生み出せているのかを表す指標が労働生産性で、以下の計算式で求められます。

労働生産性 = 付加価値 ÷ 従業員数

労働生産性とは従業員1人あたりの付加価値であり「会社の稼ぐ力」を表す指標です。労働分配率と労働生産性の関係は、次の式で表されます。

労働分配率 × 労働生産性 ÷ 100 = (人件費 ÷ 付加価値 × 100) × (付加価値 ÷ 従業員数) ÷ 100
= 人件費 ÷ 従業員数 = 1人あたり人件費

労働分配率や労働生産性を向上できれば、1人あたり人件費がアップして給与額が上がり、優秀な人材を確保しやすくなって生産性が上がる好循環が生まれます。そのため、人件費について考える場合には、労働分配率と労働生産性のいずれにも着目することが大切です。

また、別の見方をすれば、給与額が同じで1人あたり人件費が同じ企業があった場合でも、労働分配率と労働生産性の値まで同じとは限りません。労働分配率と労働生産性のバランスがよい会社もありますが、一方が極端に低い会社の場合は問題点がないか検討が必要です。

仮に労働分配率が低ければ、給料が低くて従業員の仕事に対する意欲が十分に引き出されていない可能性があり、労働生産性が低ければ業務に無駄がないか確認する必要があります。

適正な労働分配率とは

労働分配率は「〇%ならば良い」といった絶対的な基準があるわけではなく、全企業に共通した基準値があるわけではありません。一般的には企業規模別や業種別の平均値をデータとして使うことが多く、自社の労働分配率が平均値より高いのか低いのかで判断します。

労働分配率の適正な数値

労働分配率の適正な数値を知りたい場合に役立つのが、中小企業庁が公表している「企業規模別、労働分配率の推移」です。以下のグラフを見れば分かるように、労働分配率の平均値は企業規模によって大きく異なります。

大企業であれば約50%、中小企業であれば70~80%が労働分配率の平均値です。自社の労働分配率が平均値から大きく乖離している場合には、問題点がないかどうかを確認した上で必要であれば改善策を講じることになります。

(出典:中小企業庁)

労働分配率が高い場合

給与が高い結果として労働分配率が高いのであれば、従業員の満足度や士気が高い状態で維持されて積極的に仕事に取り組むため、将来的に会社が成長して収益が増える可能性があります。十分な給与が支払われることで離職を考える従業員が減り、他社への人材流出を防げる点もメリットです。

ただし、人件費の割合が高くて労働分配率が高い状態が続くと、例えば機器の更新など設備投資が疎かになり、古い機械を使い続けることで生産性の低下を招く可能性があります。人件費だけでなく、他の費用にもバランス良く資金を配分することが、企業成長には欠かせません。

労働分配率が高い状態を改善するには人件費の削減が必要になりますが、人件費のカットでは従業員が反発する場合も少なくないので注意が必要です。毎月の給与や賞与の減額が難しければ、まずは福利厚生費など手を付けやすいものから削減することをおすすめします。

また、付加価値を増やせば労働分配率が下がるので、無駄な作業を洗い出して業務効率化を進めるのも1つの方法です。効率化によって同じ作業時間・人件費で生み出せる付加価値が増えれば、労働分配率が下がって人件費以外に配分できる付加価値の割合が上がります。

労働分配率が低い場合

少ない人件費で多くの付加価値を生み出しているのであれば、事業効率が良くて収益性が高い会社ということになります。しかし、人件費に十分な額が配分されていない場合は、従業員の士気が低くて生産性が上がらず、離職者が増えて優秀な人材を失い企業が衰退することになりかねません。

このような事態を避けるためには労働分配率を上げる必要があり、給与や賞与のアップ、研修制度や福利厚生施設の充実などの方法が考えられます。また単に給与や賞与の金額を上げるだけでなく、業績連動型の給与制度や賞与制度を導入するのも1つの方法です。

業績に応じて支給額を決める制度にすれば従業員の士気が上がり、従業員の成果を会社が正当に評価することで経営者と従業員の信頼関係の構築にも役立ちます。

業種別労働分配率の目安

労働分配率の値には業種ごとにかなりの差が見られます。業種別のデータは経済産業省が公表しており、主な業種の労働分配率は以下のとおりです。

業種
労働分配率(平成29年度)
製造業46.1%            
電気・ガス業21.5%
情報通信業55.4%
卸売業48.4%
小売業49.5%
クレジットカード業・割賦金融業29.7%
飲食サービス業64.0%
全業種平均47.7%

経済産業省HP掲載データをもとに作成)
飲食業のような接客業ではヒトそのものが重要であり、人件費をかけなければならない労働集約型の産業であるため労働分配率が高くなる傾向が見て取れます。

一方で金融系事業では人件費よりもシステム投資への投資額が大きくなる結果、労働分配率の平均値は全業種平均の47.7%より大幅に低い29.7%です。ヒトが重視される飲食業界とシステムが重視される金融業界の違いが労働分配率の数値にも表れています。

労働分配率についてご理解いただけたでしょうか?

労働分配率は付加価値に占める人件費の割合を表し、人件費が適正な水準かどうかを判断する際に使える指標です。労働分配率の数値は企業規模や業種によって違いが見られますが、平均値のデータが国から公表されています。

労働分配率の計算方法は比較的簡単なので、まずは自社の労働分配率を計算して平均値と比較してみてください。平均値から大きく乖離している場合にはその原因を考察し、改善の余地がないかどうか検討を行いましょう。

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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