• 更新日 : 2024年9月18日

仮受金の仕訳はどうする?財務諸表での位置付けと取り扱い

仮受金は、相手先や取引の内容が不明な入金を一時的に仕訳するための勘定科目です。
ここではこの勘定科目の定義や財務諸表での位置付け、そしてどのように扱うべきかという考え方を解説します。また例を挙げて具体的な仕訳の方法についても解説します。

仮受金の財務諸表での位置付け

仮受金の定義

仮受金はなぜ入金・送金されたのか、あるいは本来的な金額が未確定な場合に、一時的に会計処理を行うための勘定科目です。

財務諸表での仮受金の位置付け

仮受金は財務諸表のうち、貸借対照表に表示されます。具体的には負債の部の流動資産のうち、「その他」に区分されます。この区分に含まれるのは仮受金以外に、未払金前受金、製品保証引当金などです。

基本的には「その他」としてまとめて表示されますが、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」の50条によれば仮受金の計上額が負債および純資産の合計額の5%を超える場合は、仮受金等の別途項目を設けて表示しなければなりません。
※未払金:1年以内に支払われる、もしくは支払う見込みの金銭債務。本来の営業取引以外の単発的取引によるものや、本来の営業取引における金銭債務のうち、買掛金以外のものを処理するための勘定科目です。

※製品保証引当金:引当金の一種。製品の販売または請負物件の引渡し後の無償保証契約や瑕疵担保責任によって、翌期以降に発生すると見込まれる保証費用に備えて計上する勘定科目です。保証期間が1年以内の場合は流動負債として計上されますが、1年超の場合には固定負債として計上されます。

仮受金として振り分ける際の注意点

通帳などを見ながら仕訳処理をしていると、具体的な取引内容がすぐにはわからない場合があります。そのような場合に毎回資料などを調べていると、仕訳処理が進まなくなってしまいます。

仮受金を使えば一時的に仕訳処理ができるので、このような事態を防ぐことができます。
しかし、一度仮受金として振り分けたら、できるだけ早くに精算・振替処理を行わなくてはなりません。仮受金として放置しておく期間が長くなるほど、実際の取引内容がどのようなものだったか調べるための時間が余計にかかってしまうためです。

仮受金はあくまで「一時的な処理のための勘定科目」という認識を持っておくようにしましょう。

「借受金」の表記ミスに注意

仮受金は、「かりうけきん」と読むことから、「借受金」と変換ミスが生じることがあります。借受金という言葉は存在しません。入力をする際には誤りのないように十分に確認しましょう。

仮受金の仕訳例

取引先から内容不明の入金が20万円あったケース

借方
貸方
普通預金
200,000円
仮受金
200,000円

取引先から20万円の入金があったが、何のお金かわからないという場合を考えましょう。このとき普通預金は20万円増えるため、借方科目が普通預金となり、金額は20万円となります。

普通預金が増加した理由は取引先から内容不明の20万円の入金(仮受金)があったからです。したがって借方科目が仮受金となり、金額は20万円となります。摘要欄にはこの場合「内容不明入金」「科目不明入金」などと記入します。

後日この入金について取引先に問い合わせると、売掛金の入金であることがわかったとします。これを受けて仮受金を売掛金に振替処理するときの仕訳は以下のとおりです。

借方
貸方
仮受金
200,000円
売掛金
200,000円

出張中の従業員から普通預金口座に10万円の内容不明の入金があったケース

借方
貸方
普通預金
100,000円
仮受金円
100,000

出張中の従業員から何の連絡もなしに普通預金口座に10万円の振り込みがあった場合はどうでしょうか。普通預金は10万円増えるため、借方科目が普通預金となり、金額は10万円となります。

普通預金の増加の理由は従業員による内容不明の10万円の入金(仮受金)です。したがって借方科目が仮受金となり、金額は10万円となります。

出張から帰ってきた従業員に問い合わせてみると、この10万円が新規顧客からの取引の手付金だということがわかったとします。これは勘定科目では「前受金」に区分されるため、仮受金を前受金に振替処理します。

借方
貸方
仮受金
100,000円
前受金
100,000円

仮受金として処理していた3万円の取引内容が判明しなかったケース

内容不明の入金として仮受金で処理していた3万円について決算時に調査をしてみたところ、結局実際の取引内容がわからなかった場合は、この3万円を「雑収入」として振り替えます。

借方
貸方
仮受金
30,000円
雑収入
30,000円

仮受金と混同しやすい前受金・仮払金との違い

仮受金と誤って使われやすい勘定科目として、前受金と仮払金について解説します。

前受金との違い

前受金とは、取引先や顧客との取引にあたって、前もって受け取る代金のことです。手付金や内金は前受金の一種といえます。前受金は、商品やサービスの対価の一部あるいは全部を先に受け取る場合に用いられるため、取引内容がはっきりしています。取引内容が不明な場合などに使われる「仮受金」も同じく入金があった際に使われますが、発生事由が異なります。

仮払金との違い

仮払金は、出金があったものの、取引内容が不明な場合や本来的な取引金額が未確定である場合に用いられる勘定科目です。不明な取引について一時的に仕訳をする勘定科目であり、仮受金と利用シーンが似ています。ただし、仮受金が入金に対する勘定科目であるのに対し、仮払金は出金に対する勘定科目である点が異なります。

仮受金はあくまで一時的に不明な入金を処理する勘定科目

仮受金はあくまで一時的な対応策でしかありません。内容不明入金や科目不明入金などは可能な限りその場で処理し、どうしても時間がかかるような場合のみ仮受金を適用するようにしましょう。
また、適用した場合も決算時や月末時にまとめて処理するのではなく、できるだけ早く適切な勘定科目に振替処理するのが基本です。

税理士コメント

仮受金や仮払金は仕訳をするうえで非常に便利な勘定科目といえます。
取引の全貌が不明な場合でも、とりあえず「仮」の処理ができるからです。しかしながら、通常、この勘定科目のままで決算を迎えることはありません。本来の勘定科目に振り替えることを待っている勘定科目として仮受金、仮払金については定期的にチェックをしましょう。


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