- 作成日 : 2024年11月5日
電子帳簿保存法における事務処理規程の作り方やサンプルを解説
2024年1月1日以降、電子帳簿保存法における電子取引データの保存が完全義務化されました。法令で定められた保存要件を満たすには、電子帳簿保存システムの導入に加え、事務処理規程も作成するのがおすすめです。
本記事では、事務処理規程の作り方やサンプル、記載項目について解説します。記事を読むことで、自社での電子取引データの保存を円滑に進められるでしょう。
関連記事:電子帳簿保存法とは?2024年からの改正内容・対象書類を簡単に解説
目次
電子帳簿保存法の事務処理規程は「真実性の確保」の要件の一つ
電子帳簿保存法における事務処理規程は、電子取引データの保存要件である「真実性の確保」を満たすための要件の一つです。
電子取引データを保存する際には、「真実性の確保」と「可視性の確保」を満たすことが求められます。真実性の確保では、次のいずれかの要件を満たす必要があります。
|
事務処理規程は4.の要件に含まれており、策定と運用が求められています。
参考:電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】|国税庁(問15)
事務処理規程の作り方と記載項目を解説【サンプル紹介あり】
事務処理規程を作成するには、国税庁のサンプルを利用する方法と、自社の実態に合わせてサンプルを加工する方法の2つがあります。ここでは、法人と個人事業主の2パターンに分けて、事務処理規程の作り方と記載項目を解説します。
- ①法人の場合
- ②個人事業主の場合
①法人の場合
法人の事務処理規程における、主な記載項目は以下の通りです。国税庁が公表しているサンプル「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」を参考に、各項目で記載すべき内容について解説します。
記載項目 | 概要 |
---|---|
目的 | 電子取引のデータ保存に関する規程である旨を記載 |
適用範囲 | 事務処理規程が適用される対象者の範囲(役員・従業員など)を記載 |
管理責任者 | 事務処理規程の責任者を記載 |
電子取引の範囲 | 電子メールやEDIシステムなど、自社で扱う電子取引の範囲を記載 |
取引データの保存 | データの保存先や保存年数を記載 |
対象となるデータ | 保存するデータの範囲(請求書、領収書など)を記載 |
運用体制 | 管理責任者および処理責任者を記載 |
訂正削除の原則禁止 | データの訂正や削除を禁止する旨を記載 |
訂正削除を行う場合 | データの訂正や削除を行う場合の申請・承認フローを記載 |
施行日 | 事務処理規程の施行日を記載 |
国税庁のサンプルは、Wordファイルでダウンロードできるため、活用してみてください。
②個人事業主の場合
個人事業主が事務処理規程を作成する際、記載すべき主な項目は以下の通りです。国税庁のサイトには、個人事業主用のサンプル「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」も掲載されていますので、必要に合わせて活用しましょう。
記載項目 | 概要 |
---|---|
訂正削除の原則禁止 | データの訂正や削除を禁止する旨を記載 |
訂正削除を行う場合 | データの訂正や削除を行う場合の対応方法を記載 |
施行日 | 事務処理規程の施行日を記載 |
電子帳簿保存法の事務処理規程作成における注意点
電子帳簿保存法における事務処理規程を作る際は、以下の3点に注意してください。
- 注意点①「電子取引の範囲」「対象となるデータ」を明確に示す
- 注意点②訂正や削除をする場合のルールを具体的に設定する
- 注意点③責任者や規程対象者の範囲を明示する
注意点①「電子取引の範囲」「対象となるデータ」を明確に示す
電子取引の範囲では、自社が扱う具体的な電子取引を明確に示すことが重要です。具体的には、以下のような取引が挙げられます。
- 電子メールによる請求書等の授受
- クラウドサービスを使った請求書等の授受
- インターネットサイトを介した取引
- 電子データ交換(EDI)による取引
対象となるデータについては、請求書、領収書、見積書など、データの種類を具体的に記載する必要があります。現在扱っているデータだけでなく、今後取り扱いが予想されるデータも考慮し、漏れがないように記載しましょう。
参考:電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】|国税庁(問4)
注意点②訂正や削除をする場合のルールを具体的に設定する
電子取引データの訂正・削除は、基本的に禁止されています。しかし、やむを得ず訂正や削除が必要な場合に備え、手続き方法や条件を明記しておくことが必要です。
国税庁のサンプルでは、以下のような申請・承認フローが記載されています。
適切なルールを設けることで、法令を遵守し、トラブルを未然に防げるでしょう。
注意点③責任者や規程対象者の範囲を明示する
事務処理規程の運用においては、管理責任者や処理責任者を決めておくことが重要です。責任の所在が明確になることで、規程の円滑な運用につながります。責任者が代わった場合は、速やかに規程を更新しましょう。
また、事務処理規程に従う対象者の範囲を明記しておく必要があります。基本的には「自社の役員および従業員(雇用形態を問わず)」を対象にしておけば問題ないでしょう。
電子帳簿保存法の事務処理規程を作成するメリット
電子帳簿保存システムを導入する場合でも、事務処理規程を作成することをおすすめします。事務処理規程を作成することによるメリットは、以下の3点です。
- メリット①システムで授受できないデータ形式でも規程に沿って保存できる
- メリット②システム変更時にデータ移行できない場合でも柔軟に対応できる
- メリット③業務手順が明確になる
メリット①システムで授受できないデータ形式でも規程に沿って保存できる
事務処理規程を作成すると、システムで授受できないデータ形式でも規程に沿った保存が可能です。
例えば、次のような状況では、システムのみでの対応が難しくなります。
- 受け取ったデータの拡張子がシステム対応外で授受できない
- タイムスタンプが付与されるデータ形式が限定されている
自社に合ったシステムに変更すれば解決できることもあります。しかし、コスト面から現実的でないこともあるでしょう。事務処理規程を併用すれば、柔軟にデータを保存できます。
メリット②システム変更時にデータ移行できない場合でも柔軟に対応できる
事務処理規程があれば、システム変更時にデータ移行できない場合でも、柔軟な対応が可能です。
今後システムを変更する際、既存のシステムを解約すると、過去のデータを移行できない可能性があります。また、システム上で保存できないデータが一部でも存在すると、真実性の確保を満たさないリスクも生じます。
事務処理規程を定めておくことで、すべてのデータを法令に則って保存できるでしょう。
メリット③業務手順が明確になる
事務処理規程を作成することで、自社で扱うデータの種類や訂正・削除に関する業務フローが明文化され、業務手順が明確になります。社内でルールを共有することで、人的ミスの防止を期待できるでしょう。
さらに、保存業務が複数の部署をまたがる場合でも、明確な手順があることで、業務の属人化を防ぐことにつながります。
電子帳簿保存法の事務処理規程に関するよくある質問
最後に電子帳簿保存法の事務処理規程に関するよくある質問を紹介します。
電子帳簿保存法に対応したシステムを導入すれば事務処理規程は不要?
取引先から受け取るデータ形式や拡張子によっては、システム上で授受できない場合や、タイムスタンプの付与ができないことがあります。また、今後システムを変更し、以前のシステムを解約した場合には、データを移行できない可能性も考えられます。
このように、システムで対応できないデータが存在すると、真実性の確保が満たされないことになるため、システムと事務処理規程の併用がおすすめです。
電子取引のデータ保存ができていない場合、どのようなペナルティがある?
国が定める要件に沿ってデータを保存できていない場合、青色申告の承認が取り消される可能性があります。国税庁の資料には「特段の事由がなければ直ちに承認が取り消されるものではない」と記載されています。しかし、可能性がゼロとはいえません。
青色申告の承認が取り消されると、最大65万円の特別控除を受けられなくなります。また、その年に発生した赤字を翌年以降に繰り越して相殺できなくなります。法令違反を防ぐためにも、システム導入だけでなく、事務処理規程の作成がおすすめです。
参考:電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(問66)|国税庁
電子帳簿保存法の事務処理規程を作成して電子データ保存に対応しよう
電子帳簿保存法における電子取引データの保存に対応するためには、システムの導入に加えて事務処理規程の作成が大切です。システムで対応できないデータがあっても、事務処理規程を整備することで、確実な法令の遵守につながります。
事務処理規程の主な記載項目は、以下の通りです。
区分 | 記載項目 |
---|---|
法人 |
|
個人事業主 |
|
国税庁のサイトには、法人および個人事業主向けの事務処理規程のサンプルが掲載されているため、必要に応じて活用してください。
自社に合った事務処理規程を作成し、データを適切に保存しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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