• 更新日 : 2026年9月15日

「リース資産を計上しない」とは?中小企業における会計上の正しい取扱い

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Pointリース資産を計上しないケースとは?

中小企業では、オペレーティング・リースや所有権移転外ファイナンス・リースの一定条件下で、リース資産を計上せず賃貸借処理が認められます。

  • オペレーティング・リースは資産計上不要
  • 中小企業は所有権移転外を賃貸借処理できる
  • 2027年以降、上場・大会社は原則オンバランス

Q. 中小企業はリース資産を計上しなくてよい?

A. 所有権移転外ファイナンス・リースは賃貸借処理が認められる場合があります。ただし契約内容と税務上の取扱いの確認は必要です。

新たなリース会計基準は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から原則として適用されます。一方、中小企業については、「中小企業の会計に関する指針」などに基づく会計処理を選択できるため、必ずしも新リース会計基準を適用する必要はありません。この記事は、今後、中小企業においてリース取引があったときにどのように考えればよいかを解説します。

リース資産を計上しないことはある?

リース取引では、必ずしも借手側で「リース資産」を計上するとは限りません。現行基準では、契約の種類や中小企業向けの会計処理によって、賃貸借処理が認められるケースがあります。

新リース会計基準の適用対象企業では、借手側のリースは原則としてオンバランス処理となるため、現行基準との違いを理解しておくことが重要です。

オペレーティング・リースではリース資産を計上しない

現行のリース会計では、リース取引は大きく「ファイナンス・リース取引」と「オペレーティング・リース取引」に分かれます。オペレーティング・リース取引とは、ファイナンス・リース取引に該当しないリース取引のことです。たとえば、借手がリース物件を実質的に購入したといえるほど経済的利益や費用負担を引き受けていない場合は、オペレーティング・リースに分類されます。

この場合、会計処理は売買取引ではなく賃貸借取引に近い扱いとなるため、借手側では「リース資産」や「リース債務」を貸借対照表に計上しません。リース料を支払ったとき、または発生したときに「支払リース料」や「賃借料」などの費用として処理します。したがって、オペレーティング・リースでは、借手側で減価償却費を計上することもありません。

中小企業では所有権移転外ファイナンス・リースを賃貸借処理できることがある

中小企業では、ファイナンス・リース取引であっても、リース資産を計上しないケースがあります。「所有権移転外ファイナンス・リース取引」については、中小企業の会計に関する指針などにより、売買取引による処理だけでなく、賃貸借取引に準じた処理も認められる場合があります。

所有権移転外ファイナンス・リースとは、ファイナンス・リースのうち、リース期間満了後にリース物件の所有権が借手に移転しない取引です。本来、ファイナンス・リースは売買取引に近い性質があるため、リース資産とリース債務を計上するのが原則です。

しかし、中小企業では実務負担に配慮し、一定の場合には毎月のリース料を費用処理する方法が認められます。この場合、貸借対照表にリース資産を計上せず、リース料の支払い時に「支払リース料」などで処理します。

新リース会計基準の適用対象企業は原則として使用権資産を計上する

新リース会計基準の適用後は、借手側の処理が大きく変わります。適用対象となる企業では、従来のようにファイナンス・リースとオペレーティング・リースを分け、オペレーティング・リースをオフバランスにする処理は原則として認められません。借手は、リースに該当する契約について「使用権資産」と「リース負債」を計上する処理が基本になります。

ASBJが公表した企業会計基準第34号では、2027年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用するとされています。

新リース会計基準の主な適用対象企業は、次のとおりです。

  • 金融商品取引法の適用を受ける会社
    例:有価証券報告書を提出する上場会社など
  • 金融商品取引法の適用を受ける会社の子会社・関連会社
    例:上場会社グループに属する連結子会社・持分法適用関連会社など
  • 会計監査人を設置する会社
    例:会社法上の大会社など
  • 会計監査人を設置する会社の子会社
    例:大会社グループに属する子会社など
  • 任意で新リース会計基準を適用する会社
    例:IPO準備会社、親会社への報告目的で新基準対応が必要な会社など

ただし、すべてのリースについて必ず資産計上が必要になるわけではありません。リース期間が12か月以内の短期リースや、重要性が乏しい少額リースなどについては、簡便的に費用処理できる場合があります。また、上記に該当しない中小企業では、従来の中小企業向け会計ルールに基づく処理を継続するケースも考えられます。

参考:企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等の公表|企業会計基準委員会

リース資産を計上しない場合でも契約内容の確認は必要

リース資産を計上しない処理を選ぶ場合でも、契約内容の確認は欠かせません。契約書に「レンタル」や「賃貸借」と書かれていても、実態としてファイナンス・リースに近い取引であれば、資産計上が必要になる可能性があります。また、中小企業で賃貸借処理を行う場合でも、税務上のリース取引に該当するか、消費税の仕入税額控除をどの時点で行うかなど、会計と税務で確認すべき点が残ります。

リース資産を計上しないかどうかは、契約名だけで判断せず、所有権移転の有無、解約条件、リース期間、リース料総額、少額リースや短期リースの該当性を確認することが大切です。特に新リース会計基準の適用対象企業では、契約の棚卸しを行い、リースに該当する契約を漏れなく把握する必要があります。

参考:

中小会計指針・中小会計要領|日本税理士会連合会

No.5702 リース取引についての取扱いの概要(平成20年4月1日以後契約分)|国税庁

No.5704 所有権移転外リース取引|国税庁

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リース取引の種類は?

前項では「ファイナンス・リース」や「オペレーティング・リース」といった用語がでてきました。この項ではこれらの用語の概要と、中小企業におけるリース取引の種類ごとの取り扱いについて具体的に見ていきましょう。

ファイナンス・リース取引

ファイナンス・リースは、原則として以下2つの要件の両方を満たすものとされています。

  • 解約不能のリース
    リース契約の中途において解除することができないリースおよびこれに準ずるリース
  • フルペイアウトのリース
    借り手が、リース資産からもたらされる経済的な利益を実質的に受けることができ、かつ、その資産の使用に伴うコストを実質的に負担することになるリース

参考:企業会計基準適用指針第33号リースに関する会計基準の適用指針(第59項)|企業会計基準委員会

そして、ファイナンス・リースは、所有権移転ファイナンス・リースと所有権移転外ファイナンス・リースに区分されます。

所有権移転ファイナンス・リースとは、「契約上の諸条件に照らして原資産の所有権が借手に移転すると認められるファイナンス・リース」と定義されます。これに対して、リース資産の所有権が借り手に移転しないファイナンス・リースを、所有権移転外ファイナンス・リースと言います。

出典:企業会計基準第34号 リースに関する会計基準(第12項)|企業会計基準委員会

中小企業における会計処理では、原則として所有権移転ファイナンス・リースは売買処理を行い、所有権移転外ファイナンス・リースは売買処理または賃貸借処理を行います。ただし、法人税法において定められる「所有権移転外リース取引」は、売買取引として取り扱われるため税務調整が必要となる場合があります。

参考:
No.5704 所有権移転外リース取引|国税庁
中小会計指針|日本税理士会連合会、「中小企業の会計に関する指針」(P39)

オペレーティング・リース取引

オペレーティング・リースとは、ファイナンス・リース以外のリースを言います。オペレーティング・リースでは、借り手に所有権がないため、リース期間満了後は「リース物件を返却する」または「再リース契約を締結する」のが一般的です。

オペレーティング・リースの例として、IT機器など技術の進歩が早くて陳腐化しやすい資産や、営業車、社用車などの車両、使用頻度が限られる物件や一定のプロジェクトのみで利用する資産などがあります。

オペレーティング・リースを利用する利点は、リース料として一定額を支払うことにより、費用の平準化ができるとともに経理処理の手間が簡素化されることです。オペレーティング・リースの会計処理は、支払うリース料を費用として計上する、いわゆる「賃貸借取引」にて処理します。具体的な会計処理については後述します。

少額リース、短期リースの場合

中小企業にとって「重要性が乏しい」とされるリース取引においては、賃貸借処理を行うことが認められています。具体的には次のいずれかの場合等においては、重要性の観点から賃貸借処理ができるとされます。

  • リース期間が1年以内のリース
  • リース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下のリースなど
    ※300万円以下であれば無条件に賃貸借処理できるわけではなく、重要性の判断が必要です。

なお、少額リース、短期リース等に関しては、新しいリース会計基準においても、原則として賃貸借処理ができるとされています。

以上をまとめると、以下のとおりです。

【中小企業におけるリースの取り扱い概要】

リースの種類 会計処理
オペレーティング・リース取引 賃貸借取引
ファイナンス・リース

取引

所有権移転ファイナンス・リース取引 売買取引(リース資産の計上)
所有権移転外ファイナンス・リース取引 売買取引(リース資産の計上)または賃貸借取引

※少額リース、短期リースについては賃貸借処理が可能

リース取引の会計上の取り扱いは?

リース取引について、賃貸借処理とする場合や売買処理とする場合の例を見ていきましょう。ここでは賃貸借処理をした場合と売買処理をした場合の処理について、それぞれ解説します。

リース取引を賃貸借取引とする場合の仕訳

ファイナンス・リース契約を締結して、所有権移転外ファイナンス・リースと認められたため、賃貸借処理をするケースを見ていきましょう。

(事例A)ファイナンス・リースとなる契約を締結した。

リース料総額1,200,000円、導入時におけるリース資産の現金価額108,000円、

契約期間5年、リース資産の耐用年数5年(定額法)、月額リース料は20,000円とする。

(仕訳例には消費税は考慮しないこととします。)

【導入時】仕訳なし

【リース料支払時】

借 方 貸 方 摘要
リース料 20,000円 現預金 20,000円 第1回目リース料支払

【決算時】仕訳なし

賃貸借処理では、リース物件の利用料を支払いの都度認識します。所有権移転外ファイナンス・リース取引について、賃貸借取引で処理をした場合には、貸借対照表の注記において「未経過リース料」を記載することになっています。

リース取引を売買取引とする場合の仕訳

次に、リース資産やリース債務を計上する売買取引とするリースの例を見てみましょう。実際には、現在価値計算、利息法による計算等、売買取引とするリースの仕訳は複雑になりますが、あくまでイメージとして数字を入れた例を示します。

(事例B)

ファイナンス・リースとなる契約を締結した。

リース料総額3,600,000円、導入時におけるリース資産の見積現金購入価額3,240,000円、

契約期間5年、リース資産の耐用年数5年(定額法)、月額リース料は60,000円とする。

(仕訳例には消費税は考慮しないこととします。)

【導入時】

借 方 貸 方 摘要
リース資産 3,240,000円 リース債務 3,240,000円 リース資産及び負債の計上

リース資産およびリース債務の価額は、リース料総額の現在価値と見積現金購入価額のいずれか低い額とします。ここではリース料総額の現在価値の求め方については省略しますが、

リース料総額の現在価値>リース資産の見積現金購入価額としています。

【リース料支払時】

借 方 貸 方 摘要
リース債務 54,000円 現預金 60,000円 第1回目リース料支払
支払利息 6,000円

リースの支払時に費用として計上するのは、支払利息です。支払利息は、原則として「利息法*」により利息を計算します。その後、実際の支払額との差額はリース債務を減額します。

*利息法とは、「リース債務残高」に利率を乗じて利息を計算する方法です。

【決算時】減価償却

借 方 貸 方 摘要
減価償却費 648,000円 リース資産 648,000円 リース資産の減価償却費計上

この場合、リース資産の償却は、原則としてリース期間によるものとします。なお、法人税法において、所有権移転外ファイナンス・リースによるリース資産は「リース期間定額法*」とされます。

3,240,000円 × 0.2 = 648,000円

*法人税法のリース期間定額法とは、「リース資産の取得価額 ÷ リース期間の月数 × その事業年度のリース期間月数」で計算します。

参考:No.5410 減価償却資産の償却限度額の計算方法(平成19年4月1日以後取得分)|国税庁

リース資産を計上しない場合のメリットは?

リース資産を計上しない処理を選択できる場合、経理処理や固定資産管理の負担を抑えやすくなります。中小企業では、リース契約の件数が多いほど、資産計上や減価償却の管理に手間がかかるため、賃貸借処理による実務上のメリットがあります。

毎月のリース料を費用処理できるため仕訳が簡単になる

リース資産を計上しない場合、リース開始時にリース資産やリース債務を貸借対照表に計上する必要がありません。基本的には、リース料を支払ったタイミングで「支払リース料」や「賃借料」などとして費用処理します。リース料の元本部分と利息部分を分けたり、リース債務残高を管理したりする手間を抑えられます。会計処理がシンプルになるため、経理担当者が少ない中小企業では、月次処理や決算処理を進めやすくなる点がメリットです。

固定資産台帳や減価償却の管理負担を抑えられる

リース資産を計上しない場合、借手側では固定資産として管理しないため、リース資産ごとの取得価額、耐用年数、減価償却費、帳簿価額などを固定資産台帳で管理する必要がありません。コピー機、パソコン、車両、事務機器など複数のリース契約がある会社では、資産計上すると台帳管理や減価償却計算の負担が増えます。賃貸借処理であれば、リース料の支払い管理を中心に処理できるため、実務負担を軽減しやすくなります。

貸借対照表上の資産・負債が増えにくくなる

リース資産を計上しない場合、リース契約により資産と負債を同時に増やす処理を行いません。貸借対照表上の総資産や負債が膨らみにくくなります。財務諸表をシンプルに見せやすく、自己資本比率などの財務指標への影響を抑えられる場合もあります。ただし、これはリース契約の実態をなくすものではありません。将来のリース料支払いは残るため、社内管理上は契約期間や未経過リース料を把握しておくことが大切です。

リース資産を計上しない場合のデメリット・注意点は?

リース資産を計上しない処理は、実務負担を抑えやすい一方で、契約実態や将来の支払義務が見えにくくなる点に注意が必要です。中小企業では、会計処理を簡便にできる場合でも、税務上の扱いや契約管理まで不要になるわけではありません。

将来のリース料負担を把握しにくくなることがある

リース資産を計上しない場合、貸借対照表にはリース資産やリース債務が表示されません。帳簿だけを見ると、将来支払うリース料の総額や残存期間が分かりにくくなることがあります。たとえば、複数のコピー機、車両、事務機器をリースしている場合、月々の支払額は小さく見えても、契約全体では大きな固定費になっているケースがあります。

資金繰りを正確に管理するには、会計上は賃貸借処理をしていても、契約ごとの月額リース料、残存期間、未経過リース料を一覧で管理しておくことが重要です。

会計処理と税務処理が一致しない場合がある

中小企業では、所有権移転外ファイナンス・リースについて賃貸借処理が認められる場合がありますが、税務上も同じように扱えるとは限りません。法人税法上、一定のリース取引は売買取引として取り扱われるため、会計上はリース資産を計上していなくても、税務申告では調整が必要になる場合があります。また、消費税についても、リース料を支払うたびに処理するのか、リース資産の引渡し時に処理するのかを確認する必要があります。会計処理だけで判断せず、法人税・消費税の扱いもあわせて確認することが大切です。

契約内容の確認を省くと誤った処理につながる

リース資産を計上しない処理を選ぶ場合でも、契約書の確認は欠かせません。契約名が「レンタル」や「賃貸借」になっていても、実態として解約不能で、借手がリース物件の経済的利益や使用コストを実質的に負担している場合は、ファイナンス・リースに該当する可能性があります。また、所有権移転条項、割安購入選択権、特別仕様物件の有無によって、処理が変わることもあります。リース資産を計上しない判断をする際は、契約名ではなく、契約期間、解約条件、リース料総額、所有権移転の有無を確認しましょう。

リース資産を計上しない場合でも契約内容と将来負担を確認しよう

リース資産を計上しない処理は、中小企業にとって経理処理や固定資産管理の負担を抑えやすい方法です。オペレーティング・リースや、一定の所有権移転外ファイナンス・リースでは、リース料を支払時に費用処理できる場合があります。ただし、計上しないからといって、契約管理や税務確認が不要になるわけではありません。将来のリース料負担、未経過リース料、契約期間、解約条件、所有権移転の有無は継続して把握する必要があります。

また、新リース会計基準の適用対象企業では、借手側のリースは原則として使用権資産とリース負債を計上します。自社に適用される会計ルールを確認し、会計・税務・契約管理を分けて整理しましょう。

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