• 更新日 : 2024年8月8日

仕訳とは?簿記と経費精算の基本を覚えて経理をマスター

仕訳は会社や個人事業主などの取引内容と金額を記載する作業のことで、確定申告書類や貸借対照表損益計算書などを含めた決算書類の作成に欠かせないものです。取引に応じて使用する勘定科目が借方・貸方のどちらになるかが変わります。

本記事では、仕訳の概要と書き方のルールやポイントなど簿記の基本を解説していきます。企業の経理・会計担当者や個人事業主はぜひ参考にしてください。

仕訳とは

仕訳とは、簿記上のすべての取引を借方と貸方で分類して、それぞれ勘定科目と金額を仕訳帳に記載する簿記の作業です。会社の経理や会計担当者が、商品売買や経費の支払いなど取引が発生するたびに仕訳を行います。

この仕訳を間違えてしまうと会社の決算や確定申告が正しくできなくなるので、仕訳のルールや制度などを正しく把握しておく必要があります。

仕訳のルール

仕訳は、取引を左側「借方(かりかた)」と右側「貸方(かしかた)」に分けて記入します。勘定科目は資産や負債など5つのグループに分類され、グループごとに増減を「借方」「貸方」のどちらに記入するのかが決まっており、仕訳で最も大切なルールです。

5つのグループの増減のルールは、以下のようになります。

  • 資産:増えれば「借方」、減れば「貸方」
  • 負債:増えれば「貸方」、減れば「借方」
  • 収益:増えれば「貸方」、減れば「借方」
  • 費用:増えれば「借方」、減れば「貸方」
  • 純資産:増えれば「貸方」、減れば「借方」

仕訳のルール

上記のルールに基づき仕訳をしていきます。例として「9万円のノートパソコンを現金で購入した」という取引を仕訳してみましょう。

借方
貸方
摘要
消耗品費
90,000円
現金
90,000円
社員用ノートパソコン購入

パソコン購入(消耗品費)という費用が9万円発生しました。費用の発生は借方(左側)に記載します。そして現金という資産が9万円減りました。資産の減少は貸方(右側)に記載します。これで仕訳完了です。

勘定科目とは

勘定科目は資産、負債、純資産、収益、費用の5つのグループに分けられます。資産、負債、純資産が「貸借対照表」に記載するもの、収益と費用が「損益計算書」に記載するものです。

資産に含まれるものは、現金や預金、受取手形売掛金などをはじめ、有価証券や貸付金などです。分かりやすくいえば、「お金そのもの」もしくは「売却することでお金にできるもの」が資産に該当します。

負債は買掛金未払金未払費用借入金などの今後支払う必要があるものが該当します。純資産には、資本金資本準備金、利益準備金などが含まれます。

収益に含まれるものは、売上や受取手数料、受取家賃や受取利息などです。費用には仕入、給料、支払手数料福利厚生費などが該当します。

どのような勘定科目がどのグループに含まれているかを覚えることで、正しい仕訳をスムーズに行えるでしょう。詳しくは、以下の記事を参考にしてください。

貸借対照表と損益計算書とは

貸借対照表と損益計算書は、会社の決算書類として作成するだけではなく、個人事業主が青色申告をする場合にも必要なものです。また、作成された貸借対照表や損益計算書は、経営判断や融資を受けるとき、株式投資など幅広く利用されます。

貸借対照表や損益計算書の内容と参考記事をまとめています。ぜひ参考にしてください。

貸借対照表

貸借対照表は会社の一定時点の財政状態を表すもので、バランスシートと呼ばれることもあります。

貸借対照表は左側と右側に分かれていて「資産」が左側に、「負債」と「純資産」が右側というように記載する場所が決まっています。左側「資産」の金額の合計と右側「負債・純資産」の金額の合計は必ず一致しなければいけません。

また、資産には1年以内にお金になる流動資産、1年以上あとにお金になる固定資産があります。負債も同様に、1年以内にお金を支払う流動負債、1年以上あとにお金を支払う固定負債があります。

このような資産と負債、純資産などの財政状態をまとめて表にしたものが貸借対照表です。より詳しい内容については、以下の記事で解説しているのでぜひ参考にしてください。

損益計算書

損益計算書は「P/L」とも呼ばれ、会社の1年間の経営成績を表す決算書です。損益計算書は自社の経営状況を分析したり、経営戦略を立てたりすることに役立ちます。また、株式投資などにおいても投資判断に非常に役立つので、貸借対照表と併せて内容を把握できるようになるとさまざまな場面で活用できます。

損益計算書の大きな構成としては、営業損益の部と営業外損益の部を合わせた経常損益の部があります。そして会社の通常の活動などでは発生することがない臨時的な利益あるいは損失を表示する特別損益の部があり、例えば長期間使用していた土地を売却したことによる売却損益は特別損益の部になるでしょう。

損益計算書の見方やポイントなどは、以下の記事を参考にしてください。

仕訳の書き方

仕訳の書き方は、主に3つのステップで進めていきます。具体的にはまず取引に応じた勘定科目を決めて、その勘定科目がどのグループに分類されるかを確認し、借方と貸方に内容を振り分けていくという流れです。

取引内容によって、勘定科目や金額などが異なるため、最初のうちは時間がかかるかもしれません。しかし、ポイントを把握して慣れてくれば、スムーズに仕訳できるようになります。それでは3つのステップを解説していきます。

1.取引内容に応じた勘定科目を決める

仕訳する取引内容に応じた勘定科目を決めます。例として5月15日に、現金での売上(冷蔵庫)が50,000円あった場合はどうなるでしょうか。

この取引においてまず確認すべきポイントは、「現金での売上」と「50,000円」です。そしてこの取引に該当する勘定科目は、「現金」と「売上」の2つだと分かります。

2.5つのグループのどれに分類されるかを確認する

勘定科目が分かったら、次はその勘定科目が5つのグループ(資産、負債、純資産、収益、費用)のうち、どのグループに分類されるかを確認します。分類されるグループを間違えてしまうと、誤った仕訳になるため注意してください。

先ほどの事例であれば、勘定科目は「現金」と「売上」でした。この場合は現金が「資産」のグループに、売上は「収益」のグループに属しています。

3.勘定科目と金額を借方と貸方に記載する

分類されるグループが分かったら、借方と貸方のどちらに何を記載していくのか確認していきます。まず、現金を受け取ったので、資産が増えることになり、借方(左側)に現金を記載することになります。そして収益が増えるので、貸方(右側)に売上を記載します。

具体的には以下のようになります。

借方
貸方
摘要
現金
50,000円
売上
50,000円
冷蔵庫
〇〇商店

上記のように記載できたら仕訳は完了です。また、仕訳帳に記入する場合は、上記に加えて日付や元丁(元帳)番号などが加わります。詳しくは以下の記事を参考にしてください。

仕訳のポイントや注意点

仕訳はルールに則って正しい金額で行います。正しい仕訳をするためのポイント・注意点は、「補助元帳の作成を検討すること」「勘定科目のグループ・分類を正しく把握すること」「左右の金額が一致しているか確認すること」です。

個人事業主や会社の経理・会計担当の方は、上記3つのポイント・注意点を参考にしてみてください。それぞれ解説していきます。

1.補助元帳を作成することを検討する

仕訳で使用するすべての勘定科目には総勘定元帳に勘定口座が設けられ、仕訳を転記して勘定ごとに取引の把握や残高確認をするために用いられます。しかし、大企業のように売掛金や買掛金、普通預金などの取引先が多い場合、計算や確認・管理が大変です。

そこで、仕訳をするときに補助科目を設定して、総勘定元帳を補足するための補助元帳にも記入をすると残高確認がやりやすくなるので、ぜひ検討してみるとよいでしょう。詳しくは以下の記事を参考にしてください。

2.勘定科目のグループ・分類を正しく把握する

仕訳をする上で、どのような勘定科目がどのグループになるのか、借方と貸方どちらなのかをしっかりと把握しておくことがポイントです。全てを完璧に覚えるのは大変なので、売掛金や現金、普通預金などの頻繁に使われる勘定科目がどうなるのかは覚えておきましょう。

勘定科目の内容を正しく把握できていれば仕訳業務も効率化できます。勘定科目のルールを理解するとともに、実際にあった取引を正しい金額で記載することが最も大切です。

3.左右の金額が一致することを確認する

一つの仕訳をするごとに、借方と貸方の合計額が一致するかどうか必ず確認してください。もし仮に左右で金額が一致しない場合は、数字の書き間違えや読み違いが考えられます。再度確認して正しく仕訳をしましょう。

また、取引内容によっては借方や貸方の勘定科目が2つ以上になる場合もあります。そのようなときでも、合計額が左右で一致していれば大丈夫です。

仕訳帳のひな形・テンプレート-無料ダウンロード

仕訳帳の作成には、テンプレートの利用が便利です。
以下より、今すぐ実務で使用できる、仕訳帳のテンプレート(エクセル)を無料でダウンロードいただけます。

経費精算とは

経費精算とは、経費を立て替えた分について精算することです。

従業員が業務を遂行する際、常に会社から資金を受け取ってから支払いをするとは限りません。手持ちの現金や従業員個人のクレジットカードで支払い、後日、会社に立て替え分を請求するほうが業務をスムーズに進められることもあります。

このように、本来は会社の資金で行うべき支払いを従業員が代わりに行ったときは、従業員の請求に応じて経費の精算処理をします。なお、従業員の立て替え払いがすべて経費になるわけではありません。会社の事業に関係する支払い、あるいは会社の利益につながる行為に対する支払いは、経費として後日精算することが可能です。

また、金額が常識的な範囲であることも経費かどうかを見分けるポイントです。特に接待交際費は金額が高額になる傾向にあるため、過去のケースなどとも比較し、常識的な金額であるか確認して経費精算を行いましょう。

ルールを理解して正しく仕訳することが大切

会計において、正しく仕訳ができることは非常に重要です。仕訳は、会社の決算書や確定申告などにも影響するものなので、複雑かもしれませんがぜひ覚えていきましょう。

仕訳のルールや貸借対照表、損益計算書などの見方を把握しておくと、企業の経営成績や財務諸表が把握できます。これらの知識はビジネスや投資判断などにも活かせるので、ぜひ会計についての正しい知識を勉強していきましょう。

よくある質問

仕訳とは?

財産などが増減する簿記上の取引を、「借方」と「貸方」に分けて仕訳帳に記入する作業のことです。特に、個人事業主や企業の経理・会計担当者に必要な知識・作業です。詳しくはこちらをご覧ください。

仕訳のルールとは?

仕訳は借方(左側)と貸方(右側)に分けて記入し、金額は貸借を必ず一致させる必要があります。また資産や負債、純資産などグループによって、借方と貸方のどちらがどうなるかを正しく把握しなければいけません。詳しくはこちらをご覧ください。


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