• 更新日 : 2024年1月29日

電子帳簿保存法で領収書やレシートはどう管理する?原本は破棄できる?

電子帳簿保存法で領収書やレシートはどう管理する?原本は破棄できる?

国税関係書類である領収書やレシートは、一定期間の保存が義務付けられています。近年、電子帳簿保存法の適用が拡大し、要件の緩和が実施されていますが、領収書やレシートも電子保存することができるのでしょうか。

領収書やレシートの電子帳簿保存法の対応とメリット、保存要件や保存期間、電子帳簿保存を行った場合の原本の破棄が可能かどうかなど、詳しく説明していきます。

領収書やレシートは電子保存できる?

電子帳簿保存法は正式名称を「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」といいます。

国税関係帳簿書類には領収書やレシートなどの取引を証明する書類も含まれていますので、電子帳簿保存法を適用して電子保存することが可能です。

なお、これまで電子保存は任意でしたが、電子帳簿保存、スキャナ保存、電子取引データの保存のうち、2022年の電子帳簿保存法改正により電子取引データの保存については電子保存が義務化されました。

猶予期間が設けられており2023年12月31日までは電子取引データを印刷して保存することが認められるものの、以降の電子取引データは電子データで保存しなければなりません。領収書やレシートも電子取引データであれば電子保存義務化の対象になります。しかし、電子取引については、やむを得ない事情がある場合の措置も設けられていますのであわせて以下でご紹介します。

領収書やレシートを電子保存するメリット

領収書やレシートは電子保存がおすすめです。なぜ電子保存した方が良いのか、3つのメリットを紹介します。

経費精算業務の効率化

紙ベースの経費精算では、社員がフォーマットを印刷するなどして精算書を用意し、そこに必要事項を記入して、証拠となる領収書やレシートを添付し精算する方法が一般的です。しかしこの方法だと、社員が必要な領収書やレシートを集めて整理し提出するまでにタイムラグが生じてしまいます。

電子帳簿保存法に対応したシステムでは、スマートフォンのカメラ機能などを使って領収書やレシートを撮影して申請ができるものもありますので、経費精算のスピードが向上します。

さらに、電子帳簿保存法に対応したシステムなら、そのままシステムを通して電子保存もできる場合もありますので効率が良いです(※従業員が会社の経費などを立て替えて電子データで領収書などを受領したときは、一定期間従業員がパソコンやスマートフォンに取引データを保管し、会社がその状態を管理する、電子帳簿システム外での保存も認められます)。

申請までのフローをシンプルにできるため、経費精算業務の効率化が図れます。

保管スペースの削減

紙による保存の場合、領収書やレシートの原本を一定期間保管しておかなければなりません。会社が直接購入した消耗品などの領収書のほか、社員の経費精算に関する領収書やレシートなども保管の対象になるため、一定期間保存することを考えると、ある程度の保管スペースの確保が必要になります。

一方、電子保存する場合は電子データとして保管することになりますので、紙で保管するほどの保管スペースは必要ありません。保管スペースの削減になるため、事務所のスペースの縮小も可能になります。結果として、コスト削減にもなるでしょう。

紛失や改ざんリスクの削減

電子データはサーバー、クラウド型のシステムであればクラウドサーバーに保管されるため、適切にバックアップが行われていれば、トラブルが発生してもデータの紛失を回避できます。

また、電子保存の要件でも詳しく説明しますが、領収書やレシートの保存では改ざんを防ぐためにタイムスタンプの付与(訂正削除などの履歴が残るもので入力期間内の保存が確認できるシステムに代用することも可)が要件となっています。電子保存を適切に運用すれば改ざんリスクの軽減にもなるでしょう。

領収書やレシートの電子保存要件

電子帳簿保存法の帳簿書類の保存は、電子帳簿等保存、スキャナ保存、電子取引の3つに区分されます。このうち、領収書やレシートの保存に関係してくるのがスキャナ保存と電子取引です。令和5年度の税制改正も含めてそれぞれの電子保存の要件を解説します。

領収書やレシートのスキャナ保存

スキャナ保存の要件は、重要書類、一般書類、さらに過去分の重要書類で異なります。領収書やレシートは資金の流れに直結する書類ですので、重要書類に分類される書類です。重要書類の電子保存については、以下に取り上げる要件を満たさなくてはなりません。

  • 入力期間の制限(最長2か月+7営業日まで)
  • 200dpi以上の解像度での読み取り
  • 約1677万色以上のカラー画像での読み取り
  • タイムスタンプの付与(一定の機能があるシステムで代用可)
  • 解像度と階調情報の保存
  • 画像の大きさ情報の保存
  • 訂正や削除の事実や内容の確認ができること
  • 入力者などの情報が確認できること
  • スキャン文書と帳簿の関連性の保持
  • 14インチ以上のディスプレイの備え付け
  • 整然・明瞭に出力できること
  • 検索機能の確保
  • 会計ソフトなど開発関係書類の備え付け)

参考:電子帳簿保存法一問一答(Q&A)~令和4年1月1日以後に保存等を開始する方~|国税庁
電子帳簿保存法一問一答(スキャナ保存)(問10)

スキャナ保存に関しては2023年度改正によって緩和され、次の3点が改正されました。(適用は2024年1月1日から開始されます。)

要件改正前改正後
スキャナで読み取った時の情報(解像度、諧調、大きさ)の保存*保存必要保存不要
入力者等に関する情報の確認要件確認要確認不要
帳簿との相互関連性の確保が必要な書類の要件重要書類と一般書類重要書類のみ

*一般書類は大きさの情報不要

これらの改正のうち、影響力の大きいのは相互関連性を求める書類が重要書類に限定されたことです。
スキャナ保存にはさまざまな細かい要件が定められていますが、電子帳簿保存法に対応したシステムを導入すれば、その都度細かく確認しなくても適切な保存ができます。システム導入の際に確認をしておきましょう。

領収書やレシートを過去分にさかのぼって電子保存したいときは、所轄の税務署長に適用届出書を提出する必要がありますのが、2022年1月1日以降に備え付ける帳簿書類については承認を受ける必要はありません。ただし、過少申告加算税の軽減のため優良な電子帳簿としたい場合には届出が必要です。

参考:[手続名]国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等に係る過少申告加算税の特例の適用を受ける旨の届出|国税庁

電子取引データによる領収書やレシートの保存

電子取引データとは、クラウドサービスを利用してやり取りしたデータ、電子メールの添付などでやり取りしたデータ、EDI取引などをいいます。郵送などではなく、インターネット上でやり取りした取引データなどはすべて電子取引データです。

取引先からメールで領収書を受け取ったとき、あるいはECサイトなどを利用して消耗品などを購入し、Web領収書や請求書などを受け取ったときは、保存すべき電子取引データに該当することになります。

先述のように電子取引データの電子保存が義務化されましたので、どの事業者も原則として電子保存により保存しなければなりません。

電子取引データの電子保存については、以下に取り上げる要件を満たす必要があります。

  • 改ざん防止措置
  • 検索機能の確保
  • ディスプレイやプリンターの備え付け
  • (自社開発の場合システム概要を記載した書類の備え付け)

電子取引に関しては、2023年度改正によって次の点が改正されました。(適用は2024年1月1日から開始されます。)

要件改正前改正後
電子データをダウンロードの求めに応じるようにしている場合の検索機能の全てを不要とする者の範囲2課税年度前の売上高が1,000万円以下が対象2課税年度前の売上高が5,000万円以下が対象
2022年度税制改正で措置された紙書面の宥恕措置プリントアウトした書面を保存2023年12月31日で廃止
新たな猶予措置の整備下記2要件*を満たす場合には、電子データ保存についての詳細要件なし

 

*改さん防止や検索要件などを付けずに保存できるのは次の2要件とも満たす必要があります。

  1. 電子データの要件を満たした保存にあたって、相当の理由がある
  2. 税務調査等の際、該当する電子データについて「ダウンロードの求め」に応じることができる

参考:パンフレット(過去の主な改正を含む)|国税庁
電子帳簿保存法の内容が改正されました」

原則として、改ざん防止措置としては、タイムスタンプの付与、訂正削除の記録が残るシステムの利用、訂正削除防止のための事務処理規定の備え付け、のいずれかでの対応が求められます。

検索機能の確保とは、日付、金額、取引先でデータを検索できるようにすることです。表計算ソフトなどでインデックスを作成したり、検索しやすいファイル名にしたりするなどの方法も認められます。

領収書やレシートの保存期間は?原本は破棄しても良い?

領収書やレシートの保管や保管期間について、電子化せずに紙で保存する場合、電子化している場合に分けて説明します。

電子化している場合

領収書を含む国税関係書類は、法人税法において、確定申告書の提出期限翌日から7年の保存が義務付けられています青色申告書を提出した事業年度に欠損金がある場合などは10年)。個人事業主においても、5年間は保存しなくてはなりません。

これは、電子化している場合でも同じです。法人であれば7年、個人であれば5年は領収書やレシートのデータをいつでも取り出せるように保存しておく必要があります。

なお、2022年1月1日以降は、電子化した領収書などについて、電子データの確認後基本的に原本を破棄しても差し支えありません。

ただし、次の場合には電子データと書面の両方を保存する必要があります。

  • スキャナ処理について入力期間(2ヶ月と7営業日以内)を経過した場合
  • 備え付けのプリンタで出力不可能な大きい書類を読み取った場合

電子化していない場合

書面(紙)による保存も電子化している場合と同じで、法人で7年、個人事業主で5年は保存する必要があります。

電子化しない場合は、領収書やレシートの原本が取引を証明する書類となりますので、保存が義務付けられている期間を経過するまでは破棄できません。

電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法は、領収書やレシートなどを含む国税関係書類の、電子データによる保存を認める法律です。これまで要件の緩和など何度も改正が行われてきました。

電子帳簿保存法の概要や2023年改正などについてはこちらの記事をご覧ください。

紙の領収書やレシートも電子データとして保存できる

電子帳簿保存法の改正で、電子メールで受領した領収書など電子取引データは電子保存が義務付けられました。今後はどの事業者も電子取引においては、電子帳簿保存法に適った対応が必要です。

なお、紙で受領または発行した領収書などは、従来通り紙で保存できるほか、スキャナ保存で電子化することもできます。電子化した領収書については基本的には原本を破棄しても問題ありません。保管スペースや業務効率に問題を抱えているなら、書類の電子化も検討してみましょう。

よくある質問

領収書の電子保存要件は?

領収書やレシートの電子保存要件は、紙で受領したものをスキャン保存するか、電子取引データでやり取りしたものを電子保存するかで異なります。詳しくはこちらをご覧ください。

領収書の原本は破棄して良い?

電子化していない領収書の原本は破棄できませんが、電子化した領収書で入力期間を過ぎて保存したものなどでなければ原本を破棄しても問題ありません。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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