• 作成日 : 2022年2月10日

対照勘定法とは?仕訳から解説

対照勘定法とは?仕訳から解説

対照勘定法は、実施された取引の内容を忘れないようにするための備忘記録として、特殊な仕訳を用いて帳簿に記録する方法です。この記事では、具体的にどのような仕訳を行うのか、対照勘定法の概要や対照勘定法の仕訳例について、わかりやすく解説します。

対照勘定法とは

対照勘定法は、帳簿上において行う備忘記録のための仕訳の方法です。借方と貸方とで対照的で、一対となる勘定科目を用いて行うことからこのように呼ばれています。

手元から商品や手形はなくなっているが、まだ決済は行われていないことなどを帳簿上で判別できる状態を目的としています。

あくまで備忘記録であるため、商品の回収時や手形の決済時などには、反対仕訳を切って取り消しを行わなければなりません。なお、対照勘定法はあくまで備忘記録のための仕訳であるため、その勘定科目は貸借対照表上には表示されないことになっています。

対照勘定法の仕訳例

対照勘定法と一口にいっても、さまざまなものがあります。ここでは、具体的に対照勘定法の仕訳例を見ていきましょう。

割賦販売

割賦販売は、売買代金を分割して支払うことを条件とする販売方法です。割賦販売による売上の計上には回収基準(代金の回収時に売上を計上します)と、回収期限到来基準(回収期限の到来時に売上を計上します)の2つがあります。回収基準と回収期限到来基準とでは、取消仕訳を行うタイミングが違うことに注意しましょう。

回収基準

(仕訳例)
商品10万円を割賦にて販売した。

借方
貸方
割賦未収金
100,000円
割賦仮売上
100,000円

代金10万円を現金で受け取った。

借方
貸方
現金
100,000円
割賦売上
100,000円
割賦仮売上
100,000円
割賦未収金
100,000円

回収期限到来基準

(仕訳例)
商品10万円を割賦にて販売した。

借方
貸方
割賦未収金
100,000円
割賦仮売上
100,000円

回収期限が到来した。代金10万円はまだ回収していない。

借方
貸方
売掛金
100,000円
割賦売上
100,000円
割賦仮売上
100,000円
割賦未収金
100,000円

※回収期限到来時に回収していれば現金預金、未回収であれば売掛金とします。

試用販売

試用販売は、あらかじめ商品を得意先に送付し、試用した得意先から買取の意思表示があった時に売買が成立する販売方法です。

(仕訳例)
商品10万円を得意先に試送した。

借方
貸方
試用未収金
100,000円
試用仮売上
100,000円

得意先から買い取る旨の意思表示を受けた。代金10万円はまだ回収していない。

借方
貸方
売掛金※
100,000円
試用品売上
100,000円
試用仮売上
100,000円
試用未収金
100,000円

※買取の意思表示を受けた時に回収していれば現金預金、未回収であれば売掛金とします。

債務の保証

債務の保証とは、ある人が債務を履行しない場合に他の人が代わりにその債務を負うと約束することをいいます。保証人になった段階では、帳簿上に債務の金額を表すことはできないため、備忘記録を行います。

(仕訳例)
Aの債務1,000万円の保証人となった。

借方
貸方
保証債務見返
10,000,000円
保証債務
10,000,000円

Aが債務を返済したため保証人が解除になった。

借方
貸方
保証債務
10,000,000円
保証債務見返
10,000,000円

Aが債務を返済しなかったため代わりに当座預金から返済した。

借方
貸方
未収金
10,000,000円
当座預金
10,000,000円
保証債務
10,000,000円
保証債務見返
10,000,000円

手形の裏書譲渡

手形の裏書譲渡とは、受け取った手形の決済前に仕入や買掛金などの代金の支払として仕入先に譲渡することをいいます。

(仕訳例)
買掛金10万円の支払として得意先から受け取った受取手形10万円を譲渡した。

借方
貸方
買掛金
100,000円
受取手形
100,000円
手形裏書義務見返
100,000円
手形裏書義務
100,000円

受取手形10万円の決済が行われた。

借方
貸方
手形裏書義務
100,000円
手形裏書義務見返
100,000円

受取手形10万円が不渡りとなり、現金で買い戻した。

借方
貸方
不渡手形
100,000円
現金
100,000円
手形裏書義務
100,000円
手形裏書義務見返
100,000円

手形の裏書に伴う保証債務の時価がある場合

手形の裏書に伴う保証債務の時価がある場合にも、対照勘定法により備忘記録を行います。上記の仕訳に以下の仕訳を追加しましょう。

(仕訳例)
上記の例で保証債務の時価は1%と評価した。

借方
貸方
保証債務費用※
1,000円
保証債務
1,000円

手形売却損でも可

決済又は不渡りとなった。

借方
貸方
保証債務
1,000円
保証債務取崩益
1,000円

手形の割引

手形の割引とは、受け取った手形を決済前に金融機関で割り引き、手数料を支払って現金化することをいいます。

(仕訳例)
得意先から受け取った受取手形10万円について金融機関で割引を行い、割引料は3,000円であった。

借方
貸方
現金
手形売却損
97,000円
3,000円
受取手形
100,000円
手形割引義務見返
100,000円
手形割引義務
100,000円

受取手形10万円の決済が行われた。

借方
貸方
手形割引義務
100,000円
手形割引義務見返
100,000円

受取手形10万円が不渡りとなり、現金で買い戻した。

借方
貸方
不渡手形
100,000円
現金
100,000円
手形割引義務
100,000円
手形割引義務見返
100,000円

手形の割引に伴う保証債務の時価がある場合

手形の割引に伴う保証債務の時価がある場合にも、対照勘定法により備忘記録を行います。上記の仕訳に以下の仕訳を追加しましょう。

(仕訳例)
上記の例で保証債務の時価は1%と評価した。

借方
貸方
保証債務費用※
1,000円
保証債務
1,000円

※手形売却損でも可

決済又は不渡りとなった。

借方
貸方
保証債務
1,000円
保証債務取崩益
1,000円

有価証券の貸付

有価証券を貸し付けた場合、手元から有価証券はなくなりますが、所有権は移転していないため、備忘記録として対照勘定法による仕訳を行います。

(仕訳例)
有価証券1,000万円を貸し付けた。

借方
貸方
貸付有価証券
10,000,000円
有価証券
10,000,000円

貸し付けていた有価証券1,000万円が返還された。

借方
貸方
有価証券
10,000,000円
貸付有価証券
10,000,000円

有価証券の借入

有価証券を借り受けた場合、所有権は移転していないものの、有価証券を手元に保有しているため、備忘記録として対照勘定法による仕訳を行います。

(仕訳例)
有価証券1,000万円を借り受けた。

借方
貸方
有価証券
10,000,000円
借入有価証券
10,000,000円

借り受けていた有価証券1,000万円を返還した。

借方
貸方
借入有価証券
10,000,000円
有価証券
10,000,000円

対照勘定法でミスを防ぐ

「対照勘定法」という言葉は、なんとなく理解しづらいように聞こえますが、会計処理自体はそれほど難しいものではありません。対照勘定法による備忘記録を行い帳簿上に取引の存在を残しておくことで、「うっかり忘れていた」というようなミスを防げます。対照勘定法にはいくつかの会計処理パターンがありますが、発生の記録とその取り消しといった仕訳方法は共通しています。対照勘定法をしっかり理解し、実際の取引において活用していきましょう。

よくある質問

対照勘定法とは?

対照勘定法は、備忘録のために帳簿上において行う特殊な仕訳の方法です。詳しくはこちらをご覧ください。

対照勘定法の仕訳のポイントは?

取引の発生時において発生した金額で仕訳を行うことと、売上計上時や決済時や返還時などに、忘れずに反対仕訳を行って取消すことです。詳しくはこちらをご覧ください。


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