• 更新日 : 2021年1月22日

法人税で寄付金とみなされる行為にはどのようなものがあるか?

損金の予定が寄付金と扱われてしまうことがある

売掛金や貸付金などの債権が回収不能になった場合や、債権者が融資先である債務者に対する債権を放棄した場合などは、法人税計算の際に貸倒損失として損金算入できます。

上記の貸倒損失は、経営状態や債権放棄の事情から判断し、経済的な観点から合理性があるとされる場合に認められます。

しかし、債権の回収可能性がある場合や、回収の努力が認められない状態で放棄した債権については、法人税計算において寄付金として取り扱われるケースがあります。

寄付金として取り扱われてしまうのは、債権回収の見込みがあるにもかかわらず、債務免除を行うことが、債務者に対して利益の供与を行ったと判断されてしまうためです。

寄付は特定の団体などに行った場合には法人税法上、全額損金算入できますが、そうでないものは一部のみ損金算入されることとなります。つまり、貸し倒れ損失や債務免除として損金算入するはずが、法人税では寄付金とみなされ、思わぬ法人税が課せられる場合があるということです。

では、どのようなケースが法人税において寄付金とみなされるのか、具体例をご覧ください。

寄付金としてみなされる可能性のあるケースとは

売掛金について貸し倒れ処理する場合

得意先の業績が急速に悪化するなどして、債務超過の状態に陥ることがあります。その場合、売掛金の回収が困難だと判断されることになります。そういった例での債権放棄を貸し倒れとして処理するためには、「債務超過の状態がかなりの期間において継続している」「債務免除の金額が合理的である」「債務者に対して、損金として処理をする事業年度が終わるまでに知らせられている」といった条件を満たしていなければなりません。

また、売掛金の貸し倒れ処理をする際には、「売買契約書」や「納品書」「請求書」「債権放棄の通知書」「債務者の支払い不能が証明できる書面」などの書類を保存しておくことが重要なポイントとなります。

しかしながら、これらにおいても合理的な理由がないと判断された場合には、寄付金として取り扱われる場合があります。

子会社の整理に伴う貸付金の債権を放棄する場合

子会社の経営が悪化した際に、親会社が損失をかばうため債権放棄などをすることがあります。その場合、子会社と親会社それぞれが別の法人であることから、原則的には経済的な利益の付与とされ寄付金として扱われます。

ただし、その損失をかばわなければより大きな損失を生むことになるため、やむをえず損失をかばう場合や、親会社が道義的に損失をかばう必要があるなど、一定の要件を満たす場合には、寄付金として取り扱われないとされています。

さまざまな事由により不良債権が発生した場合

売掛先と連絡が取れなくなった」「退職した社員への貸付金」「存在はしているが督促しても全く振り込みをしない売掛先」「売掛先が夜逃げした」といった事由が原因で不良債権が発生した際の貸し倒れ損失の計上には、回収不能であると判断した根拠となる資料を残しておくことが重要なポイントです。

根拠となる資料は主に、「取引先へ郵送して戻ってきた宛先不明郵便」「破産申し立て書、破産事件経過通知書」「貸倒れ判断をした経過をまとめた書類」「債務者の決算書など」「債権督促業務の履歴」などがあります。

これらの根拠となる資料がない場合には、寄付金として認定されてしまう可能性があります。

売掛先と連絡が取れなくなった場合には、郵便物の配達状況や電話が通じるかどうか、事務所の所在地がどうなっているかを把握する必要があります。

また、退職した社員への貸付金の場合には、本人との連絡の可否、住所地に住んでいるかどうか、保証人への連絡の可否といった点が重要になります。

その他のケースでも、相手先事務所への訪問、社長の支払いの意思確認、営業状況や決算書の確認、夜逃げなどの場合には、その事実確認などを進めるといった点を検討しなければなりません。

寄付金として認定されてしまうといった危険性を避けるためにも、根拠となる資料をきちんと整備しておくことが重要です。

寄付金についてより詳しい情報を知りたい方は以下のサイトをご参照ください
国税庁|寄付金

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談していただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事