• 更新日 : 2023年8月17日

飲食業以外の事業者も確認すべき「軽減税率の3つのポイント」

飲食業以外の事業者も確認すべき「軽減税率の3つのポイント」

軽減税率が導入され、現在では消費税率が8%と10%の2種類になっています。軽減税率8%の対象が主に「飲食料品」ということもあり、飲食店やスーパー、コンビニなどの支払いで2つの税率が混在するケースが多くなりました。しかし、それ以外の事業者においても軽減税率の影響は出てきます。

今回は、飲食店等に限らず全ての業種に共通して必ず確認しておきたいポイントを紹介します。

自社方針の決定と現場の整備

企業が軽減税率に適切に対応するためには、どのようなことに注意すればよいのでしょうか?注意すべきポイントを列挙しながら解説していきます。

自社方針の決定と現場スタッフの教育

世界の紅茶を扱う雑貨屋店や、のど飴を扱う保険調剤薬局、経口補水液を扱う病院など、主たる商品が飲食料品ではないけども若干飲食料品を扱っているといった業種は多々あります。

飲食店やコンビニ以外の業種においても、軽減税率対象商品を扱うお店は現場スタッフに軽減税率の知識やレジシステムの入力方法などを伝え、間違えのない対応をしてもらうための教育が必要になります。

全体の売上に対し、軽減税率対象商品がどの程度の割合を占めているかにもよりますが、スタッフへの教育コストと売上を天秤にかけ、場合によっては飲食料品の扱いを取りやめるという選択肢が出てくるかもしれません。

会計ソフトの設定の見直し

飲食料品を扱わない事業においても、経費として会議用や職員の福利厚生用にお弁当やお茶を購入したり、得意先へお菓子などの手土産を持参したりすることもあるでしょう。売上だけではなく経費も含めて考えた場合、ほとんどの事業者が軽減税率について何らかの対応が必要になるでしょう。

2019年10月の消費税率引き上げ後は、経理処理が煩雑になりミスが多発しがちですので、会計ソフトの税率設定を確認しておくことも重要です。

例えば、飲食料品などを「課税仕入れ」として、消費税の税区分を会計ソフトに入力する事業者は、飲食料品以外の10%対応商品と税区分を分けなければならないため注意しましょう。

飲食料品や定期購読の新聞に該当する費用の勘定科目(例:会議費新聞図書費など)については勘定科目を選択するだけで自動的に軽減税率の8%になるように設定ができればスムーズです。設定できない会計ソフトの場合は、入力者が税区分について領収書等から慎重に判断し区分経理する必要があります。

請求書の追記事項のチェック

軽減税率の導入に伴い、請求書や領収書などに記載しなければならない項目が追加されています。2019年に施行された「区分記載請求書等保存方式」から2023年に施行される「適格請求書等保存方式」までの流れを示しながら、追記事項について解説します。

「区分記載請求書等保存方式」の追記事項を確認

軽減税率と同時に、2019年10月1日より「区分記載請求書等保存方式」が導入されました。従来の請求書との違いは、記載事項が新たに2点追加されたことです。

「区分記載請求書等保存方式」は、2023年10月から施行される「適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)」までの猶予措置のようなものです。新たに記載しなければならない事項は以下のとおりです。

  
<請求書・領収書・レシートなどの追記事項>

  • 課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等に係るものである旨
  • 税率ごとに合計した課税資産の譲渡等の対価の額(税込み)

(例)「8%」 「※(※は軽減税率対象品目として示すことを別途記載する)”」など。税率ごとに区分した税抜価額の合計額及び消費税額等を記載しても差し支えありません。

区分記載請求書

引用:消費税軽減税率制度の手引き|国税庁「消費税軽減税率制度の概要」

<帳簿の追記事項>

  • 課税仕入れが軽減対象資産の譲渡等に係るものである旨

「適格請求書等保存方式(インボイス方式)」の追記事項を確認

2023年10月から施行される「適格請求書等保存方式」では上記に加えてさらに、2つの事項が追加されます。

<請求書・領収書・レシートなどの追記事項>

  • 適格請求書発行事業者番号
  • 税率ごとの消費税額及び適用税率

適格請求書

引用:消費税軽減税率制度の手引き|国税庁「消費税軽減税率制度の概要」

インボイス制度の導入に伴い発行される適格請求書等については登録制となり、「適格請求書発行事業者」として登録された事業者のみが発行できるようになります。登録された事業者は取得した登録番号を請求書等に追記しなければなりません。

追記事項の記載がない請求書等を受け取った場合どうなる?

請求書の記載事項が不十分な場合、請求書などの交付を受けた事業者による追記も認められます。
しかし、レシートに記載された商品名が軽減税率の対象となるものかどうか判断できない場合、購入してレシートを受け取った相手方において仕入税額控除の要件を満たさない、すなわち仕入税額控除が認められなくなるリスクが生じてしまいます。

<仕入税額控除とは>
消費税がかかる経費で、消費税の申告の際に控除できる金額

消費税は原則として「預かった消費税」から「支払った消費税」を控除した差額を税務署に納付します(本則課税)。支払った消費税の仕入税額控除を受けられなければ、その分差額が大きくなりますので、消費税の納付税額が高くなります。

同じ金額の支払いでも、請求書等の追記事項が不備というだけで税負担が増えることになります。追記事項不備の請求書等を受け取った場合、取引先に説明したうえで仕入税額控除の要件を満たした請求書の再発行を求めるようにしましょう。

「簡易課税制度の選択」の検討

軽減税率導入と同時に、中小事業者のみ、消費税額の計算についていくつかの特例が設けられています。

その中でもとりわけ検討すべきなのは簡易課税制度の選択です。簡易課税制度とは、消費税の仕入税額控除の計算を原則課税よりも簡易に行える制度です。

通常であれば課税期間開始の日の前日までに簡易課税選択届出書を提出しなければなりませんが、免税事業者の方が課税事業者になる場合、インボイス制度の特例措置を受けることができます。2023年10月1日から2029年9月30日までの課税期間中に課税事業者となる場合、その課税期間中に届出を提出すれば「提出したその課税期間から簡易課税の適用ができる」という特例措置が置かれています。

なかには「複数税率の仕入税額控除を10%と8%に振り分けるのが困難であり、処理の煩雑化を考えれば簡易課税の方が良い」という事業者もいらっしゃると思います。インボイス制度開始に伴い課税事業者となる事業者の方は、検討する余地があるでしょう。

軽減税率に対して適切な対応を

今回は、軽減税率制度について飲食業以外の事業に携わる方にも影響することについて紹介しました。複数税率の導入に伴って業務が煩雑となることは否めないですが、社員教育やシステムの変更など、必要な対策を講じ、スムーズな経営につなげましょう。


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