• 更新日 : 2024年9月18日

中小企業が電子帳簿保存法に対応するには?データ保存要件や方法を解説

電子帳簿保存法は毎年のように改正が行われており、改正により少しずつ利用しやすい方向へ向かっています。電子帳簿保存方法は事業規模に関わらず、すべての企業・個人事業主が対象なので、中小企業も対応の必要があります。

電子帳簿保存における保存方法には「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引」の3つの区分が存在します。すべての保存義務者について最も注意が必要なのは、電子取引にかかるデータ保存の義務化です。

今回は電子帳簿保存法の改正点や、中小企業の具体的な対応策を解説します。

中小企業は電子帳簿保存法に対応する必要がある?

電子帳簿保存法は中小企業でも対応の必要があります。電子帳簿保存法は、保存義務が設けられている国税関係帳簿書類を電子データとして保存するルールを定めた法律です。

電子帳簿保存法は、情報社会の進展・ペーパーレス化の普及に伴い、会計処理上でもコンピュータによる書類作成が一般的になってきたことから、1998年に創設されました。

国税関係帳簿書類を紙ではなく電子上でデータを保存することによって、保存場所が少なくなったり検索が容易になったりする効果があります。ただし電子データの保存には、いくつか満たすべき条件があることに注意が必要です。

参考:国税庁 電子帳簿保存法関係

電子帳簿保存法の3つの区分

電子帳簿保存法は近年の改正によって大幅に保存方法の緩和が見られたとはいえ、電子データでの保存にはルールがあり、それを守らなければいけません。

電子保存には3つの区分が存在しますが、電子データでの保存が義務付けられたのは電子取引のみで他の2つは会社の任意であることに注意しましょう。

電子帳簿等保存

電子帳簿等保存とは、保存が求められる国税関係帳簿書類について書面ではなく、電子データで保存することです。対象となる書類の具体例は次のとおりです。

  1. 自ら会計ソフト等で作成した書類(国税関係帳簿)
  2. 自らが一貫してコンピュータで作成した契約書や領収書等の控え(国税関係書類)

自分が作成した書類であることがポイントで、相手方からメールで受け取ったものは電子帳簿等保存の区分では対象外です。手書きの仕訳帳総勘定元帳、手書きの補助簿や請求書の写し、取引先から受領した請求書などは電子帳簿等保存の対象にはなりません。

スキャナ保存

スキャナ保存は紙でやり取りした書類をスキャナで読み込み、データとして保存する方法です。対象は、自分が紙として作成した契約書や領収書(主として控え)に加えて、相手方から受領した書類も含まれます。基本的には相手方から受領した書類をスキャナ保存するケースが多いでしょう。

電子データの状態で保存義務の履行が完了するため、原本については確認後に廃棄可能です。

電子取引

電子取引とは請求書や領収書などをオンライン上でやり取りした際に、そのデータをそのまま保存するというものです。他の2つの方法と異なるのは、データ保存が義務化されており、紙での保存は認められないことです。

要件に則った保存が必要で、原本の電子データを単に電子フォルダに入れるだけでは、義務を履行したとはいえません。

保存時に満たすべき要件は4つあります。

1つめの「システム概要についての書類の備え付け」は、システムの概要書や仕様書、操作説明書などの書類を備え付け、誰でも閲覧できるようにします。

2つめの「見読可能装置の設置」とは、データの確認ができる機器を指し、ディスプレイやアプリなどが該当します。見読可能装置は意識しなくてもすでに備えている事業者がほとんどでしょう。なぜなら見読可能装置を備え付けていないと税務職員はおろか、社内の担当者も書類の確認ができないためです。

3つめの「検索機能の確保」とは、日付や金額、取引先といった情報から検索をかけられる検索機能を必須にして電子データを管理します。

ここまでの3つは、「データの可視性の確保する措置」となります。

そして4つめの「データの真実性を担保する措置」とは、例えばタイムスタンプを押されたデータを受領する、もしくは自社でタイムスタンプを押すことです。他にはデータの訂正・削除を記録できる、もしくは禁止されたシステムの利用や、不当な訂正削除の防止にかかる事務処理上のルールの整備・運用が挙げられます。

しかしながら、2023年度の改正により検索機能の見直しや新たな措置が整備されたりしていますので、次項で見ていきましょう。

電子取引のデータ保存の要件を満たす必要がある

電子帳簿保存法に定める電子取引によるデータ保存の要件を満たすには、「真実性の確保」と「可視性の確保」の大きく分けて2つの要件を満たす必要があります。

真実性の確保

真実性の確保とは、保存するデータが改ざんされたものでないことを証明できるようにするための要件です。真実性の確保の要件を満たすには、以下のいずれかの対策を行う必要があります。

  • 取引相手からタイムスタンプが付与された電子データを受領する
  • 電子データを受領後すぐにタイムスタンプを付与して保存する
  • データの訂正や削除の記録が残るシステムを利用して保存する
  • データの訂正や削除ができないシステムを利用して保存する
  • 訂正削除の防止のための事務処理規定を備え付ける

上記のうち、取引相手の協力が必要なのは、取引相手によるタイムスタンプの付与です。取引先が対応できるかどうかにもよるため、取引先が多岐にわたるなど現実的でない場合は、ほかの対策を検討するのがよいでしょう。

タイムスタンプやデータ保存のためのシステムを新たに導入しない場合は、事務処理規定を設けて適切に運用するのも方法のひとつです。事務処理規定の例は国税庁で紹介されているため、参考にしてみてはいかがでしょうか。

参考:参考資料(各種規程等のサンプル)|国税庁

可視性の確保

「可視性の確保」とは、電子取引のデータをすぐに確認できるようにするための要件です。真実性の確保の要件とは異なり、可視性の確保の要件を満たすには、次に紹介するすべての要件を満たさなくてはなりません。

  • 見読可能装置を備え付けること
  • 一定の要件を満たす検索ができること

見読可能装置とは、データをすぐに確認するための装置のことです。具体的に、データを画面に出力するディスプレイやデータを紙に出力するプリンターなどを備えておく必要があります。

一定の要件を満たす検索とは、日付・金額・取引先でデータを検索できるようにすることです。システムによる管理のほか、ファイルに日付・金額・取引先の情報を入れて検索することも認められます。ただし、2課税年度前の売上高が5,000万円以下、または電子取引データをプリントアウトして日付及び取引先ごとに整理している場合には、検索要件は不要となります。

なお、自社開発のプログラムで電子取引のデータを保存したときは、上記に加え、電子計算機処理システムの概要がわかる書類を備える必要があります。

2024年1月1日から電子取引のデータ保存が完全義務化

電子帳簿保存法の対象のうち、2022(令和4年)1月1日以降にやり取りのあった電子取引データについては、電子データの保存が原則として義務化されています。なお、2022年以降の義務化に伴い、データ保存の対応がやむを得ずできない事業者については、しばらくの間、データを紙に出力して保存することも猶予措置として認められていました。

しかし、2024(令和6年)1月1日以降の電子取引データについては、データ保存が完全義務に移行します。完全義務化されたことで、猶予措置にも変更がありました。

新たな猶予措置では、やむを得ない事情があると認められる場合で、税務調査の際にデータダウンロードの求めに応じられる場合には、データ保存の要件を満たさなくても、単にデータを保存することが認められることになりました。

中小企業が電子帳簿保存法に対応する方法

電子帳簿保存法に定める電子取引のデータ保存の義務化が実現したことで、これまで電子保存に対応していなかった中小企業でも電子取引のデータ保存が必要になりました。中小企業において電子取引のデータ保存の要件を満たすにはどうすべきか、4つの具体的な対策を紹介します。

電子帳簿保存法に対応するシステムを導入する

企業や個人事業主による書類をデータ保存したいという需要に対して、近年、頻繁に電子帳簿保存法は改正されています。改正が行われるたびに、現時点での電子帳簿保存法の要件に適した保存ができているか不安を覚える事業者もいるでしょう。

電子帳簿保存法に対応するためには、改正の内容が都度反映されるクラウド型の電子帳簿保存法対応のシステムを導入する方法があります。例えば、マネーフォワードクラウドでは、クラウド債務支払、クラウド会計、クラウド確定申告、クラウドBOXなどで電子帳簿保存法に適った電子データの保存が可能です。

自社でシステムを開発・改修する

自社の業務スタイルなどに合わせてシステムをカスタマイズしたい場合は、自社開発のシステムで電子帳簿保存法に対応する方法もあります。あるいは、既存の自社開発のシステムを改修し、電子帳簿保存法に対応する方法も考えられるでしょう。システムの開発には時間やコストがかかります。利便性や導入後の効果などとも比較して検討されてはいかがでしょうか。

エクセルなどで索引簿を作成して保存する

電子帳簿保存法のうち、電子取引のデータ保存にのみ対応したい場合は、エクセルなどで索引簿を作成する方法も考えられます。索引簿とは、日付・金額・取引先などのデータを表形式で記録して、情報を検索できるようにした書類のことです。電子取引のデータ保存に定められた可視性の確保の要件を満たすことができます。

エクセルは、データを降順や昇順に並べ替えたり、検索できたりする機能があります。必要なデータを取り出しやすく、すでに導入されていることの多いエクセルを使ってすぐに作成できるのがメリットです。

電子取引データのファイル名に「日付、金額、取引先」を含める

電子取引のデータ保存の要件に定める可視性の確保は、データ保存時の工夫でも実現できます。例えば、ファイルを保存する際に、ファイル名に検索要素を含めることが考えられます。ファイル名に日付・金額・取引先の情報を含めることにより、必要なときにフォルダの検索機能で必要な取引データを探せるようにしておく方法です。

中小企業は2024年1月から電子取引のデータ保存が義務化

中小企業は電子帳簿保存法に対応する必要があるため、今後の電子帳簿等保存に関する改正の内容にも注視しておかねばなりません。

オンラインでやり取りした請求書や領収書など(電子取引による書類)のデータ保存が2024年1月1日より完全義務化されました。事業の規模にかかわらず電子取引のデータ保存は義務となったため、中小企業においても電子帳簿保存法に定める要件を満たした保存が必要です。

電子帳簿保存法対応の会計ソフトを導入すれば、スムーズに電子取引データ保存の対応がとれるでしょう。

参考:電子帳簿保存法の概要|国税庁

税理士コメント

電子取引における電子データ保存の義務化ですが、例えばECサイト上で領収書等データの確認がいつでもできる場合には、必ずしも電子データをダウンロードして保存していなくてもよくなりました。

Amazonや楽天市場など、多くのECサイトでは過去にさかのぼって領収書がダウンロード(ただし、いつまでダウンロードが可能かの確認は必要)できますので、「事業主自ら」保存しなくてもよいこととなりました。

参考:電子帳簿保存法一問一答 【電子取引関係】(令和6年6月)問40-2ご参照

よくある質問

中小企業は電子帳簿保存法に対応する必要がある?

事業規模に関わらず、すべての企業・個人事業主が対象なので、中小企業も対応の必要があります。詳しくはこちらをご覧ください。

中小企業が電子帳簿保存法に対応するにはどうすればいい?

電子データで保存する際は「1.システム概要に関する書類の備え付け」 「2.見読可能装置の備え付け」「3.検索機能の確保」「4.データの真実性を担保する措置」の4つの要件をすべてを満たす必要があります。 詳しくはこちらをご覧ください。


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