• 作成日 : 2020年7月2日

製造業の会計・経理業務とは?

製造業とは、モノを製造し卸売を行う業務全体を指す言葉です。製造業の経理を初めて担当する場合、製造業ならではの考え方や仕組みがあり、戸惑っている方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、製造業の定義、製造業の経理業務で押さえておきたいポイントをご紹介します。
    

製造業とは何か?

経済産業省における用語の説明では、製造業とは一般に「工業」と呼ばれるものであり、以下2つの両方の条件を備えているものとされています。

  1. 主として新製品の製造加工を行う事業所。
  2. 製造加工した新製品を主として卸売(卸売業者又は小売業者に販売)する事業所。

したがって「工業」の分類の中で

  • モノを製造加工する
  • モノを卸売りする

この2つを行うのが製造業です。製造業には、 化学工業や金属製品製造業などの重工業、木材・木製品製造業や繊維工業などの軽工業があります。

製造業の特徴としては、自動車会社が自動車を製造販売しているように、必ず「製造工程」を経る点が挙げられます。また、主として卸売りであるため、直接消費者に販売することがあまりないのも「製造業」の特徴だといえます。

製造業の経理業務とは?

製造業の経理業務においては、製造業の特徴である「モノを作って、売る」という工程を計数化したものを作成する必要があります。
最終的な財務諸表から確認すると、以下のイメージです。

  • モノを作ったことを「製造原価報告書」に表示する
  • モノの販売やその他の動きを「損益計算書」に表示する
  • 期末時点の財産状態を「貸借対照表」に表示する

まず、製品の製造にいくらかかったのかを計算する必要があるのですが、これを「原価計算」と呼びます。簿記には商業簿記や工業簿記などいくつかの種類が存在しますが、原価計算は工業簿記に含まれるものです。

製造業においては、販売活動については商業簿記を使いますが、製造においては工業簿記の原価計算によって算出した数字を会計で処理します。

なお、工程の少ない製造業では商業簿記の手法で製造業の取引を記帳する、商的工業簿記が利用されることもあります。また、製造過程をすべて外部に委託している場合なども商的工業簿記で完結するでしょう。

製造業における原価計算とは?

まず、製造業では会計期間において製品を作るために要した原価について、製造原価報告書にまとめます。

製造原価報告書の記載方法にはいくつかありますが、ここでは一般的な「材料費」「労務費」「製造経費」に分ける方法を説明します。

小さなネジ製造会社を例にとって見ていきましょう。

材料費:材料として使用する金属など、原料となるものの会計期間の動きを表しています。赤枠で示した部分が当期に要した材料費であり、労務費、経費も同様に集計します。

材料費は 当期材料費 = 期首材料棚卸高 + 当期材料仕入高 - 期末材料棚卸高 で算出されます。

労務費:工場内で勤務している方の労務費(給与や賞与、社会保険料など)を記載します。なお、営業や販売担当などの給与はここに入らないため、ご注意ください。

製造経費:ネジの製造に必要な経費です。外注加工費、運送費、設備などの減価償却費修繕費水道光熱費等がここに含まれます。なお事務用の経費は含まれません。

材料費、労務費、製造経費の3つを集計すれば、自動的に当期総製造費用を算出できます。

仕掛品とは、未完成の状態の製品のことです。つまり期首仕掛品棚卸高は期首時点で有していた仕掛品、期末仕掛品棚卸高は期末時点で有している仕掛品のことを差します。
よって、 当期製品製造原価 = 期首仕掛品棚卸高 + 当期の材料費、労務費、経費の合計 - 期末仕掛品棚卸高

となります。なお、期末の材料・仕掛品は貸借対照表の資産の部に棚卸資産として表示されます。

次に、損益計算書に移行し、製品原価(売上原価)を求めていきます。

計算式は 売上原価 = 期首製品棚卸高 + 当期製品製造原価 - 期末製品棚卸高 となります。なお、販売や事務にかかった人件費は販売費および一般管理費で計上することになりますので、仕訳の際は気をつけましょう。

最後に貸借対照表に移行します。この際、材料、仕掛品とともに期末の棚卸高は「製品」として表示されます。

工程が長くなればなるほど仕掛品が多くなりやすい傾向にあるので、工程の短い工業製品を扱う企業であれば、期末における仕掛品や製品はあまり多額とはならないでしょう。

ただし、期末の製品が多くなってしまうと「過剰在庫」と呼ばれる状況に陥るので、その点は頭に入れておきましょう。

製造業では売上原価を求めるための「原価計算」が非常に重要となります。

製造業の経理業務における重要ポイントとは?

製造業であっても小売業などと同じく、クラウド型会計ソフトを利用するにあたっての金融機関との連携やクレジットカードなどの扱いに大きな違いはありません。

重要なのは、原価計算のデータをどのように会計ソフトに結びつけるか、ということです。

自社の製造過程や製品にあった生産管理システムや原価管理システムを見つけるためには、自社の製造業務を見直す必要があるかもしれません。また、ときにはシステムに合わせて製造フローを見直すことも必要となります。

また、一旦、生産管理システムや原価管理システムが導入されたら、経理業務としてはそれら上流システムと連携されるデータに異常値がないかに注意することが重要です。

経理担当者は、原価管理システムをうまく運用し、原価の内訳や推移を認識し、コストダウンや効率化に結びつけるために、原価計算がどのような構造になっているか、その大筋は把握できていなければなりません。

製造業の経理業務担当者は、まず会計の上流にある製造過程に目を向けることで、利益の最大化をめざしましょう。

製造業の経理業務は健全経営のための重要な見張り番

原価計算は、「製造過程」に沿って製品を作るためにかかったお金を積み上げる過程といえますが、経理担当者は、その流れを受けて送り出した製品が利益を獲得できるかどうかを見守る役割を担っているといえます。
したがって、製造過程でイレギュラーが発生した場合には、財務への影響があるはずです。
良い製品ができあがっても、販管費で大きなロスが発生し、利益を逃していることもあります。経理担当者は、そのような一連の流れの見張り番として、個々の会計データにストイックに向き合うべきでしょう。 

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:岡 和恵 (税理士 / フィナンシャルプランナー AFP)

大学卒業後、2年間の教職を経て専業主婦に。その後、システム会社に転職。
システム開発部門と経理部門を経験する中で税理士資格とフィナンシャルプランナー資格(AFP)を取得。
2019年より税理士事務所を開業し、税務や相続に関するライティング業務も開始。

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