- 更新日 : 2026年5月29日
少額減価償却資産は償却資産税の対象?計算方法や申告書の書き方も解説
一定の中小企業者等が対象資産をその年に費用化できる制度ですが、税金はかかります。
- 取得価額40万円未満の資産を即時償却する
- 一括償却資産と違い課税の対象に含まれる
- 毎年1月末までに市区町村へ申告する
令和8年4月以降は対象上限が引き上げられ、適用期限も延長されています。
青色申告を行う中小企業者等には、「少額減価償却資産の特例」という減価償却に関する優遇措置が設けられています。ただし、「一括償却資産」と異なり償却資産税の対象となるため、注意が必要です。
本記事では、少額減価償却資産の償却資産税について解説します。償却資産税の計算方法や「償却資産申告書」の書き方、償却資産税の仕訳例も紹介します。
目次
少額減価償却資産の特例と一括償却資産
最初に、「少額減価償却資産の特例」について解説します。同特例と同じように早期に減価償却できる「一括償却資産」との違いも確認しておきましょう。
少額減価償却資産の特例とは
「少額減価償却資産の特例」とは、青色申告を行う中小企業者等が一定金額未満の減価償却資産を取得し、事業の用に供した場合に、年間300万円を限度として取得価額の全額を損金算入・必要経費算入できる制度です。正式には「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」と呼ばれており、2006(平成18)年4月1日から2029(令和11)年3月31日までに取得した取得価額40万円未満の固定資産に適用される期間限定の特例です。
下記の通り、令和8年4月1日以後に取得し事業の用に供する資産については、対象となる取得価額の上限が30万円未満から40万円未満に引き上げられています。 なお、令和8年度税制改正による見直し(令和8年4月1日以後に取得する減価償却資産から適用)。
- 対象となる取得価額の基準を「30万円未満」から「40万円未満」に引き上げ
- 適用期限を令和11年3月31日まで3年延長
- 常時使用する従業員数が400人を超える法人を対象から除外
- 対象者要件を見直し、中小企業者について常時使用する従業員数400人以下を対象とする
特例を適用すると、少額減価償却資産は取得価額の全額を単年度で損金算入できます。その結果、取得年度の課税所得を圧縮し、短期的な税負担の軽減や資金繰り改善につなげられる可能性があります。
また少額減価償却資産の特例は、同一年度で何回でも利用可能です。しかし、合計取得価額が1年間で300万円までが対象となります。少額減価償却資産の詳細については、下記リンクを参照してください。
少額減価償却資産と一括償却資産の違い
少額減価償却資産と間違いやすいものに、「一括償却資産」があります。一括償却資産は取得価額を3年にわたって均等償却できる固定資産で、対象となるのは、取得価額が20万円未満の固定資産です。
取得価額が40万円未満まで認められ1年で損金算入できる少額減価償却資産の特例の方が取得年度に全額を損金算入・必要経費算入できる点では有利です。 一方で、一括償却資産は規模の大小を問わずすべての企業が利用できるため、20万円未満の資産については、即時費用化と償却資産税の負担を比較して選択することが重要です。 (少額減価償却資産の特例は中小企業のみ)。一括償却資産の詳細については、下記リンクを参照してください。
中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例では償却資産税の対象に
少額減価償却資産の特例を利用した場合、償却資産税の対象となるので注意しましょう。一括償却資産は償却資産税の対象となりませんが、少額減価償却資産の特例は取り扱いが異なります。
償却資産税とは、企業が事業のために使用している機械や備品などの固定資産に対して課される税金のことです。土地や建物に対する固定資産税と区別して、償却資産税と呼びます。
少額減価償却資産は、そのほかの償却資産とあわせて市町村に申告が必要です。
取得価額が低い固定資産に対する償却資産税について、以下を確認しておきましょう。
- 使用可能期間1年未満または取得価額10万円未満(※)の固定資産(取得年度に全額経費計上):対象外
- 一括償却資産(3年にわたって均等償却):対象外
- 少額減価償却資産の特例:対象
※「10万円未満」は、法人税・所得税上、取得年度に全額損金算入・必要経費算入したものを指します。
また、取得価額の判定は、税抜経理方式なら税抜金額、税込経理方式なら税込金額で行います。消費税の経理方式によって、10万円・20万円・40万円の判定結果が変わる場合があります。
少額減価償却資産の償却資産税の計算方法
少額減価償却資産の償却資産税は、そのほかの償却資産と合算して計算します。すべての償却資産の評価額の合計額を「課税標準額」といい、税率を掛けて税額を算出します。
税率は地方自治体によって異なります。大半は1.4%ですが、地方自治体のホームページなどで確認が必要です。
償却資産の評価額は、取得年月や取得価額、耐用年数に基づき賦課期日(1月1日)現在の評価額を算出します。「前年取得した資産」と「それ以前に取得した資産」では、計算方法は異なります。それぞれの計算式は次の通りです。
- (前年取得した資産の評価額)=取得価額×(1-減価率/2)
- (前年より前に取得した資産の評価額)=取得価額×(1-減価率)
減価率は「減価残存率表」に耐用年数ごとに記載されています。
償却資産税の計算例
償却資産税は前述の計算式で算出しますが、実務上、償却資産の評価額は減価残存率表に記載された「減価残存率A」と「減価残存率B」を用いて次の通り計算します。
- (前年取得した資産の評価額)=取得価額×A
- (前年より前に取得した資産の評価額)=取得価額×B
取得価額20万円、耐用年数2年の償却資産を購入、税率は1.4%と仮定して、償却資産税を計算してみましょう。減価残存率表より、耐用年数2年の減価残存率Aは0.658、減価残存率Bは0.316です。
(前年取得した資産)
- (評価額)=20万円×0.658=13万1,600円
- (償却資産税)=13万1,600円×0.014=1,842円
(前年より前に取得した資産)
- (評価額)=20万円×0.316=6万3,200円
- (償却資産税)=6万3,200円×0.014=884円
ただし、実際の償却資産税の計算は、そのほかの償却資産と合算して課税標準額を算出して計算します。また、償却資産税は個々の資産ごとではなく、同一市区町村内の償却資産の課税標準額を合算して計算します。合計額が免税点150万円未満の場合、償却資産税は課されません。
少額減価償却資産の償却資産申告書の書き方
償却資産の申告には、次の3つが必要です。
- 償却資産申告書:償却資産全体の取得価額や前年からの増減が記載され、全体状況を把握し税額計算の基礎として使用します。
- 種類別明細書(増加資産・全資産用):個々の償却資産の詳細情報を記載し、各償却資産の評価額の計算に使用します。
- 種類別明細書(減少資産用):前年中に売却や廃棄、譲渡などにより減少した償却資産についての詳細を記載します。
減少資産がなければ、申告で使用するのは「償却資産申告書」と「種類別明細書(増加資産・全資産用)」の2つです。それぞれについて解説します。また、償却資産の申告は、毎年1月1日現在で所有している償却資産について、原則として1月31日までに資産所在地の市区町村へ行います。期限が土日祝日に当たる場合は、自治体の案内に従って確認しましょう。
償却資産申告書
申告書には、企業の基本情報と資産の種類ごとに次の取得価額などを記載します。
- 前年より前に取得した資産
- 前年中に減少した資産
- 前年中に取得した資産
- 1月1日現在保有する資産
(申告書のイメージ図)

種類別明細書(増加資産・全資産用)
明細書には、前年中に取得した資産それぞれについて、次の内容を記載します。
- 償却資産の種類(建築物や機械・装置など所定の項目から選択)
- 償却資産の名称
- 数量
- 取得年月
- 取得価額
- 耐用年数
- 増加事由(新規取得や中古取得など)
(明細書のイメージ図)

償却資産税は電子申告も可能です。電子申告の方法は自治体によって異なるため、自治体のホームページなどで確認しましょう。
少額減価償却資産の償却資産税の仕訳例
モデルケースを使用して購入時や決算時、償却資産税を支払った時の仕訳例を紹介します。2026年4月にパソコンを35万円で購入し、その他の償却資産と合算して翌年に償却資産税を10万円支払った場合の仕訳は次の通りです。
※青色申告の中小企業者等であること、年間300万円以内であること、事業の用に供していることが前提となります。
(購入時)
※いったん工具器具備品として資産計上し、決算時に少額減価償却資産の特例により即時償却する処理を前提としています。
| 借方 | 貸方 | 摘要 | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 工具器具備品 | 350,000円 | 現金 | 350,000円 | パソコンの購入 | |
(決算時)
| 借方 | 貸方 | 摘要 | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 減価償却費 | 350,000円 | 工具器具備品 | 350,000円 | パソコン(2026年35万円で購入) | |
(償却資産税の支払い時)
| 借方 | 貸方 | 摘要 | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 租税公課 | 100,000円 | 現金 | 100,000円 | 償却資産税 | |
償却資産税の計算方法や申告方法を理解して正しく申告しよう
「少額減価償却資産の特例」により一定の要件を満たす中小企業者等は、取得価額40万円未満の償却資産の全額を単年度で損金算入できます。ただし、少額減価償却資産には、一般の償却資産と同じように償却資産税がかかるため注意しましょう。
少額減価償却資産の特例はメリットの大きな制度です。償却資産税の計算方法や申告方法を理解し、正しく申告して有効に活用しましょう。
※本記事の内容は、令和8年度税制改正および国税庁・中小企業庁、各自治体等の公表情報を踏まえて作成しています。少額減価償却資産の特例の適用可否や償却資産税の申告要否は、取得価額、取得日、事業供用日、青色申告の有無、法人・個人の区分、従業員数、資本金、資産の用途、自治体の取扱いなどにより異なります。実際の申告・会計処理にあたっては、最新情報を確認し、必要に応じて税理士等の専門家にご相談ください。
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