• 作成日 : 2024年11月5日

経費精算で税金はどう扱う?節税のポイントや課税・非課税の対象を解説

経費精算における税金を正しく理解すると、適切に処理ができるため、節税にもつながります。ただし、経費精算には支出の内容に応じた課税と非課税の判断や、消費税の仕入税額控除など、注意するべき点があります。

本記事では、経費精算の税金について、節税のポイントや課税される費用と非課税となる費用について解説します。

経費精算と税金の関係

経費精算と税金の関係を知ることは、非常に重要です。会社経営において、経費は日々発生する支出であり、適切な処理が求められます。

費用には経費として認められて非課税となる支出と、経費と認められず課税対象となる支出が存在します。経費の取り扱いを正しく理解し、不要な支出や税金の支払いを防ぐことは、会社経営における重要なポイントです。

まずは経費計上が節税につながる理由と、経費に計上できる費用と経費に計上できない費用について説明します。

経費計上すると節税につながる

経費を適切に計上すると、節税できる可能性があります。経費とは、会社が事業活動において利益を得るために直接必要な費用のことです。

法人税や所得税は、期中の所得に対して税率を掛けて税額の計算を行います。所得が多ければ多いほど、税金額は高くなるでしょう。

一方の所得は、売上から経費を差し引いて求めます。売上額が同じであれば、経費が多いほうが、所得は減少して税金も少なくなる、つまり節税につながる可能性があるでしょう。

計上できるはずの経費を適切に計上しない場合、本来支払う必要のなかった税金を支払うこととなります。

経費を適切に計上し節税効果を享受すれば、手元に残る利益を増やせるでしょう。経費の計上は、会社の財務戦略において重要な役割を果たすといえます。

経費に計上できる費用

経費に計上できる主な費用には、以下のようなものがあります。事業活動に直接関連するものであることが条件です。

経費に計上できる費用概要
人件費雇用に際して発生する給与や賞与など
消耗品費10万円未満の業務上必要な物品を購入した費用
交通費出張の際の旅費や通勤にかかる費用
通信費電話代やインターネットの使用料
地代家賃オフィスや店舗の家賃
水道光熱費オフィスや店舗で使用する水道代、電気代、ガス代など
租税公課固定資産税や自動車税、不動産取得税など

経費に計上できない費用

支出をしても経費に計上できず、課税される費用もあるため注意しましょう。

個人的な支出は、経費とならない費用です。たとえば、個人の飲食代やプライベートな旅行費用などは、事業の収益に直接結びつかないため経費にはなりません。

次に、法人税や所得税も事業の利益に対して課されるものであり、経費として計上できない費用です。

また、未使用の事務用品費や余剰在庫も経費にできない支出となるため注意しましょう。

経費精算と消費税の関係

続いて経費精算と消費税との関係を説明しましょう。

消費税は買い手である消費者が商品やサービスを購入するときに支払う税金で、代金を受け取った事業者が消費者に代わって納税します。

一方で、事業者は仕入れの段階で代金を支払うときにも別途消費税を支払っており、適切に処理しないと正しく納税が行われません。

正しく消費税を処理するために必要な仕入税額控除と、消費税の納税が免除される免税事業者になる条件について説明します。

仕入税額控除により二重課税を解消する

事業者は商品やサービスを販売した場合、仕入税額控除により二重課税を解消する必要があります。

仕入税額控除とは、事業者が仕入れた商品やサービスに対して支払った消費税を、売上にかかる消費税から差し引くことです。

仕入税額控除を適切に行うことで、事業者が仕入れのときに支払った消費税が控除され、最終的に消費者が負担する消費税のみが納税されます。

仕入税額控除を行わないと、本来の消費税に加えて仕入れにかかった消費税を納税することとなり、不要な税金の支払いが発生してしまうでしょう。

条件を満たせば免税事業者になる

条件を満たすことで、消費税の納税義務が免除される免税事業者になれます。免税事業者になる条件とは、前々年度の課税売上高が1,000万円以下であることです。

免税事業者は消費税の納税義務が免除され、経費精算においても消費税を考慮する必要がなくなります。受け取った消費税を納付せず、そのまま売上として処理できます。

ただし、免税事業者であっても、仕入れや経費にかかる消費税は支払う必要があるでしょう。このため免税事業者であることが必ずしも有利とは限りません。

特に、設備投資が多い事業者にとっては、課税事業者として仕入税額控除を適用するほうが有利な場合もあります。

立替経費は課税対象?

次に立替経費が、所得税の課税対象にならないことについて解説します。

会社が支払うべき費用を従業員が一時的に立て替えた場合、精算時には支払った金額がそのまま従業員に返ってくるでしょう。

業務上使用する文房具や書類のコピー代、さらには移動の際の交通費など、日常業務で立替払いが発生することはよくあります。正しい税金の扱いを確認しましょう。

立替経費とは

従業員が業務に必要なものを購入する際、一時的に個人の資金で支払う場合があり、これを立替経費といいます。

たとえば、出張先で急遽必要になったパソコン周辺機器や顧客に送付するサンプル品など、業務に必要な物品の購入費用を、従業員が一旦立て替えて購入したケースなどです。この場合、消耗品費の立て替えとして扱われます。

また業務上の移動でタクシーを利用したときには、タクシー代を立替払いすることも考えられるでしょう。この場合は交通費の立て替えとして扱われます。

立替経費は後日精算する必要があるため、領収書などの証拠書類を添付し、誰が何のためにいくら使用したのかを明確にする必要があるでしょう。

立替経費は非課税

立替経費は後日会社が従業員に対して精算を行い、返金されます。業務に直接関連する支出であるため、所得税の課税対象にはなりません。

従業員が立て替えた費用は、会社が負担すべきものであり、従業員の個人的な所得とはみなされないためです。従業員は、立替経費を精算することで、立て替えた金額をそのまま受け取れます。

ただし非課税であったとしても、高額な立替金は従業員の生活を圧迫する可能性があるため、注意が必要です。

旅費交通費は経費精算時に課税される?

続いて旅費交通費は経費精算時に課税されるかについて解説します。

従業員が遠方に出張する際に、交通費や宿泊費などの費用が必要となることがよくあるでしょう。

これらの旅費交通費は、会社が負担すべき業務上必要な費用であるため原則として非課税です。しかし、高額になりすぎると課税される恐れがあります。詳しく見ていきましょう。

旅費交通費とは

旅費交通費とは、出張のように通常の勤務地とは別の遠隔地に、従業員が移動する際に発生し、会社が負担する費用のことです。出張の定義や旅費に含まれる費用については、会社の規定で定めておきます。

具体的には、電車やバス、タクシーなどの移動手段のほか、飛行機や新幹線の費用などが対象です。また、出張先でホテルに泊まった場合の宿泊費も該当します。

また、規定で出張に対して日当や食費を支払うことが定められている場合は、旅費交通費として処理可能です。

旅費交通費は基本的に非課税

出張を命じられた際に支出した交通費や宿泊費は、会社が負担すべきものであり、従業員の個人的な所得とはみなされません。そのため、旅費交通費は所得税の課税対象にはならない、つまり非課税です。

従業員は会社が定める規定に従って経費精算を行うことで、所得税を支払うことなく、旅費交通費を受け取れます。

なお、経費として認められるためには、適切な証拠書類の提出が必要です。領収書やレシート、交通機関のチケットなどを保管し、経費精算時に提出することが求められます。

会社で規定が定められていない場合の日当や食費は、従業員の所得となり課税される可能性があるため注意が必要です。

旅費交通費が高額になると課税される場合も

旅費交通費は原則として経費計上可能で非課税ですが、必要以上に高額な場合は所得税の課税対象となる場合があります。

課税対象となるのは、業務上の必要性を超える豪華な宿泊施設や高額な交通手段を利用した場合などが該当するでしょう。

出張期間が必要以上に長期間である場合や、出張先での自由時間が多い場合なども、課税対象となる可能性があります。

特に、旅費交通費の上限が役員だけ異常に高く、従業員とのバランスが悪い場合や、同業他社の基準と比較してかけ離れている場合は注意が必要です。

通勤交通費は経費精算時に課税される?

通勤交通費は経費精算時に課税されるかについて説明します。

従業員が会社へ出勤する際に発生する通勤交通費は、日々発生する会社経営にはなくてはならない費用と言えるでしょう。

原則として通勤交通費は非課税ですが、通勤方法によりルールが異なります。次の3つの手段に分けて、通勤交通費の取り扱いについて見てみましょう。

  • 公共交通機関を利用する場合
  • 自家用車やバイクを利用する場合
  • 通勤定期を利用する場合

公共交通機関を利用する場合

公共交通機関を利用する場合の通勤交通費は、基本的に所得税は非課税です。バスや電車の運賃などが該当します。

公共交通機関を利用しての通勤費用は、従業員が業務を遂行するために必要な支出とみなされるため、月額15万円までは所得税の課税対象にはなりません。

通勤交通費を非課税とするためには、通勤経路が合理的であり、かつその経路に基づいた費用であるという条件を満たす必要があります。

自家用車やバイクを利用する場合

自家用車やバイクを利用する場合の通勤交通費は、基本的に所得税は非課税です。

通勤にかかるガソリン代や駐車場代などが該当し、従業員が業務を遂行するために必要な支出とみなされるため、所得税の課税対象にはなりません。

また通勤にあたり高速道路のような有料道路を利用する合理的な理由がある場合は、有料道路代も月額15万円を上限として経費に認められ、非課税扱いです。

通勤定期を利用する場合

通勤定期を利用する場合の通勤交通費も、基本的に所得税は非課税です。

通勤定期券の購入費用は、従業員が業務を遂行するために必要な支出とみなされるため、所得税の課税対象にはなりません。

通勤定期券が非課税となるためには、通勤経路が合理的であり、その経路に基づいた費用であることが条件です。

なお、通勤定期券が非課税となる上限額も月額15万円までで、超えると課税対象となるため注意しましょう。

接待交際費は経費精算時に課税される?

ビジネスシーンでは取引先との良好な関係を築くために、さまざまな費用が発生します。

たとえば、関係強化を目的とした接待交際費や、お祝い事や不幸があった際に発生する冠婚葬祭費などです。

接待交際費は会社の規模によって一定額までは経費として認められる場合がありますが、基本的には法人税の課税対象として扱われます。

一方、冠婚葬祭費は、原則として全額経費として認められ、法人税は非課税です。

ここからは接待交際費と冠婚葬祭費の税務上の取り扱いについて、詳しく解説します。

接待交際費は基本的に課税対象

接待交際費は、企業が取引先や顧客との関係を強化するために支出する費用です。具体的には、取引先との会食費用やお中元などの贈答品の費用、ゴルフや旅行に招待した場合の費用などが含まれます。

接待交際費は、会社の営業活動の一環として支払うことは認められますが、税務上は基本的に経費として認められず、法人税の課税対象です。

ただし、一定の要件を満たせば、接待交際費の一部を経費計上できます。具体的には資本金1億円以下の法人は、年間800万円まで、または交際費のうち接待を伴う飲食代の50%までのいずれかの金額が非課税です。

また、資本金1億円超100億円以下の法人は、交際費のうち接待を伴う飲食代の50%までを非課税とできます。

資本金100億円超の法人については、接待交際費全額が課税対象です。

なお、1人当たり1万円以下の会食費用は接待交際費ではなく、会議費として扱うことが可能で、法人税は課税されません。

海外のクライアントを接待する場合

海外のクライアントを接待する際には、通常の接待交際費とは異なる税務上の取り扱いが適用されることがあります。

具体的には、日本国外の飲食店で海外のクライアントを接待する場合、その費用は消費税の課税対象外です。

接待飲食費は基本的に消費税の課税対象であり、国内における接待飲食費には10%または8%が課税されます。

たとえば、国内の料亭や居酒屋で接待する場合、外食として10%の消費税が適用されるでしょう。一方、社内でお弁当やお茶を提供する場合は、軽減税率が適用され、8%の消費税率です。

冠婚葬祭の費用

冠婚葬祭に際して支出した費用は、接待交際費とは異なり、原則経費として認められます。冠婚葬祭の費用とは、取引先や顧客の結婚式や葬儀に出席する際の祝儀や香典、花輪代などが該当するでしょう。

冠婚葬祭は社会的な儀礼であり、企業がその費用を負担することは社会通念上当然とみなされるため、経費として計上できます。

ただし、冠婚葬祭の費用を損金に算入するためには、いくつかの要件を満たす必要があるでしょう。

費用を支出した相手方が取引先や従業員など、会社と一定の関係がある者であることが必要です。また、費用の金額が、社会通念上、妥当な範囲内であることも求められます。

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経費精算の税金を理解すれば、適切な節税が可能に

経費精算では、支出の内容に応じて課税される費用と非課税となる費用があります。具体的には、次の費用は原則として経費と認められるため非課税です。

  • 立替経費
  • 旅費交通費
  • 通勤交通費
  • 冠婚葬祭費

一方、接待交際費は原則として課税対象で、資本金の条件を満たす会社のみ一定額までの経費算入が認められます。

経費精算での税金の取り扱いを正しく理解して、適切な処理を行うとともに、節税にもつなげましょう。


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