- 更新日 : 2024年8月8日
督促手数料の仕訳と勘定科目の解説
住民税の納付が遅れた場合、地方自治体から督促手数料を請求される場合があります。督促手数料は経費(損金)として処理してもよいものなのか、判断に迷われる方もいるでしょう。結論をいうと、督促手数料は損金に算入しても問題ありません。今回は督促手数料の法的な性質や仕訳例、勘定科目などを紹介します。
督促手数料とは
督促手数料は、期限までに市税等を納めないときに負担する手数料です。期限までに納税が確認できない場合、市区町村は納税義務者に対して督促状を発行します。督促手数料は、この督促状の発行に要する費用のことです。
法人経営において、督促手数料が生じる代表的なケースには住民税の特別徴収があります。6月に住民税額が切り替わることを忘れて以前の額で納付してしまうと、必要な税額が期限までに納められない場合があり得ます。
督促手数料は納付額が決まっており、1件当たり100円を納めなくてはなりません。地方税法では、地方税の納期限到達後20日以内に督促状を発行するルールです。
納期限までに市税等を納めない納税義務者は、督促手数料のほかに、遅延日数に応じた延滞金の納付も合わせて迫られる場合があります。
また、督促手数料は非課税です。「国等が行う一定の事務にかかる役務の提供」に含まれており、非課税取引に該当するためです。
督促手数料の仕訳と勘定科目
督促手数料の仕訳に使用する勘定科目には「租税公課」「支払手数料」の2パターンが考えられます。
行政手数料なので公課(国や公共団体が取り立てる金銭)を記録する租税公課や、取引における手数料や費用を記録する支払手数料が適しています。
一概にどちらがよいといえるものではありませんが、混乱が生じないよう一度決めた勘定科目は途中で切り替えずに使い続けたほうがよいでしょう。
仕訳例
30,000円の住民税を滞納し、役所から6,000円の延滞金と100円の督促手数料を請求された
延滞金は損金に算入できませんが、督促手数料は損金算入が可能です。延滞金と督促手数料は同時に納める場合があるため、仕訳時に混同してしまわぬよう区別が必要です。摘要欄に延滞金や督促手数料と記載すれば良いでしょう。
督促手数料は損金の額に算入できる?
督促手数料は損金に算入できるため、経費に含めることが可能です。一方で納税が遅れた場合に支払う加算税、延滞税、追徴金等は損金には算入できません。
損金に算入できないとは、所得税の算出において、経費計上は不可となることを意味します。つまり督促手数料は税負担を軽減する効果を有していますが、加算税や延滞税、追徴金にはこのようなメリットはありません。
損金に算入できない租税公課の種類
- 法人税、地方法人税、住民税(都道府県民税と市町村民税)
- 各加算税・加算金、延滞税・延滞金
- 罰金・科料
- 所得税、復興特別所得税、外国法人税
上記の租税公課が損金に含まれない理由は、制裁としての意味を持っているためです。損金への算入を認めるとペナルティの効果が薄まり、本来の目的から逸脱してしまいます。
一方で督促手数料はあくまで行政手数料の一種であり、ペナルティ的な意味合いは持っていません。したがって損金に算入しても問題はなく、実際にそうした処理が認められています。
法人が納めるべき延滞金でも、申告期限の延長の特例を受けた法人に課された期限延長分の利子税は損金に含めることが可能です。罰金ではなく利息の扱いを受けるため、損金不算入の対象から除外されています。
なかには、延滞税や追徴金でも損金に含められるものもあります。労働保険料(雇用保険料や労災保険料)や社会保険料(健康保険料や厚生年金保険料)にかかるものは、損金に算入しても問題ありません。
督促手数料は損金に算入しても問題ない
督促手数料は納期限までに地方税を納めない場合において、督促状の発行に要する手数料です。住民税の特別徴収で、納付額の変更に気付かずに、以前の金額を納付してしまったケースが想定されます。
会計処理としては「支払手数料」または「租税公課」勘定のいずれかを使用します。法人会計において、督促手数料は損金への算入が可能です。
一方で延滞税や加算金は損金に含められないため、両者が課される場合は混同してしまわぬよう仕訳時に注意が必要です。
よくある質問
督促手数料とは?
住民税の特別徴収等、税金を納期限までに納めない場合、行政庁から送付される督促状の発行に要する費用です。詳しくはこちらをご覧ください。
督促手数料は損金算入できる?
督促手数料は督促状の発行に要する手数料で、支払の遅延に対する制裁としての意味を持たないため損金算入できます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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