- 更新日 : 2024年9月19日
地方法人税はなぜ創立された?その理由と申告・納付方法について解説
地方法人税とは、平成26年施行された税制度です。
この税制度の創設の理由と申告方法、納付の仕方について、基礎知識をご紹介します。
地方法人税はどんな税制度?
地方法人税と聞くと、地方に納める税金のように聞こえますが、この税金は国に納めるものです。法人が地方法人税創設以前に地方公共団体に収めていた法人住民税法人税割のうち、その一部を国に納税するように変更されました。
地方法人税として徴収した税金を国から各自治体に分配する地方交付税の財源にし、自治体間で税収にバラつきが生まれないようにする目的で設置されました。
地方法人税が創設されたものの、あくまで法人住民税法人税割の一部の納付先が地方公共団体ではなく国に変更されただけにすぎません。トータルでは創設以前と変わらない税金を支払うことになり、法人の税負担が増えることはありません。
ベースはどちらも法人税額を基準としていますので、プラスマイナスして納税額は変わりません。
その後、地方法人税の税率改正によって、地方法人税の税率が5.9%引き上げられ10.3%となり、法人住民税法人税割は税率が5.9%引き下げられました。改正後の税率は、令和元年10月1日以降に開始する事業年度から適用されています。
地方法人税はいつ、いくら納めるのか
地方法人税は、基準となる法人税額の10.3%です。地方法人税額を算出するには、法人税額の計算が必要です。
以下は、地方法人税の計算のもとになる普通法人(株式会社など)の法人税の税率です。
区分 | 税率 | ||
---|---|---|---|
資本金1億円以下の法人など | 課税所得年800万円以下の部分 | 適用除外事業者でない事業者 | 15% |
適用除外事業者 | 19% | ||
課税所得年800万円を超える部分 | 23.2% | ||
上記以外の普通法人 | 23.2% |
【計算例】
資本金300万円で大法人と完全支配関係のない中小企業の課税所得が2,000万円だった場合。(法人税額控除などは特に発生していないものとする。)
法人税額:800万円×15%+(2,000万円-800万円)×23.2%=3,984,000円
地方法人税額:3,984,000円×10.3%=410,300円(100円未満切り捨て)
地方法人税は税務署に確定申告書を提出して納付する
地方法人税は申告納税方式であるため、事業者が地方法人税の額を計算して確定申告を行い、確定申告書に記載の地方法人税額を納付します。
地方法人税の確定申告書は、法人税申告書の別表一や別表六の下部にあります。そのため、企業が法人税の確定申告を行ったら、同時に地方法人税の確定申告も完了する仕組みです。
法人税と地方法人税は確定申告書が同一のため、確定申告書の提出期限も、確定申告書に記載の税額の納付期限も同じです。原則として、事業年度終了の日から2カ月以内に、確定申告書を提出して納付を済ませます。地方法人税は、税務署や金融機関の窓口のほか、インターネットバンキングなどからも納税できます。
地方法人税の勘定科目
地方法人税の勘定科目は、「法人税等(損益計算書の表示科目は「法人税、住民税および事業税」)」です。地方法人税の計上をした時点で未払いの場合は、借方(振替伝票の左側)に費用項目である「法人税等」、貸方(振替伝票の右側)に負債項目である「未払法人税等」をもってきて仕訳行います。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
法人税等 | ×××円 | 未払法人税等 | ×××円 |
地方法人税の申告と納付について正しく知ろう
地方法人税は、地方税ではなく国税です。税金が創設された意義については、知っておく必要があるでしょう。税金は国民や地域の住民のために使われるものです。どこに納める税金で、何に使われる税金なのか、納める者として、仕組みを理解してしっかり納付したいものです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
変動対価とは?具体例や算定方法をわかりやすく解説
値引きやリベート、ペナルティなどが絡む取引では、最終的な取引価格が変動する可能性があるため、どのような会計処理をすればよいのか頭を悩ませる方もいるでしょう。こうした状況で重要になるのが「変動対価」という概念です。 この記事では、新収益認識基…
詳しくみるクラウド会計ソフトとは?コスト、特徴、メリット・デメリット等を解説
会計業務の効率化のために、クラウド型会計ソフトの導入を検討してみましょう。 クラウド型会計ソフトはデータがクラウドに保存されるため、場所を選ばずに作業ができます。また、常に最新の状態にアップデートされたソフトを使うことができ、税理士との共有…
詳しくみる会計ソフトのランニングコストはどんなものがある?削減するには?
個人・法人を問わず、経営を行っていく上で決して無視できないのが、帳簿や会計の存在です。昨今では情報データの多さやその利便性から会計ソフトを使用して会計処理を行うことが当たり前になっています。 ゆえに会計ソフトのランニングコストは、経営上軽視…
詳しくみる会計監査っていつ何をやる?目的や担当者が準備すべき資料を解説
会計監査は、会社法の要件を満たした大会社が受ける監査のことです。 特に監査を行う人を会計監査人といいます。 では、会計監査はどのようなことを行うのでしょうか。そのために経理担当者はどのような準備が必要になるのでしょうか。 この記事では具体例…
詳しくみる年商と年収の違いとは?中小企業が信頼できる取引先を見分けるために
メディアで企業の規模を表す際によく用いられる「年商」ですが、これが何を意味するかはご存知でしょうか。 年商が1億円を超えているからといって、必ずしもその企業がそれだけの利益をあげているとは限りません。今回は、「年商」の意味と「年収」との違い…
詳しくみる税務調査対象に選ばれにくい申告のポイント
事業を行っている法人や個人などの納税者を対象に、税務署や国税局による税務調査が行われることがあります。対象に選ばれると調査のための準備をしなくてはならないため、通常の業務への影響も考えられるでしょう。こうした税務調査対象に選ばれにくくするた…
詳しくみる