- 更新日 : 2024年12月24日
電子帳簿保存法の検索要件とは?不要な場合も解説
電子帳簿保存法に対応する上で、満たすべき要件のひとつに「検索要件」があります。検索要件とは、取引情報や帳簿、書類をデータ化する際に、必要な書類を発見する機能の条件です。
本記事では、電子帳簿保存法の検索要件に対応すべき分野や、対応の方法をご紹介します。
対応する必要がないケースもまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
電子帳簿保存法において検索要件の指定がある分野3選
ここでは、電子帳簿保存法において検索要件が指定されている分野である「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引」の3つについて解説します。
電子帳簿等保存
電子帳簿等保存において、検索要件への対応が求められるのは「過少申告加算税の軽減措置」を受ける場合に限られます。軽減措置を受けない場合は、検索要件への対応は義務化されていません。
軽減措置を受ける場合は、次の検索要件を満たして「優良帳簿」の認可を受ける必要があります。
- 年月日・金額・取引先名の条件で検索できる
- 検索において、取引年月日・金額の範囲を指定できる
- 検索の際、任意の記録項目を2つ以上組み合わせられる
税務職員の要請に応じて、データを引き渡せる場合、2・3番の対応は不要です。上の条件を満たすことで、申告漏れの際に課される「過少申告加算税」を減額できます。
スキャナ保存
スキャナ保存の検索要件も、電子帳簿等保存と同じく、3項目あります。
- 年月日・金額・取引先名の条件で検索できる
- 検索において、取引年月日・金額の範囲を指定できる
- 検索の際、任意の記録項目を2つ以上組み合わせられる
要件のうち、対応が義務なのは1番のみです。2番・3番は、税務職員によるデータのダウンロード要請に応じられる場合は、免除されます。
2022年1月における電子帳簿保存法の改正以前は、1〜3番すべての対応が必須でした。しかし、企業の対応が追い付かない現状を考慮して、要件が減らされています。
電子取引
電子取引の保存も「年月日・金額・取引先名の条件」の対応が義務化されています。ダウンロードの求めに応じてデータを引き渡せるなら「検索範囲指定」「2つ以上の検索指定」への対応は必要ありません。
電子帳簿保存法では従来、電子取引の内容を印刷し、紙媒体で保存することが認められていました。しかし、2022年1月の改正により、電子データで送受信した取引情報は、原則データで保存するルールに変更されています。
電子帳簿保存法に対応する必要がない場合2選
ここでは、電子取引データ保存への対応が必要ないケースについて解説します。
検索機能が不要なケース
次のケースに該当する場合、検索要件への対応が不要になります。
- 前々年(前々事業年度)の売上高が5,000万円以下(※基準期間における売上高については、消費税および地方消費税の額を除いた税抜金額で判断)
- 電子的に受け取った書類を印刷して、取引年月日や取引先ごとに整理した状態で提示、提出できる
上2つのいずれかを満たせば、検索要件を満たす必要がありません。ただし、税務職員からダウンロードの要請が来た場合、速やかに対応する必要があります。
また、閲覧用機器の設置や、タイムスタンプの付加などの対応は必須です。紙媒体で資料を保管してあるからといって、元データを破棄しないよう注意しましょう。
すべての要件対応が不要なケース
次の条件に該当する企業は、電子帳簿保存法における、すべての要件対応が不要です。
- 所轄税務署長が、要件を満たす形での電子取引データの保存ができない相当の理由があると認める(事前申請不要)
- 税務調査などの際、電子データのダウンロードの求めと、データを印刷した書面の提示および提出の求めにそれぞれ応じられる
文面中の「相当の理由」とは、電子データの管理要員不足や、システム選定の対応が遅れているなどが考えられます。
電子帳簿保存法の検索要件を満たす3つのポイント
電子帳簿保存法の検索要件は、次の3つです。
- 年月日・金額・取引先名の条件で検索できる
- 検索において、取引年月日・金額の範囲を指定できる
- 検索の際、任意の記録項目を2つ以上組み合わせられる
上記の検索要件を満たす対応について解説します。
会計システム・その他管理システムを導入する
電子帳簿保存法に対応する、もっとも簡単な方法が、会計システムのようなクラウド製品等の導入です。検索要件に限らず、電子帳簿保存法の要件を自動で満たしてくれるため、導入や確認の工数を削減できるでしょう。
システム選定の際は、次のポイントに着目してください。
- 「JIIMA認証」の有無
- 扱えるデータの種類
- 口座・クレジットカードとの連携
- 作成できる書類の種類
- タイムスタンプ付与機能の有無
「JIIMA認証」とは、公益社団法人 日本文書情報マネジメント協会が管理する認証制度です。認証を取得した製品は、電子帳簿保存法の要件を満たせることが確認されています。
ファイル・フォルダの管理ルールを決める
システムを導入しない場合は、必要なファイルを速やかに発見できるよう、管理ルールを制定しましょう。管理の方法は、たとえば次のような内容が考えられます。
- ファイル名に日時・取引先名称・金額を入れる
- 取引相手ごとにフォルダを作成する
- 事務処理規程を策定する
社内で管理ルールが統一されていないと、検索性を確保できません。ファイル管理マニュアルを作成したり、社員教育を行ったりして、社内にルールを周知する必要があります。
表計算ソフトを利用する
データを手動で管理する場合、Excelのような表計算ソフトを用いて、索引簿を作るのがおすすめです。次の項目に沿って作成すると、内容の視認性が増し、検索性の向上が期待できます。
- ファイルに連番を振る
- 日付・金額・取引先の名称・種別を一覧で表示する
- フォーマットを工夫し、印刷時の外見を整える
上記の内容に従うことで、視認性の高い索引簿を作れるでしょう。しかし、件数が増えるとファイルが重くなるため、適宜ファイルを分けることも必要です。また、誤操作によるフォーマットの崩れが起きないよう、操作マニュアルを作りましょう。
電子帳簿保存法の検索要件に対応するため、会計システムを導入しよう
電子帳簿保存法における検索要件は、次の3つです。
- 年月日・金額・取引先名の条件で検索できる
- 検索において、取引年月日・金額の範囲を指定できる
- 検索の際、任意の記録項目を2つ以上組み合わせられる
対応すべき要件は、分野によって異なります。対応を進める分野ごとに、抑えるべきポイントを把握しておきましょう。
検索要件に対応する方法のうち、もっとも費用対効果が高いのは、会計システムなどのクラウド製品等を導入することです。システムの導入により、電子帳簿保存法の内容が変更されても、自動で対応できます。制度の内容は、今後意図しない方向に変更される恐れもあるため、対応に工数をかけたくない方は導入を検討してみましょう。
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