- 作成日 : 2024年11月20日
バーチャル口座とは?仕組みやメリット・デメリットをわかりやすく解説
バーチャル口座とは、実体のない仮想的な銀行口座のことです。顧客や注文ごとに異なる口座番号を割り当てることで入金状況を個別に管理できるため、入金確認や消込処理の効率化に加えて、回収漏れなどの把握にも役立ちます。本記事では、バーチャル口座の仕組みや利用方法、メリット・デメリットなどについて解説します。
目次
バーチャル口座とは
バーチャル口座とは、通常の銀行口座とは異なり、実体のない仮想的な銀行口座のことです。
企業が入金管理を効率化するために使用する口座であり、顧客や注文ごとに異なる口座番号(バーチャル口座番号)を割り当てることで、入金状況を個別に管理します。取引と入金を紐づけて管理できるため、企業は入金確認や消込処理を自動化することも可能です。
バーチャル口座は、ECサイトやサブスクリプション型のサービスを提供する事業者など、不特定多数の顧客を対象とする業種などで活用されるケースが多いです。
バーチャル口座の仕組み
バーチャル口座では、顧客や注文ごとに異なる口座番号を生成し、割り当てる仕組みが採用されています。
たとえば、ある企業が顧客A、B、Cにサービスを提供する場合、それぞれの顧客に異なる3種類の口座番号を割り当てることで、顧客別の入金状況を容易に識別できます。
このように、企業は入金された口座から顧客や取引を特定できるため、売掛金の消込処理が迅速化され、相手先の確認作業や債権管理の手間を最小限に抑えることが可能です。
なお、バーチャル口座に入金があった場合には、金融機関ごとの締め日に基づいて、事業者があらかじめ指定した通常の銀行口座に振り込まれます。
バーチャル口座の作り方
バーチャル口座は、企業が取引している金融機関で作成できます。
まず、バーチャル口座の発行サービスを提供する金融機関などに申し込みを行います。契約を締結したあと、必要な情報を登録して設定を行うことで、各注文や顧客に対応したバーチャル口座番号が生成され、口座の利用を開始できます。
金融機関によっては、企業のニーズに合わせ、複数のバーチャル口座をまとめて発行する方法や、一定期間ごとに新たな口座を自動生成するサービスも提供されています。
バーチャル口座の利用方法
バーチャル口座の運用方法には、「注文ごとに取引口座を割り当てる方法」と「顧客ごとに取引口座を割り当てる方法」の2種類があります。
企業の取引状況や業務フローに応じて、適切な運用方法を選択することで、入金確認や消込処理の効率化に取り組みましょう。
注文ごとに取引口座を割り当てる
注文ごとにバーチャル口座を割り当てる方法は、不特定多数が利用するECサイトなどの業種に効果的な運用方法です。
この方法では、顧客が商品やサービスを注文するたびに、専用のバーチャル口座番号が発行され、その注文に対する振込先として設定されます。注文ごとに異なるバーチャル口座が発行されるため、企業は各取引と入金を紐づけて管理することが可能です。
特定の顧客が複数の注文を行った場合でも、各注文に対する支払いが別々のバーチャル口座に入金されるため、取引ごとの入金確認を効率化できます。
顧客ごとに取引口座を割り当てる
顧客ごとに取引口座を割り当てる運用方法は、特定の顧客と取引を反復するようなBtoBビジネスやサブスクリプション型の事業形態に適しています。
この方法では、顧客ごとに1つのバーチャル口座番号を設定するため、特定の顧客からの入金については、すべて同じ口座に振り込まれます。顧客が複数回にわたって振込を行う場合でも、同じ口座番号を使用できるため、取引先ごとの入金履歴を一元的に管理できます。
企業としては、入金状況を顧客別に管理しやすくなるため、取引先ごとの債権管理を効率化することが可能です。
バーチャル口座の運用の流れ
バーチャル口座の運用では、口座番号の割り当てから入金の確認・消込処理を行うまでが一連の業務フローとなります。
具体的には、以下のような流れに沿ってバーチャル口座を運用しましょう。
- 口座番号の割り当て
バーチャル口座の運用は、まず顧客や注文ごとに専用のバーチャル口座番号を割り当てることから始まります。企業がバーチャル口座を導入し、顧客または注文ごとに異なる口座番号を発行します。
顧客が支払いを行う際には、それぞれのバーチャル口座番号が入金先口座の情報として利用されます。 - バーチャル口座番号の通知
割り当てられたバーチャル口座番号は、取引金額を請求する際に、企業から顧客に対して通知します。
通知方法には、請求書への記載やメールによる案内など、企業の運用フローに応じたさまざまな方法があります。 - 入金の確認
顧客が指定された口座番号に基づいてバーチャル口座に支払いを行うと、入金状況がリアルタイムで企業へ通知されます。
バーチャル口座では、入金データを顧客や注文に紐づけて管理するため、企業の経理担当者は入金された口座の情報に基づいて、入金確認を効率的に行うことが可能です。 - 入金消込
顧客からの入金を確認したあとは、売掛金の消込処理を行います。
消込とは、入金額と請求情報を突き合わせて、代金の回収が完了した債権(売掛金)を消し込む作業のことです。
バーチャル口座を利用することで、債権金額の消込処理を自動化できるため、回収漏れとなっている債権の存在にもいち早く気づくことができます。
- 口座番号の割り当て
バーチャル口座の活用がおすすめのビジネスは?
バーチャル口座は、特に不特定多数の顧客や取引先からの入金を効率的に管理したい場合に最適です。
具体的には、以下のような業種においてバーチャル口座を活用することで、入金確認や消込処理の負担軽減に効果的です。
ECサイトや通販業
ECサイトや通販業では、不特定多数の顧客との取引が頻繁に発生するため、顧客ごとの入金状況を的確に管理することは容易ではありません。
そこでバーチャル口座を活用することによって、注文ごとに異なる口座番号を割り当てることができるため、入金確認の自動化が可能です。これにより、顧客数が拡大した場合でも入金先をスムーズに特定でき、未回収債権の確認や督促も円滑に行えます。
サブスクリプションサービス
定期的な支払いが発生するサブスクリプション型のビジネスでも、バーチャル口座の利用は効果的です。
顧客ごとに専用のバーチャル口座を設けることで、一定サイクルで行われる支払いが同じ口座に入金されるため、経理担当者は手間をかけずに入金状況を把握できます。支払いミスや遅延が発生しても迅速に特定でき、顧客へのフォローも容易になるでしょう。
BtoB取引や企業間の受発注業務
企業間の取引においてもバーチャル口座は有用です。複数の取引先からの支払いがある場合、それぞれの取引先に個別のバーチャル口座を割り当てることで、取引先ごとの入金を簡単に識別できます。
特に大量の発注や取引が頻繁に行われる場合には、入金確認や消込処理がスムーズになり、経理担当者の負担軽減にも効果的です。
また、取引先が増えても柔軟に対応できるため、事業のスケールアップにも対応しやすいというメリットもあります。
不動産管理業
複数の賃貸物件をまとめて管理する不動産管理業では、毎月の家賃について入居者ごとの入金状況を適切に管理しなければならず、消込処理にはまとまった工数を必要とするケースも少なくありません。
そのような場合にバーチャル口座を導入することで、入居者ごとに異なる口座番号を割り当てることができるため、消込処理の大幅な工数削減につながります。また、家賃の滞納が発生した場合にも、いち早く察知することが可能です。
バーチャル口座の活用がもたらすメリット
顧客や取引ごとに入金を管理できるバーチャル口座を活用することで、さまざまなメリットが期待できます。
バーチャル口座の活用を検討する際には、以下のようなメリットを理解したうえで、導入による効果を検証しましょう。
消込作業の負担軽減
バーチャル口座の導入により、消込作業が大幅に効率化されます。
従来の債権管理では、通常の預金口座に振り込まれた金額について、1件ずつ入金先を確認し、注文内容や請求金額と照合する必要があり、特に取引量や顧客数が多い企業では、消込作業の負担も拡大します。
そのような場合にバーチャル口座を利用することで、入金があった口座によって自動的に顧客や取引を特定できるため、入金確認や消込作業を自動化できます。
消込処理が自動化されることで、経理担当者の作業負担を大幅に軽減できるだけでなく、ヒューマンエラーの削減にも効果的です。
督促や入金間違いに関する発信業務の迅速化
バーチャル口座の導入によって、未入金や入金間違いがあった場合にもスピーディーに対応できるようになります。
手作業による入金確認や消込処理には手間がかかるため、支払遅延や金額誤りが生じた場合でも、その事実を把握して顧客に通知するまでには、まとまった日数を要するケースが多いです。
それに対し、バーチャル口座を活用することで、入金情報をリアルタイムで捕捉できるため、回収漏れや金額の間違いも即座に把握でき、顧客に対する督促や訂正の依頼をスピーディーに発信することが可能です。
商品発送までのリードタイム削減
商品代金の入金を確認してから商品を発送する場合には、入金確認がスムーズに行われるほど、商品発送までのリードタイムを短縮できます。
バーチャル口座を導入することで、注文ごとの入金状況をリアルタイムで確認できるため、入金から発送までのリードタイムを削減でき、顧客満足度の向上やリピート購入にもつながりやすくなります。
バーチャル口座のデメリット
バーチャル口座は多くのメリットをもたらす一方で、主にコスト面におけるデメリットもあります。
導入を検討する場合には、自社における費用対効果をきちんと分析して、発生するコスト以上のメリットを享受できるかどうかを慎重に検証することが大切です。
導入費用や決済手数料がかかる
バーチャル口座を導入する場合には、導入時の初期費用や月額利用料が発生します。金融機関によっては、導入費用を無料としている場合もありますが、月額利用料については、月々数千円程度発生するケースが多いです。
また、バーチャル口座を発行するごとに手数料が発生するケースもあり、取引量や顧客数が多い企業にとっては、運用コストの負担が拡大する可能性もあります。
さらに、通常の振込手数料に加えて、決済手数料が発生する点にも注意が必要です。入金ごとに数十円程度の決済手数料の負担が追加で生じるため、企業における取引コストの増加につながります。
バーチャル口座の開設数に上限はある?
バーチャル口座の開設数には、提供する金融機関やサービスプロバイダーごとに上限が設定されているケースが多いですが、なかには上限を設けていない金融機関もあります。
さらに、上限が定められている場合には、契約プランやオプションによって上限数が増減する場合もあります。たとえば、基本プランでは数百口座の上限が設定されている一方で、より上位のプランでは数千口座まで開設できるケースもあります。
必要なバーチャル口座の数については、企業ごとの取引量や顧客数によって異なるため、導入を検討する際には、自社が必要な口座数を開設できるサービスを選ぶことが重要です。
必要な口座数が多い場合には、事前に金融機関へ問い合わせ、上限や追加オプションの有無について確認しましょう。
バーチャル口座に家族名義での振込みがあったらどうなる?
バーチャル口座については、顧客や注文ごとに専用の口座番号を割り当て、入金があった場合には、入金口座をもとに支払者を特定する仕組みです。
そのため、たとえば注文者が家族名義の預金口座から代金を支払った場合でも、割り当てられたバーチャル口座へ振り込まれていれば、適正に入金確認や消込処理を行うことができます。
また、同姓同名の顧客がいる場合でも同様に、顧客や注文ごとに異なる口座番号が割り当てられることとなるため、正しく入金管理を行うことが可能です。
バーチャル口座で消込処理を効率化しよう
バーチャル口座では、注文や顧客ごとに口座番号を割り当てることにより、請求情報と入金データを紐づけて管理することが可能です。
これによって、それぞれのバーチャル口座に入金があった場合には、個別に入金確認や消込処理を行うことができるため、回収漏れや滞留債権が生じた場合にも速やかに対応できます。
バーチャル口座については、ECサイトのように不特定多数の顧客と取引を行うビジネスモデルや、BtoBビジネスのように特定の顧客との取引を繰り返す業種において、特に大きな効果を発揮します。
入金確認や消込処理の負担に悩む企業にとって、課題解決のための有力な選択肢となるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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