- 更新日 : 2025年2月3日
信用調査(与信調査)とは?必要性や調査方法、結果の判断ポイントについて解説
信用調査(与信調査)とは、取引相手のことを知るための調査です。新規で取引を予定している相手に支払能力があるか知りたい場合などに実施することがあります。
信用調査は、反社会的勢力とのつながりの有無や、個人のクレジットカード延滞歴などを把握するためにも必要です。本記事では、信用調査の具体的な方法も解説します。
目次
信用調査(与信調査)とは
信用調査(与信調査)とは、取引相手のことを知るために実施する調査のことです。主に取引先の支払能力の確認や与信限度額(取引相手ごとに定める債権の上限額)の判定、反社会的勢力との関わりの有無のチェックなどで実施します。
信用調査を実施することで、新たにビジネスや取引を開始する際に生じる各種リスクを軽減できるでしょう。
英語では信用調査のことを「credit check」などと表現します。「credit」は主に「信用」を意味する言葉です。
なお、信用調査の代わりに「与信調査」という用語が使われることもあります。与信調査は、取引先の支払能力や信頼性のチェックに重点を置いた調査です。
信用調査が必要なケース
信用調査は個人に対して実施するか、企業に対して実施するかで必要なケースも異なります。それぞれ確認していきましょう。
個人の場合
会社が従業員を新たに採用する際や、従業員の昇進を考える際に、個人の信用調査が必要になることがあります。人間関係や生活に問題がある人物を雇ったり、昇進させたりすることで職場が乱れ、会社やほかの従業員に被害を与えることを防ぐことが主な目的です。
また、クレジットカード会社や金融機関が、カードの申込人や借入申込人に対して信用調査を実施することもあります。カードの支払い・借入金の返済が滞ることを防ぐことが主な目的です。
企業の場合
新たに取引を始める際に、企業に対して信用調査が必要です。取引開始後に代金未回収に陥ることがないよう、相手の支払能力をあらかじめ確認しておかなければなりません。
また、長年取引している得意先相手にも、信用調査することがあります。
とくに経営が悪化しているとの情報を耳にした場合や、経営者に不審な動きや言動がある場合などは、信用調査の結果次第で取引を見直さなければなりません。
なお、本記事では主に企業に対して実施する信用調査について解説しています。
なぜ信用調査を行うべきか
信用調査は、以下の目的で実施されます。
相手企業の信用度を調べるため
取引相手が信用できる企業なのか調べるために、与信調査を実施します。支払い能力が十分にある企業と取引しても、必ずしも期限までに代金が支払われるとは限りません。
期限までに代金が支払われないと、他社への支払いが遅れるなどキャッシュフローが悪化することがあります。自社の信用度が低くなる可能性があるだけでなく、手元資金が不足して取引の機会を失うことにもなりかねません。
潤滑なキャッシュフローを維持し、資金繰りによるトラブルを回避するためにも、取引相手が支払い期限を守る、信用できる企業なのか調べることが必要です。
相手企業の支払い能力を調べるため
支払い能力は、常に変化しています。取引を開始したときには十分な支払い能力があったとしても、経営不振などにより資金繰りが悪化し、取引代金の支払いが難しくなるかもしれません。
相手企業の支払い能力を定期的に調査することで、安心して取引できるようになります。相手企業の収入が安定しているか、取引代金を無理なく支払えるのか調べておきましょう。
いつ信用調査を行うべきか
リスク回避と安定した取引関係を維持するためには、適切なタイミングで与信調査を行うことが不可欠です。
この見出しでは、与信調査を実施すべきタイミングについて具体的なケースを詳しく解説します。適切なタイミングで与信調査を行うことで、予期せぬリスクを防止できます。
新規で取引するとき
新規取引を行うタイミングで与信調査を行うことが多いです。取引開始前に信用調査をすることで、予期せぬ支払遅延や未払いといったトラブルを事前に防げるからです。
与信調査で企業を調べておけば、信頼のおける取引先と安心してビジネスをすることができます。調査の中で取引先の過去の業績推移や市場での評判、さらには反社会的勢力とのつながりがないかどうかも確認することが求められます。
これらの情報を基に、自社の取引先としてふさわしいかどうかを判断し、与信限度額を適切に設定することができます。
取引額が増えるとき
取引額が増えるとき、与信調査を再度行う必要があります。取引額が増えると、相手の支払い能力や信用状況が影響を受けやすくなるためです。
これまでは100万円の取引を行っていた企業と、500万円の大口取引を始める場合、その企業の財務状況が変わっているかを確認することで、支払い遅延や不払いのリスクを低減できます。
取引を開始してからある程度の期間が経ったとき
定期的な与信調査を行うことで、最新の情報を収集し、取引リスクの低減が可能です。取引開始後の初期調査だけでなく、定期的な評価の見直しで、常に最新の信用情報を把握し適切な対策を講じることができます。金融機関や信用調査会社のデータベース、取引履歴、決算書などの情報を積極的に活用し、自社のリスク管理を徹底することが重要です。
必要に応じて、与信限度額の見直しやリスクヘッジの方法を検討することも欠かせません。定期的なチェックによって、取引先との健全なビジネス関係を維持し、キャッシュフローの安定化につなげることができるでしょう。
将来的に取引する可能性があるとき
将来的に取引を行う可能性がある場合にも、事前に与信調査を行うことがあります。こうした調査を先に実施して相手の信用状況を把握しておけば、予期せぬリスクを避けることができます。
加えて、前もって調査をしておけば取引の戦略策定に反映させることも可能です。取引を開始するタイミングで急遽与信調査を行うよりも、事前に調査を済ませておくことで、スムーズな取引開始が可能になります。
信用調査でわかること
信用調査でわかることは、主に以下の通りです。
- 企業の基本情報
- 最新の財務情報
- 信用履歴
- 各種取引銀行取引の履歴
- 業界内の評判
それぞれの概要を簡単に説明します。
企業の基本情報
信用調査を実施して、企業の基本情報を確認できます。主な項目は、以下のとおりです。
- 設立年
- 資本金
- 従業員数
- 事業内容
たとえば、設立年が古い老舗なのか、誕生したばかりの新興企業なのかなどが信頼度を測るうえでのひとつの指標になるでしょう。また、資本金や従業員数をチェックすることで、会社の規模もある程度確認できます。
最新の財務情報
信用調査で、最新の財務情報や業績推移も確認できます。主な項目は、以下のとおりです。
たとえば、売上総利益率(売上総利益 ÷ 売上高 × 100)や売上高経常利益率(経常利益 ÷ 売上高 × 100)を確認すれば、調査対象の収益性を分析できます。また、流動比率(流動資産 ÷ 流動負債 × 100)などの指標を計算することで、調査対象の支払能力も把握できるでしょう。
売上高経常利益率 = 経常利益 ÷ 売上高 × 100
流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100
信用履歴
個人を対象に信用調査を実施する場合は、信用履歴(クレヒス)も確認できます。信用履歴とは、個人のクレジットカードやローンの利用履歴と、それに基づく信用情報のことです。
信用履歴は、3つの信用情報機関で共有されています。信用履歴を確認して、対象者が過去に返済の延滞を起こしていることが判明すれば、慎重に取引の是非を判断しなければなりません。
各種取引
信用調査によって、対象会社の各種取引状況がわかることもあります。主な項目は、以下のとおりです。
- 取引金融機関(メインバンク)
- 借入状況
- 主要取引先
- 所有不動産
- 不動産の担保設定状況
たとえば、対象先の借入れが多すぎる場合、これ以上メインバンクから融資を受けられない可能性があります。また、調査対象の主要取引先の中に優良企業が含まれていれば、今後も安定した売上を維持しうると判断できるでしょう。
業界内の評判
信用調査で、対象会社や経営者の業界内の評判もわかります。
会社自体の業績がよくても、経営者の態度・行動などで悪い評判が出回っている場合は、注意が必要です。また、最近になって会社に対する顧客の評判が下降気味の場合も、取引に慎重になった方がよいでしょう。
信用調査を実施するメリット
信用調査を実施するメリットは、以下のとおりです。
未回収の売掛金を削減できる
信用調査を実施するメリットの一つは、未回収の売掛金削減につながる可能性があることです。
取引先が経営的に傾き、代金を回収できなくなる「焦げ付き」が発生すると、企業の損益に深刻な影響を与えます。焦げ付いた売掛金を補うためには、その金額に見合う売上を新たに獲得する必要があり、経営に大きな負担が生じかねません。
信用調査によって取引先の信用力を評価することで、リスクの高い取引を回避し、回収不能債権を防ぐ効果が期待できます。
キャッシュフローの悪化を防止できる
信用調査を実施することで、取引先の信用状況を把握し、支払い遅延や未回収リスクを軽減できる可能性があります。
取引先からの入金が滞ると、その資金を仕入れや経費の支払いに充てている企業では資金繰りが困難になり、キャッシュフローの悪化を招いてしまうでしょう。この状態が長引けば、仕入先への支払い遅延を引き起こし、自社の信用も損なってしまうおそれがあります。
そして最悪の場合、自社の資金繰り悪化によって取引先が連鎖倒産する危険性も否めません。信用調査を通じて健全な取引先を選定することは、キャッシュフローの安定を確保し、連鎖的な経営リスクを回避する有効な手段です。
架空会社による詐欺被害を防止できる
信用調査は、架空会社による詐欺被害を防ぐ手段としても重要です。新規の取引は利益を生む一方で、架空会社による取り込み詐欺のリスクも潜んでいます。
取り込み詐欺の典型的な手口は、少額取引で信用を得た後、突然大口の注文を持ちかけ、商品を受け取っておきながら代金を支払わないというものです。このような詐欺に遭うと、納品した商品の代金が回収できず、多額の損害を被るおそれがあります。
こうしたリスクを回避するためには、信用調査により取引先の信用や実態を確認することが重要です。
信用調査を実施するデメリット
信用調査を実施するデメリットは、以下のとおりです。
費用と手間がかかる
信用調査では、費用と手間がかかる点がデメリットとして挙げられます。
信用調査会社に依頼する場合、調査内容や依頼先に応じた費用が発生するため、事前にコストを確認しておかなければなりません。
また、信用調査は専門的な知識とスキルを必要とし、高度な情報分析が求められるため、実施には時間と労力が伴います。これらの負担は、とりわけ中小企業にとっては大きなハードルとなるでしょう。
取引の機会を逃すリスクがある
信用調査を行うためには、その性質上、一定の時間が必要です。そのため、迅速な取引が求められる場面では、調査に時間がかかることで、取引先のニーズに適時に対応できない可能性があります。
その結果、機会損失が発生し、重要なビジネスチャンスを逃すリスクも考えられます。特に競争の激しい業界や、スピード感が重視される取引においては、この点に十分留意する必要があるでしょう。
信用調査を実施しないとどうなるのか
ここでは、信用調査を怠ることで生じる可能性のある3つの主要なリスクについて詳しく解説します。
資金繰りが悪化する可能性がある
取引先の信用調査を怠ると、代金の未回収や回収の遅延となるリスクが高まり、自社の資金繰りに深刻な影響を与えるおそれがあります。ビジネスにおいての掛け売りは一般的ですが、支払能力が不十分な相手と知らずに取引を始めると、後々大きな問題に発展しかねません。
信用調査を実施しない場合、相手の経営状況を把握できないため、資金繰りの悪化に気づくのが遅れる場合があります。そのまま掛取引を続けて取引先が倒産した場合、売掛金を回収できなくなり、自社の資金繰りに重大な悪影響を及ぼしてしまう可能性があります。
このような事態を避けるためにも、新規取引先との取引開始前に適切な信用調査を行い、相手の支払能力や経営状況を確認することが極めて重要です。信用調査は自社の経営を守るための不可欠な手段といえます。
取引先を発端にトラブルが起こる可能性がある
信用調査を実施しない場合、後から取引先を発端とするトラブルが発生するリスクもあります。注意すべきなのは、反社会的勢力とのつながりです。
暴力や詐欺的手法を用いて経済的利益を追求する集団や個人と知らずに取引を始めてしまうと、社会的信用を失うだけでなく、所轄官庁からの処分や得意先との契約解除などの深刻な事態に発展するおそれがあります。
また、実体のないペーパーカンパニーとの取引も大きなリスクです。ペーパーカンパニー自体に違法性はありませんが、なかには犯罪や詐欺目的で設立されているケースもあります。このような会社と取引すると、余計なトラブルや代金未回収などの問題に発展するおそれがあるため注意しなければなりません。
さらに、情報管理がずさんな取引先との関係は、自社の機密情報の漏えいにつながる恐れがあります。これらの問題は取引開始後に発覚することが多く、その時点での対応は非常に困難です。
これらのリスクを回避するためにも、取引開始前に適切な信用調査を行うことが重要です。
連鎖倒産が起こる可能性がある
信用調査を実施しない場合、取引先の倒産によって売掛金を回収できず、自社のキャッシュ・フローが悪化してしまうリスクにも注意を払わなければなりません。
売掛金が未回収のままでも、仕入先や税金の支払いは期日通りに行わなければならず、手元の資金を切り崩すことで資金繰りが逼迫します。その結果、仕入先への支払いが遅延すれば、業界内での自社の信用が低下し、取引関係にも悪影響を及ぼしかねません。
さらに、資金繰りの悪化が続けば、最悪の場合は連鎖倒産を引き起こすリスクもあるため、信用調査を怠ることは大きなリスクとなり得ます。
信用調査の方法
信用調査の主な方法は、以下のとおりです。
- 社内調査(内部調査)
- 直接調査
- 外部調査
- 依頼調査
それぞれの内容について、解説します。
社内調査(内部調査)
社内調査(内部調査)とは、自社で調査を実施することを指します。本格的な信用調査を依頼する前に実施することが一般的です。
たとえば、すでに自社と取引がある会社が対象の場合、取引履歴や取引内容の確認が社内調査の具体例として挙げられます。また、自社のほかの部署の同僚に、対象先について知っている情報がないか確認することも方法のひとつです。
直接調査
直接調査とは、対象先に直接コンタクトをとる方法を指します。対象先のオフィスを訪問する、電話やメールなどでヒアリングするなどが具体例です。
電話やメールなどの手段を使えば、距離が離れている対象先についても手軽に調査できます。ただし、直接オフィスを訪問した方が、会社の雰囲気や従業員の働き方などを把握できるでしょう。
なお、直接調査で相手に不快な思いをさせたり、不信感を抱かせたりすると、取引中止・交渉停止を招きます。実施する際は、慎重かつ丁寧に対応しましょう。
外部調査
外部調査とは、自社や調査対象の会社以外から情報を取得する方法を指します。具体的な方法は、主に以下の3つです。
- 検索調査
- 官公庁調査
- 側面調査(裏付け調査)
検索調査では、インターネットで対象先のホームページを確認したり、データベースサービスで対象先を検索したりします。また、対象先の求人内容も、判断材料のひとつです。
官公庁調査では、対象先の所轄法務局で登記事項証明書(商業・法人登記や土地・建物登記)を確認します。たとえば、対象先の土地・建物の登記を確認すれば、抵当権が設定されているのかなどを把握できるでしょう。
側面調査では、対象先からヒアリングした情報が正しいのか確認します。対象先の取引金融機関や取引先、入居するビルのオーナーなどが主な情報入手先です。
依頼調査
依頼調査では、主に信用調査会社に対象先の調査を依頼します。信用調査会社とは、依頼に基づき、対象先に関する報告書を作成する会社のことです。
費用は、信用調査会社や、発行する報告書の枚数などによって異なります。また、それぞれ納期もそれぞれ異なるため、あらかじめ比較したうえでどの会社に依頼するか決めなければなりません。
与信調査のやり方・プロセス
与信調査は以下のやり方・プロセスで行います。
1.信用調査による評価
信用調査による評価は、3つの段階によって進められます。
まず、社内に保有するデータがあれば、内部調査を実施しましょう。既存取引先の過去の取引履歴や支払い状況を確認し、基本的な情報を整理します。しかし、過去のデータだけでは現在の信用状況を正確に把握するのは難しいため、さらなる調査が必要です。
次に、インターネットによる情報収集を行います。企業の基本情報や業績データをWebサイト上で確認するほか、必要に応じて有料の情報提供サービスを利用することで、調査の精度を高められるでしょう。
最後に、直接訪問による実地調査を実施します。取引先の実態を把握するため、現地での観察や担当者との面談を行うとともに、必要に応じて同業他社からの情報収集も取り入れることで、より多角的な評価が可能となります。
2.与信審査による評価
与信審査による評価は、企業の信用力を総合的に判断するために、「定性分析」「定量分析」「商流分析」などの方法を組み合わせて行います。
定性分析は、数値化できない情報(企業の代表者や株主情報、風評など)を評価するものです。これらの情報は、公的機関のデータやインターネットでの調査、または直接訪問などで確認可能です。
定量分析では、主に決算書をもとに企業の財務状況を評価します。決算書だけでは企業の全貌を把握しきれないため、キャッシュフローの状況にも注目する必要があります。
さらに、商流分析も重要です。同じ業績でも業界や業種により信用度に差が生じるため、収益構造や競合状況を踏まえた総合的な判断が求められます。
3.与信の承認および否認
与信の承認および否認は、取引先の信用評価に基づき行われます。
分析結果をもとに、支払能力を評価し、会社格付け基準に従って判断するのが一般的です。この基準をもとに客観的に取引先の信用力を評価し、問題がなければ取引を承認します。承認後は与信枠を設定し、契約交渉に進みます。
取引の可否選定は、リスクを最小限に抑えるためにも慎重に行うようにしましょう。
4.与信限度額の設定
取引の健全性を担保するため、評価結果をもとに取引限度額を設定します。過大なリスクを抑制しつつ、確実な売上確保と取引先との良好な関係構築も考慮しましょう。
健全性診断で担保設定が望ましいと判断した場合は、取引先との交渉で契約条件に組み込むようにしましょう。与信限度額の決定は、重要な経営判断の一つとなるため社内で慎重な検討を要します。
5.事後の管理
与信限度額を決定した後も、取引先の状況は時間とともに変化することがあります。そのため、事後の管理は欠かせません。
定期的に取引先の入金状況や取引の進捗を確認し、問題が発生していれば速やかに対応しなければなりません。支払遅延などの問題があれば、再度取引先の財務状況を調査し、限度額の調整を行う必要があります。
問題が深刻な場合は、今後の対応策を立て、リスク回避の方法を検討します。取引先の経営状況や業界の変化を踏まえ、情報収集を怠らず、柔軟に対応することが重要です。
信用調査の結果を判断するポイント
信用調査の結果を判断する際のポイントは、主に以下のとおりです。
売掛金の支払い能力
取引先の信用調査において、重要な確認事項の一つが売掛金の支払い能力です。相手企業が売掛金を着実に支払えるかどうか、また支払う意思があるかを慎重に評価する必要があります。
まず、売上収入の有無と推移を確認しましょう。一時的な売上だけでなく、長期的な受注状況も細かくチェックすることが重要です。これにより、安定した支払い能力があるかどうかを判断できるでしょう。
また、資金の余裕度も重要な指標です。売上収入が一時的に下がっても、十分な資金があれば売掛金の支払いはできる可能性があります。財務状態の健全性を確認し、支払い能力の有無を総合的に判断しましょう。
さらに、支払う意思の確認も忘れずに行わなければなりません。支払い能力があったとしても、期日通りに支払う意思がなければトラブルの元となります。過去の支払い履歴や評判なども参考にし、総合的に判断することが大切です。
資産・財務状況
取引先の資産・財務状況を確認することは、信用調査において重要です。とくに、相手企業の担保余力の把握が必要になってきます。
具体的な調査方法としては、不動産謄本の取得が有効です。これにより、保有不動産の状況や金融機関に対する未払いの有無を確認できます。また、資産を担保として借入できる余地があるかどうかも重要なポイントです。
経営状況が悪化しても、十分な資産や財務基盤があれば、直ちに支払不能に陥る可能性は低くなります。そのため、取引先の資産・財務状況を適切に評価することで、取引におけるリスクを軽減できるでしょう。
経営方針
与信調査では、相手企業が将来的にどのような事業展開を予定しているかなどの展望や、経営方針なども調査します。たとえば、相手企業の公表資料(ホームページ、パンフレットなど)に記載されている経営方針やコーポレートガバナンスをチェックしたり、直接相手企業の代表者や役員にインタビューしたりすることで調べます。
経営方針は、経営状況や資産・債務状況などのように数字で示されるものではありません。しかし、正確に把握しておくことで、相手企業の将来性を理解しやすくなり、長期にわたって取引できる相手なのか判断できるようになります。とりわけ継続的な取引を希望するときは、経営方針は重点的に調査しておきたい要素です。
代表者の信頼性
代表者が信頼できる人物かどうかも、与信調査ではチェックします。支払い能力に問題がない企業でも、代表者の性格によっては支払いが滞りがちになったり、トラブルが起こったときに迅速な連絡や対応を受けられなかったりすることが想定されます。
支払い期限に遅れると、自社のキャッシュフローにも影響がおよび、利益の機会を失うことや、資金繰りの悪化などにもつながるかもしれません。安心して取引できる会社で、継続的な取引が可能な会社かどうかを判断するためにも、代表者の人となりや性格も調べることが大切です。
与信調査は失礼にあたるのか
与信調査を行うことは、取引先との信頼関係を構築するうえで失礼にはあたりません。しかし、調査の実施を事前通告することは避けるべきでしょう。相手企業への配慮から、できる限り気づかれない方法で実施することが望ましいといえます。
調査は内部調査や官公庁調査、検索調査から始めるのが基本です。これらの方法では、相手企業に気づかれることはないでしょう。
信用調査会社への依頼時は、信頼できる調査機関を選定します。調査員の訪問によって依頼主が推測される可能性はありますが、適切なマナーで実施されるため、相手企業に不快な思いをさせるリスクは少ないでしょう。
また、調査の実施事実や内容を第三者に漏らすことは厳禁です。相手企業の信用を損なうだけでなく、自社のビジネスマナーも疑われかねないためです。
信用調査会社に依頼するのもひとつの方法
信用調査を行う際、自社で調査を行う方法以外にも、信用調査会社に依頼する方法があります。この方法の最大のメリットは、時間と手間を大幅に削減できる点です。
信用調査会社は豊富なデータベースと専門的なノウハウを持ち、効率的かつ正確な調査を行います。一方で、費用面や情報の深さに関して考慮すべき点にも留意しなければなりません。
ここでは、信用調査会社に依頼することのメリットとデメリットを詳しく解説します。
信用調査会社に依頼するメリット
信用調査会社を利用するメリットは大きく分けて2つあります。
1つ目は、自社調査の時間を大幅に削減できることです。与信調査では、取引先企業の業績や財務状況、経営者の評判など多岐にわたる項目を調査する必要があるため、多くの時間と労力を費やさなければなりません。しかし、信用調査会社に依頼すれば、これらの調査をすべて代行してくれるため、本来の業務に集中できる時間を作ることができるでしょう。
2つ目は、信用調査会社が保有する豊富なデータベースと専門知識を活用することで、より正確で信頼性の高い情報を入手できることです。独自の情報網と長年の経験に基づいた調査ノウハウを持つ信用調査会社だからこそ、多角的な視点から総合的に企業を評価し、客観的な報告を期待できるでしょう。
信用調査会社に依頼するデメリット
信用調査会社に依頼するデメリットとして、主に2つ挙げられます。
1つ目は、調査費用が発生することです。信用調査会社に依頼する場合、調査項目や調査対象企業の規模によって費用は変動しますが、自社で調査を行う場合と比較してコストが増加することは避けられません。一度に多くの企業を調査する場合には、費用負担がそれだけ大きくなります。
2つ目は、対象企業の詳細な内情までは把握できない点です。信用調査会社は、入手可能な公開情報や過去の取引実績などをもとに調査を行うため、企業の内部情報や経営状況などのより詳細な部分まで把握することは難しいといえます。
信用調査会社に依頼する際には、これらのデメリットも踏まえ、費用対効果を十分に検討するようにしましょう。
信用調査の依頼先を選ぶ際に確認するポイント
信用調査会社を選ぶ際には、費用や調査期間はもちろんのこと、報告書のわかりやすさや専門性など、さまざまな要素から考慮する必要があります。
自社のニーズに合った調査会社を選ばなければ、期待した結果を得られない可能性もあるため、慎重に検討しなければなりません。
たとえば、短納期での調査が必要な場合、標準納期が長い会社を選んでしまうと、必要なタイミングで情報を入手できません。
コストパフォーマンスを重視するのか、専門性の高さを求めるのか、海外企業の調査が必要かなど自社の状況に合わせた調査会社を選ぶようにしましょう。
調査にかかる費用
信用調査の費用は、調査内容によって大きく変動するため、適切な調査内容と価格で調査会社を選ぶことが重要です。一般的な価格相場は1社あたり15,000円~25,000円程度ですが、これはあくまで目安であり、実際の費用はこの基本の調査費用にオプション料金が加わった料金になります。
費用の詳細については各調査会社に直接問い合わせるようにしましょう。また、調査依頼を検討する際には、数社に見積もりを取ることが大切です。見積もりの内訳や調査内容を比較することで、予算に見合った価格で信頼できる調査会社を選択しましょう。
調査の期間
信用調査の依頼先を選ぶ際、「調査の期間」は重要なポイントです。信用調査会社によって報告書の納期が異なるため、自社の取引スピードに応じた納期で対応可能な会社を選ぶことが求められます。
一般的に、大手の調査会社は1件あたり約1か月の調査期間を設定していますが、期間短縮のオプションを提供しているところも多く、最短1週間程度で報告書を入手することも可能な場合があります。
ただし、調査対象企業の所在地によっては追加の日数が必要になることもあります。そのため、情報が必要となる期限を考慮し、逆算して調査会社を選定することが重要です。
報告書のわかりやすさ
信用調査会社を選ぶ際、報告書の見やすさと理解しやすさは重要な判断基準です。信用情報を効率的に分析するためには、データが視覚的に整理され、わかりやすく提示されていることが欠かせません。
そこで、依頼する前に報告書のサンプルを入手し、「表やグラフの使用が適切かどうか」「数値データが効果的に視覚化されているかどうか」を確認することが望ましいです。
また、重要な情報が適切な色使いによって一目で理解できるか、レイアウトが論理的で読みやすい構成になっているかもチェックポイントです。
さらに、オンラインでのデータ提供サービスがある場合は、そのインターフェースが使いやすいかどうかも確認するとよいでしょう。
総合信用調査会社と専門信用調査会社のどちらか
信用調査会社は、大きく「総合型」と「専門型」の2つに分類されます。総合型の調査会社は、地域や業種を問わず幅広い企業の信用調査をするのが特徴です。一方、専門型の調査会社は、特定の分野に特化しており、より詳細な信用情報を提供しています。
専門型は、総合型と比較してコストが高く、利用条件も厳しい傾向がありますが、特定分野に関してはより深い情報を得られる点がメリットです。
特定の業界や地域に特化した情報が必要な場合は、専門型の調査会社を選ぶことで、より精度の高い情報を入手できる可能性があります。
調査会社を選ぶ際は、自社のニーズや予算、調査の目的などを考慮し、総合型と専門型のメリット・デメリットを比較しながら慎重に検討することが重要です。
海外企業への対応
海外企業との取引を検討している、あるいはすでに取引関係にある企業にとって、信用調査会社の選択は重要です。海外企業に対応している信用調査会社を選ぶことで、より正確で詳細な情報を入手でき、海外取引におけるリスクを最小限に抑えられるでしょう。
調査会社を選択する際は、以下の点を確認することが大切です。まず、世界各国の企業を調査できる国際的な調査能力と実績があるかどうかを確認しましょう。次に、収集した情報を日本語で提供しているかどうかも重要な点です。さらに、信用評価以外にも市場動向や競合状況などの追加情報を提供しているかどうかについてもチェックするようにしましょう。
海外企業に対応している信用調査会社を選ぶことで、より正確で詳細な情報を入手できるだけでなく、海外戦略の立案やマーケティング計画の策定にも役立つでしょう。
信用調査をマネーフォワード 掛け払いに任せたほうがいい理由
信用調査ごとに費用がかからない
マネーフォワード 掛け払いにおける信用調査は、利用企業の顧客登録に併せて行われます。また、この費用は通常のサービス利用額に含まれる為、追加で費用を支払う必要もありません。また、取引先企業に関する書類などの提出も不要の為、利用企業内での対応の手間も省略できます。
最短数秒で調査が完了する
一般的な信用調査に関しては、通常納期で1ヶ月がかかると言われています。一方で、マネーフォワード 掛け払いでは、サービスのご利用開始時の顧客登録に合わせて取引先の信用調査を行います。ほとんどの与信審査は機械学習を活用した自動審査で行われるため、最短数秒、最長でも2営業日で信用調査が完了します。このため、信用調査が完了するまで何週間も取引ができない、という事態も防ぐことができます。
貸し倒れがあっても保証される
信用調査を行う目的は、売掛金の未回収を避けるためでした。この点、マネーフォワード 掛け払い利用企業に対しては、与信審査通過済みの取引は100%入金保証がされるので売掛金未回収のリスクが軽減されます。仮に、取引先企業の倒産などにより貸倒となった場合でも、利用企業には手数料以上の金銭的な損害や請求は一切発生しません。
また、通常の振込日より前に売掛金が振り込まれる早期振込にも対応(※)しており、資金繰りの改善にも効果的です。※オプションサービス
小規模事業者とも取引可能
一般的に、信用調査会社が調査対象とする事業者は一定の規模以上の企業の場合がほとんどですが、業界・業態によっては個人事業主のような小規模事業者が取引先となる場合、また取引先が多岐に渡るような場合もあります。
そのような場合、一般的な信用調査会社の対応外になるケースも考えられますが、マネーフォワード 掛け払いでは個人事業主・小規模事業者も含めた幅広い事業者が対象になるため、取引先による制約を受けずに取引を進めることが可能になります。
カンタンであんしんな企業間請求代行サービス「マネーフォワード 掛け払い」
このように、信用調査によってもなくすことができなかった売掛金未回収リスクについても、マネーフォワード 掛け払いを利用することでそのリスクを軽減することができます。
企業間取引の9割を占める「請求書による後払い」に関わる、様々な負担やリスクを解決できるのがBtoB後払い決済サービスです。
掛け売りに必要な与信審査・請求書の発行発送・入金管理・未入金フォローなど、請求にかかわるすべてのプロセスを代行します。
もし未入金が発生した場合にも入金を保証。リスクなく掛け売りが可能です。請求業務とリスクからあなたを解放し、ビジネスの成長を支援します。
▼企業間後払い請求代行サービス「マネーフォワード 掛け払い」
https://mfkessai.co.jp/kessai/top
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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連結貸借対照表とは、企業集団の連結決算時において作成される連結財務諸表のひとつで、企業集団全体の資産、負債、純資産の状態を表すためのものである。 連結貸借対照表とは 連結貸借対照表(れんけつたいしゃくたいしょうひょう、Consolidate…
詳しくみる事前確定届出給与とは?役員賞与を損金算入して節税できる?期限や記載方法は?
経営者など役員に対する報酬や賞与は、一般社員の給与とは異なり、税務上の規定に従って支給されなければ損金算入できません。役員報酬は金額が大きくなりがちなため、損金算入として扱わなかった場合、納税負担額や資金繰りにも悪影響を及ぼします。 このよ…
詳しくみる中小企業の人手不足にどう対応する?経営者が知っておくべき3つの道
景気回復に伴って浮き彫りになってきた中小企業の人手不足問題。 ここではその現状を解説するとともに、企業が取るべき3つの対応策、すなわち「攻め」の採用活動、女性雇用促進、外国人雇用促進について考えます。 人手不足している中小企業は50.2% …
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