- 更新日 : 2021年12月16日
電子帳簿保存法の申請方法まとめ

国税関連の帳簿書類は、原則、紙で保存することとされています。ただ、システム上、帳簿書類を作成することや、電子データでやり取りすることも近年では増えてきました。電子データを印刷して保存するのは、非効率的に感じる部分もあるでしょう。
国税関連の帳簿書類を、電子データで保存するための電子帳簿保存法は、改正により保存の要件が年々緩和されています。改正を機に、紙ではなく、電子データでの保存を検討しても良いかもしれません。この記事では、帳簿書類を電子データで保存するための申請方法を解説します。
令和4年1月1日より電子取引の情報の電子保存の義務化が開始されます。2023年12月31日までの間に電子保存に対応できない事情があると税務署長が認め、かつ出力書面での提出等に応じることができる場合は出力書面での保存も認められます。
目次
電子帳簿保存法とは?
電子帳簿保存法とは、国税関連の帳簿書類を電子データとして保存するためのルールなどを定めた法律です。電子帳簿保存法では、電子計算機によって作成した帳簿の電子保存、関係書類のスキャナ保存、電子取引によるデータの保存について定めています。
電子帳簿保存法の創設以前は、紙による保存しか選択肢がなかったのですが、創設により、紙ではなく電子データでも保存が可能となりました。紙による保存が原則ではあるものの、申請を行えば、紙による保存ではなく、帳簿書類の大部分を電子データとして保存できるようになります。
なお、創設当初は、電子データで保存するための要件が厳しく、導入には高いハードルがありました。しかし、近年続く改正により、電子保存はより多くの企業等に取り入れやすいものへと変化してきています。
改正でスキャナ保存の要件が緩和
電子帳簿保存法に関しては、制度創設以降、より利用しやすくするために、たびたび改正が行われてきました。2020年もスキャナ保存に関して大幅な要件緩和が行われています。
まず、2020年10月に施行された制度の改正以前は、書類のスキャナ保存は、以下の方法のいずれかでしか保存が認められていませんでした。
- 発行者側のタイムスタンプの付与の有無にかかわらず、受領者はタイムスタンプを付与する
- 改ざんを防止する事務処理の規定と社内での運用を行う
つまり、書類を受け取るケースでもタイムスタンプを導入するか、改ざん防止策を定めて運用するか、いずれかを実施しなければならなかったのです。
改正後は、スキャナ保存の方法が、以下のいずれかを満たせば良いことになりました。
- 発行者側でタイムスタンプの付与がなければ受領者が付与する
- 改ざんを防止する事務処理の規定と社内での運用を行う
- 発行者側でタイムスタンプの付与があれば、受領者側の付与はいらない
- 受領者が改ざんできないシステム等を利用する
今回の改正で、追加と変更があったのは2点です。発行者側でタイムスタンプの付与された書類を受領した場合、または、受領者が改ざんできないシステムを利用した場合、タイムスタンプは不要になりました。
電子帳簿保存法に関してより詳しく知りたい方は、こちらをご参照ください。
電子帳簿保存法適用のながれと電磁的記録による保存等の承認申請書
電子帳簿保存法が定める電子保存は、すぐに適用できるものではありません。基本的には、適用を受けたい帳簿書類の電子保存の承認を、所轄の税務署長より受ける必要があります。必要な準備は適用を受けたい帳簿書類で変わってきますが、基本の流れは変わりません。以下が、電子帳簿保存法の定める電子保存を適用までの流れです。
- 電子保存のための要件を確認する
- 社内規定や運用方法を定める必要があれば作成する
- 電子帳簿保存法に対応したシステムを取り入れる
- 承認申請書に添付する書類を準備する
- 適用を受けたい帳簿書類に合わせて承認申請書を作成し所轄税務署に提出する
- 電子保存を開始する
電子保存の詳しい手続きについては、以降の見出しで取り上げます。
手続きは余裕をもって!申請期限には注意が必要
電子保存は任意であるため、明確に申請の期限があるわけではありません。しかし、申請のタイミングで適用開始日が変わってくる点には注意が必要です。
電子保存の承認申請書は、いずれも適用を開始する3ヶ月前の日までには所轄税務署に提出する必要があります。例えば、1月1日から適用したい場合は、前年の9月30日までには申請を済ませなければなりません。
しかし、事業を新たに始める際には、必要な手続きを事業開始以前にしておくことは困難です。新たに事業を開始する場合に限っては、事業開始の2ヶ月を経過するまでに申請して承認を受ければ、事業開始の年から電子保存が認められます。
以上のように、所轄税務署に申請するタイミングが重要です。申請してすぐに適用を開始できる制度ではないため、申請や申請にともなう準備は余裕をもって行うようにしましょう。
※令和3年度の税制改正により、令和4年1月1日以後に備付けや保存をする国税関係帳簿や国税関係書類については原則、事前承認制度が廃止されました。
申請の取消・変更方法
■申請内容を変更する場合
【参考】国税庁|国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存等の変更の届出書すでに申請している電子保存に関して、保存方法などの変更を行いたいときは、「国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存等の変更の届出書」を作成し、変更後の書類を添付した上で所轄の税務署に提出します。届け出であるため、承認申請のような手続きは踏みません。変更の〇ヶ月前までの期限は設けられてはいませんが、変更する前に提出することと定められています。
変更の届け出のポイントは、変更したい帳簿書類の種類と保存方法、変更日、変更する内容の詳細を明記することです。
■申請内容を取りやめる場合
【参考】国税庁|国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存等の取りやめの届出書すでに申請している電磁的記録等の保存について、電子保存を止めたい場合は、「国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存等の取りやめの届出書」を取りやめるよりも前に、所轄税務署に提出しなくはなりません。電子保存と紙による保存を都合よく併用できない点に注意しましょう。取りやめる際は、電子保存を止めたい帳簿書類の名称や保存方法、取りやめる年月日のほか、その理由を記載します。
【帳簿書類別】承認申請時の必要添付書類と書き方
電子保存は便利ですが、帳簿書類のほとんどを電子データに移行するのは大変な作業です。事務処理の方法や手続きの見直し、システムの変更などにより、移行までに時間も費用も工数もかかってしまいます。そこで、電子帳簿保存法では、帳簿書類を個別に電子保存することが認められており、帳簿書類の一部を電子保存で、残りを紙で保存することが可能です。
電子帳簿保存法申請したい帳簿・書類の分類方法
電子帳簿保存法に対応した電子保存において押さえておきたいのが、帳簿書類の分類です。申請を希望する帳簿書類などに応じて、申請書類が異なります。電子帳簿保存法の対象となる帳簿書類の簡単な分類は、以下のとおりです。
帳簿 仕訳帳、総勘定元帳、固定資産台帳、など スキャナ保存不可 書類 貸借対照表、損益計算書、棚卸表、など 契約書、請求書、領収書、など(重要書類) スキャナ保存の対象 見積書、注文書、など(一般書類) 帳簿は、会計ソフトで作成するような帳票をイメージすると良いでしょう。会計ソフトに関連して、作成可能な決算書類は帳簿ではなく書類に分類されます。ただし、一貫してシステム上で作成可能なことからスキャナ保存の対象にはなりません。帳簿以外の、請求書や領収書など、国税関係のものは書類に分けられます。
【帳簿】承認申請に必要な添付書類と書き方
法人税や消費税などにかかわる帳簿について電子保存したい場合は、「国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等の承認申請書」を作成して、添付書類とともに提出します。
【参考】国税庁|国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等の承認申請書 1/4上の画像は、4枚1組の承認申請書のうちの1枚目の部分です。承認申請書には、以下のような内容を記載します。
- 承認を受けたい帳簿の名称と根拠となる税法、開始日、納税地や保存場所
- 使用する電子計算機の概要(パソコンやプリンタなどの機種や台数など)
- 使用するプログラムの概要
- 適用要件を満たすために採用する措置
- そのほかに参考となる事項
申請にあたっては、プログラムの概要や事務手続きの概要がわかる書類、操作マニュアルなど、申請の内容に応じて書類を添付します。保存にあたって具体的な方法や使用する機器等を示す必要があるため、事前準備が欠かせません。なお、JIIMA認証の会計ソフト使用の場合は、承認申請をもう少し簡略化できます。
【書類】承認申請に必要な添付書類と書き方
書類を電子保存したい場合は、「国税関係書類の電磁的記録等による保存等の承認申請書」を作成して、添付書類とともに提出します。
【参考】国税庁|国税関係書類の電磁的記録等による保存等の承認申請書 1/3上の画像は、3枚1組の承認申請書のうちの1枚目の部分です。承認申請書には、以下のような内容を記載します。
- 承認を受けたい書類の名称と根拠となる税法、電子保存開始日、納税地や保存場所
- 使用する電子計算機の概要(パソコンやプリンタなどの機種や台数など)
- 使用するプログラムの概要
- 適用要件を満たすために採用する措置
- そのほかに参考となる事項
添付書類は、帳簿の承認申請と同じです。事務手続きの概要がわかる書類や操作マニュアルなどを添付します。
※令和3年度の税制改正により、令和4年1月1日以後、電子帳簿保存事前承認制度が廃止されたため、令和4年1月1日以後に電子帳簿保存を開始する場合は原則、承認申請書の提出は不要です。
【スキャナ保存書類】承認申請に必要な添付書類と書き方
相手から受領した書類、自身で作成した領収書などの写しをスキャナで取り込み電子保存したい場合は、「国税関係書類の電磁的記録によるスキャナ保存の承認申請書」を提出します。
【参考】国税庁|国税関係書類の電磁的記録によるスキャナ保存の承認申請書 1/4上の画像は、4枚1組の承認申請書のうちの1枚目の部分です。承認申請書には、以下のような内容を記載します。
- 承認を受けたい書類の名称と根拠となる税法、ファイル形式、電子保存開始日、納税地や保存場所、書類区分(重要書類・一般書類)、関連帳簿
- 使用する電子計算機の概要(パソコンやプリンタなどの機種や台数など)
- 使用するプログラムの概要
- 適用要件を満たすために採用する措置
- そのほかに参考となる事項
添付書類は、帳簿や書類の承認申請書と同様です。スキャナ保存のほか、COMによる保存の適用を受けたい場合は、別途、電子計算機出力マイクロフィルムによる保存の承認申請書を提出します。
※令和3年度の税制改正により、令和4年1月1日以後、電子帳簿保存事前承認制度が廃止されたため、令和4年1月1日以後にスキャナ保存を開始する場合は原則、承認申請書の提出は不要です。
電子取引は承認申請が不要
書類は、書面で受け取るほか、メールやシステム上で受け取るケース(電子取引)もあります。電子取引に関しては、データを出力して作成した場合やCOMによる保存の場合を除き、電磁的記録で保存することと定められています。帳簿やスキャンによる書類の電子保存のように、承認申請を得る必要はありません。例外を除き電磁的記録での保存が必要なため、要件を満たした保存ができているか、確認しておく必要があります。
電子帳簿保存法の注意点
■申請のタイミングに注意する
電子帳簿保存法の定める電磁的記録の適用は、申請後すぐに行えるものではありません。開始したい日から逆算して、少なくとも3ヶ月前までに申請を済ませておきましょう。■事前に準備を進めておく
帳簿の保存にしても、書類の保存にしても、使用する電子機器の機種名や台数、使用するシステムの名称などは具体的に記入しなくてはなりません。適用までの期限もあるため、新たにシステムを取り入れる場合は、導入に時間がかかる可能性があります。そのため、申請までに準備を進めておく必要があります。■保存要件を満たせるように対策する
電磁的記録の承認申請書には、いずれも保存要件を満たすための措置を、チェックまたは記入する欄が設けられています。要件を満たした措置が取れているか確認しながら、対策できていないところは措置をしっかり講じて申請するようにしましょう。■電子帳簿保存法に対応しているか確認する
自社開発やカスタマイズのほか、市販のシステムを利用して電磁的記録を行いたい場合もあるでしょう。市販のシステムは、会社の規模にかかわらず、取り入れやすいのが利点です。ただし、導入の際は、システムが電子帳簿保存法に対応しているか、よく確認しておく必要があります。基本的に、承認申請を受けることで利用可能な電子保存には、さまざまな要件や注意点があります。できるだけ工数を減らして申請を行うには、すでに電子帳簿保存法に対応しているようなシステムを利用することをおすすめします。
マネーフォワード クラウドでスムーズな電子帳簿保存法対応を
電子帳簿保存法の要件は、毎年緩和されています。マネーフォワード クラウドでは、『マネーフォワード クラウドBox』のリリースによって、従来の電子保存に必要だったタイムスタンプ不要で、電子帳簿保存法に対応したデータの保存ができるようになりました。
また、2022年1月の改正電子帳簿保存法施行にあわせ、皆様に安心してご利用いただくため、改正電帳法の保存要件を満たした新機能を2021年内に順次リリースします。
この機会に、簡単に電子帳簿保存法に対応したデータ保存ができるマネーフォワード クラウドの導入を検討してみませんか?
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よくある質問
電子帳簿保存法とは?
国税関連の帳簿書類を電子データとして保存するためのルールなどを定めた法律です。詳しくはこちらをご覧ください。
電子帳簿保存法を適用するには?
適用を受けたい帳簿書類の電子保存の承認を、所轄の税務署長より受ける必要があります。詳しくはこちらをご覧ください。※令和4年1月1日以後は不要
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