- 更新日 : 2022年5月10日
パソコンやマウス購入時の勘定科目と仕訳例まとめ

IT関連の企業をはじめとして、事務処理などのためにパソコンやマウスを購入する会社や個人事業主は多いでしょう。パソコンの購入は金額によって勘定科目が異なり、その後の会計処理も変わってきますので、しっかりポイントを押さえておきたいところです。今回は、パソコンの購入に関連する仕訳と勘定科目の使い方を状況別に解説します。
目次
パソコン購入時の勘定科目は金額や状況によって異なる
事業用にパソコンを購入したときの仕訳には、さまざまなパターンが考えられます。まず確認しておきたいのはパソコンの取得価額(購入金額)です。取得価額が一定の金額以上になるかどうかで、資産になるか、あるいは当期の費用になるかが異なります。
また、購入形態にも注意が必要です。現金一括で購入する以外にも、クレジットカードを利用して分割支払いで購入するパターンや、購入せずにリースを利用するパターンなども考えられるでしょう。このような方法でパソコンを取得した場合、勘定科目も変わってきます。
パソコンの購入金額が10万円未満の場合
事業で用いられる資産のうち、時間の経過により価値が減少するものを減価償却資産といいます。パソコンは使用することによって価値が減少していくため、減価償却資産の一つです。
パソコンは売却したときにお金になるという換金価値があり、収益の獲得に貢献することから「資産」になります。しかし、減価償却資産であっても以下に該当するものは資産に計上せず、全額を事業の用に供した年(パソコンの場合は一般的に取得したとき)に、必要経費に計上します。
(必要経費に計上する減価償却資産 ※いずれかに該当すること)
- 使用可能期間が1年未満
- 取得価額が10万円未満
使用可能期間については法定耐用年数ではなく、それぞれの事業者の使用状況などから計算します。一般的に、パソコンは1年以上継続使用して利用できるものです。通常は使用可能期間ではなく、取得価額で経費にするかどうかを判断します。購入金額が10万円未満のときは、全額を経費として仕訳します。
パソコンを購入したときに使う費用の勘定科目は「消耗品費」です。または「事務用品費」でも計上できます。
パソコンの購入金額が10万円以上20万円未満の場合
購入金額10万円以上20万円未満のパソコンの仕訳としては、原則的な処理、一括償却資産での処理、少額減価償却制度を利用した処理の3パターンが考えられます。
1.原則的な処理
購入金額10万円以上20万円未満のパソコンは、使用可能期間1年未満、取得価額10万円未満という要件に該当しません。この場合、資産の勘定科目である「備品」または「工具器具備品」などで処理します。
(工具器具備品) |
2.一括償却資産での処理
購入金額10万円以上20万円未満のパソコンは、一括償却資産として処理できます。一括償却資産とは、個別で管理するのではなく一括で管理する減価償却資産のことです。本来、資産は耐用年数に基づき減価償却していきますが、一括償却資産は本来の耐用年数にかかわらず、足掛け3年にわたって1年あたり3分の1ずつ減価償却(費用化)することが認められます。
取得時は資産科目である「一括償却資産」として処理します。会計上で調整する以外に、法人税の確定申告書で減価償却費を調整する申告調整方式による場合は、一括償却資産ではなく、費用科目の「消耗品費(または事務用品費)」で処理します。
一括償却資産については以下の記事で詳しく解説していますので、こちらもご覧ください。
3.少額減価償却制度を利用した処理
少額減価償却制度は中小企業者が利用できる制度で、取得価額30万円未満の減価償却資産を即時償却できます。詳細と仕訳は、以下の「パソコンの購入金額が30万円未満の場合」の項で解説します。
パソコンの購入金額が30万円未満の場合
取得価額30万円未満のパソコンは、原則的な処理のほか、中小企業者であれば少額減価償却資産の特例を利用した処理が認められます。
1.原則的な処理
以下に示す例以外に、少額減価償却資産の特例の適用対象外である1台30万円以上のパソコンを購入したときも、この原則的な方法で処理します。
(工具器具備品) |
2. 少額減価償却資産の特例を利用する
購入金額30万円未満のパソコンについては、一定の中小企業者等であれば少額減価償却資産の特例により全額を費用に計上できます。一定の中小企業者等とは、青色申告書を提出し、常時使用する従業員が500人以下で、資本金(または出資金)が1億円以下の一定の法人です。法人ではない個人事業主も、青色申告を行い、かつ常時使用する従業員が1,000人以下であれば少額減価償却資産の特例を利用できます。一会計期間でこの特例を利用できる限度額は、合計で300万円です。
少額減価償却資産の特例を利用する場合は、一度資産として計上したあと即時償却(費用化)の処理を行います。
(工具器具備品) |
(工具器具備品) |
パソコンを複数購入した場合
減価償却資産の取得価額については、通常1単位で取引されるその単位ごとに判定することとされています。パソコンのモニターと本体を同時に購入した場合、これらは組み合わせることではじめてパソコンとして使用できることから、モニターと本体をセットで1単位として扱います。たとえば、5万円のモニターと15万円の本体を同時に購入したときは、合計してパソコンの購入金額を20万円として考えるということです。
以上の1単位の概念は、パソコンを複数台購入したときにも適用されます。その単位ごとに取得価額を考えますので、1単位が10万円以上であれば原則は資産(勘定科目:備品など)、1単位が10万円未満であれば費用(勘定科目:消耗品費など)として扱います。
(工具器具備品) |
このケースだと、1セット(1単位)あたりの取得価額は20万円です。これは10万円以上の減価償却資産になるため、原則的な方法による場合、資産で処理します。また、1セットあたりは30万円未満ですので少額減価償却資産の特例により、5セットを全て即時償却することもできます。
この場合、支払額の合計は40万円ですが、減価償却資産は1セットの取得価額で見るため、1セット10万円未満のこのノートパソコンは費用として処理します。
パソコンを分割払いで購入した場合
クレジットカードなどを利用して分割払いでパソコンを購入したときも、備品や消耗品費などの借方の勘定科目は変わりません。分割払いで注意したいのは、貸方項目です。分割払いで購入したときは現金などの資産は出ませんし、取得後に支払いを実行する義務があることから、資産ではなく「負債」と捉えます。
固定資産を分割払いで取得したときの貸方の勘定科目は「未払金」です。分割払いでは、取得時に貸方を未払金で処理し、支払いが実行される度に未払金を取り消していく(借方に計上する)処理を行います。
(工具器具備品) |
リース契約でパソコンを取得した場合
リース契約によりパソコンを取得した場合、3つの仕訳パターンが考えられます。
1.所有権移転のファイナンス・リース取引
ファイナンス・リース取引とは、リース契約のうち、リース期間中に解約不能かつフルペイアウトの取引のことをいいます。フルペイアウトとは、リース物件から利益を享受でき、かつ使用にともないコストを負担することで、実質として資産を取得したときと同等の効果を得られる取引のことです。
所有権移転のファイナンス・リース取引は、リース終了後に所有権がリースの借手に移るような取引を指し、リースを開始したときに、資産と負債の両建で処理します(実際に所有権が移らなくても特別仕様でほかにリースできないようなケースも含む)。
借方・貸方に両建で計上する額は、リース会社のリース物件の購入価格がわかるときはその購入価格か、リース料総額現在価値のいずれか低い方です。わからないときは、現金購入価格かリース料総額現在価値の低い方を計上します。
以上は原則的な処理ですが、リース期間が1年以内のときや、少額資産、または1契約あたりのリース総額が300万円以下で事業内容上の重要性が乏しいときは、オペレーティング・リース取引の項で説明する賃貸借で処理できます。
2.所有権移転外のファイナンス・リース取引
所有権移転外ファイナンス・リース取引は、所有権移転に該当せず、リース後に使用できる権利がリース会社に戻るようなファイナンス・リース取引のことをいいます。取得時の処理は基本的に、所有権移転ファイナンス・リース取引と同じです。ただし、減価償却及びリース債務の償却時期が異なります。所有権移転の場合は実質資産をリース後に引き取るため経済的耐用年数で処理し、所有権移転外の場合はリース終了後に返還するためリース期間にわたって償却します。
所有権移転のファイナンス・リースと同様に、事業上重要性の低いリース契約などは賃貸借での処理が可能です。中小企業については、条件にかかわらずオペレーティング・リース取引の項で説明する賃貸借処理を選択することが認められます。
3.オペレーティング・リース取引
オペレーティング・リース取引とは、ファイナンス・リース取引に該当しないリース取引のことです。ファイナンス・リース取引とは異なり、全て賃貸借により仕訳をします。
消費税の取扱い
パソコンの購入価格(取得価額)別の仕訳は、10万円未満、10万円以上20万円未満、20万円以上30万円未満、30万円以上の4つのパターンがあるとご説明しました。ここで注意したいのは、消費税を含んだ価格か、消費税を除いた本体価格か、また取得価額をどのように捉えるかという点です。結論からいうと、事業者が採用している消費税の経理方式によって判定基準が変わります。以下の例について、それぞれの方式を当てはめてみましょう。
税抜経理方式の場合
税抜経理方式を採用している場合は、消費税の支払いを「仮払消費税」、受入れを「仮受消費税」で処理しますので、パソコンの取得価額は消費税を差し引いた本体価格で計算します。この例の場合、本体価格は10万円未満のため経費で処理します。
税込経理方式の場合
税込経理方式では、消費税を含んだ額をパソコンの取得価額とします。例に挙げたパソコンは消費税込みで10万4,500円です。1単位の価格が10万円以上になるため、原則的な処理だと資産として処理しなければなりません。
(工具器具備品) |
ただし、免税事業者の場合は法人も個人も税込経理方式で処理しなければならないため、税抜経理方式での仕訳はできません。税抜経理方式で処理できるのは課税事業者だけです。
保証料の勘定科目
パソコンを購入するときは、パソコンの延長保証料や支払い保証期間を延長することもあります。このとき保証料をどのように処理するのか、以下の仕訳例から見ていきましょう。
固定資産を取得したとき、事業の用に供するために直接要する費用は、取得代金に含めることとされています。パソコンの保証料に関しては、使用するために必ずしも必要ではないと考えられるため、パソコンの取得費用とは別に費用で処理することができます。
この仕訳例では修繕費を使っていますが、支払手数料などで処理することも可能です。保証期間が1年を超えるときは、修繕費ではなく前払費用として処理し、保証期間にわたって毎期末、前払費用から修繕費に振り替えます。
マウス等のパソコン周辺機器の勘定科目
外付けハードディスクやWebカメラ、パソコン用マイクなどのパソコン周辺機器を単独で購入したときは、費用で処理します。パソコンとあわせて購入したときは、モニターなどパソコンの使用に必要なものはパソコンの取得価額に含み、パソコンの動作に必ずしも必要のないものはパソコンの取得価額とは分けて費用で処理します。勘定科目は、消耗品費のほか、事務用品費などを使っても良いでしょう。
個人事業主はパソコン代を確定申告で経費にできる?
個人事業主も、事業に利用するパソコンは原則として必要経費として計上することができます。青色申告と白色申告の区別もありません。法人の考え方と大きな違いはありませんので、一括償却資産や青色申告者の少額減価償却資産についても法人と同様に処理が可能です。
個人事業主の場合、問題となるのは家事関連費です。プライベートと事業の双方で利用しているパソコンの費用は、家事関連費にあたります。 よく家賃や水道光熱費、携帯電話代などで話題になるのですが、事業専用パソコンではない場合には注意が必要です。
事業に必要な部分を明らかに区分できる場合のみ、その区分された部分を必要経費に算入することができます。パソコンの場合、家賃などのように面積按分などもできず、家事按分が難しいため、できれば事業専用にするほうが考えやすいと言えます。
パソコン購入時の仕訳は取得価額や単位に注目しよう
パソコンを購入したときの仕訳について、さまざまなパターンを解説してきました。中でもしっかり押さえておきたいのが、取得価額によって異なる処理の方法と、パソコン1セットの単位の考え方です。同じ借方でも、計上の意味や扱いはケースごとに大きく変わってきますので、パターン別の仕訳方法をしっかり確認しておきましょう。

マネーフォワード クラウド会計の導入事例
金融口座の取引明細データが自動で取り込まれ、各取引の勘定科目も自動で仕訳される。以前はインストール型ソフトを利用していたので、それがクラウドに変わるとこれほど自動化されるものなのかと本当に驚きました。
株式会社久松農園 久松 達央 様
よくある質問
パソコンの購入代金は全額費用にできる?
10万円未満であれば費用ですが、原則として10万円以上は資産に計上するため、この場合は特例を除き全額費用にできません。詳しくはこちらをご覧ください。
パソコンを複数購入したときは合計額で考える?
パソコンを複数購入したときは、合計額で判断するのではなく、1セットあたりの価格を取得価額として考えます。詳しくはこちらをご覧ください。
取得価額は消費税込みと消費税抜きのどちらの価格?
税抜経理方式であれば消費税抜きの本体価格、税込経理方式であれば税込みの価格を取得価額として考えます。詳しくはこちらをご覧ください。
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