- 更新日 : 2025年2月20日
中小企業の人数とは?法律上の定義と助成金の利用要件
「中小企業」という言葉は普段何気なく使っていますが、法律的な定義があるため勝手に判断することはできません。
また、中小企業が対象の各種助成金にも人数要件が定められていることが多いため注意が必要です。ここでは、中小企業の法律上の定義や助成金の利用要件について、人数にポイントを置いて解説します。
目次
中小企業の人数の範囲は?
中小企業かどうかを判断する基準は、中小企業基本法で以下のように定義づけられています。

(出典:中小企業・小規模企業者の定義|中小企業庁)
中小企業基本法では、中小企業の定義を「中小企業者の範囲」として規定しています。従業員の人数だけでなく、資本金または出資金の総額の範囲が業種ごとに規定されており、業種によって規模感にバラツキがあることが分かります。
人数と資本金・出資金の基準は両方満たす必要はなく、いずれかを満たせば中小企業者として扱われます。
なお、「製造業その他」には、以下の業種が含まれます。
・運輸業
・農林漁業
・電気・ガス事業
このように、中小企業の範囲を定めることにより、行政が中小企業向けの政策を実施する際の対象企業を明確にすることができます。
ただし、この規定は原則であり、法律や制度によっては「中小企業」とされる範囲が異なるケースがあるため注意が必要です。
例えば、中小企業軽減税率の対象となるのは資本金1億円以下の企業ですし、政令によって、製造業でも従業員900人以下を中小企業の範囲とすることがあります。
また、大企業の傘下にあり親会社から一定の出資を受けている「みなし大企業」は、中小企業基本法の基準を満たせば中小企業に該当するものの、補助金や助成金の対象外となる場合があります。
パートは「常時使用する従業員」に該当する?
従業員の人数を聞かれた場合、正社員だけでなく派遣社員やアルバイトを含めて考えることがありますが、中小企業の定義における「常時使用する従業員」はどのようなものでしょうか。
労働基準法第20条では、従業員を「予め解雇の予告を必要とする者」としています。また、以下の場合は従業員として扱われていません。
人によって働き方が異なる派遣社員やパート、アルバイトといった非正規社員は、このような条文を参考に個別に判断されます。
なお、会社役員や個人事業主は解雇される立場ではないため、「常時使用する従業員」の人数にはカウントされません。
中小企業の経営者が知っておきたい制度・助成金
中小企業の経営者の多くが頭を悩ませているのが、資金調達や人材不足の問題ではないでしょうか。国や地方自治体では、中小企業の経営をサポートするために、さまざまな制度を用意しています。
以下、中小企業の経営に役立つ制度と利用要件のポイントや注意点をご紹介します。
中小機構の経営セーフティ共済
中小企業基盤整備機構(中小機構)では、「経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)」という共済制度を設け、取引先の倒産に伴う連鎖倒産や経営難を防ぐために資金の貸付を行っています。
また、取引先が倒産していない場合でも、臨時で資金が必要な場合に掛金の納付月数に応じて一時貸付を受けることができます。
経営セーフティ共済の加入要件は、1年以上事業が続いている中小企業者です。中小企業は上記で説明した定義をベースにしていますが、ゴム製品製造業やソフトウェア業または情報処理サービス業、旅館業においては資金または従業員の人数規定が別途定められています。
なお、「常時使用する従業員」については、「2ケ月を超えて雇用される者」であり「1週間の所定労働時間が正社員とおおむね同等である者」と規定しています。
詳細は下記ホームページを参照してください。
中小機構 経営セーフティ共済
http://www.smrj.go.jp/kyosai/tkyosai/index.html
ミラサポの補助金・助成金
ミラサポとは、中小企業庁からの委託により運営されている中小企業向けの支援情報サイトです。新しい事業を生み出すために必要や設備投資や試作品製作を支援する補助金制度の他、全国で実施されている中小企業向けの支援情報を検索できる「施策マップ」も便利です。
例えば、「ものづくり・商業・サービス補助金」では、認定指定機関と連携してものづくりやサービス開発を行う中小企業に補助金が支給されます。また、ミラサポでは小規模事業者向けの補助金も用意されていますが、中小企業者と小規模事業者は定義が異なるため注意しましょう。
小規模事業者の人数規定は、製造業その他の業種は20人以下、卸売業・小売業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)は5人以下というのが原則となっています。
補助金・助成金は随時更新されるため、最新情報は下記ホームページでチェックしてください。
ミラサポ 補助金・助成金ヘッドライン
https://www.mirasapo.jp/subsidy/index.html
厚生労働省による雇用関係の助成金
経営資源が限られた中小企業にとって、人材確保や人材育成も大きな問題です。厚生労働省では、従業員の雇用維持やキャリアアップなどを支援する助成金制度が充実しています。
例えば、中小企業は景気変動などの経済状況の影響を受けやすく、事業活動の縮小や従業員の人数の削減を余儀なくされることがあります。「雇用調整助成金」では、そのような場合に従業員を一時的に休業・出向・教育訓練などで雇用調整し、雇用を維持した場合に助成金が支給されます。
中小企業が雇用調整助成金を利用する要件には、直近3ヶ月間の雇用人数が、前年同期と比べて「10%を超えてかつ4人以上増えていないこと」というものがあります。つまり、事業活動を縮小しているにも関わらず、雇用人数が増えている場合は対象外ということです。
この他、研修制度やメンター制度など人材の定着を図るものや、非正規社員の正社員化や処遇改善を支援するものなど、助成金の種類は多岐にわたります。
厚生労働省 事業主の方のための雇用関係助成金
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/
まとめ
行政が実施する制度の対象企業を明確にするために、中小企業基本法では中小企業の範囲が業種ごとに規定されています。
ただし、これは原則的なものであり、制度や法律によって個別に規定されているケースがよくあります。中小企業の経営をサポートする各種制度についても、その制度の主旨に応じた利用要件が決められているため、よく確認し、対象企業に該当する場合は積極的に活用しましょう。
関連記事
・中小企業の定義は法律によって異なる
・中小企業が受けられる補助金一覧
・中小企業倒産防止共済で連鎖倒産を防ごう
よくある質問
パートは「常時使用する従業員」に該当する?
「日雇い」「2ケ月以内の期間限定の雇用」「季節性のある業務に4ケ月以内の期間限定で雇用」「試用期間中」という条文を参考に個別に判断されます。詳しくはこちらをご覧ください。
中小企業の経営に役立つ制度には何がある?
「中小機構の経営セーフティ共済」や「ミラサポの補助金・助成金」、「厚生労働省による雇用関係の助成金」などがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
中小企業の経営戦略を立案する基本フロー
経営資源に限りのある中小企業が市場で勝ち抜くには、経営戦略を立てることが大切です。 ここでは、中小企業が経営戦略を立案し実行するために必要な環境分析や、具体的な戦術を策定する基本フローについて解説します。 中小企業の経営戦略立案には環境分析…
詳しくみる最終仕入原価法とは?棚卸資産の評価方法をわかりやすく解説!
最終仕入原価法とは、事業年度における最終の仕入価格を期末棚卸資産の評価に適用する方法を指します。会計基準における棚卸資産の評価方法に含まれませんが、法人税法上は、ほかの評価方法を選択しない限り適用されることから、中小企業で広く活用されていま…
詳しくみる中小企業・零細企業が会計ソフトを比較するための13のポイント
従業員が増え、会計処理も増加すると、いよいよExcelや紙ベースでは管理が難しくなってきます。経理業務効率化のため会計ソフトの導入を考えている中小企業もあるでしょう。 しかし、会計ソフトは、その種類が豊富なため、いざ導入するとなったとき、ど…
詳しくみるリバースチャージ方式とは?消費税法改正で課税方式が変わった!
平成27年(2015年)4月の消費税法改正では新しく「リバースチャージ方式」という課税方式が一部の取引に適用されることになりました。 ここではこのリバースチャージ方式の仕組みを解説するとともに、消費税法改正などの他の内容についても簡単に説明…
詳しくみる費消率とは?計算方法や具体例、企業の財務管理に重要な理由を解説
費消率とは、企業が商品やサービスを提供するために実際に使用した資源の割合を示す指標です。本記事では、費消の意味や消費との違いから、費消率の計算方法や具体的な事例、そして企業の財務管理において費消率がなぜ重要なのかを解説します。 費消(ひしょ…
詳しくみる請求管理とは?業務内容や代金回収、請求管理システムの選び方も解説
経理や営業担当者は、取引先や金額、日付などを正確に把握して売掛金や未収入金を回収する必要があります。エクセルなどでも管理できますが、請求管理システムを利用すれば煩雑な請求管理業務をシンプルにすることができます。 今回は請求管理システムの導入…
詳しくみる